原神 自分を一般人だと思い込んでいる主人公の兄 作:アリエイルでしょ
時刻は早朝。いつもより早く起床し、皆で朝食を簡単に済ませて鍾離の元へと向かっていた。いつも通り蛍に監視されながら眠り、蛍に監視されながら起床…眠れた気はあまりしない。
「む… お前たちか、おはよう。しかし随分と早いな、まだ早旦だが…むしろ丁度良いタイミングか」
「おはよう鍾離…」
塵歌壺から出てきた俺たちに向かって朝の挨拶をする鍾離。
夜通し起きて宝盗団たちを監視していたにも関わらず、彼は疲れの一つも見せていない。神なのでこの程度当然といえば当然だが、只人としては違和感があるか… 欠伸の一つでもした方が良いと後で伝えておこう。
「丁度いいってなんだ? 何か準備してたのか?」
「ああ、お前たちが起きてくる頃に茶を振舞えるよう、6時間程前から準備していた。眠気覚ましに飲むといい」
「お、おう… 6時間も前からやってたのか… ていうかそもそもお茶ってそんなに時間かけるところあるか?」
「ありがとう鍾離」
パイモンの真っ当な疑問は放っておき、鍾離から受け取ったお茶を一息に飲下す。普通に美味しい、これが神の淹れたお茶か… 普通に眠かったから助かる。
「ありがとう鍾離先生。本来は私がやるべきことだったのに見ていてもらって…」
「昨日も言ったが気に病む必要はない。俺たちはこの後、ただ璃月へ帰るだけだが… 君はそうはいかないだろう」
「…そうね、後は私に任せて頂戴。あなた達もありがとう。先にグゥオパァーを連れて香菱の元へ戻っていて大丈夫よ」
「え、そりゃ早く香菱に会わせてやりたいけど… いいのか? オイラたちで先に戻っちまって」
構わないわ、と刻晴は手を軽く振って答える。
「この後は仙岩軍の到着を待って彼らに宝盗団たちを引き渡すだけだもの。皆で待つ程のことでもないし、それに再会は早い方が良いに決まってるわ」
「そういうことなら… ほら行こう。鍾離も」
「ああ… では刻晴殿、後は任せる。こちらは任せてくれ」
「ええ、今回のことは本当に助かったわ。後でこの事件の背景についても教えるわ、お礼はその時にさせてもらってもいいかしら」
「うん」
事件の背景… そういえばこいつらのリーダーみたいなやつが誰かと連絡がどうこうみたいな話をしていたっけ。ま、どうせファデュイだと思うけど。
「それじゃ、また今度ね」
「そうね、また会いましょう」
「~!♪」
刻晴に別れを告げ璃月へ向かって移動を始める。来た時と同じくらい時間が掛かるとしたら到着は夕方くらいになるか。 …遠くね?
帰路の途中何度か小休憩も挟みながらも璃月へと帰還する。またもや結構な距離を歩いたけど当然、身体的な疲労はあまりない。
道中、鍾離とグゥオパァーは会話できているのか、できていないのか良くわからないやり取りをしていたが、2人とも? 2柱とも? 楽しそうに過ごしていたと思う。
「ようやく着いた… 途中何事もなくてよかった」
「行きと比較して少し到着が遅れただろうか。日も近いうちに沈むだろう。…香菱や堂主がすぐに見つかればいいのだが」
「だね、とりあえず万民堂の方に…」
「~♪」
「うわ! グゥオパァーが急に歩き出して… ど、どうしたんだ!?」
こちらの話をまとめる暇もなくグゥオパァーが移動を始める。向かう方角は万民堂がある方とは反対方面だがグゥオパァーは迷うことなく歩みを進めていく。
「どうしたんだろ。万民堂なら向こう側なのに」
「見つけたのだろう。…ついていけばわかるさ」
「香菱の元に向かってるってことか?」
上機嫌に歩くグゥオパァーに続いて俺たちも移動する。この広い璃月でおそらく今もグゥオパァーを捜しまわっている2人を見つけるのは難しい、それなら戻ってくるであろう場所で待つのが得策…と考えていたがどうやらその必要はなさそうだ。その証拠に――
「! ~♪」
「嘘… グゥオパァー!?」
「おおっ! ついに発見!!」
――2人はすぐに見つかった。…前に蛍とはぐれた時、もしかしたら蛍もこんな感じで見つけたのだろうか。そう考えると感動より畏怖の念を抱くかな… なんて、この状況で考えることでもないか。
グゥオパァーはそのまま香菱の元まで向かい、普段と変わらず首を傾げている。
「~?~♪」
「心配したんだからっ… でも…無事で良かった…!」
「感動的な再会だね。…まあ実際はぐれないことが一番だけど」
「それをこっち見ながら言うのやめてくんない?」
無事再会できた喜びか、感極まって涙を浮かべながらグゥオパァーを抱きしめる香菱。そんないい雰囲気に水を差すかのように蛍からは謎のプレッシャーを掛けられる。この子結構引きずるよね… はいはい、悪かったって…反省してまーす。
呆けている俺たちに代わり、鍾離がこちらがどういった状況だったのかを簡単に説明する。
「今回の件、予想通り賊に誘拐されていたようだ。何故狙われたのかといった事件の詳細は今後、刻晴殿から追って明かされるだろう」
「本当にありがとう鍾離さん、蛍たちも! そうだ、刻晴にもお礼をしなきゃ!」
「気にするな、友として当然のことをしたまでだ」
「よかったね香菱」
「えーっ!? ねぇねぇ私は?私は!? 私だってここ最近ずーっと一緒に捜してたよっ! 私もお礼の言葉欲しいなーっ!」
胡桃は軽く頬を膨らませながら自らの働きを主張する。
むー、と唸り声を溢して香菱の近くで食い下がり続けている。あの調子ではきっと言ってもらえるまで続けるのだろう。香菱はそんな胡桃に苦笑し、彼女の手を両手で握る。
「勿論胡桃にも感謝してるよ! 一緒にグゥオパァーを捜してくれてありがとね! …1人だときっと心細かったからさ、隣に居てくれて助かったよ」
「…! ……えへへへ! どういたしまして! いやー、いいことすると気持ちが良いもんだね!」
香菱は胡桃に対し感謝の意を伝え、手を取り合って互いに笑顔を浮かべている。んー…尊いね。
「…痛いから手を握りつぶそうとしないでくれ、そもそも何もしてないだろ」
「2人を見る目が不純に見えたから。そういうのやめて」
「…………美しい友情って思っただけだよ。他意はない、はず」
妹に見透かされている中、香菱が礼としてこれから夕食を振舞うという話をしていた。もうそんな時間かと思い、空を見上げると既に月が昇っており、日は完全に落ちきっていた。
璃月に来てから早3日… なんだかんだで到着してから動きっぱなしだ。そろそろゆっくり過ごしたいな。