原神 自分を一般人だと思い込んでいる主人公の兄 作:アリエイルでしょ
「じゃあ私と香菱は港側に行ってみるね~」
「うん。こっちは任せて」
手を振り2人を見送る。班分けは俺たちと鍾離、胡桃と香菱の二手に分かれてグゥオパァーの捜索を本格的に開始する。人数的に鍾離は向こうの方がいいような気もしたけど…なんかこっちについてきた。
「…そういえば鍾離ってグゥオパァーと既知の仲なんでしょ? なんかこう気配的なのって追えないのか?」
「……端的に言えば難しい。あいつは力の大半を失っているからな」
「それならゆっくり捜していくしかないか。まずは聞き込みだね」
早速聞き込みを開始するために場所を移動する。 …しかし移動中、嫌でも視界に入る俺の手配書。いくらなんでも多すぎる… 気が滅入るぞ。
「こんな時に言うのもアレだけど、なんか至る所に俺の捜索願が貼られてて流石に気になる… ていうか多すぎ」
「言われてみればその通りだな。少し散歩に出れば必ず複数は目に入る程度に貼られている。お前のことも街中の人に浸透しているだろうな」
「いい気はしないなぁ…」
「そういえば蛍が凝光に無理言って街中に大量に貼って貰ってたな」
国を救ったお礼だっていうのに、なんて対価を要求してるんだこいつ… わかってはいたけど執着が怖いよ。
「後で見つかったから剥がしておいてって凝光に言いに行こうね」
それはいいね、少しやる気出てきた!
暫く適当に人が集まりそうなところで話を聞いて回るも、グゥオパァーについては知っているが最近は見ていないといった程度の話で有力な情報は特に集まらない。ペットの俺がやる気を出しても大して役には立たないらしい。
「うーん… そこらの人にあらかた聞いたけど全然わからないぞ。やっぱり夜に酒場とかで聞いた方がいいんじゃないか?」
「その方が効率的だけど、早く見つけたいし」
「ならば店員に話を聞いてみればいい。この時間ならもう準備を始めているだろう」
「じゃあそれで。 …三杯酔とかに行けばいいかな」
元々居た万民堂付近まで戻ったところで店舗の裏側にこの酒場の店員として働いている従業員を発見。グゥオパァーについて何か知らないかを聞いてみることに。
「あ、あれですかね… 確か前の月逐い祭の後くらいにグゥオパァーは元々魔神だったという話を聞いたってお客様が大きな声で言っていたのは覚えてます」
「そんなことを酒場で大声… 知ってるやつは意外と多いかもしれない?」
「げ、当時のオイラたちの話を聞いてたやつが居て、そいつらが何か企んでるって感じか?」
結局店員側もそれ以外には思い当たる節もないみたいで、誰が怪しいとかはわからないとのことだ。
それにしても、なんか話がドンドン面倒なことになってきてる…。 もう適当に犯人出てきてもらってボコボコにするフェーズに入ってほしいところなんですけど…
「すみません、これくらいしかわからなくて…」
「いや、ありがとう。もう少し捜してみる」
「あいつの元魔神という部分に何かしらの価値を見出してる者が居るのかもしれないな」
「元魔神って情報が知られてるって考えると、失踪したというより誘拐されたーって線の方が濃そうだな!」
店員と別れ、皆で意見をまとめるが、やはり失踪よりは誘拐の方があり得そうだという話になった。まあ確かに、街の人に認知されてるマスコットみたいなやつが忽然と失踪するのは違和感がある。
「魔神の誘拐とか企むのってどうせファデュイでしょ。その辺で適当に捕まえて叩きのめしてみる?」
そんな中、蛍から唐突に出た突飛な発想に思わず吹き出しそうになる。内容自体はあながち間違いとも言い切れないが酷い偏見だ。すぐに叩きのめすという回答が出てくる思考回路に恐怖を覚えるが…これに関してはファデュイ側の自業自得なところもあるか…
「いやいや、態々叩きのめさなくていいでしょ… 普通に話せる相手なら暴力に訴えかけないでくれ」
「でもあいつら大半が悪いやつだし、やっちゃって良くない?」
無論、蛍の言う通りではある。いいやつの方が少ないし、このテイワットの悪事には大体彼らが絡んでいるといってもいいが、街中で暴力行為は普通にアウトだ。というか俺が関わりたくない。
「良くない。パイモンも鍾離先生もなんとか言ってやってくれ!」
「まぁいつもは向こうから喧嘩売ってくる訳だし、たまにはオイラたちから殴りかかってもいいんじゃないか?」
「ふむ、しかし叩きのめすのは確証を得てからの方がいいだろう」
「そうじゃねぇだろ。 …とにかく下手に喧嘩を売るなよ。お前は有名人でもあるんだか――」
「私のことをお前って呼ばないで」
俺の話聞いてる? 論点が合わない。
とはいえ理解はしてくれたのか、ファデュイをボコボコにする件については一応考え直してくれたみたいだ。
しかし…パイモンはともかく鍾離も乗ってくるのは想定外だった。天然か、案外ネタがわかる人、もとい神なのか… 正直これはどちらのケースでも面白いからいっか。
「ファデュイが駄目なら… あ、じゃあ千岩軍に話を聞こうぜ! 誘拐なんて物騒なこと考えてる奴なんて大体目を着けられてるだろ?」
