系—幕間編   作:七星七夕

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当作品は二次創作であり、原作、実際の物事、人物、事象には一切の関連がありません、ご注意ください
また、死ぬほど捏造設定があり、原作の隙間を縫うような部分がいくつも散見されますが、これは個人の好みでありそういった作風であるとご理解いただければと思います。個人的にはその隙間は想像の余地のままになってたらうれしいな!

また、当作品は恋愛小説です
版権キャラクターとの恋愛描写や性行為描写が苦手な方は回避をお勧めします
主人公が大怪我したり戦闘したり場合によっては修行するかもしれませんが誰がなんと言おうとこの作品は恋愛小説です。ご理解いただければと思います
カップリングは「吉良イヅル×オリジナルキャラ」になります。ハーレム等の予定はありません、悪しからずお願いします









幕間12

「幕間12」

 

 

 

「…」

 

 熱を出した

 一人修行の最中大雨が降ってきて、慌てて帰って体を温めたものの…翌日である今熱を出して寝込んでいる

 まぁまだ雨が降れば冷える季節だし、多分そこに風邪菌でも入ってきたんだろう

 とはいえ、

 

「しんどい…」

 

 しんどい。何がしんどいって体もそうだけどそれ以上に心がしんどすぎる

 当たり前だけど部屋に篭ってるから彼の方を一目も拝めていない。風邪うつったら嫌だから絶対にこの部屋に来てほしくないし、私が部屋を出ることもないけど寂しくて死にそうなので秘密裏に女性死神協会の方から買った彼の方の写真を抱きしめて布団に篭っている

 

「うう…イヅルさん…」

 

 崇拝対象である吉良副隊長を一人の時でもイヅルさんと呼ぶようになったのはいつからだろうか。まぁでも、本当に彼の方は私が隣にいていいって言ったしいいよね。まぁ基本的に内心でと名前呼ぶなんて恐れ多いからそもそもあんまりやらないけど

 そのあんまりやらないことをやるくらいには寂しい。心の栄養が足らない、安心感もない…どうしたものか

 

「あ、やば…」

 

 考え事してたら頭くらくらしてきた。布団の中にいるのに頭回ってる感覚って変な感じするけどなにより気持ち悪いなこれ。吐くほどには至らないけどなんか頭いた…い…

 

「!」

 

 飛びかかった意識に伝令神機の着信音が飛び込んできた。大きな音を立てて鼓膜に響く高い電子音が耳をつんざく

 かと言ってわざわざ着信元を確認して出れるほど元気もないので、ろくに画面も見ないまま応答ボタンを押してスピーカー部分を耳に当てた

 

「あ゛い…ひづきです…」

『緋月くん? 大丈夫かいその声…』

「え゛」

 

 屍のような状態ででた電話の向こうにいたのは彼の方だった。いやまってまってこんな死んだ声で出たらダメじゃん死にたい

 

「えっと…大丈夫ではないですが寝てれば治ると思うのでお気になさらず…」

『今からそっちに向かうから大人しく寝てるように』

「えっ」

『なにか欲しいものはあるかい? 用意できるものは持って行くけど』

 

 貴方は当たり前みたいに言うけど、正直それどころじゃない。こんな姿で会えるわけないじゃん!

 

「いやいやいやいや!? 風邪うつりますから! やめてください!」

『そう言うけど君、今日寝てることしかしてないだろ』

「う…」

『そのまま大人しくしておくんだ。今行くから』

「えっ、まっ…」

 

 そのまま通話が切れた。伝令神機のスピーカーからは通話を相手が切った時の特有の音が聞こえる

 私はなんとか通話終了のボタンを押して、そして震える手からは伝令神機は落ちていった

 

「どうしよう…」

 

 と、とりあえず髪とかさないと…と布団から起きあがろうとしてふらついた瞬間、私の部屋の障子が問答無用で音を立てる

 

「…」

 

 音に反応してボロボロの私が呆然と眺めている障子が開けられたことを認識するまで、体感で三秒かかった

 

「まって!!!」

 

 そして光の速さで布団に潜り直す。だって障子を開けたのは彼の方だったし、私は髪一つ梳かすこともできてない。むしろその姿を見られた、最悪すぎる。その辺の寝起きとは訳が違うのに

