原神 自分を一般人だと思い込んでいる主人公の兄   作:アリエイルでしょ

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熱は熱いうちに…


お礼参り-稲妻編-3

 裟羅に連れられて稲妻城内を歩くこと暫く、ようやく雷電将軍の待つ部屋、天守閣に到着する。

 襖を開く前に彼女はこちらに振り返り釘を刺すように語りかけてきた。

 

 

「将軍様はこの先に居られる。態々言わずともわかっているとは思うが、無礼なことはするなよ」

 

 

 ぶっちゃけ彼女(雷神)には絶対に聞いておきたいことも特にないので、最悪黙っていれば大丈夫かな。

 

 

「言われてるよパイモン」

 

「なんでオイラだけなんだよっ!」

 

 

 いつも通り蛍からバカにされているパイモン。あんまりな対応だが理不尽に煽られている方がパイモンも輝いて見える、不思議だね。

 

 

「将軍様、旅人たちをお連れしました」

 

「入って下さい」

 

 

 雷電将軍の言葉が聞こえると裟羅はゆっくりと襖を開いた。

 

 

「ご苦労様です、では下がりなさい」

 

「はっ…では将軍様、私はこれにて退室します。…外で待っているぞ」

 

 

 そう短くこちらに伝えると裟羅は素早く退室していった。

 

 

「久しぶり。将軍も元気だった?」

 

「わたしには好調も不調もありません。至って平常、つまりはいつも通りです」

 

 

 影は出てきていないのか、ロボットである雷電将軍が無表情でお出迎えしてくれる。…うん、これはこれで普通にアリ。

 

 

「…まあ見たところ元気そうだなっ!」

 

「なら良かった。将軍にも紹介するね。これが私のお兄ちゃん」

 

 

 繋がれた手を掲げ、空いた手で指を指されながら紹介される。

 先程の裟羅の時といい、紹介の方法が これ という感じでモノ扱いになってきている。

 そろそろ本格的に抗議した方がいいかもしれないか…?

 

 

「初めまして、兄の空です。妹がお世話になってます」

 

 

 蛍への文句はさて置き、一旦は目の前の将軍にお辞儀をして挨拶をする。

 本当にお世話になっているのかは知らないけどね。

 

 

「はいっ、初めましてですね。ご兄妹で再会できたようで良かったです」

 

「…ん?」

 

 

 挨拶をしていたら脈絡なく無表情の将軍モードから雷神バアルの影モードに切り替わっていた。ノーモーション切り替えですか…

 

 

「あれ、この感じは影か? いきなり代わるなんて将軍も驚いてるんじゃないか?」

 

「…細かいことはいいんです、今は再会を喜びましょうか」

 

 

 パイモンから突っ込まれるも強引に誤魔化す影。

 どうやら特に深いことを考えず、彼女は出てきたらしい。

 

 

「あなたたちのお話も沢山聞きたいところですが、部屋の外に裟羅を待たせてしまっているので…こちらでお話ししましょうか」

 

「ーーーッ!?」

 

 

 影がそう言うと同時に意識だけが別の空間に取り込まれるような、何とも言えない感覚が身体を襲う。

 …これが彼女の精神世界、一心浄土か。

 

 

「うわっ!? いきなりでびっくりしたぞ…」

 

「ちょっとお兄ちゃん! 勝手に手を離さないで!!」

 

「滅茶苦茶なこと言ってるな…どう考えても不可抗力なんだけど」

 

 

 一心浄土に誘われてすぐ。いつもより少し離れた位置にいる蛍からの苦情が届く。

 別に意図的に手を離したわけじゃないし、そもそも精神世界で手を離すってなんだよ。

 理不尽に文句を言いつつ駆け寄ってきた蛍の手を取り、再度手を繋ぎ直す。

 これで良し。

 

 

「ここも懐かしいな。入るのは凄い久しぶりかもだぞ」

 

「ここでなら、時間を気にする必要もありません。あなたたちのお話しを沢山聞けますね」

 

「そんなに話すこともないけど、とりあえずお兄ちゃんが見つかったから紹介しに来たというか…」

 

「いやいや、俺のことだけじゃなくて…スメールとかフォンテーヌでの話をした方がいいんじゃない?」

 

「ん…強いていえば草神と水神に会ったことかな? 後はどっちの国にもファデュイが居たよ」

 

 

 国を2つも跨いだというのにそこで起きた事件やら出来事は詳しく説明せず、神に会った、ファデュイが居たという2点だけ話し、簡潔すぎるまとめ方で彼女は旅の話を終えた。普通もっとこう、あるだろ。

 

 

「それよりもお兄ちゃんのことだよ。スメールでもフォンテーヌでもずっと探してたんだけど、ようやく見つかったんだ」

 

「おめでとうございます。やはり家族と一緒に居られるということは、とても素晴らしいことですから…」

 

 

 まあ、そういわれると否定はできないんだが。扱いがね…

 

 

「稲妻でもあれから国内で捜索を続けていましたが、空さんはその2つの国のどちらかに居たのでしょうか」

 

「いや俺はーー」

 

「モンドで西風騎士団に拾われてたみたい」

 

 

 灯台下暗しだよなぁ…とパイモンがぼやくのが聞こえてくる。

 いや、ね? 別に隠れてたわけじゃないよ?