「んー… 手詰まりだしそれでいっか」
「しかし誘拐とは…何やら大事になってきたな。あいつも無事だと良いが」
捜し方が雑になりつつあるが、国の軍部に確認するのはいい手段だと思う。やっぱこういうのは本職に聞くべきだよ。
善は急げと千岩軍の駐屯地に移動するも、何やら慌ただしい様子だ。誰かが軍に対して話…というか抗議をしているのか。
「聞いているかしら? そこに勝手に居座ってる連中が居て仕事が進まないのよ! あなた達が動かないなら私が直接取り締まるから…」
「こ、刻晴様…どうかご自愛を…、奴らについては我々もマークしているのですが、如何せんまだ詳細な数などの情報が集まっておらず…」
「昨日も同じことを言っていたじゃない、もう私が行った方が早いわ!」
「いけません! 璃月七星のあなた様に何かあれば国の一大事に…」
「私なら問題ないわ! そもそもあなた達の動きが遅いことが原因で―――」
何やら揉めている人物は璃月七星、玉衡の刻晴の様だ。ここには来たばかりなので事情は全く知らないけど、人物像的に多分仕事関係で文句を言ってるのだと推測できる。なんかその辺だけ切り取ると凄く関わりたくない人物に聞こえるな。
「あ、刻晴だ。なんかこう…怒ってるなアイツ」
「仕事の邪魔されてるんでしょ。それで軍と揉めてるみたいだけど…なに話してるんだろ」
「折角だからちょっと聞いてみようぜ、ついでに空の挨拶も済ませちゃおう」
「この状況で自己紹介とか割と嫌なんだけど…」
若干ヒステリックなのかな… そう思い、横に居る蛍に聞いてみるも、そう感じたことはないと返ってきた。それはね、蛍自身が彼女と割と近しい感性の持ち主だからそう感じたんだと、俺は思うよ。
「おーい刻晴ー! なに話してるんだー?」
「君たち…なんでここに――って鍾離先生はともかく、隣の彼は誰?」
なんだこの… 敵意を持った視線。例えるなら親しい友人に胡散臭い彼氏ができて、それを値踏みしてるような感じで見られてる…気がする。ソースはエウルアと会ったときの経験。早めに誤解は解きたい。
「私のお兄ちゃん。よろしくね」
「どうも、空です。この繋いでる手はあくまで妹からの要望であって、俺は寧ろ拒否してる側ということだけは知っておいて欲しいかな」
「その嫌々みたいな反応はやめて。噛むよ?」
「か、噛む………なるほど、前からお兄さんを異様に心配していることは知っていたけれど、そういう… まあ一先ずそれはいいわ、私は玉衡の刻晴。よろしくね」
異様な心配、というところで捜索願という名の大量のポスターが脳裏に浮かぶ。その存在によってたった今、俺の名誉は守られた。しかし個人情報と引き換えに守られた名誉…無論、嬉しくはない。
そんなこんなで簡単な挨拶も済み、頃合いと見た鍾離が刻晴に対して皆が思っていたであろう疑問をぶつける。
「して、玉衡ともあろう御方が何故直接ここに? それもかなり揉めているみたいだったが」
「…別に隠す様なことでもないわ。簡潔に説明すると、管理している土地に勝手に居座っている連中が居て、仕事が滞っているってだけよ」
そのまま説明を続ける刻晴。まとめると千岩軍にその集団への調査及び、取り締まりを依頼したはいいが、動きが遅くて仕事に支障をきたす恐れがあるから自分に行かせろと言いに来たとのことだった。
あまりにもフッ軽過ぎるだろ。
「そうか。それはいつ頃からの話だ?」
「2日も前よ! これだけの時間があって取り締まるどころか、まだ具体的な数もわかってないって言うし…動きが遅すぎるわ」
「「「2日"も"…?」」」
これには俺も蛍もパイモンも引っかかる。鍾離は気にしていないみたいだけど、この人はちょっと特殊だから…。普通2日は短いと思うよ。
「ええ、相手が勝手に拠点にしている場所もわかっているのに、何故これ程時間が掛かるのか…理解に苦しむわ」
怖い。蛍とは別ベクトルで怖い… 先ほどから気まずそうに黙っている兵士たちを見て同情してしまう。彼女の部下がすぐに辞めてしまう原因を垣間見たな。
しかし2日前か。2日前って言えばグゥオパァーが居なくなった日って香菱が言っていた。偶然…じゃないと良いな。いや良いって言い方はアレだけど、こいつら捕まえて終わるならそれがいい。
「…刻晴の時間に対する価値観は置いておいて、今までで一番怪しいよね」
「おう! ようやく前進って感じだな!」
「まだ確証はないが… その連中が犯人である可能性もある。逃す手はないな」
「犯人? なんの話かしら… でも君たちが手伝ってくれるのなら、軍からの反対意見もなくなるでしょうし、ありがたいわ」
「あー… 詳しくはあとで説明するよ。まずは香菱と胡桃にもこのことを伝える必要があるかな」
話が進んだことに安堵を安堵を覚えるが、辺りはもう暗くなりつつある。実際に向かうのは明日になるか?
いや、そうなると刻晴が怒るかもしれないような…いや流石にそんなことはない、か? ないといいな。
単純に遊んでた。あと風邪。失踪予定は一応今のところないです。