キョウリュウジャー×シンフォギア 無敵の詩姫《スーパースター》 作:地水
東京・とあるビルの屋上。
そこにいるのは一人のローブを目深に被った男……かつてパヴァリア光明結社に所属していた錬金術師は目に映る景色を忌々しそうに見ていた。
「おのれ、おのれ……シンフォギア装者……憎き
憎たらしい言葉を吐き連ねているのは、かの聖遺物を纏うシンフォギア装者。彼女達の活躍によってトップであるアダムはこの世から消え、自分が支えるべき結社は崩壊した。
今や各国で残党狩りが行われている中、錬金術師は彼女達が取り戻したこの平穏をぶち壊すために『最後の手段』へと手に掛けようとしている。
もっともそれは、悪魔との取引によって齎される自分の命すら捨てかねない大博打だが。
「自分のこの命を犠牲にしても、アイツらを地獄に落とす……憎い、憎い、憎い!」
恨み節を呟く錬金術師……そこへではない"何者かの声"が聞こえる。
錬金術師の男しかいないはずのその場所に何者かの声が囁く。
『――そうだ、その憎しみ、その憎悪が、我らの糧となる』
「そうだ、自分は、シンフォギア装者の命を……!」
シンフォギア装者に対しての憎悪の言葉を呟く錬金術師……その背後には怪しい影がオーラの如く浮かんでいた。この男の憎悪に呼応するかの如く、影の濃さは異形の形を取り始め……やがて、周囲からいくつもの異形が這い出てくる。
軟体動物のような触手を髪の毛のように生やした頭部を持つその兵士のような存在『ゾーリ魔』は数十人にも及ぶほどに生み出され、溢れ出すように人間の世界へ進撃していく。
――その目的はシンフォギア装者が勝ち取った平和をぶち壊さんとするために。
~~~~
S.O.N.G本部、司令室。
警報アラームが鳴り響き、弦十郎がオペレーター達へ状況確認する。
「何事だ!」
「都市部に多数の怪物が出現、現在破壊活動を行っています!」
立体モニターに映し出されたのは、何十体にも及ぶ人型の怪人達が蔓延る姿。
その手に持った中にも銃にも打撃武器にも見える武器から光線を出し、目につく近くの建物を壊していく。
まるでTVドラマのような馬鹿げた侵略劇の光景が繰り広げており、弦十郎は驚きの声を上げた。
「コイツらは……!」
「分析の結果、あいつらは以前国際機関の戦闘部隊が遭遇した怪物と特徴と一致……恐らく、同種族の可能性があります!」
手元の操作盤を操作しながら、あおいは分析結果を知らせる。
その隣の席では藤尭が現在の状況被害について調べており、その顔には決して良くない状況だと知らせていた。
「現在は警察及び自衛隊が怪物に対して対応していますが、効果がない様に怪物達の進撃が止まりません!」
現在の警察組織や自衛隊の手によって怪人達を抑えようとするが、その効果が薄い。対抗できるであろうシンフォギアシステムは未だに修復終えてない状況の中、弦十郎は悔しそうに拳を握りしめる。
「くっ、殆どの各装者のギアは修復を終えていない……唯一修復を終えているガングニールは響くんへ渡していない……このままでは……ッ!」
苦渋の表情を浮かべる弦十郎は最悪の事態を想定しようとしていた。
だがそこへ司令室へ二人の人物が飛び込んできた。翼とクリス、響と同じシンフォギア装者の二人だ。
「司令、私達が立花の所へ届けに行きます」
「あのバカの事だ。きっとこの騒ぎへ立ち向かっていくだろうよ」
響の元へ向かうと告げた翼の後に続いてクリスは手元に握る紅色のペンダントを突き出した。
それがガングニールのペンダントだと悟った弦十郎は二人に向けて覚悟を尋ねる。
「お前達、行けるか? 相手はノイズではない。だがそれでも未知の敵には変わりない」
「問題ありません、今の私達は装者になれなくても
翼は不敵な笑みを浮かべて答えた。
その隣に立つクリスもしたり顔を浮かべて弦十郎へ言った。
「っていうか、今までの相手も未知の敵だったじゃねえか。オッサンが慄いてどうするんだ?」
「フッ、そうだったなクリス君。任せてもいいか?」
自分自身が今の状況に若干弱気になっている事にハッと我に返って気付いた弦十郎。
いつもの豪快な笑みを浮かべると、翼とクリスの二人に響のペンダントを任せてもいいかと訊ねた。
二人は余裕の笑みで返すと、弦十郎は勢いよく叫ぶ。
「翼、クリスの両名は直ちに響くんの元へ向かえ! 藤尭と友里は最短ルートを検索だ!」
弦十郎の言葉と共に、あわただしく動き出す司令室。