 ただ目覚めたのが偶然モンドであり、そしてそのタイミングが蛍たちがフォンテーヌに居る時だっただけだ。

 現に目覚めた後はその日のうちに捕まったわけだしね。

 

 テイワットに降臨? した日のことを思い出しながら頭の中で言い訳を募らせる。

 なんでそこにいたのかとか、それまでどうしてたのか、なんてものは自分にもわかっていないことだ。

 そうだ。そういった記憶について、ウェンティや鍾離に相談したように彼女にも訊ねてみても良いかもしれない。

 

 

「えっと…風神や岩神に聞いたことを、雷神である君にも聞いてみたいんだけど…いいかな?」

 

「勿論です、なんでも聞いてください」

 

「お兄ちゃんってば、また記憶について聞くの?」

 

「まだその記憶のやつ気にしてたのか…正直、影が知ってるとは思えないぞ…」

 

 

 俺にも影にもややノンデリなパイモンを無視しつつ、自身の記憶についての話をし、摩耗や缶詰知識といった外的要因での記憶の混濁についてを彼女に聞いてみることにした。

 なんやかんやで彼女は放浪者や雷電将軍を作り上げた技術者だ。何か少しでも手掛かりを持っているのではないかと期待していたがーー

 

 

・缶詰知識について

「かんづめちしき…? 知りませんね…なんでしょう、缶詰の中に教本でも入っているのでしょうか?」

 

・別の記憶による記憶の混濁ついて

「記憶の混濁…ですか。すみません、わかりません…そもそもとても短期間に沢山のことを覚えると、元々覚えていたことを忘れてしまうものなのでしょうか……?」

 

・摩耗

「記憶の摩耗ならわかりますが、数年程度では何も変わらないかと。その期間の場合はおそらく外的要因があってのことだと思います…なのでその、よくわかりません」

 

 

 彼女から返ってきた内容は簡単に言えば全部わからないというような内容だった。

 …確かによくよく考えてみれば久しぶりに外に出た彼女は自国のことすら把握していなかった。稲妻は長らく鎖国をしていたとのことだし、缶詰知識がいつ開発されたかは知らないが、スメールの技術だ。彼女が知らないのも当然と言えば当然か。

 こうして俺についての話は特に何も進展せずに終わった。その辺はスメールに期待しよう。フォンテーヌはまあ……いいでしょ。

 

 その後は蛍が今回稲妻に来た大まかな目的を影に話していた。

 内容としてはこれまで世話になった人に兄の紹介、ついでに見つかったからもう捜さなくてもいいよ、と伝えに行くといったものだ。

 

 別にこの程度の話であればメールやらで連絡すればそれで済んでしまう、そんな便利な世の中ではあるが、実際に顔を出してこれまで一緒に回れなかった国を兄と一緒に見て回りたいということも蛍は赤裸々に話していた。

 やめてくれ…恥ずかしい、兄妹で観光デートとか言わないでくれ……そんな奴は普通いないぞ。

 

 

「そういや、裟羅に会ったときに聞いた、オイラたちが訪ねてきたら直ぐ知らせるようにっていうのはなんでなんだ?」

 

 

 突如思い出したようにパイモンが影に対して疑問をぶつける。

 アポなし突撃で稲妻のトップに会えたことを疑問に思っているのだろう。

 少なくとも彼女の立場はこれまでの2国の神とは異なり、国の代表だ。こうもすんなり会えるのは違和感がある。

 

 

「そういえばそうだった。稲妻に着いてその日のうちに会えるなんて思ってなかったな」

 

「私も影に、というか将軍に会うにはもっと時間が掛かると思って色々考えてたけど…もしかしてなにか見越してた?」

 

「いえ、その…お恥ずかしい話ですが、単に皆さんとまた一緒にお話したいと思っていただけです……」

 

 

 すぐに会えた訳はなんとも単純な理由だった。うーん…直球だ、可愛いかよ。

 

 

「なーんだ! そんなことならオイラたち連絡くれたらいつでも飛んできたよな、蛍?」

 

「うん。…まあ今はお兄ちゃんが居るから飛んでくるのは無理だけど」

 

「うっ…悪かったな、ワープできなくて」

 

 

 チクリと皮肉が飛んでくるが、俺の責任ではないと思いたい。というかモンドでの一件まだ気にしてるのかよ…

 根に持ちすぎじゃね?

