原神 自分を一般人だと思い込んでいる主人公の兄 作:アリエイルでしょ
スライムを食べたいというパイモンの強い要望にて、万民堂へ向かうことになった。その道中、俺たちはこの璃月に至るまでの道程で常に手を繋いだまま来たという話を2人に話していた。
「―――って感じでモンドから一緒に来たよ」
「えぇっ… 2人ってモンドから璃月港までずーっと手を繋いだまま来たの!?」
「うん。お兄ちゃんが逃げちゃうかもしれないし」
なんかデートみたいな感じで楽しかったとアレな感想を述べる蛍をよそに、俺たち兄妹間のいびつな関係性を知った胡桃は少し引いた目でこちらを見ていた。蛍はともかく俺をそんな目で見ないでくれない? そもそも俺は被害者側なんだが?
「だから逃げないって… もう恥ずかしいからやめない?」
「なんか逃げる逃げないとかじゃなくて、ずっとこうしていたいから嫌」
「このやり取り何回目だよ… 空もいい加減に諦めたらいいのに」
「諦めたらそこで終了なんだよ!」
俺の無駄な抵抗をする姿を見て呆れている様子のパイモン。一番は自分のためではあるが、この反抗はお前と蛍のためでもあるってことを忘れないで欲しいね。
「それにヒルチャールに襲われたときすら手を繋いだままってのは危険すぎるだろ…」
「まあ流石にオイラも戦闘中くらいは手を離した方がいいと思うぞ… この間も危なかっただろ?」
「うーん… 後で考えておくね」
考える余地ある? 普通に危ないでしょ…
これは本当にパイモンの言う通りで、命の危険があるのに手を離さないって冷静に考えてかなりヤバイ。先日の危機は指先から水鉄砲発射し続けることで事なきを得たけど毎回それで解決するとは限らない、が蛍はあまり乗り気ではなさそうだ。
「蛍ってもしかして…ブラコン?」
「ブラコン…」
こうしてブラコンと直接言われたのは蛍も初めてだったのか、少し引っかかっている様子だ。嫌なら距離感を改めて欲しいが。
「堂主は気にし過ぎだ。ただの美しい兄妹愛だろう」
「いやいやいやカップルでもここまではしないって! 鍾離さんってば感性ズレてるよ~」
「それよりも蛍の方がよっぽどズレてるだろ…」
無駄話もそこそこに目的地の万民堂に到着する。しかし…街の外もそうだったけど、知っている情報よりも圧倒的に街中が広い。移動するのも一苦労だと感じるな。
「失礼する。店主よ、5名だが入れるだろうか」
「あぁ大丈夫だ。奥の席へどうぞ」
鍾離が店主に席が空いているかの確認を取っている最中、店に何か違和感を覚えたのか胡桃は辺りを見渡しているようだった。まあ場所的になんとなく予想がつくことではあるが。
「あれ? 香菱が居ないね。いつもならこの時間は必ずといっていいほどお店にいるはずなんだけど」
「ああ、あいつなら昨日辺りからか、グゥオパァーが居ないって言って街中を捜しているみたいだが…」
胡桃のこぼした疑問を聞いていた店主が事情を説明してくれた。どうやら今日も街へ捜索に出ているらしい。
「グゥオパァーが… なんか事件の予感だぞ!」
「またそんな眼鏡かけて… 結構シリアスな話だろ」
「心配だね。あとで私たちも手伝おう」
…話の流れがなんかこう…イベントっぽい感じになってきた気がする。正直俺は観光と挨拶程度のつもりで来たのに…大事になったな。
しかし隣に座る蛍は、案外捜索することに前向きみたいだ。最近あまりのブラコンっぷりに忘れていたけど、本来彼女の本質は友達思いのお人よしのタイプだった。そういえばその精神で何度も国救ってましたね。
「友のためだ。俺も協力しよう」
「え、鍾離さんって香菱とも仲良かったの? 意外~!」
多分友って言うのはグゥオパァーのことだと思うんですけど。今そのことを突っ込むと話が面倒な方向へ行きそうなので黙っておこう。
「…まあ捜索はするとして、午後動くためにもまずは」
「まずは食事にしようぜ! オイラはスライム料理で!」
俺のセリフ取らないでくれない?
因みに香菱のそれとは関係ないどうでもいい話になるけど、今回の昼食について。鍾離が胡桃に持ってきてもらった財布には中身が全く入ってなかったので、代わりに俺たちと胡桃が払うことになった。以上。
「あれ、あそこに居るのって香菱じゃない?」
「そうだね、グゥオパァーは…居ないみたいだね」
昼食を取り店を出たところで落ち込んだ様子の香菱を発見した。彼女は店の前で黄昏れており、その様子を見るに未だ成果なしといったところかな。
「とりあえず声かけてみようぜ! おーい香菱-っ! グゥオパァーについてのことなんだけどー!」
「っ…! 知ってるの!?」
グゥオパァーの名前を聞いた途端、彼女は顔を上げこちらの方に詰め寄ってきた。この感じ、なんか既視感あるねぇ…
最も、俺の知っている方はもっとずっとしょうもないことで反応するし、噛みついてきたりでこっちに危害を加えてくるけど。
「うわぁ! ち、違うぞ! オイラたちも捜す手伝いができたらなって…」
「そ、そっか… ごめんね、大声出して…」
「平気。そもそも今のはパイモンの声の掛け方が悪い」
「おい! そんな言い方ないだろ!」
不当な扱いに対し、手足をばたつかせて抗議をするパイモン。そんないつものパイモン弄りを見て緊張がやや和らいだのか、やつれ気味ではあるが、香菱も薄く笑顔を浮かべている。可愛いね。
「それだけ彼女も心配しているということなのだろう」
「私たちも協力するよ~ 香菱が元気ないとからかい甲斐がないからね」
鍾離はともかく、胡桃は意外にもやる気の様だ。その理由はともあれ案外根はまともなのかもしれない。個人的に困っている香菱を見て笑うタイプかと勝手に思ってたけど、流石に今回の状況は笑える状況ではないか…
「あ、ありがとう胡桃… 蛍もありがとうね」
「絶対見つけるから安心して。あとついでだけど隣のこれ、私のお兄ちゃんの空。よろしくね」
蛍に手を引かれて身体を前に出される。そのままの流れで紹介されたのはいいが…この状況ですることなのか、とも思う。いや自己紹介くらいはするけども。
「あまりにも紹介が雑過ぎる… 空です、よろしく。蛍が世話になってる分、ここで恩返しさせてくれ」
「お兄さんもありがとう! アタシは香菱、よろしくね」
「うん、よろしく。それでグゥオパァーが居ないことに気がついたときのことを詳しく教えて欲しいんだけど――」
それから彼女から簡単に現在の状況の説明を教えてもらった。グゥオパァーについては2日前くらいから姿が見えないと思っており、昨日も全く行方がわからず心配になり捜し始めたとのこと。これまでに捜したのは東側方面で港付近はまだ手を付けられてないという。
「だったら一先ず西の方も捜してみるべきだな! 後は…街の外も一応行った方がいいのか?」
「まずは目撃情報を捜すとかじゃない? 手分けして早いとこ見つけよう」
蛍とパイモンは冒険者としての活動でこの手の依頼は数をこなしてきたのか、手慣れた様子で方針を定めている。まあこの2人にかかれば近いうちに見つかることだろう。
え、俺? あぁ俺はペットなんで付いていくだけですね。ペットらしく嗅覚を活かせたらいいなって思ってるよ。
自己紹介だらけの小説ってのもアレなんでこういう話も混ぜていく所存