(退院以降から一部抜粋)
7月15日より
今朝、混乱した私が暴れ始めてしまったせいでセリナちゃん共々遅刻しかけてしまいました。移動中に読み込んだ日記には受け入れ難いような親近感が湧くようなふわふわした気持ちです。
7月16日より
学校に行ってみると通りすがりの生徒に心配されてしまいました。そんなに顔色が悪かったでしょうか?次会った際に御礼申しあげなれば行けませんね。…名前を聞きそびれました。亜麻色のツインテールでしょうか…?あまりお洒落には明るくないので自信ありませんが、少なくとも長髪であることは変わりありません。
…不便を感じるので顔と名前をまとめる用のファイルを作っておきました。これから少しづつ更新していきましょう。
7月17日より
セリナちゃんに助けを求めて昨日ご迷惑をおかけしたと思われる生徒を探しました。亜麻色の長髪(?)、同じ人物だと思われる方に先日のお礼とお出掛けの誘いをさせていただきました。
お祈りもしていただき、不思議と心が落ち着きました。
「サクラちゃん!落ち着いて話をしましょう!!」
「いやです!ナギサ様の無事をこの目で確かめなくては〜〜!!」
「ですから!日記には無事だったと書いてあるはずなんですよ!!」
「お願いですから離してください〜!!」
「だ、ダメです!せめてその完全武装をやめてくださいー!!」
早朝、いつも通りの時間にサクラちゃんの部屋に入ると据わった目をしたサクラちゃんが愛銃のショットガンを点検しているところでした。少し前までよく目にしていた"強さを内に秘める何ものも寄せ付けない安定した世界"を映していて、近寄り難い雰囲気に、どこか懐かしさをおぼえました。
「サクラちゃん、おはようございます。」
「…おはようセリナちゃん。」
記憶を失うようになってから通うようになってまだ僅かばりではあるものの、勝手に部屋に入ってきた私を気に留める様子がないサクラちゃんを見のは今日が初めてでした。
そして、此方に一切目もくれず作業に没頭するサクラちゃんを見た私の胸中にはひとつの嫌な予感がありました。
「なぜ、こんな早朝から銃の手入れを?」
「今から連中に仇討ちに行くから調整したくて」
まるで「今日は外で食べるから」と言うような淡白さで、穏やかさの欠片もない回答をされたことにより、後頭部をガツンと殴られたかのような鈍い衝撃を受けました。
「れ、連中というのは…」
「うん、この前の集団と、その元締めを潰しに行くの…ん、これでカンペキ」
「やっぱり…待ってください!その前にこの日記を…」
「日記?それなら後で見るから机にでも置いておいて」
「で、ですが、ナギサ様は無事なんですよ!?」
「……」
「……」
「いくらセリナちゃんの言葉でも、この目で無事を確認しない限りは落ち着けません!!」
「サクラちゃん!落ち着いて話をしましょう!!」
私を躱して部屋を出ようとするサクラちゃんを慌てて抱きつくようにして、対話での説得を試みるけれど、私よりも力の強いサクラちゃんを引き留めて置くことで精一杯です。ちょっと前まで入院していたんですよね!?
結局私は振りほどかれたものの、サクラちゃんも何とか冷静さを取り戻してくれたようで、日記を読み終える頃には始業に間に合うかどうかといった時間になってしまい2人揃って慌てて学校に向かうこととなった。
サクラちゃんの浮かない表情と沈黙は続いたが、サクラちゃんの本気の目を久しぶりに目にした私は、胸からこみ上げる仄昏い感情を無視した。
「あ、あの〜具合が悪そうですが大丈夫ですか?」
「…いえ平気です。ちょっと世界に絶望してるだけですので」
「えぇ…?そ、それは大丈夫なんでしょうか」
「どうでなのでしょう?もうこの先を考えているだけで足下が崩れ去るような気がしてなりません」
「あ、あはは…大変ですね」
「ええ、初登校がまさかの試験期間中で、学園全体がセンシティブになっていて…端的に言うと教室に入るのが怖いです」
「なるほど、確かに皆さんピリついていますよね…教室はどちらですか?」
「確か122教室ですけど…」
「あれ?もしかして同じクラスだったりしますか?」
「えっと…私は1Dですが…」
「あ、でしたら今日使う教室は同じですね。これからよろしくお願いします!」
「はい、よろしくお願いしますね」
サクラちゃんとはじめて会ったのは、去年の夏期テスト期間のちょうど初め頃だったと思います。
廊下で座り込んでいたサクラちゃんが心配になって声を掛けたのが初めての会話でしたね、あの時は体調が悪いのかなって心配でいっぱいでしたが意外と余裕あるみたいで安心したのを覚えてます。
"────────?"
そうですね、ももフレを語っていたら時間が無くなってしまい…結局その日は最後まで自己紹介を忘れていましたから…。
"───、────────"
あ、あはは…当時は忘れられてるのかなってそこそこ落ち込みました…ちゃんと自己紹介しておけば避けられたことですけどね…。
"───────────"
はい、早く目覚めて欲しいですね…かけがえない、大切なお友達ですから…。
"──、──────────?"