その中でも藤尭とあおいは既に慣れた様子でオペレートし始めていた。
「そう来ると思って、既にやってますよ!」
「未来ちゃんからの連絡がつきました! 響ちゃんは今現場へ向かっています!」
あおいからの状況を聞いて、すぐさま司令室から出ていく翼とクリス。
本部の潜水艦から出て、辿り着いたのは近くのガレージ……中に入ると、一台の青い大型バイクがあり、二人はそれに跨った。
鍵を挿入し、エンジンを唸らせると、ヘルメットを被った翼はクリスへと呟く。
「雪音、しっかり掴まれ。この子のスピードは一味違う」
「いっつもじゃじゃ馬乗りこなしているなら、すぐさま着くんでしょうね!」
冗談交じりの言葉を言い合う二人はあっという間に準備を終えると、ハンドルを回してタイヤが回り始めた。
その直後、排気音を唸らせながら翼が駆るバイクは発進した。
目にも止まらぬ速さで走るそのバイクは公道へ入ると、さらに加速させて車輪の速度を上げていく。
その姿はまるで青い疾風……翼自身によってチューンアップされたそのバイクは現場へと向かう。
~~~~
同じ頃、立花響は今、件の怪物達ゾーリ魔が蔓延る現場へ辿り着いていた。
突如起こった謎の怪人の出現……未来達4人を避難させる暇もなく、ゾーリ魔達は街へと進撃してきた。
明かな破壊活動をしている怪物の進行を止めるべく、未来達を庇いながら辿り着いた早々目に飛び込んできたのは襲われそうになっている2人の幼い少年少女。
「「助けてっ」」
恐怖に震えた声が耳に届いた瞬間、響は走り出した。
その身に纏う鎧がなくても、助けたい命がそこにあったからだ。
「ハァァァァ!!」
振り下ろされそうになったゾーリ魔の凶器を勢いがついた跳び蹴りによって蹴り飛ばし、すかさずハイキックを叩き込んだ。
ゾーリ魔の一体は情けなく吹っ飛ばされていき、響は子供達へ駆け寄って安否を確かめる。
「大丈夫?」
しゃがみながら訊ねる響に、子供たちは泣きじゃくった顔を向けながら見つめてくる。
女の子は怖い思いをしたのかいまだに泣いており、男の子の方が恐る恐る訊ねる。
「ひっぐ、ふっぐ……」
「お、お姉ちゃんは?」
怯えている様子の少年と少女に、響は安心させるようにやさしい笑みを向ける。
背後が迫ってくる他のゾーリ魔が襲い掛かろうとするが、まるで見透かされていたかのように鋭い裏拳が容赦なく叩き込まれる。
軽く吹っ飛ばされた仲間を見て響に注目するゾーリ魔達……響は少年少女の二人を未来達に預ける。
「未来、この子達頼んだよ」
「うん……響、無茶しないでね」
「大丈夫、平気へっちゃらだから」
未来にいつもの明るい笑顔を見せた後、背を向けてゾーリ魔の方へ振り向く響。
目の前にいる未知の怪物達は明らかにノイズとは違う……ギアを装着してない生身の状態でも殴って大丈夫だった分、何をしてくるか分からない。
もしかしたら自分達の想像を超える事をしてくるかもしれないと響は感じたが、今はうだうだ考えても仕方がない。
自分が今できる事をする……響は地面を蹴って走り出した。
「はああああああああっ!!」
勢いをつけたままゾーリ魔へ飛び掛かる響。
ゾーリ魔の一体へ拳を叩き込み、軽く吹っ飛ばした。殴り飛ばされたゾーリ魔は他のゾーリ魔達へとそのまま突っ込んでしまい、ドミノ倒しの様に倒れ込んでいく。
響は拳から伝わった感触を確かめると、一つの確信を得る。
「こいつら、触っても平気……だったらある程度は!」
響は目の前にいる存在がノイズとは明らかに異なる存在だと気づくと、襲いかかってきたゾーリ魔を殴り返す。
振り下ろされた腕を掴んで受け止め、すかさず横っ腹へ肘鉄を叩き込む。怯んだ相手を蹴り飛ばすと、向かってきた別のゾーリ魔へ素早く正拳突きをお見舞いした。
殴り飛ばされたゾーリ魔の一体を見て他のゾーリ魔は響を見て恐れ戦く。
「はぁぁぁぁぁぁ……どうしたっ! かかってこい!」
まるで恐れを抱かぬ
恐れと焦燥がゾーリ魔達に抱いている。このままではこの勇ましき少女に圧されてしまう。
そんな中であった、声が響いたのは。
「ようやく出会えたな……シンフォギア装者の歌女の一人!」
多くのゾーリ魔の群れを掻き分けて中から一人の男は現れる。
響がその人物の姿を確かめると、そこに立っていたのは錬金術師の服装を身に纏った一人の男。
その服装には見覚えがあった……以前何度も対峙した、パヴァリア光明結社の錬金術師が身に纏う式服。