 それなのに布団の向こうからさも平然とした障子の閉まる音が聞こえる。これは絶対に去っていった閉まり方ではないし、その証拠にこちらに向かって数歩足音が聞こえてきた

 

「鏡花」

「!」

「鏡花、出ておいで」

 

 ずるい、こういう時に限って迷いなく名前呼ぶのするい。普段私が貴方の名前を呼ぶより貴方は私の名前呼ばないくせに

 

「熱が出ていると言っていただろ、対処は早い方がいい」

「ですが…」

 

 やっぱり今は見られたくないって。だって幻滅されたら嫌だし…まぁ、それを言い始めるともっと血まみれの姿見られてるけどさ、あの時は意識が飛んだわけで、今は訳が違う

 

「今更幻滅するとでも思っているのかい?」

「…だって髪も梳かしてないですよ」

「むしろそれはいつも見てるじゃないか。君は髪が長いんだから」

「う…今絶対不細工なので」

「今はそういう問題じゃない。とにかく出てくるんだ」

 

 で、出たくない…出たくないけど、悪化して迷惑かけるのはもっと嫌だし…

 

「…はい」

 

 ゆっくりと被っていた布団を上げて顔を出す。やっぱり恥ずかしいので俯いていると、貴方の指が私の顎に触れてそのまま持ち上げられた

 

「やはり部屋が暗いと顔色まではわからないな…少し触れるよ」

 

 貴方の言葉を聞きながらもう触れてるような…とか思っていたら額にひやりとしたものが触れる。そしてそれが貴方の掌だとわかるのに時間は必要ない

 

「随分熱いな…よくさっきまで暴れられたものだ」

「あぁ〜…イヅルさんの手気持ちいいですね…」

「だろうね…食事はしたかい?」

「そういえば水飲む元気もなかったです…」

 

 私の返答に貴方は思い切りため息をつく。それから何故か髪を軽く撫でてくれた

 

「照明をつける。少し目を閉じて」

「はい」

 

 目を閉じると、真っ暗だった視界から瞼を通して薄い光が入ってくる。光に目をやられないようにゆっくりと開けると、いつも通り冷静な貴方がそこにはいた

 

「何も胃に入れていないみたいだから、まずは水分を補給しよう」

「大丈夫です…」

 

 流石にそこはさっき暴れてたくらいだし大丈夫…なはず。でも倒れたら怖いのでなるべく楽な体勢を意識していると、湯呑みに注がれた水を差し出された

 

「効率的に水分を補給する必要があるから、四番隊に行って経口補水液をもらってきた。とりあえずそれを飲んで、胃や腸に負担があるようなら救護詰所に行こう」

「…わかりました」

 

 けいこうほすいえきってなんだろう…とは思いつつ、"効率的に水分を補給する"と貴方が言っていたところに注視して一口飲んでみる

 

「…美味しい」

 

 確かに渡されたものは水ではなかった。水ではなかったけど、ほんのり甘くて後味がさっぱりしている…素直に美味しい

 

「美味しいということは脱水症状を起こしていたということだ。まったく…来てよかった」

「どうしてわかるんですか?」

「経口補水液というのは、本来なら過度に甘いばかりで口に合うものじゃない。だけど同時に人の体に必要な塩分が吸収されやすいように電解質に変わって含まれているものだ。過度な空腹で食事を摂るとなんでも美味しく感じるだろう? それと似ていると思ってくれれば良い」

「はぁ…すごいですね…」

 

 世の中いろんなものがあるんだなぁ…と思いつつ手に持った湯呑みに視線を落とす。こんなに美味しいのに、普段飲んだらまずいってこと? ちょっと信じられない

 

「今回は急いでいたから救護詰所で保管されているものをわけてもらったけど、作り方は簡単だから気にせず飲んでほしい。熱が出ている状態で脱水症状が悪化するのは危険だ」

「わかりました」

 

 そう言われたのでとりあえず湯呑みに入っている分はさくっと飲み干した。でも、取り急ぎ二杯目を飲むのはやめておこうかな

 

「食事を胃に入れられそうならとりあえずいくらか用意できるけど、何か食べられそうかい?」

「お腹は空きました…」

「食欲があるなら大丈夫かな。何か食べたいものは?」

「甘いものがいいです…」

 

