さして怖くない怪異たち 作:あーうー
なんかおばさんがあの様子になってからだいぶ平和になってきて、少しずつ気も楽になってきた今日この頃。
どこへ行くにもメリーさんが引っ付いてるからか、不幸な目に会う回数も減って…いやー、ほんとに気が楽。
なんか利用してる気がして申し訳ない気もするけど私だって嫌な目に合うのは嫌なんだわ。
そんなこんなで帰りなんて(心の中で)スキップしながら帰るようになってる。いやはや人並みの帰宅路を帰れるって良いねぇ。
あ、ちなみに今はメリーさんいない。でも残穢的なのがあるみたいでそれに怯えて出てこないらしい。なんというか…やることの割に怪異ってビビリらしいんだよねぇ。
「ん?」
と、いつも通りの帰り際に通る公園の中、もうだいぶ暗いのに一人の男の子がぽつんとベンチに座っていた。
なにやってるんだか…迷子?家出?
まあほっとく訳にいかないよねぇ。
「おーい君、何してんのー」
声をかけただけなのに弾かれたようにこっちを見上げる少年。
うーん、6、7歳ってとこ?小学校一、二年生くらいが関の山かな。
「こんな時間にこんなとこで何してんの。早いところ帰んないとこわぁいおばけに連れてかれちゃうぞー?」
怪異とかいう名前のね。まあ彼らだって別に害をなすのが目的じゃないらしいんだけどまあ別に良いっしょ。恐れられる分には奴らにも害も無いだろうし。
と、
「ボク、ね、だれにもね、きづいてもらえないの」
「ずうっとここにいるのに、だーれも」
「ねえ、」
あ、これ確実にやばいやつだ、と思って反射的にそこから離れようとして…
「!!」
私の周りに影が6個。
私を取り囲むように現れた、立体の人形の影が私を取り囲むように手を繋いで輪を作っている。
「おねえさんも、分かんないでしょ?」
体が、動かない。
金縛りにあったみたいに指先一本も動かせない。強いて言うなら目とか口は動かせる。けど首は動かないから見える範囲にも限りがある。
と、周りから輪唱するみたいに歌が聞こえてきた。
『かぁーごーめーかーごーめー…』
「かごめかごめ…?」
聞き覚えはある歌。ただ、どこから流れているのかわからないその歌は周りの環境も合わさってか何倍も不気味に聞こえる。
私の周りの影たちは私の周りをくるくると周る。目も鼻も口もない、全部同じ形の人の形をした影。
『かーごのなーかのとーりぃはぁー…』
どこからかケタケタと笑う声も聞こえてくる。一層不気味さが増してくる。
『いーつーいーつーでーやぁるぅー…』
か細く響くその声は、確かにおどろおどろしい。
でも、これは…
『よーあーけーのーばぁーんにぃー』
怖いのは怖いんだけど、それだけじゃない…?いや、これは…
『つーるとかーめがすーべぇったぁー』
ひた、と影たちの動きが止まった。
と、周囲全部から聞こえていた声が後ろから聞こえるだけになった。
「後ろの正面だーあ…」
『おねえさんっ!!』
『れぇぁあッッ゙!!?』
『うやぁァぁアッ!!?』
「えぇ!?何何!?え!?何!!?」
メリーさん!?だよね今の!?
その瞬間に周りの影も消えてて、身体も自由に動くようになってたから振り返ってみたところビクビクしながらふしゃーっと威嚇するメリーさんと尻餅をついて涙目になっている少年が一人。
「…もしかして、君も怪異?」
『ひ、ふ、ぇぇ』
いや泣きかけ!?ちょっと待ってマジでちょい説明オナシャス!!
■
「つまり、普通に君も怪異で脅かそうとしたところ急に出てきたメリーさんに逆にびっくりしてこうなった、と」
『…うん』
とりあえず公園でボソボソとやるわけにいかず…というか周りから怪異が見えてない時点で私が一人でわちゃわちゃしてるだけに見えちゃうから家に呼んで、泣きそうになってる少年を慰めるために飴を渡して頭をなでてと色々して落ち着いてきた頃合いで話をしてみると、まあそういう感じらしい。
『メリーさん…怖かった』
『ご…ごめん。おねえさんの電話が繋がんなかったから何かあったのかと…結界術だね、あれ』
「結界術?」
こく、と頷いた少年を見てオウム返しで聞いてみると、どうやら霊力の応用術らしい。
怪異がよく使う、要するにその個人の領域。そこに相手を引きずり込んで万全を期して脅かす。メリーさんも稀に使うらしい。だいたい使わなくてもいいからあんまり使わないらしいけど。
…うん、 領 ◯ 展 開 か な ?
まあアレほど難しいものじゃないらしいけど。
『その、ごめんなさいっ!あんまりやっちゃうと迷惑だって知ってるけど、さみしく、て…』
「淋しくて?」
『ん?』
『ボクは…かごめって、言います。ずっと一人で、あちこちフラフラしてました。でも、誰にも気づかれなくって、話し相手も、いなくて、さみしくて…それで、一人の人に術を使ってみたら、ボクのこと見てくれたんです』
途中までウンウンと聞いてた…けど、うん?
なんか雲行きが怪しくなってきたぞ?
『でも、誰もボクの名前も呼んでくれなくて…同じ怪異の人達には逃げられちゃうし、人間の人達はまず見つけてもらうことすら稀だし…でもね!』
『結界の中に引き入れたら皆ボクのこと見てくれるの!びっくりしてくれて、それですっごく満たされた気持ちになるの!お話はできないけどそんなのよりずぅっと楽しくて嬉しい気持ちになれるノ!それでねそれでね、』
「ち、ちょっと待って。えーと、かごめ君?」
『うーん?』
どんどん早口になってテンションがジャンプアップしていく彼に一回声を掛ける。
うーんなんというか…オタク気質みたいなのがあるのかな、好きな分野のことになると早口になるみたいな…?
…いや、違う。
この子はまだ精神年齢が幼いんだ。
メリーさんは姿形とか行動こそこんな感じだけど言動とか精神性とかはそれなりに大人びてるし、子どもと言うには少し外れる部分もある。どちらかと言うと「お嬢ちゃん」より「お姉さん」が似合う感じ。
でも、この子はその逆、見た目通りの「坊っちゃん」、その幼い状態でずっと一人で耐えてきたんだ。
怪異としての生き方も分からずに、自分で模索してなんとか見つけた生き方がこれだった、って感じかな。
うーん…やめろとは言えないけどどうにもこうにも…見境無しにやるのは…こう、なんか悪影響がありそう。
多分満足するっていうのは霊力を貰って云々ってやつなんだろうけど、もしその原理に気づくことがなくてヒートアップしていったら?それこそ、今はこれで済んでるけどそのうち人の体を直接傷つけて、命を脅かしてしまったら?
命を脅かすことで霊力を奪う感覚が大きくなって、それが癖になってしまったら?
…それは駄目だ。怪異だからとか人じゃないからとか関係なしにそれだけは駄目。私が見てられない。
「この家に来てさ、その満たされた感じはある?」
『え?…あ!ほんとだ!なんで!?お姉さんがボクのこと見えてるから?』
こうなったらとる手は一つだ。
「うーん、それを話すとなるの少し長くなるんだよね。ってことでさ、しばらくの間家にいなよ。その間に色々教えてあげる」
私とメリーさんで、と付け加えると横でメリーさんがなんで!?というふうにバッ、とこっちを振り向いた。
ごめ、巻き込んだわ。でも啖呵切ったとはいえ実際私もそこまで詳しいわけじゃないの。多分怪異方面だとメリーさんの方が詳しいから。