【全9話】倫也と仲直りしたい英梨々(高1ー1学期) 作:きりぼー
前作はあまりにも原作かけ離れているので、時間を巻き戻して・・・(何度目だ)
基本的に倫也と英梨々中心の何気ない日常で、倫也が『図書室にラノベを置いた』という恵の証言の話から広げました。
そういうわけで、加藤恵や霞ヶ丘詩羽はゲスト出演。
倫也と英梨々を2人きりにするとイチャイチャし始めるので、監視役は美智留を抜擢。
毎週末に更新。全9話
あーもう、英梨々・・・という押し切れない感じを表現できたらなぁっと。
「なぁ見てみろよ、このディフォルメされても失われない力強いフォルム」
「はぁ?」
「それに、この紫の渋い塗装から漂う重厚感・・・」
「ちょっと待ちなさいよ」
「さらにだ!分厚い装甲でも機動力を失わないバックパックのでかさ!」
「あんた何言ってんのよ?」
「この十字のカメラアイのクリア素材の色がこだわりを感じさせるだろ?オレンジともレッドとも違う、まるで光っているようで・・・」
「いや、ぜんぜんわかんないわね」
「これだけの武装、戦闘力の高さを誇りながらも,なぜか漂う女性を思わせる繊細さ・・・」
「数年ぶりに話しかけられたと思ったら、1人で何しゃべってるのよ?」
「英梨々ならわかるだろ?」
「っ・・・!」
「やはりこの腰のところ・・・通称スカートが全体とのバランスでいいんだろうな」
「まったく、わかる自分が嫌になるわね」
「だろ?」
「で、何よ?」
入学式を終えた初登校日の帰り道、俺は近所のコンビニに寄り道をしていた。最近できた店舗は住宅街にあるにも関わらず、雑誌や本、食玩などが充実していた。誰得の店なのかわからないが少なくとも俺得な店である。
「この第七弾のシリーズは貴重なんだよ。この『陸戦仕様ドゥム』はあまりの出来栄えに、主人公の機体よりも売れてしまってプレミアでさ」
「はぁ?それがあたしとなんの関係があるのよ?」
「おまえが今ここにいた。それこそが運命じゃないか」
「・・・運命?あんた頭でも打ったの?」
「撃ちたいのはこのでかいバズーカーだな。見ろ、この照準器のディールの細かさ・・・」
「どでかい砲身とのバランスが絶妙よね」
「さすがだなっ」
「わかりたくないけど」
「いや、これぞ神のバランスだろ。美的センスのあるものならわかる」
「そうかしら?」
「なっ?」
「なにが『なっ?』なのよ」
静かに流れる店内の有線は流行のJPOP・・・などでなくアニソン。客は俺と英梨々の他にいない。店員も裏で作業しているようでレジに立っていなかった。
「でもさ、実物をみないことにはわからないだろ?この画像だけじゃさ・・・やっぱり触って、360°から見てみないことにはな」
「フィギュアってそういうものよね」
「ああ、そうだとも。スカートの中がどうなっているか、見えないところのディティールこそが命だろ?これだけの仕上がりだし確認したいだろ?」
「別に」
「おい・・・」
でもって、俺がさっきから必死に語りかけている金髪の女は立ち読みを辞めようともしない。それだけ長い間立ち読みするなら雑誌を買え・・・と言いたいのグッと我慢する。
「それにだ。これが復刻なのか、掘り出しものなのか不明だが、すでに第九弾まで出ているんだぞ?なのに第七弾が置いてある奇跡にお前はなんとも思わないのかよ」
「思わないわね。ねぇ、あたしの大事な時間を邪魔しないでくれるかしら?」
「立ち読みしているだけだよねぇ!?」
「そうよ?悪い?あたしの時間をあたしがどう使おうと、あたしの自由よね?」
「そうだな。俺も俺の時間をどう使おうが自由だからな。こうして詳しく解説しているんだが」
