色褪せた空の下で   作:おいかぜ

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本編最終話とさせていただきます。数日以内にエピローグを投げる予定ではいますが、とりあえず、ここまでお疲れ様でした。そして、ありがとうございました。


《22》Over the Rainbow

 

 

 

祈るのは嫌いだ、と紗夜ちゃんは言った。救われないものが祈り続けるのだから、と。

 

 弱さと強さが同居した言葉だと思った。縋れない弱さと、縋らない強さ。

 代わりに私が祈ろうと思う。話して、触れて、愛している紗夜ちゃんの事を、すくい上げるように救ってみせる力は私にはないから。

 隣に立って、手を繋いで、紗夜ちゃんが明日を生きられる理由のひとひらにでもなれたらいい。

 

 

 スマホで開いたSNSの画面に踊る「氷川紗夜」の文字をスクロールする。

 

 同業者はみんな少なからず触れたことのある概念だと思うけれど、私はエゴサーチが好きだ。自己肯定感を高めるための材料としても、自分の立場を確認する視点の一つとしても、独りよがりにならないための戒めとしても。

 度が過ぎて日菜ちゃんに揶揄されたりもするけど。

 

 最近は、紗夜ちゃんのことも調べるようになった。ベッドに寝転がっていると、紗夜ちゃんのことばかり考えてしまう。インターネットを通して紗夜ちゃんの実在性を摂取して、紗夜ちゃんの外面と、私だけに見せてくれる裸足の歩様を確かめて眠るのが日課のようになっていた。

 

 Roseliaを取り巻く小さな事件を、SNSから知ることもある。

 今日は紗夜ちゃんが体調不良でライブが中止になったとまりなさんから聞いていたけれど、その時の様子が動画に上がっていたり。

 紗夜ちゃんは私に知られたくないと思うだろうから黙っているけれど、本当は仕事が終わってすぐ駆けつけたかった。……というか、まりなさんから釘を刺されていなかったら我慢できなかっただろう。

 

 ステージの左側でふらつく紗夜ちゃん。呆然とした表情と共にギターが止まって、観客のざわめきが動画に入り込む。演出を疑う声が、ボーカルの子が振り返ったことで掻き消えた。

 

 血が滴る。黒を基調とした衣装についた血は目立たないけれど、紗夜ちゃんの白い肌を染める紅はゾッとするほど鮮やかだった。ライトの操作が間に合わなかったのか、視点が違うせいで噛み合わなかったのか、白い光に照らされた紗夜ちゃんに小さく悲鳴が上がる。

 

 無意識に下唇を噛んでいたことに気がついて、慌てて指でなぞる。傷になってないといいけど。

 

 血塗れのまま一曲弾ききった紗夜ちゃんにベースの子が駆け寄って、ステージの端へ消えていくところで動画が終わった。

 ふぅ、と息をついて、スマホの画面を伏せてベッドに押し付ける。

 

 紗夜ちゃんはどんな気持ちで弾ききったのだろう。義務感だったのか、プライドを全うしたのか、それとも何となくだったのか。

 画面越しに聴いていても、音の質感がぼやけて何も読み取れなかった。

 紗夜ちゃんが自分を大事にしなかったことだけは分かる。

 

 画面をつけなおしてスクロール。

 

 ──前の演奏の方が良かった。

 ──なんか勢いがなくなった。

 ──つまらない演奏になった。

 ──ギターの圧倒感がなくなった。

 ──ビビってるバンドになった。

 ──小さく纏まってしまった。

 

 技術を讃えるコメントも沢山ある。前の演奏は怖かったから、今の方が良いという声もある。演奏が変わったことに気が付いていないようなコメントが大半だ。けれど、前の方が良いというコメントがやけに目につく。

 

