原神 自分を一般人だと思い込んでいる主人公の兄 作:アリエイルでしょ
人の目を惹くちょっとアレな雰囲気の格好。
そして横に飛んでいる有能オーラを漂わせる鴉。
これは間違いないね。
「あそこに居る子、フィッシュルじゃないか?」
指を指して彼女の存在を伝える。
「本当だ、冒険者組合に用事でもあったのかもな」
「丁度いい。彼女にも声を掛けよう」
進行方向を変更し彼女の方へ歩く2人をぼーっと見つめる。ついさっき言ってた居場所がわかってる人はいいのか、と思わなくもないがフィッシュルもどこに行けば会えるかわからない人だ。さっさと挨拶した方がいいかもしれない。
「おーい! フィッシュルー!」
「お嬢様、あちらの方に旅人様たちがいらしているようです」
「フン、態々口に出さずともわかっているわオズ、わたくしの断罪の目は幽夜を通して
すべてを見通しているのだから…」
「久しぶりだねフィッシュル、オズ」
会う人全員に久しぶりって言っている気がする。
実際、拠点を別の国へと変えていってるのだろう。モンドを拠点とする人と久しく会っていないのは至極当然のことなのだろう。
「旅人様にパイモン様も変わらずにお過ごしされているようでなによりでございます」
「へへ…お前たちも元気そうでなによりだぜ!」
「[世界]は因果の糸で繋がっている…今日ここで出会ったのもまた運命の意志ね。これまでの月日の流れなどの虚像はわたくしにとっては刹那の様に感じられたわ」
「…?」
予想はしてたけれども本当に何を言っているのかわからない。主人公コンビの方を見ても笑っているだけで理解はしてないだろう。というか多分理解する気もあまりないのかもしれない。オズの翻訳待ちかな?
「お嬢様は『久しぶりに会えて自分も嬉しい』と申しているようです」
「オズ! お黙り!」
良い照れ隠し、可愛いね。
「ンンッ! 隣に居るその者があの[特異点]なのね。あなたによく似ていて、いい目をしているわ」
「うん、紹介するね。私のお兄ちゃんの空だよ」
「初めまして、わたくしは断罪の皇女、名はフィッシュル。この邂逅もまた運命ね」
せっかくだしちょっと遊ぶか。
恥じらいを捨てさり、道化に徹して街中で拝謁を実行する。片膝をつき、胸に手を当て頭を下げて忠誠を示し、無知なりに全力で厨二を演じてみようじゃないか。
「お初にお目にかかります、皇女様。一応蛍の兄の空です。かの御高名な断罪の皇女フィッシュル様にお会いでき恐悦至極に存じます…なんてね」
「フン、流石は特異点…どうやらあなたはわかっている人のようね。わたくしと運命で繋がっていたということを理解できているのね」
「我が主の設定に付き合っていただき感謝の言葉もありません空様。しかし、決して無理はなさらぬようご自愛ください」
「一応兄って… 一応とか付けないで」
「それにしてもいきなり跪いて挨拶するなんてな、ちょっと驚いたぞ!」
「お兄ちゃんも一時期ああいう時期があったからね。思い出して懐かしんだのかも」
「え」
空くん…?
さっき蛍ちゃんが流れるようにカミングアウトした空くんの悲しき過去…。彼もまた思春期に拗らせたことのある普通の男の子だったのだろう。同じ男としては親近感を感じざるを得ない…が、徐々に人目が気になりだしたので立ち上がっておく。こういうのは街中でやるもんじゃないね。
「あ、そうそう。これからモナのところに行くつもりだったんだけど…フィッシュル達も一緒にどう?」
「まあ勿論これから用があるっていうなら無理しなくてもいいけどな!」
どうやら行先はモナの家だったらしい、先ほどフィッシュルを見つけた際に丁度いいと言っていたのは彼女たちが友人関係だからだったのかな。
…そういえば彼女の占いの力なら俺が別人であることを証明してくれたりしないだろうか。可能なら誤解が広まる前に解いておきたい。
何故か蛍ちゃんは俺を兄だと確信していてなにを言っても聞く耳を持たないしね。
「すでに皇女の偉大なる知恵は断罪の名を背負いし従者たちに授けているわ!」
「[調査依頼の報告はすでに完了しているため、大丈夫]という意味です」
オズ、有能ッ!w
この後の予定はもう何もないようなので一緒に行けるとのこと。モナとフィッシュルの絡みが見れそうでなんだか嬉しい。
「それなら大丈夫そうだな!じゃあ早いうちに向かおうぜ!」
「家に居るといいけど」
そこからはオズの翻訳を頼りに雑談しながら移動を開始する。アポなし突撃という非常に迷惑をかけることを決行しようとしているので、申し訳程度に果物のお土産を持って行くことを提案し、いくつか購入してからモナの家に向かう。忘れないうちにパイモンへ先ほどのフォローの感謝として餌付けもしておこう。
「おーい、モナ―!居るかー!?」
「………」
周りへの迷惑を考慮しないで大声を出すパイモンに無言で扉をノックし続ける蛍。
永い旅路、度重なるおつかいで遠慮というものが欠落していったのかな?あまりに非常識なのでここは流石に兄として注意をしておこう。因みにフィッシュルは振舞いが厨二なだけで人間性はまともなのか、俺と同様に少し引いた目で2人を見ていた。
「いい加減やめてくれ2人とも、もう少し周りの迷惑を考えてほしい」
「うぐっ… 言い返せないぞ…」
「ごめんね、お兄ちゃん」
「謝るのは俺にじゃないと思うけど…気を付けような」
バツの悪そうな表情で意外にも素直に反省の色を見せる2人。もう少し擦れていて言っても聞かないかと思ったけどそこまでじゃないみたいなので一安心かな。
ゲームなら室内で全力疾走したり勇者行為したりしても特にお咎めないけど、こうして世界に生活感がある状況だと世間の目は中々怖く感じるものだ。
「な、なんですかいきなり来るなり家の前で騒ぐなんて! みなさん揃いも揃って非常識ですよ!」
「へへ…悪かったって!」
「ごめんね」
「私は別になにもしてないのに…」
「申し訳ございませんモナ様」
一緒に怒られてるフィッシュルちゃんとオズ可愛いね。怒ってるモナちゃんも可愛い。もう会う人がみんな可愛くて困るね。そろそろイケメン成分が欲しくなってきたが…鏡でも見るか?
