デュエル・マスターズ 【=%ゴールデン%=】 作:ルピコ
「な、なんだ。この光……!?」
その光に驚いたのは俺だけじゃない。
近くでメガネに止められていた赤髪も呆然とし、少女も驚いたような表情をしていた。
「お、おい。あの光って、まさか……!?」
「君も唯一無二デッキを!?」
君も、ってことは。
もしかしてキロと呼ばれた男、奴のデッキもなのだろうか。
共鳴……? なんかそれっぽいな。
この世界はデュエマに関することは色々不思議なことばかり。
カードは勝手に動くし、意思を持ってるとか言ってるし。
「……なんかわからねぇが、やるってんなら乗って……──」
「待って」
デュエルをすべくデッキを取り出そうとしたときだった。
突然後ろから聞き覚えのある声がかかる。
振り返るとそこにはユキが立っていた。
どうやら話は終わったらしい。
「ユキ!?」
「……カツヤ。
「へ……?」
死にたくないなら、って言ったよな、今。
「キロ。やるなら私がやってあげる……ここじゃ、どうせできない……」
「……確かに。こんな小さな台じゃ、唯一無二デッキ同士の放つエネルギーに耐えきれない」
「え、え、え。なに? どういうこと? 誰か説明してくれ!?」
デッキがエネルギー放つの?
いやそもそも耐えきれないってなんだよ。
おかしいだろ、色々。
……今更か。
「やるなら、学校でやればいい」
「……わかった。だが彼も来るんだろうね?」
「……連れて行ってあげる」
なんか今すごく不穏なことが聞こえた気がした。
気がしただけだ。
「了解した。それじゃあ、また明日会おう」
そういうとデッキをしまい、軽く手を振ってから帰って行った。
赤髪の男はメガネの男を振り払い、その後を追いかけて行く。
それを止めるべくメガネの男は走り出し、少女はそんな二人の後を追いかけて行ってしまった。
「行っちゃった。ところで……ユキはどうしてこんなとこにいるんだ?」
「ん……カツヤを探しに来た」
「俺を?」
「教授が呼んでるから……」
「なるほど?」
どうやら話し合いは終わったらしい。
ならばと、教授の話を聞くべくユキとともに家へと向かった。
家へ戻ると教授は煎餅をボリボリと噛み砕いている。
相変わらずすごい書類の山だ。
「お主、どこに行っとったんじゃ。急に出てくるって言って」
「なんか重要そうな話してたから、聞かないほうがいいと思って。ちょっと家の周りに何があるかの確認にな」
「む……そうじゃったか、それは気を遣わせたのう」
「なんの話して……って聞いていいやつ?」
「……今度話す」
とのことだった。
聞かれたくない話だったらしい。
離れていて正解だったな。
「それよりもじゃ」
「ん?」
煎餅を咥えた教授が机の上から、一枚の書類を雑に取り出す。
「お主。しばらくここに住むじゃろ。で、お主は学生じゃ」
「ああ、高校生だけど……」
「そこで、ユキと相談して同じ学校に通わせることにした」
「……と、言うと?」
「話は、聞いた……私は、それなりに話は通じるから……だから、取り敢えず、学校に行く」
どれがどうしてそうなったんだ?
少し考えて、俺はなんとか声を絞り出す。
「ちょ、ちょっと待ってくれ。なんでそんな話に? そもそもユキに話したって、それはいいのか?」
「うむ。ワシのバイト……助手じゃからのう」
「バイト!?」
そう言う関係だったんだ。
教授の助手をするバイト、ってことか。
……確かに、この書類の山。
バイトでもいないと手につかないだろうな。
「そこいらの者よりは知識がある。異世界に関してはな。それにお主が生活をして行く上で、事情を把握しているものが近くにいるのは、都合がいいからのう」
「それで、学校に行くと言うのは?」
「一先ずこっちの生活に馴染んで貰う必要がある。それにお主は学生じゃ。学生は学校に通ってなんぼ、じゃからのう」
そう言って教授は笑みを見せた。
「学校に行くったって、書類とか……どうすんだよ?」
「ああ、安心せい。ワシの権限でなんとかなる」
「えぇ……」
それほどまでに教授はすごいらしい。
ユキが何も言わない以上、多分本当に教授の権限で行けるんだろうな。
俺はなんだか、ここまでしてもらったことに少し申し訳なくなり、頭を掻きながら答える。
「なんでそこまでしてくれるんだ……?」
「む……まぁ、ちと、個人的な事情も含んでおるが……困っとる者を助けるのに、理由がいるかのう?」
「……ははっ。そう言うことなら、有り難く享受させてもらうよ」
「うむ」
親切、か。
個人的な事情ってのは少し気になるが、親切でしてもらっている以上、個人的な部分に立ち入るのは失礼ってもんだろう。
……だから今は取り敢えず、デュエルまみれの生活に慣れる、そこから始めよう。
「ところでいつから行くんだ?」
「……明日」
「は?」
「……明日から」
俺の思考がフリーズする。
……そして少し、よく考えた後。
俺は声を張り上げた。
「明日ぅ!? あ、明日からって!? え!? 明日から!? じゅ、準備 とか大丈夫なのか!?
「ああ、それに関しては向こうがなんとかするから、気にせんでいいぞ」
「向こうがって……まさか、学校側が?」
「うむ」
「……どうなってんだよ、教授の権力」
まぁそれなら安心……安心していいんだろうか。
なんかトントン拍子で話が進むなぁ。
今日こっちに来てデッキを手に入れ、二回のデュエル。
そして教授のおかげで住むところも手に入れたし、学校にも行ける。
初日からここまで至れり尽くせりなのは、本当に運がいいとしか言いようがない。
「……流石になんかお礼がしたいな。つっても出来ることはないんだけど」
「……ある」
「え?」
「ん」
そう言ってユキが取り出したのはデッキ。
つまり?
「デュエルがお礼、と」
「ん。教授は強いから」
「あ、ワシ? 本気は出せんが……デュエルは好きじゃからな。うむ、お礼だと言うのならば、少々デュエルに付き合ってくれ」
「ああ、それならいくらでも付き合うさ」
と、言うわけで俺たちは、そこからずっと交代しながらデュエルをやり続けた。
夜になってお腹が空いたことに気づく、その瞬間まで。
……俺ももう既に、この世界の色に染まり始めていたのだった。