 日菜ちゃんの言葉を思い出した。紗夜ちゃんの音楽は、苦しみの発露だ。

 紗夜ちゃんが音楽を通して心を開くことを喜ばしく思ったとしても、結果として出力されるのが苦しみや飢えであることを喜ぶべきではないんじゃないか。

 それだって、一面だけを見て語ることはできない。私の立場なら確かに紗夜ちゃんの音楽性そのものを歓迎すべきではないのかもしれない。けれど、リスナーとしては。紗夜ちゃんが苦しみや孤独や飢えを歌うことで共感性を覚えるかもしれない。自分の心を奏でてくれているようだと感じる人もいるだろうし、胸の中の普段意識しない場所を揺さぶられて心が動くこともあるだろう。

 

 紗夜ちゃんのスランプに対して、私は音楽から1度離れてみるのもいいんじゃないかと言った。残念ながらそれは受け入れられなかったけれど、もし私の予想が当たっているのなら、今の紗夜ちゃんの悩みは時間が解決してくれると思っている。

 

 紗夜ちゃんは、変わっていく最中にいる。

 解散してしまいそうなRoseliaを憂いて動いてみせたのもそうだし、私のことを受け入れてくれているのもそう。万事が万事とはいかないだろうけど、紗夜ちゃんの心はきっと良い方向に変化している。

 

 そして、変化の最中はえてして脆いものだ。表面上は形を保っているように見えても、蛹の中身はぐちゃぐちゃに溶けて、新しい翼の形を探っている。

 オーディションでの落選が紗夜ちゃんをささえる糸を切ってしまったのかもしれないし、案外繭が衝撃を和らげて、健全な変化のさなかにいるのかもしれない。

 羽化するまでそれは誰にも分からないから、私はせめて、紗夜ちゃんを肯定し続けるつもりだった。

 

 SNSを閉じて、今度は写真のライブラリをスクロールする。紗夜ちゃんと撮った写真を全部個別のフォルダに隠してあった。と言っても私も写っているツーショットは多くない。大抵は私が紗夜ちゃんの写真を撮りたがるのを、不承不承といった感じで紗夜ちゃんが許してくれるのだ。

 スピカくんとじゃれている写真。これは動画もあった。恨めしそうに私を見上げる紗夜ちゃんの表情が気に入っているから、多分一生消さないと思う。

 

 ライブの時の写真。Roseliaはそこそこ頻繁に衣装が変わるから、何個かバリエーションがある。白金燐子ちゃんが作っているらしい、と紗夜ちゃんから聞いた。活動資金から衣装分の予算が燐子ちゃんに振り分けられて、お金が貯まる度に燐子ちゃんが新しいのを作るらしい。

 露出は少なめにしてもらっている、と紗夜ちゃんは言っていた。ドラムやベースの子は肩や脚を大胆に魅せるようなデザインのものもあるけれど、確かに紗夜ちゃんの衣装はかっちりしている。それでも手袋や節々のスリットが妖艶さを演出していると思うのは、恋人の贔屓目だろうか。

 

 下校路で撮った写真もある。花壇を眺めている紗夜ちゃんだったり、立ち寄った喫茶店で紅茶を飲んでいる姿だったり、私が撮ったパフェの写真に写り込む指先だったり。

 

 それから、盗撮した写真も。

 紗夜ちゃんが家に来た日、一度だけ私の前で眠ってしまったことがあった。ベッドを背もたれにして、2人でクッションに腰掛けながら映画を観ていた時に、ふと隣を見たら紗夜ちゃんが目を瞑っていた。黙って寝顔を撮ったのは秘密だ。

 

 私なんかは授業中、特にお昼休みのあとの五時間目にうつらうつらとしていたりするけれど、紗夜ちゃんが眠そうにしているところを見たことがなかった。だからちょっとドキドキしてしまって、まるでイタズラのように寝顔を撮ったことは言い出せなかった。

 1時間くらいで目を覚ました紗夜ちゃんが、愕然とした表情で「私、もしかして寝てた?」と訊いてくるものだから特に印象に残っている。不眠症の話を聞いたのは、その後だった。

