デュエル・マスターズ 【=%ゴールデン%=】   作:ルピコ

7 / 14
明日から……

「な、なんだ。この光……!?」

 

 その光に驚いたのは俺だけじゃない。

 近くでメガネに止められていた赤髪も呆然とし、少女も驚いたような表情をしていた。

 

「お、おい。あの光って、まさか……!?」

「君も唯一無二デッキを!?」

 

 君も、ってことは。

 もしかしてキロと呼ばれた男、奴のデッキもなのだろうか。

 

 共鳴……? なんかそれっぽいな。

 この世界はデュエマに関することは色々不思議なことばかり。

 カードは勝手に動くし、意思を持ってるとか言ってるし。

 

「……なんかわからねぇが、やるってんなら乗って……──」

「待って」

 

 デュエルをすべくデッキを取り出そうとしたときだった。

 突然後ろから聞き覚えのある声がかかる。

 振り返るとそこにはユキが立っていた。

 どうやら話は終わったらしい。

 

「ユキ!?」

「……カツヤ。()()()()()()()()、やめたほうがいい」

「へ……?」

 

 死にたくないなら、って言ったよな、今。

 

「キロ。やるなら私がやってあげる……ここじゃ、どうせできない……」

「……確かに。こんな小さな台じゃ、唯一無二デッキ同士の放つエネルギーに耐えきれない」

「え、え、え。なに? どういうこと? 誰か説明してくれ!?」

 

 デッキがエネルギー放つの? 

 いやそもそも耐えきれないってなんだよ。

 おかしいだろ、色々。

 ……今更か。

 

「やるなら、学校でやればいい」

「……わかった。だが彼も来るんだろうね?」

「……連れて行ってあげる」

 

 なんか今すごく不穏なことが聞こえた気がした。

 気がしただけだ。

 

「了解した。それじゃあ、また明日会おう」

 

 そういうとデッキをしまい、軽く手を振ってから帰って行った。

 赤髪の男はメガネの男を振り払い、その後を追いかけて行く。

 それを止めるべくメガネの男は走り出し、少女はそんな二人の後を追いかけて行ってしまった。

 

「行っちゃった。ところで……ユキはどうしてこんなとこにいるんだ?」

「ん……カツヤを探しに来た」

「俺を?」

「教授が呼んでるから……」

「なるほど?」

 

 どうやら話し合いは終わったらしい。

 ならばと、教授の話を聞くべくユキとともに家へと向かった。

 

 家へ戻ると教授は煎餅をボリボリと噛み砕いている。

 相変わらずすごい書類の山だ。

 

「お主、どこに行っとったんじゃ。急に出てくるって言って」

「なんか重要そうな話してたから、聞かないほうがいいと思って。ちょっと家の周りに何があるかの確認にな」

「む……そうじゃったか、それは気を遣わせたのう」

「なんの話して……って聞いていいやつ?」

「……今度話す」

 

 とのことだった。

 聞かれたくない話だったらしい。

 離れていて正解だったな。

 

「それよりもじゃ」

「ん?」

 

 煎餅を咥えた教授が机の上から、一枚の書類を雑に取り出す。

 

「お主。しばらくここに住むじゃろ。で、お主は学生じゃ」

「ああ、高校生だけど……」

「そこで、ユキと相談して同じ学校に通わせることにした」

「……と、言うと?」

「話は、聞いた……私は、それなりに話は通じるから……だから、取り敢えず、学校に行く」

 

 どれがどうしてそうなったんだ? 

 

 少し考えて、俺はなんとか声を絞り出す。

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ。なんでそんな話に? そもそもユキに話したって、それはいいのか?」

「うむ。ワシのバイト……助手じゃからのう」

「バイト!?」

 

 そう言う関係だったんだ。

 教授の助手をするバイト、ってことか。

 ……確かに、この書類の山。

 バイトでもいないと手につかないだろうな。

 

「そこいらの者よりは知識がある。異世界に関してはな。それにお主が生活をして行く上で、事情を把握しているものが近くにいるのは、都合がいいからのう」

「それで、学校に行くと言うのは?」

「一先ずこっちの生活に馴染んで貰う必要がある。それにお主は学生じゃ。学生は学校に通ってなんぼ、じゃからのう」

 

 そう言って教授は笑みを見せた。

 

「学校に行くったって、書類とか……どうすんだよ?」

「ああ、安心せい。ワシの権限でなんとかなる」

「えぇ……」

 

 それほどまでに教授はすごいらしい。

 ユキが何も言わない以上、多分本当に教授の権限で行けるんだろうな。

 

 俺はなんだか、ここまでしてもらったことに少し申し訳なくなり、頭を掻きながら答える。

 

「なんでそこまでしてくれるんだ……?」

「む……まぁ、ちと、個人的な事情も含んでおるが……困っとる者を助けるのに、理由がいるかのう?」

「……ははっ。そう言うことなら、有り難く享受させてもらうよ」

「うむ」

 

 親切、か。

 個人的な事情ってのは少し気になるが、親切でしてもらっている以上、個人的な部分に立ち入るのは失礼ってもんだろう。

 ……だから今は取り敢えず、デュエルまみれの生活に慣れる、そこから始めよう。

 

「ところでいつから行くんだ?」

「……明日」

「は?」

「……明日から」

 

 俺の思考がフリーズする。

 ……そして少し、よく考えた後。

 俺は声を張り上げた。

 

「明日ぅ!? あ、明日からって!? え!? 明日から!? じゅ、準備 とか大丈夫なのか!? 

「ああ、それに関しては向こうがなんとかするから、気にせんでいいぞ」

「向こうがって……まさか、学校側が?」

「うむ」

「……どうなってんだよ、教授の権力」

 

 まぁそれなら安心……安心していいんだろうか。

 なんかトントン拍子で話が進むなぁ。

 

 今日こっちに来てデッキを手に入れ、二回のデュエル。

 そして教授のおかげで住むところも手に入れたし、学校にも行ける。

 初日からここまで至れり尽くせりなのは、本当に運がいいとしか言いようがない。

 

「……流石になんかお礼がしたいな。つっても出来ることはないんだけど」

「……ある」

「え?」

「ん」

 

 そう言ってユキが取り出したのはデッキ。

 つまり? 

 

「デュエルがお礼、と」

「ん。教授は強いから」

「あ、ワシ? 本気は出せんが……デュエルは好きじゃからな。うむ、お礼だと言うのならば、少々デュエルに付き合ってくれ」

「ああ、それならいくらでも付き合うさ」

 

 と、言うわけで俺たちは、そこからずっと交代しながらデュエルをやり続けた。

 夜になってお腹が空いたことに気づく、その瞬間まで。

 

 ……俺ももう既に、この世界の色に染まり始めていたのだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。