「誰も頼んでないわよ」
「ほう・・・?いいんだな」
「何がよ?」
「お前の今読み始めているそのマンガな・・・」
「ん?これ?倫也も読んでるの」
「当たり前だろ、誰もよりも早く読んで、ブログに更新できなければブロガーの第一線なんて張れないぞ?」
「へぇー、あんたマンガ感想ブログしてるの?」
「ああ、マンガだけじゃなく、ラノベもだけどな」
「そう・・・」
「今週、その相棒のやつ死ぬぞ」
このさっきから会話が食い違っているようで合っている美少女の名前は澤村スペンサー英梨々。長い金髪をツインテールにしてリボンで結んでいるのがトレンドマークだ。まぁ本性はただの重度のオタク。
「はぁ?あんたバカなの?死ぬの?何ネタバレしてんのよ!」
「まぁ、うそだけどな」
「っ・・・!」
ついでに自己紹介しておくと、俺の名前は安芸倫也。豊ヶ崎学園の一年だ。都内有数の進学校でもある。俺は受験でしっかりと合格したが、この目の前の金髪美少女も同じ高校に通うことになったが、こいつが正当に合格したとは思えない。が、今はそんなことは追及しない。
「なぁ、頼むよ」
「何を?」
「金・・・貸してくれ」
「はぁ?あんた数年ぶりに話しかけてきたと思ったら金貸せって正気かしら?」
「ああ、俺だってお前に金なんか借りたくない」
「なら、貸さないわよ」
「いや、そうじゃない。ちょっと待て。背に腹は代えられないというだろ?このチャンスを逃したら二度と手に入らないかもしれないだろ?」
「別にネットで転売品買えばいいじゃない」
「さっき言ったろ・・・もうプレミア価格なんだよ。どこかの転売ヤーが迷惑なことにこの『陸戦型ドゥム』を買い占めたんだよ」
「ふーん。で、今いくらぐらいなの?」
「だいたい10倍ぐらい・・・5千円は下らないな」
「そんなに!?」
「なっ?」
「ちょっと見せてくれるかしら」
俺はさっきから手にもっていた食玩の箱を渡した。国民的に人気ロボットアニメ『ガンダミュー』のコンビニ用の食玩だ。一箱に8種類、1つ600円もするが一応ラムネがついているので建前はお菓子のおまけということになる。
「で、倫也は今いくらもっているのよ?」
「えっと・・・70円」
「小学生じゃないんだから」
「しょうがないだろ・・・」
「どうせ、後先考えずに貰ったお小遣い全部こういうことに消費したんでしょ」
「そうだが?」
「少しは否定しなさいよ」
「俺はヲタクの義務として、ヲタク産業の経済を回そうと思ってだな・・・」
「そんな御高説はいらないわよ。高校生なんだしバイトでもしたらいいじゃない」
「それは考えているがな。とはいえバイトして給料が入った時までこれがここに残っているわけないだろ?」
「残ってるんじゃないかしら?」
「お前な、10倍で売れるものがいつまでも残っているわけないだろ?売り切れたらどうするんだよ」
「ネットで転売ヤーから買いなさいよ」
「だから、5千円以上するんだって」
「バイト代はいったら買えるでしょ。5千円ぐらい」
「あのなぁ・・・」
英梨々が雑誌を閉じて棚に戻した。流石に集中できないらしい。俺の渡した食玩を持って無人レジへと向かって電子マネーで決済していた。なんだかんだいいながら買ってくれるあたり話しのわかるやつだ。
「ありがとう!英梨々」
「様をつけなさいよ、様を」
「英梨々様ありがとう!」
「あんた、プライドは無いの?」
「無い」
「でも、別にあんたのために買ったんじゃないだからねっ!」
「ツンデレ!?」
「ちがうわよ。倫也・・・これ売ってあげるわ」
「はい!?どういうことだってばよ」
「3000円でいいわよ。ネット価格の半額」