 

 その日が、たぶん私の中での1つのきっかけだった。

 紗夜ちゃんの中で、私の存在が決して小さなものではなくなったんだろうという確信を得た。

 私が紗夜ちゃんを好きでいることが、許されているのではなくて求められているのだと思えるようになった。

 

 キスの前にヘタレたのは言い訳ができないけど。

 

 もう一度唇に指をあてて、スマホを伏せる。

 

 私にできることは──

 

 

 

 

 ♦

 

 

 アイドルというのはつまりは偶像であって、祈りをあつめるアンテナみたいなものだ。けれどもアンテナが繋がる先には神様なんていない。返せるものは歌か、踊りか、スマイルくらい。それに希望を乗せるのが、私の目指すアイドルだった。

 

 虚飾をまとって、誰もかもを虜にする秘密と愛の『コンテンツ』が正しい偶像(アイドル)なのだとしたら、私が目指すのはアイドルじゃなくてもいい。夜空に輝く一番星になりたいわけじゃない。……憧れや理想がないとまでは言わないけど。

 

 パスパレの活動が始まって、アイドルの1人として地に足のついた活動をし始めたからか、それとも紗夜ちゃんとの交流を通してか、私の中のアイドル像が実体を伴い始めた。

 

 原体験は、幼い私が憧れた、ステージの上でキラキラ輝く彼女だ。けれどいざ私がステージに立った時に、歌って踊るだけの中身のない私でいるわけにはいかない。

 

 誰かの夢になれたらいい。テレビの前で私を観る少女の心に、夢を宿せたらいい。

 それと同時に、背中を押す風のようなアイドルになりたい。失敗して、立ち上がれなくなってしまった人。追い詰められて、行き場がないまま立ち尽くしている人。そんな人たちの導となって、手を引いて歩きたい。背中を押して、ふわりとその先へ飛んでゆきたい。

 

 もっと言うのなら、ほんの小さな活力になるくらいでも構わない。気だるい学校に行くための活力の、ほんの1%にでもなればいい。疲労困憊で目覚めた人がスーツを着るためのエネルギーになればいい。

 

 目覚まし時計が鳴る1分前に起きたとか、トーストがうまく焼けたとか、靴紐がしっかり結べたとか、朝焼けが綺麗だったとか、雀が可愛かったとか、道端の花が綺麗に開花していたとか、気温がちょうど良かったとか、追い風が気持ちよかったとか、散歩する犬とすれ違ったとか、電車が少し空いていたとか、たったそれだけの、幸せの一欠片に数えて貰えるようなアイドルになりたい。

 

「彩ちゃん、あんまり緊張しなくなったね」

「ううん、実はガチガチだよ」

「ほんとかなぁ」

 

 冷え切った指先を解すように両手のひらを開いたり握ったり。本番前の緊張は、もうどうにもならないのだと割り切った。

 代わりに精神統一みたいなことをするようになった。自分がどんなアイドルを目指しているのか。自分がどう在るべきか、ひたすらに心の中で繰り返す。

 ステージ上でどう振る舞えば良いのかを意識しておけば、過剰な緊張からは逃れられることに気が付いた。どうしたって、ドジは踏むんだけど。

 

 かつては気弱を隠す鎧だったパステルピンクのフリルは、本当の意味で私を飾るドレスになった。

 

「もう、心配しなくていいのかしらね」

「それはそれで不安かも」

「情けないことを言わないで頂戴」

 

 今日のライブは、Pastel*Palettes単独のものとしては今までで最大規模だ。あの日の1万人のうち、何人がここにいるのだろう。あの日、卵の殻を破ったばかりだった私たちは、両の足で立っている。

 

 スタッフさんに案内される通りにステージの端に待機して、合図と同時にステージへ飛び込む。アイドル()()()である私たちは、機材の問題もあって他のグループみたいに舞台の下からびっくり登場、みたいな演出は難しいのだけど、こちらの方が地に足がついている感じがして良いと思ったりもする。