 

 

「それが理由でここ最近はずっと徒歩移動だったもんなぁ…そのせいか疲れが溜まってる気がするぞ…」

 

「パイモンは歩いてないし、いつも飛んでるだろ」

 

「おい! 蛍みたいな揚げ足取るなよ! 飛ぶのだって疲れるんだからなっ!」

 

 

 蛍に皮肉を言われた腹いせにパイモンを揶揄うと期待した通りの反応が返ってくる。やっぱり面白いなこいつ。

 手足をバタつかせるパイモンを適当にごめんごめんと宥めながら、話し始めた蛍の話に耳を傾ける。

 

 

「…まあそんな感じだから稲妻に来るのも璃月から船を出してもらったんだ。本当は鍾離も着いて来たがってたんだけど…流石に難しかったみたい」

 

「モラクスが… 璃月ではモラクスともお話しする機会があったのですか?」

 

「えーっと、話す機会というよりも…」

 

「鍾離ならオイラたちとずっと居たぞ」

 

「居た、ですか?」

 

「居たな。鍾離は璃月に滞在してた時はなんでか常に一緒だったよな?」

 

「うん。私たちも往生堂のお世話になってたからね」

 

 

 そこで蛍は璃月で過ごした鍾離との日々を影に話し始めた。会って早々事件に巻き込まれたり、劇のうんちくを語り出したり……当たり前だが、思い返したらどの記憶にもいるなあの人。

 

 

「なるほど…それで璃月に居た際はモラクスと共に様々なところへ赴いていたのですね……羨ましいです…」

 

「うん。まあアレは鍾離が暇だったからっていうのもあるけど」

 

「鍾離のやつ、気がついたらずっと一緒だったもんなぁ。胡桃が止めなきゃ稲妻にも来ようとしてたくらいだったぞ」

 

「確か…稲妻に行くなら是非雷神に会ってみたい、とかも言ってたっけ」

 

「まあ、それは残念ですね…私も是非お会いしたかったです」

 

 

 それからは岩神の話題から風神の話題へと流れ、次は雷神である影の話や今後会いに行くかもしれない草神、水神という流れで雑談は続いていった。

 

 どれ程の時間が流れたのかはわからないが、そろそろ話す話題も尽きそうだ。少なくとも俺にはない、程度には話し込んだと思う。

 蛍たちもそろそろ外に出る、と言い出したところで影が蛍の発言を遮りつつ声をあげた。

 

 

「あの、私も…私も皆さんの観光に着いていっても良いでしょうか…?」

 

 

 え、マジ? 岩神に続いて雷神も?

 そもそもこの人はモンドの酒呑みや、璃月の暇人と違って稲妻の最高権力者なんだけど…その辺は大丈夫なのか…?

 

 

「おおっ、鍾離に続いて影も一緒かぁ! なんか面白そうだし、オイラは賛成だ! それに…国家権力で何でもタダで食べられそうだぞ…」

 

「ゲスいなお前… いや、一緒に来ること自体は俺もいいと思うけど……蛍はどう思う?」

 

 

 ゲス非常食はともかく、神々のフッ軽さに思うところがないわけでもないが…この旅の最終決定権は蛍にあるのでその辺の判断は彼女に丸投げする。

 

 

「いいと思う、一緒に行こう?」

 

「本当ですか! 実は今度はあなたたちと一緒に城下以外にも行ってみたいと思っていたんです」

 

「稲妻だと将軍様と一緒だ! ってみんな驚くかも…楽しみだね、お兄ちゃん」

 

「……確かに。それは意外と面白そうかもしれない」

 

 

 おそらく出会う人は皆恐れ慄くことだろうが、こういっては失礼だが彼女は意外とポンコツなところがあるため、色々と面白いものが見れるかもしれない。

 

 

「ここから出たらまずは、皆にこの話を伝えなければいけませんね」

 

「そうだね。…裟羅に伝えればいいのかな?」

 

「大丈夫かそれ。すごい慌てると思うけど…」

 

「裟羅がなんて言うかな…「将軍様!いけません、せめて私をお連れくださいっ!」…とか言いそうじゃないか?」

 

「ふふ、意外と似てたね。今のパイモン」

 

「ある意味ね」

 

 

 慌てふためく裟羅の物真似?をするパイモン。声は全く似てない(というか似せる気がない)けど裟羅が言いそうな台詞、という観点では蛍の言う通りやや似ていたな。

 

 

「では、早速ここから出ましょうか」

 

「おう!」

 

「ねぇお兄ちゃん、影を宵宮の元に連れていったら宵宮はどんな反応するかな?」

 

「そりゃまあ…驚くんじゃない? まさか数時間後に神様を連れて帰ってくるとは思ってないだろうし……でも普通に歓迎してくれそうだ」

 

「そうだよね、楽しみだなぁ」

 

 

 一心浄土に来た際にも感じた意識が遠のく感覚。その最中、一瞬の刹那にも満たない時間の中で声が聞こえた気がした。

 

ーーー確かに、この後どうなるか……妾も楽しみじゃ




ぶっちゃけエタってただけだからストックはないし、プロットも覚えてない。
結末をどうするかも忘れてるし、当然本編のシナリオも追えてない(最終ログイン日31日前)
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