「待て、英梨々・・・お前何言ってるんだ」
「様をつけなさいよ」
「あのな・・・」
まったく食玩一つに俺が何をこんなにムキになっているかというと、そもそもこのコンビニに英梨々がたまたまいたからだ。英梨々とは小学生の時にケンカしてしまって、それからだんだんと疎遠になってしまった。昔はオタク友達で仲がよかったのだが、あろうことかこいつは俺をスケープゴートにして、自分はオタクじゃないと言い張って一般女子グループに寝返った。もちろんオタクがバレていじめらてしまったことが原因にあるとはいえ、それ以来一緒に遊ぶことはなくなった。
ずっとモヤモヤとしていたので、話すきっかけを探していたのだ。学校では声をかけるなと言われているし、2人になることもないままずるずると数年が過ぎていた。
「それとも倫也、3000円分バイトするかしら?」
「だからバイトはまだ探している最中でな・・・って3000円でお前から買わないからな!?」
「ならいいわよ、ネットに流すから」
「世知辛いな!俺の情報だろ。情報量よこせよ」
「機密をベラベラと話す方が悪いんでしょ」
「俺は英梨々を信用してたのに・・・」
「くっ・・・」
「また裏切るのかよ・・・」
「ちょっ・・・」
「いいよ。悪かったな。立ち読みの邪魔して、もう声かけねぇーよ」
どうやら、英梨々はまだ俺とは仲直りがしたくなかったらしい。まぁそうだろう。俺はオタクを隠すつもりはないし、学校でも新しいオタク友達を探すつもりだ。一方で英梨々は高校でもオタクであることを隠すに違いない。クラスも違うし、もう接点はないな・・・
俺はコンビニを出た。外は春風が強く吹いていて、散った桜があちこちに舞い上がっていた。
「まっ待ちなさいよ倫也」
「なんだよ?」
「ラ・・・ラムネはあたしに寄こしなさいよ」
「寄こすも何もお前が買ったんだろ」
「・・・」
「じゃあな」
「・・・ヒック」
「ん?」
英梨々のサファイアブルーの瞳が潤んでいる?
「ヒック・・・ズズッ・・・バカ」
あれ、英梨々が泣いてる?なんで?俺何かしたっけ?
「倫也のバカ!アホ!ドジ!マヌケ!」
バンッ!!
「おいっ!?」
英梨々が買ったばかりの食玩を俺の足元に向かって投げつけた。地面に跳ね返った食玩は駐車場をボテボテと転がってった。
「箱も貴重なんだから・・・・な・・・・てっ・・・」
「ふえーん・・・」
英梨々が涙を手で拭って、それから走り出していった。
いやっ、どういうこと?俺は潰れてしまった食玩を拾った。えっ?俺3000円で強制的に買わされた?まさか・・・?
走り去った英梨々はそんなに体力がないのか、とぼとぼと歩きだした。振り返って「声かけなさいよ、バカ!」とか言ってくるかと思ったが、そんな元気もないらしい・・・
俺としては状況も飲み込めず、何を謝ればいいのかもわからず、英梨々の背中を見送ることしかできなかった。
そういえば「3000円分バイトする?」って聞いてきたな・・・あれはもしかしたら英梨々からの提案だったのかもしれない。
何か会話の選択肢を間違えたかな。現実はゲームのように選択肢が出てこない。ノベル系のギャルゲーは得意だが・・・今のはどこで間違えたんだ?
そもそも、英梨々もコミュ障すぎるだろ・・・
小学生の時の苦い体験が胸を痛くした。時間がたって忘れたと思っていたのに、つい昨日のことのように思い出される。いや、痛くしたのは今の英梨々の涙かもしれない。
けど追いかける勇気がなかった。あの時のまま、まるで成長していない無能な俺が駐車場に立っていた。
(続く)
『もどかしさ』みたいのが大事かなっと。