 

 長く高く飛ぶには、踏み切りが大事だ。

 

『こんにちは、Pastel*Palettesです!』

 

 暗がりに浮かぶサイリウムの虹色が一斉に揺れた。

 ステージから見えるこの景色が、いつも海原のようだと思う。曲に合わせて寄せては引く光。褪せた曇り空の隙間から覗く、虹の向こうの青空へ渡ったら、こんな海が広がっていやしないだろうか。

 青い鳥が歌って、レモン飴の雨が降る。赤く日が射して、緑の草原で寝そべっていたら、やがて紫の夜が来て。

 

 うん、ちゃんと夜が来る方がいいと思う。その方が朝が美しいから。

 

 虹の海の、波飛沫の一つに紗夜ちゃんがいる。きっと、ピンクのサイリウムを振ってくれていると信じているけれど、どの辺の席にいるかは教えてくれなかったから、ぐるりと手を振ってみる。

 

 翼を喪った紗夜ちゃんの傷跡を羅針盤に、雨雲の端まで帆を立てよう。

 

『早速聴いてください、《はなまる◎アンダンテ》』

 

 アンダンテというのは、音楽用語で演奏速度を示す標語らしい。歩くように、緩やかな速度なのだとか。時速4kmじゃ空は飛べないなあ、と思ったりもするけれど、アンダンテという名前には親しみを覚えている。

 アレグロだったら私の気持ちがどこかへ飛んでいってしまいそうだし、聴く人を置いていってしまいそう。分相応、というところなのだろう。

 

 ステージに立つと、心が難しい。

 どういうことかというと、やっぱり私は波間に紗夜ちゃんを探してしまうのだった。ここにいる観客全員のために平等に歌うべきだろう、とは思うのだけども。

 

 それが悪い事だとは、あんまり思っていない。

 どうしたって無理だもの。自分がこの世界でいちばん大切にしたいと選んだ人と、顔も声も知らない無形の誰かを比べたら、前者を愛してしまうに決まっている。

 

 だから、紗夜ちゃんを通して、その向こう側まで届くように歌えばいいのだと考えることにした。

 

 私が励ましたい、支えたいと思っている人たちの代表が紗夜ちゃんなわけで。別に紗夜ちゃんを思い浮かべて歌ったとしても、その先まで心が届いて伸びてゆくのなら問題ないのでは? というある種の開き直り。

 

 紗夜ちゃんが好まなさそうな歌詞、と思いつつ、それでも紗夜ちゃんの心に届くように、めいっぱいの感情を込めて歌う。

 

 紗夜ちゃんの演奏を聴いてから、私はちょっとだけ歌が上手くなった。正確に言うなら、褒められることが増えた。単に抑揚をつけて歌うだけじゃなく、歌に感情の文脈だとか、余白だとか、そういうものを付帯させるすべを覚えた。まだ未熟なところは沢山あるけれど、芸能界というフィールドに立ってしまったからには甘えたことは言ってられない。

 

 込める感情は色々だ。自分の挫折や喪失、苦労したこと、努力したこと、恋をしたこと。舞台に立つ高揚。想いを伝える度胸。日常の小さな幸せ。正の感情が多いけど、一辺倒でもない。スイカに塩理論だ。

 

 紗夜ちゃんのギターに学んだ感情の込め方を、それを失った紗夜ちゃんに見せる。Roseliaのボーカルの方が私よりも上手いし、もしかすると私は、二番煎じの滑稽なことをしているのかもしれないけれど。普段の私が言葉を尽くして紗夜ちゃんの心に触れようとするのと同じに、アイドルとしての私も、紗夜ちゃんの心に寄り添いたい。

 

 日菜ちゃんの軽やかなギターリフが耳元を駆け抜けてゆく。天馬に乗ったような音色は、瞬く間に虹を飛び越えて海原に影を落とす。

 紗夜ちゃんとは真反対で、日菜ちゃんのギターは荒っぽく、悪く言えば大雑把で、そして軽やかだ。それも、翼が生えたような感じではなくて、ジャンプ力が高い感じ。

 