「お兄ちゃんが見つかったから紹介と思ってきたんだけど…」
「彼が…。まあ詳しくは中で聞くのでとりあえず入ってください。隣人に迷惑が掛かってしまうので」
どうも、と頭を下げておく。
まあまあ嫌そうな顔ではあるが部屋に入れてくれるらしい。俺を入れるのが嫌ということではないと願いたい。
部屋の中はよくわからない占い関連の本やらプラネタリウム用の機械らしきものがあるなど、物は多い様だが整理はしているようで荒れてはない。ついでに食料品もないようだった。
「フィッシュル以外は久しぶりですね。あなたは初めましてですが」
「蛍の兄、空です。つまらないものだけど、これどうぞ」
「あ、ありがとうございます!これで食費が浮きそうです」
買っておいた果物たちを渡すとそれはもう嬉しそうに喜んでいる。パイモンもだけど餌付けっていうか誰かに何かを与えるのはクセになりそうだな。こういうのが切っ掛けで徐々に悪化していくとお金を貢ぐことに繋がるのかもしれない。また新たな知見を得てしまったか…
「モナには占いで捜してもらってたりしてたし、お礼も言いたくて来ちゃった」
「急ですし、声は大きいしで驚きましたよ…。占いではあなたの旅はもっと長く続くと出ていたので、こうしてお兄さんと再会するのはまだ先のことだと思っていたのですが…」
「フン、これが[運命]よメギストス卿。わたくしは彼女たちは運命の黙示録にて知りえた叡智でこの瞬間に再会することはわかっていたわ!」
「はぁ…凄いですねーフィッシュルは。彼女は見つかるまで諦めない人ですから、いずれ再会できると私も思っていましたよ。ただ想定していたよりも早かっただけです」
フィッシュルの適当な吹かしに呆れつつも慣れたように返事をするモナ。人間が出来ているようで安心する。それにしても見つかるまで諦めないって…ストーリー上そうあるべきではあるが…執着が怖い。
「まあいいです、私はアストローギスト・モナ・メギストスと言います。モナと呼んでください」
占ってほしいなら名前を間違えずに覚えてくださいよ!と釘を刺される。過去に割と間違えられていたのかな。
しかしいい機会だ。俺についてを占ってもらって誤解を解くカギとなってもらおう。彼女のこれまでの実績(有能エピソード)があれば蛍も聞く耳を持ってくれるかもしれない。
「それなら早速占いをお願いしたいんだけど、いいかな」
「構いませんよ。私も少し見てみたいですから」
「じゃあ俺についてだけど、彼女が捜している兄じゃないって占いで見れたりしないかな」
「捜している兄じゃない…ですか?」
変なことを言いますね、と言いながらも占いの準備を始めるモナ。そんな彼女を後目に蛍からはなんかこう…彼女が発するオーラがなんとなく重たくなっていくのを感じる。
怖いけどこういうのは早めに対処する方が絶対楽だから。親知らずとかと同じだから。
「…お兄ちゃん? まだそんなこと言ってるの?」
「異世界から来た別人~とかの話か? 蛍にはもう嘘だってバレてるのにまだ言うのかよ」
2人からジト目で見られるが…でも今は、そんなことはどうでもいいんだ。重要なことじゃない。
「…もしかすると空様は蛍様から望んで距離を取っていたのかもしれませんな」
「オズヴァルド・ラフナヴィネス、あなたのその幽邃な鴉の目の観測でもそのように見えたのね…」
重たい妹から逃げた兄が長い逃亡の末見つかったみたいな想像をしている1人と1羽。残念ながらその推測は間違っているし、見つけた相手も間違っている。
「むぅ…やはりあなたも蛍を占っているときみたいに正確な内容は見えないのですが…わかりました」
早速結果が出たようだが、どうなる…?
なんか1人だけセリフ考えるの物凄く時間が掛かるやつが居て困る