ヴォーティガーンの息子   作:エドアルド

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プロローグ

 

 突然の息苦しさに空気を欲して息を吸うが逆に水が肺に入り更に息苦しさを増す。何とか空気を求めようと水を掻き分け上へ上がるが何やら障害物があり水から出られない。何とかしようとして乱雑に手を振り回していると何かを砕く感触と共に水に流れが出来て空気のある場所に放り出される。

 

「がフッ!?ゲボっゲホッ!?ゴホッゴホッ!!」

 

 それと同時に肺に溜まった水を吐き出し一刻も早くこの息苦しさから逃れる為に大きく息を吸う。肺には新鮮な空気が入り呼吸がする事が出来た。

 それから暫くは空気を貪るかのように息をする事だけに集中した。

 

「ここ、どこだ?」

 

 やっと落ち着いてきて出た言葉がそれだった。見渡せば周りは石造りのようで木製の椅子と机が一つにその隣に本棚。この場所唯一の光源である光る石のようなもの。そして、おそらく自分が閉じ込められていたであろうガラスの円柱水槽。

 

 とりあえず動こうと力が上手く入らない体を何とか動かして立ち上ろうとする。まるで生まれたての子鹿のように足が震えるが何とか立ち上がる事が出来た。だが満足に歩けず数十分上手く動かない足と格闘する羽目になった。

 

 やっと上手く動けるようになって椅子に向かい座る。動けるようになるまで大分体力を使ってしまった。しかし、自分はこれ程までに貧弱だっただろうか?少なくとも産まれたての子鹿のようになるほど足は弱くない。

 

 色々と疑問は尽きないが情報が無さすぎてどうにもする事が出来ない。

 

「はぁ……」

 

 その時ふと机の上を見ると一冊の本が置いてあった。気になって手に取って見ると『記録』とだけ書かれていたがそこでおかしな事にな気が付いた。本の文字は確実に自分の知る日本語ではなく海外の言葉なのだ。文字からして英語であろうが生憎と自分は英語の成績が悪かった。しかも、かなり達筆であり日本語に例えるなら古事記とかの文字である。

 なのにその文字が何と書いてあるのか理解している自分がいる。また新たな謎が出てきたが便利なだけなので深く考えるのは辞めた。

 

 早速本をめくって読んでみる。

 

 

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 私の名前はヴォーティガーン。王である。

 記録はこのようなもので良いのだろうか?始めて書くゆえ変でないと良いのだが。

 

 私はこれから我が王座を継ぐべき息子を作る事にした。私も歳だし、何より今のブリテン島は状況が芳しくない。私の身がいつまでも持つか分からない、故に私の全てを託しても問題の無い後継がふと欲しくなったのだ。

 しかし、私には妃がいない。それにこのような悪名高いジジイに抱かれたい女子なぞ、そうはいまい。自分で書いていてあれだが悲しくなってきたな。

 

 故に私は魔術により子を作る事にした。魔術にはホムンクルスと呼ばれる人造の人を作る術がある。それを元に我が後継を作る事としたが、私は魔術には疎い故に配下の宮廷魔術師に任せる事となる。これを機に私も魔術を学んでみるのも良いかもしれぬ。

 

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「………………」

 

 色々とツッコミたい事は多いが次のページに進む。が、次のページは何やら訳の分からない事が書かれており理解を超えていた。おそらくこれが先程出てきた魔術なのだろう。

 とりあえずわかる所まで読み進めるか

 

 

 

 

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 つい先日私の元に姪のモルガンがやって来た。どうやら私の息子の制作を手伝うと言うのだ。

 突然の申し出に驚き、どうしてその事を知っているのかと疑問には思ったがなんとウーサーは新たに子を作りそちらに王位を譲るらしい。しかも何やらマーリンが関わっているらしい。色々ときな臭くなってきたな。

 私に協力するのはアルトリア憎しという理由なのだろう。私の息子について知っていたのはどうにかこうにかアルトリアを貶めようと画策していた時にたまたま魔術で見てしまったらしい、流石はマーリンに次ぐ魔術師と言ったところだろうか。

 

 しかし、ウーサーめいつの間に新たな子供なぞ作りおったのだ?しかもマーリンが予言した聖剣カリバーンを抜いた子供らしい。生まれてからかなり年月を重ねているな。やはり女性という理由もあるのだろうがマーリンが関わってるだけでどんどんきな臭くなる。

 

 この事を考えるのは一旦辞めよう。だがモルガンがこちら側に着いたのは僥倖だ。私が抱える宮廷魔術師より遥かにいいその腕前により目に見えて息子の生誕に近付いた。

 

 しかし、時間が少なすぎる。最近はブリテン島を統一しようとアルトリアもといアーサーが進撃を続けている。急がねばなるまい。

 そして今まで少々渋っていたが白き竜の血を息子にも分け与える事にした。力がなければ今のブリテン島では生きていけまい。手に負えなくなってきたサクソン人共の事もある。強い子にせねばなるまい。

 

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それからも読み進めて行き遂には最後のページに辿りついた。

 

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 もうすぐアーサーの奴が来る。軍はほぼ壊滅した、先程白き竜の血を飲み込み力を得た。最後の戦いだ。

 

 おそらくこの戦いで勝ったとしても私は死ぬだろう。人の身には大きすぎるこの力ではいくばくもないだろう。後は息子に託すべきだろう。

 だか、本当にそれで良いのだろうか。私の後継として生み出したのは良いがそれはあまりにも悲しい生では無かろうか。予めどのように生き死ぬかを運命られた人生などあまりにも惨い。

 

 息子は生まれてすらいないのだ。生まれてきた息子に私はいったいどれだけのものを残せる?どれだけの愛をあたえられる?

 与えられない、私には与えられないのだ。

 

 白き竜の血を飲んだ事により私は世界の真実を知ってしまった。わたしが勝てば世界は剪定される。元より私が生きブリテン島を納める未来など許されていなかったのだ。そしてブリテン島の運命もまた同じだ。

 

 だから息子よ、どうか自由に生きてくれ。私の馬鹿な思い付きにより生まれてしまった罪なき命よ。お前には自由に生きる権利がある。

 お前に今の私でも残せるものは残した。魔術師に作らせた見た目以上にものを入れられる袋にその全てを詰め込んだ。

 

 そして最後に私からお前に名を送る。

 

〈イアン〉

 

 それがお前の名だ。

 

 お前のこれからの生に幸があらんことを願う。

 

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 パタンと本を閉じると近くにある袋を探り中から服を取りだして着る。そして本を読んでいる途中から頭上から鳴り響いてる轟音を元へ行こうと部屋を後にする。

 

 ヴォーティガーン、私の父よ。あなたのその願いを私は受け入れよう。だが、一つ息子のわがままを許して欲しい。

 少しだけあなたと言葉を交わす時間が欲しいのだ。

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