原神 自分を一般人だと思い込んでいる主人公の兄   作:アリエイルでしょ

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連日の投稿は古戦場からの逃避ともいえる。


お礼参り-稲妻編-2

『生きて』

 

『姉さん……!』

 

 剣は折れ、炎が村を包む。

 

 憎悪だけが胸に残った。

 

(強くなる)

 

(そして、必ず討つ)

 

 少年はただ一人、燃え落ちる故郷を背に歩き始

 

―――

 

 

「つまらぬ」

 

「え、あの…編集長、それでもこの作品が読者のアンケートでは最上位に…」

 

「ま…そうであろうな。別段悪くない世界観、即座に掴める主人公のキャラクター像もまあ良い。復讐が題材というのはわかりやすくて物語にも入りやすい」

 

 

 多少は期待しておったが… と手にした物語を投げ捨て、小さくため息を吐く。

 

 

 個人的な退屈しのぎも兼ねた新作品の発掘として、八重堂にて一般公募から集まった作品からアンケート上位のものを出版する。という企画を行ったが…どうにもこの企画は失敗となるらしい。

 

 期待していた分、失望も大きいと感じる。余計に退屈を実感してしまうことになるとは…妾も実に運がないものだ。

 

 

「実際、数ある作品の中では一番マシではあるが…」

 

「であれば速やかに添削を行い、作者と方向性のすり合わせを――」

 

「やらぬ」

 

「え?」

 

「駄目じゃ。これは連載させぬ、もう決めた。覆す気はない」

 

「そんな! 公募からの作品が出版されないとなれば読者からの批判は避けられないですよ!」

 

「それはわかっておる…が、なんか嫌じゃ」

 

「なんかって…そんな理由じゃ読者は納得しないかと思いますが…」

 

「所詮創作は創作。真に面白いものは――」

 

 

 

「…宵宮と会ったあたりから手、ずっと痛いんだけど…いい加減少し力弱めてくれない?」

 

「鼻の下を伸ばしてだらしない姿を見せるくらいなら痛がっている姿の方がまだマシだと思う」

 

「伸ばしてないし…それに苦悶の表情を浮かべてる奴がマシなわけないだろ。 なあパイモン?」

 

「ん? まあそうだなぁ…」

 

「はいパイモンこれあげる」

 

「んんぐんぐ!? ………いや、オイラは蛍の味方だしなぁ…別にそのままでもいいんじゃないか?」

 

「いや、団子牛乳で買収されてんじゃねぇよ」

 

 

 

「―ああやって現実で、唐突に訪れたりするものよ」

 

「は、はぁ…」

 

 あれは旅人…蛍とパイモン。もう1人居るのは……おそらく、童の兄か。

ふむ、これは中々…久しぶりに楽しめるかも知れぬな

 

 

「暇を貰う。しばらくな」

 

「へ、編集長!? ど、どちらに!? いつまでですか!?」

 

 

 無論、気が済むまでに決まっているではないか

 

 

―――

 

 

「…とりあえず将軍に…か、ぶっちゃけ会うのはかなり難しそうに思えるけど…会えるもんなの?」

 

「今まで意外と会えてたし…多分平気じゃないかな」

 

 

 蛍はそうは言うが、ぷー太郎の風神や一般人と化した岩神とは異なり雷神の彼女は正真正銘、国で一番偉い人だ。間違いなくとりあえずで会える人ではない。おそらく七神の中でも会いにくい方だろうしね。

 

 

「まあ、それがわからないから早めに確認するんだろ? とりあえずアポを取りに行くって感じだ!」

 

「もしくはアポ取りのアポ取り」

 

「なんだそれ。言い回しがアホっぽいな…」

 

 

 アポのアポってなんだややこしい。とにかく、雷電将軍へ繋がる人物へ謁見したいという旨を伝える、というだけの話だ。

 稲妻在住の友人たちに会いに行く前に済ませておいた方が効率的で予定も組みやすく、礼儀としても良いものだろう。

 そもそも立場的にサクッと会えるものないし、話を通しておいて後日の相手の都合の良い日に出直すというのはよくある普通の話だしね。

 

 

「大丈夫大丈夫、当てなら割とあるから」

 

 

 他には綾華に綾人…後は神子とかね。つらつらと蛍は幕府の要人や彼女に近づけるだけの地位や力を持った人物の名を挙げていく。つ…強い、流石の人脈といったところか。

 

 

「それで、まず最初の当てっていうのが天領奉行ってことか」

 

 

 天領奉行…となると大方、九条裟羅に顔を繋いでもらおうって話だろう。確か彼女自身も結構な地位の人物であり、会えるか不明だからアポのアポって話をしていたのかな。

 

 

「貼紙と一緒に裟羅にお願いするんだな!」

 

「うん、それに城下にあるしね。あ、そこの人…裟羅っている? 居るなら旅人の蛍たちが来たって伝えて欲しいんだけど」

 

「あ、ああ…少し待っていてくれ」

 

「……なんか蛍、怖がられてない?」

 

「前に蛍がボコボコにしたことがある兵士だったんじゃないか?」

 

 

 ほら前のメカジキ隊の時とか~という話をするパイモン。

 

 

「うーん…覚えてないなぁ」

 

「加害者は覚えてない的なやつか」

 

