系—幕間編   作:七星七夕

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当作品は二次創作であり、原作、実際の物事、人物、事象には一切の関連がありません、ご注意ください
また、死ぬほど捏造設定があり、原作の隙間を縫うような部分がいくつも散見されますが、これは個人の好みでありそういった作風であるとご理解いただければと思います。個人的にはその隙間は想像の余地のままになってたらうれしいな!

また、当作品は恋愛小説です
版権キャラクターとの恋愛描写や性行為描写が苦手な方は回避をお勧めします
主人公が大怪我したり戦闘したり場合によっては修行するかもしれませんが誰がなんと言おうとこの作品は恋愛小説です。ご理解いただければと思います
カップリングは「吉良イヅル×オリジナルキャラ」になります。ハーレム等の予定はありません、悪しからずお願いします










幕間11

「幕間11」

 

 

 

「やぁ、お嬢さん」

 

 お昼ご飯を食べてから、食堂でぼーっとしてるのもなぁと食後の休憩場所を探していたら後ろから声をかけられた

 聞き覚えのある声に反応して振り向くと、そこには細身で彼の方より背の高い…死覇装に袖のない隊長羽織を見に纏った男性

 

「お疲れ様です、鳳橋隊長」

「やだなぁ、ローズって呼んでくれって言ったじゃないか」

「そうですね、鳳橋隊長」

 

 鳳橋隊長は春になる少し前に赴任した新しい隊長さんだ。とは言っても百年前、つまり市丸さんの前にこの隊を率いていたのはこの人らしいので再赴任という形になるらしいけど

 

 ただクセの強い人で、よく朝礼にはいない。彼の方曰く音楽が趣味だそうで、朝から音楽の女神に微笑まれると現世の楽器を弾かないではいられず、結果として重役出勤を重ねてると聞いた

 確かにこの人が来てから執務室からよく音楽聴こえるので、よほどの頻度でこの人には音楽の女神とやらが耳元で囁くんだろう。難儀なことだ、彼の方が。でもそんな不憫な彼の方も好き

 

「相変わらずつれないなぁ。ところで緋月サンはこれからどこに行こうとしていたのか、尋ねてもいいかな?」

「お昼を食べ終えたので少しのんびりしようかと…場所を探していたところです」

「なら僕のキャンディスの新しい歌を聴きに来てよ! 今朝できたばかりなんだ!」

「お断りします」

 

 あいにくそこまでの時間はない。でも鳳橋隊長はよく人を集めて演奏会をやっているのを見かける。隊士には人気みたいで使われている部屋を覗いたことがあるけど中は人でいっぱいだったな

 

「イヅルのインスピレーションからできた新曲でも?」

「…ならますます行くわけにはいきませんね」

「音楽は好きじゃないのかい?」

「いいえ、好きですよ。何度か聴いた限りですと現世の音楽の方が耳馴染みもいいですし」

 

 尸魂界でよく行われる類の音楽は現世では個別の種類として分類されているらしい。なんでも現世には数え切れないほどの音楽の種類があって、その分類だけとっても数え切れないとか

 私が聴いた音楽がどんな分類のものなのかは知らないけど、以前どこかで聴いたそれはたまに口ずさむ

 

「ならどうして?」

 

 鳳橋隊長の言葉に、少しだけ自分の意見を言っていいものが悩みはする。でもやっぱりこれしかないと意思を決めて口を開いた

 

「嫉妬するからです」

「嫉妬?」

「貴方は彼の方の本質を見抜き、それを表現する手段を持っている。私はそれに嫉妬していますし、聴いてしまったらその感情は加速してしまう」

 

 今や私の一番の嫉妬の対象は鳳橋隊長だから…申し訳ないけどそういった集まりには参加したくない

 どんなに私が頑張ったってあの人の本質は根暗いものだ。そして彼の方の背負う傷や過去は変わらない。私がずっとそう思っていたことを、目の前のこの人は簡単に形にして表現へと変えてしまう。それがすごく、羨ましい

 

「私はずっと貴方に嫉妬している。干し柿をみんなで作ったあの日から。だからそういったことに顔は出せません、申し訳ありません」

 

