さして怖くない怪異たち 作:あーうー
メリーさんと同居が始まった。…まあ特に何かあったわけでもないけど。
とりあえず午前中、眠気はとうの昔に吹っ飛んでたからなにするか…と思って何か無いかなーと探してたらやることもなかった埃被ったトランプを発見。引っ張り出してきて二人でポーカーしたりしてみる…けど。
「ストレートフラッシュ」
「えぇ…」
「フォーカード」
「えぇ…?」
「フルハウス」
「うーん…」
「ファイブカード」
「待て待て」
「ロイヤルストレートフラッシュ…」
「ねえマジで言ってる?」
メリーさんポーカーめっちゃ強いのなんの。何で最低でもフルハウスが出るんですか?ワンペアに対してロイヤルストレートフラッシュ合わせて楽しいですか?
「メリーさんもしかして豪運?」
「分かんない…」
あとちょっと慣れてきたのか喋り方がちょっとだけマシになってきた。
単語だけなら吃らずに喋れるくらいには。…その基準もどうなんだろう。
「…あ、もう昼だ。…メリーさんって食べ物とか食べるの?」
「人形、だから」
聞くと手をバッテンにして返された。
確かに駄目だわ、水分染み込んで
「じゃあ1人分でいいかぁ…うどんでいいか」
小鍋に水を入れてIHにかけて、某うどん県に行ってた友だちからおみやげで貰ったうどんを一束取ってシールを剥がす。
「あ、」
おっと二本くらい溢れた。と、トテトテとメリーさんが走って(?)きて拾おうとしてくれた。…拾おうと
でも指がないからフローリングに落ちた乾麺は取れんのよ。まあ可愛かったから良し。
ありがとー、と言いつつ頭を撫でて、拾って沸騰した湯に麺を入れる。
…あれ、うどんって水から入れるっけ…?まあ詳しいところは知らん。パスタも沸騰してから入れるし大丈夫でしょ。
冷蔵庫から徳用で売ってた東◯のうどん用の汁を取って出汁は準備オーケー。
あとは茹でるのを待つだけであります。
……ん?伏せ字が仕事してなかった?知らん。
「明日仕事嫌だなぁ」
「おし、ごと?」
「そーそー。課長がめっちゃヤな奴なの」
普段より充実した感じの昼下がり。…まあメリーさんに愚痴ってもしょうがないけど。
まあソレに関してはしゃーなし。今から考えてもしょうがない。
にしてもやること無いんよね…娯楽なんかない生活してたからトランプが精一杯だし。なんか人狼ゲーム用のカードあったけど一対一じゃ出来ないし。配った瞬間人狼側の勝ちで終わる。
「あ、じゃあ、私も、おしごと…行きたい」
「え、職場来るの?いや良いけど…どうやって?結構遠いよ?」
「こーやっ、て!」
ぴょん、とメリーさんが飛ぶと彼女の姿が消える。と、背中の首元にサラサラとした布の感覚。
「おーすごい、てか軽っ」
どうやら背中にしがみつかれたらしい。でも何か触られてる感覚あるのに重さがまったくないと言うかなんというか。本人曰く、怪異は物質じゃないから重さはないらしい。触れるのに?
とかそんなことをしてるとおんぶが気に入ったらしく、しばらく離れてくれなかった。まあ別に私に害があるわけじゃないから全然いいんだけど。
…途中からおんぶされたまま寝てたけど。見た目相応に子供なんだねぇ、メリーさん。
「布団代わりにできる何かあるかな…」
何もなかったからとりあえず私の寝る布団の一角にスペース作っといた。掛け布団代わりに厚手のハンカチをかけて。別に私もそこまで寝相悪くないし潰されるようなことはないでしょ。
で、次の日。
5時半に設定してる目覚ましの音で目を覚まして起きる。
うーん行きたくねー…でも行かなきゃだよねぇ。
まだ寝てるメリーさんを起こさないようにベッドから起き上がって色々準備する。
朝はあんまりお腹に入らないから惣菜パン一個で済ませる唐揚げパンだってさ。中にでかめのからあげ一個丸々入ってた。ちょっとシュールだった。
で、弁当は昨日の夕方から作っておいたものを適当に詰める。昨日すっかり忘れてた洗濯物を回しながら歯を磨いて、着替える。
とりあえず朝のルーティンは終了。現在時刻七時。まあ頃合いかな?そろそろ出ないと電車に乗り遅れる。
「メリーさーん、もう私仕事行くけどー…」
「ぅゃー…」
反応からもう完全な寝起き。
これダメっぽいかな…書き置きだけして先行こう。
とりあえず布団の横に先に職場に行く旨を書いた置き手紙をしておいて、家を出る。
一応鍵はしたしスペアキーも玄関に置いてあるからまあ大丈夫でしょ。
目がさめたらお姉さんがいなくなってた。枕元に書き置きがあったからおしごとに行ったんだなーって分かったけどね。
さて、と私も行く準備をしながら考える。
お姉さんは、本当に人一倍霊力が濃い。濃いなんてレベルじゃない。
普通の人間の霊力ってのは体からゆらゆらにじみ出てるみたいな感じなんだけど、お姉さんはこう…体から溢れ出て津波みたいに流れ出てる。
あんな量の霊力、同族でも見たことすら無い。そりゃあ道を歩けばあっちこっちで怪異に襲われるわけだよ。
それでも。
十分怪異に迷惑をかけられてるはずなのに、それでもお姉さんは私にも優しくしてくれる。
怪異として…もともとただの人形だった私が怪異になってから、人間を襲って脅かすことしか能がなかった私をの頭をなでてくれた。
いい人だよねー。
そんな事を考えながら準備は完了、あとはお姉さんの後ろに転移するだけ。
本来転移するためには、私と相手の
でもお姉さんとはもういま即興で繋ぐ縁より強いつながりが出来てるから、必要はない。
でも怪異としての体裁は有るから一応電話を……ううんおしごと中だもんね、迷惑になっちゃう。このまま飛ぼう。
お姉さんの通ったであろう霊力の道から場所を割り出して、大体の場所を特定。で、ぴょんと飛べばお姉さんのお仕事の場所で「これは何!?」わっ!?
いきなりの大声にびっくりして声の方を見るとスーツを来たお姉さんがメガネをかけたおばさんに向かってお辞儀をしていた。
何してるんだろうな…
「もうちょっと早く出来なかったわけ!?締め切り明日よ!?」
「い、いえ、ですが部長は先週、今月末でも良いと…」
「はぁー?なにか自分のミスがあれば私のせい?あーやだやだ、これだから独身は。心の余裕がないわねー」
…あ?
まだ二話にしてお久し振りです。