 おかゆも捨て難いけど、いまは牛乳寒天が本当は食べたい。でもそんなものはなさそうと判断したので次点にきた甘いものを所望する

 

「甘いものなら牛乳寒天と缶詰のみかんとか…」

「牛乳寒天があるんですか?」

「喉越しがいいものがいいだろうと思って、比較的柔らかいと聞いたものを買ってきてみたんだ。それがいいのかい?」

「はい…牛乳寒天ちょうど食べたくて」

「なら盛り付けてくるから少し待っていてほしい。待っている間は横になっているように」

「わかりました…」

 

 そう言い残して貴方は部屋を去っていった。私はもそもそと布団に潜り直して天井で光る照明を眺めながら、我ながら現金なものだと少し恥ずかしくなる

 彼の方を拝めただけでこんなに嬉しくなるなんて…わかってたけどやっぱり申し訳ない。これで彼の方に風邪がうつったらどうしよう。確かに咳き込んでる訳じゃないからそういう意味だと危険は少ないかもしれないけど、やっぱり不安だ

 

「でも綺麗だったな…」

 

 泣きそうなくらい今日も彼の方は綺麗で、今は熱にやられてるから余計に泣きそうになる。こんな調子で大丈夫なのかな、私

 

***

 

「ん〜〜…っ、美味しい…っ」

 

 は〜! 牛乳寒天うまっ。ゆっくりと食べるようにとは言われたけど匙が止まらない

 なんでこう寒天って美味しいんだろう。あんみつに入ってるやつとか最高だけど、今はもう少し柔らかいものが食べたくて牛乳寒天の気持ちだった。そしたら彼の方が買ってきてくれたものが今の気分にぴったりな少し柔らかくて喉越しがいいやつだったからもう最高

 

「思ったより元気そうでよかった。その調子ならすぐによくなるかな」

「そうだと思います。ご迷惑をおかけしました」

「迷惑だとは思ってない。恋人が体調を崩したら顔を見せるのは当たり前だろ」

「こ、こい…」

 

 貴方から出た思わぬ一言に顔を赤くする私。いやわかってるんだけど、間違ってないんだけど、改めて言われるとやっぱり喜びとか照れとか色々な感情が顔を熱くする

 

「まだ慣れないのか…変な子だな」

「言われる度に嬉しくなってしまうので…一生慣れないかもしれません」

「それは困る」

「え?」

 

 不意な言葉に"困るのは私では"と惚けていると貴方が私の頬に触れた

 

「遊びで付き合ってるわけじゃないんだから、僕の隣にいる自覚をいい加減持って欲しいと何度も言ってるはずだ」

「…!」

 

 私の頬に触れてる貴方の手は確かに冷たくて気持ちいいのに、私の熱はさらに上がってる気がする。だってそんなこと言われたら緊張しないわけも、動悸が激しくならないわけもない

 

「で、でも…それとこれは別というか。やっぱり貴方の隣に入れることは本当に嬉しくて…嬉しいです」

 

 貴方の隣にいるんだとわかるだけで胸が跳ね上がる。貴方をずっと見つめてよくて、貴方に触れてよくて、貴方に抱きついてよくて、貴方の視線がこっちに向くなんて…わかっていても毎日嬉しくてどうにかなりそう

 

「…本当に変な子だな、君は」

「そうでしょうか…? 自己中心的だとは思いますが」

「そういうことじゃないよ」

「…?」

 

 素直に疑問を浮かべるも、貴方はそれ以上何も言わなかった。自分で言うのもなんだけど、すごく感情的で自分のことしか考えてない意見だと思うんだけどな。よく考えたら、これで貴方に迷惑がかかってたらどうしよう

 

「とりあえず食べ切ったならまた横になっているといい。その前に水分補給しておくかい?」

「あ、お願いします。念の為…」

 

 言われた通りさっきもらった液体をもう一度もらって飲んでおく。常温のはずなのに冷たく感じるのが熱があるのだとさらに理性に向かって自覚させた

 飲み切ってから布団に潜って横になる。そして少し寂しくなってしまった

 

「…」

 