 藍染さんが捕まって、諸事情あって離れていた尸魂界に帰ってきたらしい鳳橋隊長がまだ赴任する前、突然市丸さんの残した柿の木になった実で干し柿を作ることになったことがある

 なんでも隊舎内を何故か散歩していた鳳橋隊長が話を聞いて突発的にやろうと言い始めたらしく、周囲の隊士たちも今までであれば毎年の行事だったのでやろうってなったらしいんだけど…珍しく彼の方が参加していたから私も少し顔を出した

 私は皮のむけた柿を連ねて紐で結ぶ作業をしていたんだけど、その時ずっと暗く重たい曲が流れていたことが気になったしなんか嫌な感情を抱いたのを覚えている。それは曲が嫌だったんじゃなくて、もっと違う、鳳橋隊長の表現したいものが嫌だった

 

 後で彼の方に話を聞いたら、着想の元は彼の方だったらしいと言われてすぐに嫌悪感の理由が腑に落ちたのを思い出す。私以外に彼の方の本質を、それもほぼ面識のない人間が見抜くのはすごく…不愉快だと思ったから

 そして何より、それを感じ取って形にできるのは羨ましかった。私にはそんな才能はないし、確かに私のやりたいことが彼の方を幸せにすることでも、その漠然としたものの輪郭を掴めるのが羨ましい

 

「そう…来てくれないのは残念だけど、キミは本当にイヅルを愛しているんだね」

「なん…なんですか急に」

 

 ここ隊舎内なんだけど…突然何を言い出すのか

 

「だってそうだろう? ボクの才能に嫉妬するほどなんだから、キミはボクと同じものをイヅルから感じてることになる。そしてキミはイヅルのその部分まで愛している…一曲書けそうだ」

「恥ずかしいのでやめていただけると…」

「そうかい? ますます残念だ」

 

 まぁ恥ずかしいよね。うっかり彼の方が隊長に着想元を問うたりなんて考えたら顔から火を噴きそう

 

「そういえば、鳳橋隊長はどうしてこちらへ?」

「ボクも散歩だよ。新しいインスピレーションが欲しくてね」

「はぁ…そうだったんですね」

 

 インスピレーション…は着想を指す言葉だっけか。確かにあれだけ毎日違う曲引いてると少なからず着想も枯れそう

 

「イヅルはいつもボクのインスピレーションを掻き立ててくれるけど、たまには違う曲も弾こうと思ったんだ。今は穏やかな曲を弾きたい気分でね」

「穏やか、ですか…」

「そう。でもキミは炎のようだ」

 

 そう言った鳳橋隊長は改めて私を見る

 この人、タレ目につり眉だから彼の方に似てるんだよな…同じ金髪だし、ちょっと顔が綺麗に見えるのはそのせいだろうか

 

「キミから感じるのはいつも他人を寄せ付けない業火…それなのにイヅルだけは燃えないように、その火を引いて受け入れる。とても不思議に見えるよ」

「彼の方がいてくださればそれがいいので」

「迷いのない返事…頑なな意思は折れた時大変だよ。ボクはその辛さを知っている」

「それでも、彼の方が幸せであればそれ以外は望んでいません。それが私の生きたいと思う理由だから」

 

 そのために生きている。迷いはないし、変えるつもりはない

 誰がなんと言っても、何が起きても、あの日改めて私は彼の方を幸せにすると誓った。彼の方は私に"隣にいて"と言ってくれたから。それならもう誰にも、彼の方を私より幸せにできるかもしれない人にだって彼の方は渡さない。私が幸せにしたい

 

「キミのエネルギーはそこから生まれるんだね…締め付けるような独占欲と焦げるような匂いのする愛。楽譜にしたためられないのが本当に残念だ、メロディーはもうボクの心に響いているのに」

「鳳橋隊長が言うほど綺麗なものじゃないので、音楽なんて素晴らしいものに昇華しないでください。私のこれはただの汚泥です」

 