「えー…そんな言い方しなくてもよくない?」

 

 

 おそらく数えきれないほど色々な奴らをしばいて来た旅人だ、面構えが違う。

 そもそも関わりある友人たち以外の顔はあまり記憶に残らないものなんだろう。俺も兵士の人とかは不思議と全員同じ顔に見えるしね。

 

 

「久しいな。いつの間にか稲妻に来ていたのか」

 

 

 そんな過去を振り返るような雑談をしつつ兵士が戻ってくるのを待っていると、九条裟羅が直接こちらに来てくれたようだ、可愛い。…とりあえず接触に成功したということで、アポ取りのアポ取りは不要になったかな。

 

 

「来たのはついさっきだよ。裟羅も元気してた?」

 

「それなりにな、お前たちも息災そうでなによりだ。……それで先ほどから隣に居る者がずっとお前の捜していたーー」

 

「うん、これお兄ちゃんの空。モンドでフラフラしてたのを捕まえたんだ」

 

「フラフラ…そうか」

 

「これ…」

 

 

 裟羅の発言に被せるように俺を紹介する蛍。フラフラしてたとかいう後半の補足いる? やや悪意の混じった紹介で、若干彼女の視線が冷たくなったのは気がする、個人的には勘違いだと思いたい。

 

 それになんかこう、再会おめでとう的な祝福ムードでもなさそうだ。蛍の紹介について多少文句はあるけど…とりあえずだんまりしているのは悪印象か。これ以上評価が下がらないうちに手早く自己紹介を済ませてしまおう。

 

 

「妹が世話になってます。兄の空です、よろしくね」

 

「ああ、よろしく頼む。 しかし世話か… 私は別に大した事はしていないがな。せいぜい頼まれてお前のことを捜索していたくらいだ」

 

 

 ……世話になってたのは俺かぁ。たしかになぁ。

 バッサリと正論で斬りつけられて俺は自己紹介を終えた。確かに、今思えば西風騎士団も千岩軍にもお世話になってるのは俺の方だったね。なんだか情けないな…情けないことばっかりだな、俺は…いやいかん、卑屈になるな。俺は別に悪いことは何もしていないだろう。

 

 

「なあ、忘れないうちに空のやつも裟羅にお願いしておかないか?」

 

「ん? …あ、そうだね。ねえ裟羅、お兄ちゃんが見つかったことだし、捜索の貼紙って撤去できる?」

 

 

 訪れた先々での恒例行事と化している俺の捜索願の撤去。本来、双子って片割れのことをここまで執拗に捜してはいない気がするんだけど…いや、してたっけか?

 

 

「構わない、後で通達しておこう。この件が訪ねてきた主な用件か? てっきり私は…」

 

「いや、これはついでだよ。本題は裟羅に紹介したかったっていうのと、影…将軍に面会できないか確認したくて来たんだ」

 

「将軍様に? そうか、それで…」

 

 

 ついで扱いされた俺の捜索願はさておき、本題である雷電将軍に会えないかアポ取りを九条裟羅へと確認する蛍。

 この話は流石に即答出来る内容ではないのか、少し考える仕草を見せている。

 

 

「しばらくは稲妻に滞在する予定だからどこかのタイミングで会えたらなって思うんだけど…どう?」

 

 

 無難な落とし所としてまた今度返答を貰おうと提案する蛍だったが、直後の裟羅の言葉は俺たちの想像とは違うものだった。

 

 

「いや問題ない。実は将軍様からお前たちが訪ねてくることがあれば、すぐ通す様に仰せつかっていてな」

 

「ええ!? そうだったのか?」

 

「ああ、お前たちもそれを聞き及んでいて、そのために来たのかと考えたが…どうやら違うみたいだな」

 

 

 続く裟羅から語られた雷電将軍の発言に対して皆驚きの表情を浮かべる。

 アポ取りのつもりが今日、なんならこの後すぐ会えるというなんとも予想外の回答が返ってきた。

 

 

「確か前に会った時も暇で外に出てきたって言ってたし…案外暇を持て余してるのかもしれないな!」

 

「暇などと何を馬鹿なことを…将軍様は崇高な考えをお持ちのお方だ。こうしてお前たちが来ることを予期していたに違いないだろう」

 

「ええっと… まあ、その可能性も…あるか?」

 

「そんなの俺が知る訳ないでしょ」

 

 

 多分、雷神何も考えてないと思うよ。などと考えてしまうが、将軍を崇拝する彼女の前でそんな不敬なことは到底口には出せない。ただでさえ俺は妹を放置してフラフラしてたやつという認識なんだ、余計なことを話して評価を落とすわけにはいかない。それに、本当に来訪を予期していた可能性だってあるしね。

 

 

「まあいい、お前たちの予定がこの後特に問題ない、というのならこのまま城まで向かってしまおうと思うが…大丈夫か?」

 

「うん。時間には余裕もあるし行こっか」

 

「だな!」

 

「わかった、ならこのまま向かうとしよう。私に着いてきてくれ」

 

 

 稲妻城へと歩き出す裟羅の後ろを3人で着いていく。それにしても即日で謁見が叶うとは…幸先がいいな。




2年近く放置したのに見てもらえて感想まで頂き、感謝しかないよ〜ん
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