 ドキュメンタリー映像で見た、立派な角のヤギの仲間みたいだ。足場なんてなさそうな、標高うん千メートルの山脈の岩肌をぴょんぴょんとかけ登ってしまって、どんな肉食動物も到達できない切り立った場所までたどり着いてしまう。

 

 そんなことを言ったら、日菜ちゃんは「あのヤギはワシに叩き落とされるんだよ」と言ってケタケタ笑っていたのが記憶に新しい。

 だから翼を生やしたペガサスということにした。

 

 日菜ちゃんいわく、楽しければそれでいいらしい。だからギターに想いを込めるなんてことはなくて、聴いて心地好い音を、曲に合った音を、弾いていて楽しい音を作るだけ、なのだとか。

 アトラクションだよ、と日菜ちゃんは言った。ジェットコースターなら、ワシに振り落とされたりはしない。

 

 突き上げる千聖ちゃんのベースが、時速4キロの船を加速させる。いつだって頼りになる麻弥ちゃんのドラムが舵をとって、イヴちゃんのシャボン玉みたいな音色が私の肩を叩いた。

 

 くるりとターン。ついてくるスポットライトの熱が、私の背中を押す。瞬きする間の刹那の暗闇に紗夜ちゃんの表情が浮かぶ。

 

 ふわりと、精神が身体から離れるような心地がした。三人称視点で歌って踊る自分を眺めているような。

 

 ステージから伸ばした指先が、観客一人一人の視線を集める。見えない糸のように繋がったそこから、感情の渦がうねりながら私の中に入ってくる。

 

 ああ、そうだ。これがアイドルであるということだ。

 

 集まった祈りが私の力になって、丹田から練り上げた感情が喉元を通って羽ばたいていく。

 

 背中に感じる汗も、ステップに切れる息も、煌めきの中に消えてゆく。

 

 ──届け、届け、届け! 

 

 思い切り私欲混じりの歌が、紗夜ちゃんの心に届くことを念じる。

 

 本当は、ちょっとだけ悔しかった。

 初めてのライブ、あんな情けない歌を聴かせて、望めたものじゃないとは思っているんだけど。

 紗夜ちゃんから貰った感想は、紗夜ちゃんに良い感情を与えはしても、決して心に刺さるようなものじゃなかったんだろうと分かってしまうものだったから。

 

 海原を切り裂く船首に脚をかけて、薄明光線のスポットライトに右手を掲げる。

 

 ──本当に眩ませてみせる。

 

 

 暗がりにいる紗夜ちゃんの、明かりに慣れない目を焼き尽くしてしまうくらいの輝きを放つアイドルになる。

 どんよりと滲む胸の澱を、色彩で押し流してしまうような白い光を。

 

 

 オープニング・ナンバーを終えて、本当はMCに入る予定だった。こんなに出だしから最高潮になるとは思っていなかったから。

 

 この熱を冷ましたくない、という思いを、私も、観客も共有していた。高まったボルテージが、弾けきることもなく、冷めることもなく、サイリウムと共にふわふわ浮かんでいる。シャボン玉のように立ち上る感情が、じわじわと会場の空気の中で密度を増していた。

 

 2曲目は『しゅわりん☆どり〜みん』。ちょうどあの日のリベンジになる。

 

 ちらりと振り返ると、日菜ちゃんと目が合った。

 しょうがないなぁ、というように笑った日菜ちゃんが、言葉もなく弦を弾く。唐突なギター・ソロ。船を引っ張ってくれるらしい。

 それに肩を跳ねさせた千聖ちゃんがベースを構えて、麻弥ちゃんのカウントが入る。

 

 1,2,3,──

 

 ──嗚呼、全部はじけてしまいそう。

 

 

 

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