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中学一年生の入学式の日から、湊本さんは私と友達でいてくれた。
彼女は優しくて可愛くていつもニコニコしていたため、あっという間にクラス一の人気者になった。誰とでも仲良くでき、分け隔てなく笑いかけてくれる。それはクラスが違っても同じで、彼女は学年の有名人になっていた。
それでも、気のせいじゃなければ湊本さんは私と話すことが多かった。学年があがってクラスが別になってからも、廊下ですれ違いざまに挨拶をすることは日常だった。
だが…二年生も終わるというある日、一つの噂が流れた。
「誰かが湊本さんを本気でキレさせたらしいよ」
あの温厚な彼女が怒ったところなど誰も見たことがなかったはず。私もその噂が気になったが、今度本人に聞いてみようかなくらいに軽く受け止めていた。
しかし、その噂が流れた日から、彼女は変わった。
いつだって笑顔で、周りにはたくさんの友達がいた彼女は、笑うことがなくなり人を寄せ付けなくなった……らしい。
急に雰囲気が変わった彼女に戸惑った私は、噂の日から一度も彼女と話すことは無くなった。
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始業式も終わり、翌日に控える自己紹介とかいうイベントを呪いながら帰る支度をする。高二になっても私は人見知りで、勿論クラスメイト全員の前で発表するなんてことが苦手じゃないわけもなく……。
「はぁ……」
「ちーひろ!」
「わっ」
思わずため息をついた瞬間、背後からいきなり声をかけられた。振り返ると、友達の碧がこちらに笑いかけていた。
「同クラだねー、よろしく!」
「え、碧もF組?」
「そうだけど、まさか……」
「ごめん、今気づいた」
嘘やん、と言って碧がジト目を向けてきた。
私は、ごめんごめんと笑いながら素早く帰り支度を済ませる。碧が声をかけてきたのは十中八九一緒に帰ろうと言いにきたからだろうと思ったからだ。
でも、一応聞いておこうかな。
「碧、今日は演劇部ないの?」
「ないよ〜。始業式の日からあってたまるか。だから、一緒に帰ろ!」
「うん」
予想していた通りの言葉に、私は少し安堵しながら肯定の意を返した。
碧は、湊本さんの次に友達になった子だ。
なんでも笑いに変えてくれる、明るい子。湊本さんとはまた違った人気者だ。
なんでそんな陽キャと友達なのかというと、部活が一緒だから。……勿論私は演劇部なんて陰キャ殺しの部活に入るわけがない。碧は私が所属している写真部にも入っているのだ。
初めて部活で会話した時、趣味が写真以外も一致していることが分かりすぐに仲良くなった。
「ねねちひろ、ポスッター見た?」
「あー…第六人格の最新情報?」
「そう!私の好きなアニメとコラボだって!コラボ衣装楽しみだわ〜」
「私知らないアニメだったんだよね」
「マジおすすめ。調べてみてよ」
そう、碧と私はゲームオタク。オタクというのは一つでも共通点があると無限に話ができるものである。性格が正反対の私たちが親友やってるのはゲーム好きという共通点のおかげだ。
碧と話しながら廊下に出ると、湊本さんが教室の前に居た。反射的に目を逸らし、そのまま碧と並んで帰路に着く。湊本さんは同じ部活の子と会話していた。湊本さんが近寄りがたいオーラを出すようになってからは、彼女と普通に会話ができる人は限られている。その中でも、さっき話していた子はよく見かける子だ。
…正直、羨ましい。
けれど
「ちひろ、聞いてる?」
「んー?碧のオタクトークは聞き流すくらいがちょうどいいんだよ」
「ひどい」
笑う碧を見ながら、私は考えるのをやめた。
私はおそらくもう、「友達」じゃあ満足しない。
でもきっと、彼女の眼中に私はいないから。
だからこの気持ちは、封印しなければ。
羨望に隠れた、この恋心は。
※本作品に出てくる固有名は全て現実とは関係ありません