 一通り様子も見終わったし、貴方もそろそろ帰ってしまうだろう。それがとても寂しい

 

「どうかした?」

「あ、いえ…嘘はつきたくないのですが、恥ずかしいので言いづらいです…」

「…まさか寂しいとか?」

「!!」

 

 ば、ばれ…恥ずかしくて死にそう

 というかなんでわかったんだ

 

「君のことだからそう言うと思ったよ」

 

 貴方はそう言うと、一度下げようとした食器の置かれたおぼんを置いて横たわる私の横に座り直す。こういう時に背筋の正しい正座なの、貴方らしい

 

「!」

 

 そばにいてくれて嬉しいな、なんて考えていたら髪を撫でられた。恐る恐る手を布団から出すと、貴方の節くれだった細い指が私の指に絡む

 

「い、いいんですか…こんな…」

「君が要求してきたんだろ」

「ぅ…わかってますけど…嬉しくて熱上がりそうです」

「ならやめておくかい?」

「ごめんなさいお願いしますこのままで」

 

 いやだ! もう手を繋いだから離したくない!

 でもやっぱり嬉しくて熱上がりそう!

 

「このまま眠るといい。そばにいるから」

「…ごめんなさい、付き合わせて」

「問題ない。はじめからこうなる気がしていたんだ」

「そう言われると恥ずかしいですね…」

 

 子供じゃないんだから…と自分で思ってしまう。あぁでも、おじさんは少し離れたところで寝ててくれたな。眠いだなんだって放置してるふりして、私が寝ると濡らした手拭いおでこにおいたりしてくれたっけ。だから寂しいのかな

 

「あぁ、そうだ」

 

 不意に貴方がそう言って、私に断りを入れてから一度手を離して懐を軽く探る。すると見慣れない四角いものが出てきた

 

「君が風邪をひいたと聞いて松本さんがくれたんだ。額に貼るものらしい」

 

 出てきた四角いものはどうやら袋らしい。貴方は袋の封を開けると、何やら袋に書いてある指示に従って中身の物体についた何かを剥がす

 

「少し失礼するよ」

 

 そしてその物体を、私の額に貼り付けた

 

「つめたっ」

「そういうものらしい。現世では熱冷ましに濡らした手拭いではなくてこういった道具を使うそうだ」

「はぇ…便利ですね…」

 

 貼られたところがひんやりして気持ちいい。最初こそびっくりするくらい冷たいと思ったけど、慣れてきたのか今は心地いい感じになってる

 

「八時間は保つそうだから、やはり今は寝た方がいい。起きる頃には熱も落ち着いているかもしれないからね」

「わかりました。えと…」

 

 あああ言えない。寝るまで手繋いでてなんて恥ずかしくて言えないよ。して欲しいけど、心細いからそばにいて欲しいけど、でもやっぱり…

 

「!」

 

 上手く言い出せないままただそわそわとしていたら、貴方が私の手を握った。私がそれに驚くと貴方はまだ少し呆れたようなほっとしたような、そんな顔をする

 

「こうして欲しかったんだろう?」

「あ…えっと…」

「嫌なら離せばいい」

「そんなわけない! だってこうしたくて…」

「ならこのまま眠るように。そばにいるから」

 

 そう言って貴方は少しだけ微笑んだ。その表情を見ていると正直とても安心する

 あぁ、貴方は穏やかにいてくれるんだって

 

「…はい」

 

 私は静かに布団をかけ直してから瞼を閉じる。そして貴方の手の感触に集中した

 それからゆっくりと呼吸をして…少しずつ意識は夢へ揺蕩っていく

 それを素直に"変な感覚だ"と思う。さっきまで、貴方が来るまで泣くほど寂しくて貴方が来るってなったら会うのが怖くて。それなのに今や手を繋いでるこの感覚に安心して嬉しくなってる

 本当に、風邪がうつったらってまだ怖いのに。本当に眠るまでここにいて欲しいなんて

 

「…いづ、る…さん…」

 

 ぽつりと、ふわつく意識で貴方を呼ぶ。そしたら繋いだ手に少し力が入ったような感覚があった。その感覚に私の意識は本格的に夢へと旅立っていく

 

 あぁ、これなら寂しくないんだなって思った

 

 

 

 

 

 

 

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