 そうだ。私の心から溢れているのは感情の汚泥。その汚泥を貴方にはしたなく塗りつけて私は貴方を"私の貴方"だと主張し続けている。綺麗なものなんてそこにはない

 

「本当にそうかな? ボクには混じり気のない業火に見えるよ。キャンディスよりはフライングVの方が合いそうだけどね」

「…そうだといいですね」

 

 他人の目に自分がどう映っているのかなんて知る由もないので、結局理解できなくても無理はない…と一度会話を諦める。ここで食い下がっても意味ないし

 それにしても話し込んでいたらそろそろ昼休みも終わるんじゃないだろうか

 

「そういえば、鳳橋隊長はお昼は召し上がられたのですか?」

「ボク? まだだよ」

「そうなると、もしかしたら食堂が一度閉まるかもしれないので向かった方がよろしいかと…」

「でも良いインスピレーションは降ってこないんだ。一曲弾けないと食事も喉を通らないよ」

 

 やっぱ癖のある人だな…なるほど、何よりも音楽と美学が優先的な思考で生きてるのか。まぁ、それなら無理強いするのもよくないかな

 

「吉良副隊長に注意されないのであればそのままでもよろしいかとは思いますが、私はそうは思いませんので…」

「うっ…それを言われると弱いな。そういう時のイヅルは怖いから」

「でしょうね…自分だって無理をするくせに」

 

 私は呆れてため息をつく。鳳橋隊長が来るまでは何度ご飯を抜いて仕事をしていたことか。その辺今は解消されてると良いんだけど

 

「!」

 

 そんなことを考えていると、彼の方の霊圧が近くなるのを感じた。ここにくるのか

 

「鳳橋隊長」

「なんだい?」

「彼の方がここに来ますよ」

「わかるの?」

「勿論。ほら」

 

 私が右の廊下を指差すと、彼の方がひょこりと現れる。それから貴方は私を見つけて少し驚いていた

 

「お疲れ様です、吉良副隊長」

 

 私がその瞬間に先んじて頭を下げると、貴方は少しばかり驚いた顔をする

 

「隊長と…緋月七席? 珍しい組み合わせですね。どうかしたんですか?」

「吉良副隊長の話をしていました」

「僕の?」

「確かにそうだけど…緋月サンはそういうこと赤裸々に言うんだね」

「吉良副隊長に嘘はつかないと誓っていますので」

 

 どんなに小さな嘘でもつきたくはない。それで苦い思いをしても貴方の信用を得れるのであれば、結果としてはどうでも良いのだ

 

「ところでイヅルはどうしたの?」

「あぁ、そうでした。食堂がそろそろ一度閉まってしまうのでお昼に行って欲しいと思いまして」

「緋月サンの言った通りになった…」

「? 緋月七席がなにか?」

「いや、気にしないでいいよ…。うーん、僕としてはインスピレーションが浮かんでから楽しく食べたいんだけどなぁ」

「それこそお昼を食べたらいいのではないでしょうか、目指す題目が"穏やか"とくれば、ご飯の時間は穏やかですよ」

 

 隊長が悩んでいるようなので一言助言してみる。これで動いてくれると楽なんだけど

 

「ふむ…イヅルもそう思うかい?」

「僕ですか? 音楽のことはわかりませんが…考え事をするのに空腹は向かないとしか」

「そっか…ならお昼を食べてこようかな。イヅルは食べたのかい?」

「僕もまだです」

「なら一緒に行こうよ。緋月サン、イヅルを借りていくよ」

 

 隊長の言葉に少し驚く。まさか私に断りを入れてくるとは思わなかった

 

「は、はい…お二人とも行ってらっしゃいませ」

 

 驚いた私が少し反応に置かれても、鳳橋隊長は小さく笑うばかりで特に何も言わない。そのまま彼は軽くこちらに挨拶をして去っていった

 

「…あ」

 

 そして置いていかれてから、何かおやつでも一緒に食べに行けばよかったと気づく

 

「…はぁ」

 

 私って本当にバカ…と落ち込みながら、とりあえず食堂が閉まりそうならそろそろ昼休みも終わりだと仕事場に戻った

 

 

 

 

 

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