あ、あはは…え〜っと…それは…ペロロ様のゲリライベントがあって、つい…。
"───。"
そのことに関してはとっても反省してます。いまになって考えても、あの日欲望に負けた影響は大きかったですし。
結局、本格的に仲良くなれたのは1年生の最後からになって……はぁ。
「サクラちゃん次の試験会場は…あっあそこですね、244教室です」
「でしたら…、此方から向かう方が早そうですね、少々はしたないですがとにかく急ぎましょう」
「はい!気を付けてくださいね」
「大丈夫です…わぷっ」
「言ったそばから…大丈夫ですか?」
「え、ええ…申し訳ございません。お怪我はありませんか?」
「はい、大丈夫ですよ。そちらこそお怪我ありませんか?」
「はい、本当にすみません…」
「もう昼休みが終わるとはいえ、廊下を駆けては危険ですよ?」
「気を付けます!」
「はい、そうしてください。…時間ですのでそろそろ」
「!いけない、準備する時間が無くなってしまいます!」
「はい、どうか平穏な一日でありますよう、願っております」
「あ、ありがとうございます!それでは!いこ、セリナちゃん」
「待ってください!もう走るのはダメですよ!」
行ってしまいましたか、それにしてもあの銀髪の少女…
いえ、恐らく私の見違いなのでしょうか?『
───
次の日、放課後に大聖堂へと向かうと、シスターヒナタと昨日廊下で衝突した少女が話をしているところでした。
「あっ丁度来ました!サクラコ様、この子が、昨日の事をお詫びしたいとの事ですよ」
「あなたは昨日の…」
「はい。その、昨日廊下で…」
「ええ、そうでしたね。お身体は平気でしょうか?」
「…!はい!えっと、すみません…勝手に大聖堂にまでお邪魔してしまって…」
「…?」
「えっと、サクラちゃんはお礼をしたいと言って聖堂まで来ていたのですが、他のシスターに引き止められていまして…代わりに私が用件を聞いていたところでした」
「そういう事でしたか。ですが聖堂は迷える生徒のための場ですから気にやむ必要はありませんよ」
「そう、でしょうか。ありがとうございます」
「ところで自己紹介がまだでしたね、私はシスターフッド所属、2年の歌住サクラコです。困ったことがあれば、どうぞ気軽にお声掛けくださいね」
「私は1年の白秋サクラといいます。先日ご迷惑をお掛けした際のお詫びと御礼をしに伺いました」
「これはご丁寧にありがとうございます。…名前が似ていますね、サクラさんとお呼びしても?」
「はい、呼びやすいように呼んでくだされば」
「ところで、シスターヒナタ」
「はい、どうしましたか?」
「先程倉庫の方で3年生の先輩が困り事があるようにしていましたが」
「ほ、本当ですか!?すぐ向かわなくては…そ、それではサクラちゃんまたお会いしましょう…!」
「はい、ありがとうございました」
わたわたと急いで倉庫の方へ駆け出すシスターヒナタの背を目で追い、彼女が通った扉が音を立てて閉まるまで待つ。すると数秒もないうちに重厚な扉の音が私達の立つ場の空気を揺らす。
彼女に聞きたいことは幾つかあったが、それよりも先に彼女が口を開いた。
「サクラコ先輩、ひとつお願いがあるのですが…」
「はい、なんでしょうか」
「ら、来週の休日、一緒に遊びに出掛けませんか?」
「…はい?」
「私、トリニティに入学してから今までに学園の方と交流を深めた事がないんです。ですから一緒にお出掛けにと…ダメ、でしょうか?」
「あぁ成程…そういうことでしたら構いませんよ」
「…よかった、です」
お願いがある。と、ゆっくりと歩み寄り少し言いづらそうにしながら話す、ただしその声は静寂を律とする聖堂内ですら聞き取ることが困難なほどか細いものでした。私が聞き返すと、サクラさんは少し慌てたように一からの説明と今一度のお誘いをした。
私がその誘いに応じると、サクラさんは頬を紅潮させ藤紫色の瞳を潤ませながら笑う。
その可憐さに思わず見とれてしまい、場に静寂が訪れた。
「えっと…それでは詳しいことはモモトークで相談しましょうか」
「そう…ですね、サクラさんの連絡先を教えてください」
その後、互いの連絡先を交換してから見送りをしてその日は別れることになった。別れる際、振り返る度に朱色が反映される長い銀髪がその日は頭から離れなかった。
…特に意味は無いのですが、そろそろ夏服を見繕う必要がありますね。特に意味は無いですが。
しばらくは【日記+各生徒視点】を基に進めて行きたいです。
本来は日記で表現する日数が倍近くあったのですが、私の文構成の力が貧弱なばかり、書くのを断念せざるを得なくなりました。
書き続けますのでお待ちください。