この男が元結社の錬金術師と分かった事を響は驚き、その反応を見た錬金術師はニヤリと不気味な笑みを浮かべる。
「恨めしいものだ。お前達のせいで俺達錬金術師は果たすべき命題も何もかも失った。そしてお前らはその世界を変えるかもしれない力を手にしながら何も無き陳腐な平穏を手にした」
「陳腐……!?」
「そうだ、ぬるま湯につかり切った人類が望む平穏の先には何も生まれぬ。だから我々は研鑽を望み、高みを望み、そして神のごとき力を手にしてこの淀み切った世界を変革する……はずだった!!」
錬金術師は憎しみを孕んだ言葉と共に響を睨み付けると、その双眸を覗かせる。
そこには燃えるような憎悪の輝きがそこにはあった。
今まで見た事のないその憎悪に滾る瞳に響は一瞬驚くが、それでも負けじと身構える。
その一方、錬金術師は自分の胸の内に抱えた憎悪をぶちまけるが如く叫ぶ。
「もはや果たすべき命題すら失った我々はこの世界の秩序ごと破壊するしか道はない……! 貴様らが手にした平穏をこの手で、ぶち壊す!」
錬金術師からにじみ出てくる憎悪の気配……まるで烈火のごとく燃える憎悪の感情は響や隠れている未来にすら嫌でも感じ取る。
その燃え盛る感情に呼応するように、ゾーリ魔の動きもまるで洗練された兵士のように急変。
その手に持っていた武器の銃口から放たれ、光弾が迫りくる。
「っ!!」
無数に飛んでくる光の光弾に身構える響。
万事休すか、誰もがそう思われたときに響いてきたのは……別方向から放たれた銃声だった。
ゾーリ魔達の放った光弾はどこからか放たれた銃撃によって撃ち落されていく。やがて全ての光弾を撃ち落とし終えると、硝煙の後を縫って現れたのは一人の男だった。
恐竜のデザインが施された群青色のジャケットと、青いメッシュの入った黒髪という特徴的で見覚えのある姿を見た響はその名を口にした。
「そ、ソウガさん!?」
響の目の前に立つのは、一人の男――自分が探し回っていた男・ソウガその人であった。
彼はその手に持った銃型の黄色い武器を構え、錬金術師が率いるゾーリ魔達をにらみつけていた。
まるで異様な光景を目にしたような目付きで錬金術師達を見た後、鼻で笑いながら言い放った。
「よぉ、邪悪の王様気取りのキングさんよ。チェスゲームなら他所でやりな」
「貴様、何者だ!?」
「面と向かって名乗るほどでもないが、俺はそこのゾーリ魔達に用があってここへやってきた……やってきたのはいいが、そのゾーリ魔を率いているお前は何者だってんだ?」
「名乗るも烏滸がましい錬金術師の一人よ……邪魔をするなら貴様も始末してくれる!」
錬金術師の怒号と共に、一斉に襲い掛かるゾーリ魔達。
目の前に迫る怪物の軍勢に響は危ないと声を放とうとするが、それに対してソウガは不敵な笑みを向けると、懐から一本のアイテムを取り出す。
それは、恐竜の意匠が施された電池型のアイテムであった。
「ブレイブイン!」
ソウガがスイッチを押すと、電池型アイテムに備え付けられていたプレートが切り替わり、恐竜の姿が映し出される。
充電池型アイテム『獣電池』が力を発揮する状態へ切り替わった後、黄色の銃型アイテム・ガブリボルバーへと装填。するとけたたましい程のメロディと電子音声がその場に鳴り響いた。
【GABURINNCYO! TOBASPINO!】
「キョウリュウチェンジ!」
ソウガは自分自身を変える合図でもあるその言葉を口にすると、勢いよく前へと踏み出した。
その足取りはガブリボルバーから流れるメロディに乗るように踊り舞い、その音色に合わせて襲い掛かるゾーリ魔達を蹴散らしていく。
まるで踊り狂うサンバのごとくソウガは激しくダンスを披露すると、ガブリボルバーの銃口を前方へとむけて叫んだ。
「ファイア!」
勢いよく引き金を引くと、銃口から飛び出てきたのは恐竜の頭部を模した光のエフェクト。
それはゾーリ魔達を蹴散らしながらソウガの周囲を周回すると、彼にかみつくように融合し、その姿を変えていく。
そこに立っていたのはネイビーブルーの強化スーツを纏った、一人の戦士。
まるで特撮映画のヒーローのような、あるいはそのものといってもいい姿となったソウガは高らかに今の自分の名を名乗り上げた。
「
響達の前に姿を現したのは、群青色の戦士――『キョウリュウネイビー』。
恐竜+人間、億千年の時を超えて巡り合った最強のヒーロー。
その名は『強』き『竜』の『者』、獣電戦隊キョウリュウジャー!
今ここに、異世界からの