三国志外伝『死神と呼ばれることになる名も無き一般兵のお話』 作:車馬超
「うえぇぇん……どうして何進様死んじゃったのぉぉぉ……」
「……まあしょせん妹のおまけとして出世しただけの人だからなぁ……宮中の複雑な権謀術数に巻き込まれたらひとたまりもないって」
宮廷の屋根裏に潜みながら涙ぐむ俺を友人が呆れたような目で見つめてくる。
「うぅぅ……しかも護衛兵のくせに大将軍を暗殺から守れなかった無能野郎って罵られるし……何進様が妹の呼び出しだからってノコノコと護衛を連れずに出ていったせいなのにぃぃ……」
「そりゃあ護衛対象が暗殺されたら仕方ないだろ……というか俺がこうして助け出さなかったらお前、今頃他の奴らと一緒に責任問題で首切られてんだぞ?」
「わ、わかってるよぉぉ……本当に感謝してるってぇ……こんな強引に割符を盗むように出てった俺を助けに来てくれてさぁ……マジでお前という親友がいて俺は幸せ者だよぉ……ぐすん……っ」
流石に不義理を働いた直後だというのに助けてもらったのだから、今回ばかりは友人に文句など言えるはずがなかった。
「はは……いやまあ、何というか……あまりに不公平な取引だったから放っておけなかったってのもあるんだけどな……」
「うんうん、あんなゴミを押し付けておいてこれだもんなぁ……本当に悪かったって……」
「い、いやむしろ逆なんだが……何せおかげでどこの勢力に属さなくてもやっていけるぐらいだし、今だってこうして宮中に簡単に忍び込んでお前を助け出せるぐらい……い、いやとにかくまあ今回のこれで全部チャラってことで……」
「???」
友人の言いたいことがよくわからないが、これ以上話を続けたくなさそうなので俺も空気を読むことにした。
「それより、これからお前どうするんだ? 俺が易者をやりつつ経営している病院兼私塾で少し休むか?」
「す、すごいなお前……で、でも俺みたいな重犯罪者の逃亡犯が一緒にいたら迷惑にならないか?」
「大丈夫だって、その辺は幾らでも幻術で誤魔化……と、とにかく気にするなって俺とお前の仲だろっ!!」
「うぅぅ……あ、ありがとう親友ぅぅぅ……ぐすん……っ」
「な、泣くなって……ほらじゃあ行くぞ?」
友人に連れられるように宮中を歩いていくが、誰かに見つからないかと人目が気になって仕方がない。
しかし不思議とすれ違う人々は誰もかれも煙に巻かれたかのようにこちらを注視することがなく、おかげで特に止められることもなく外へ出られた。
「はぁぁ……空気が美味しいよぉぉ……はぅっ!? な、なんか騒がしいぞっ!? お、俺が逃げたのがばれたのかっ!?」
「いやあれは恐らく本初殿とその一団だ……何進様がやられたのを口実にこの機会に十常時を始めとした宦官連中を排除しようとしてるっぽいな」
「なぁぁ……そ、そんな実力があるなら何進将軍がやられる前に動いててくれよぉ……」
「それだと攻めるための最もらしい口実がないだろ……まあ今さら言っても仕方がないし、さっさと巻き込まれないうちに逃げるぞ」
騒がしくなる宮中を後ろにどんどん洛陽の外れへと向かっていくと、そこに馬車が……何故か二台用意されていた。
「これもお前が用意した奴なのか?」
「一つはそうだけど、もう一つは違う……というかこの二頭立ての無駄に豪華な造りは……ま、まさかっ!?」
「さあさあ、弁皇子も協皇子もこちらへ……しっかりとこの十常時の張譲がお守りしますゆえ……」
「「っ!!?」」
馬車に見入っていた俺達はそこで後ろから聞こえてきた声に反応して同時に振り返って、驚きの余り声を失った。
何故ならそこには少し前に亡くなった前皇帝の二人しかいない王子……つまり時期皇帝となる人物が歩いていたからだ。
どうやら宮中が騒がしくなったどさくさに紛れて悪名高い十常時が何かに利用しようと連れ出したようだ。
「うわぁ……またとんでもないところに出くわしてしまったなぁ……でもまあ幻術の効果……じゃなくて俺達の存在はまだばれてないみたいだし今のうちに身を潜めてこの場はやり過ごそう」
「え……い、いや悪党の十常時からお助けしなくていいのか? 仮にも俺達の漢帝国の総大将となるお方だぞ?」
「悪党から助けるってお前……そりゃあ十常時は悪辣ではあるけれど地位と身分だけはちゃんとあるお方だぞ? それこそここにいるってことは本初様たちを出し抜いたってことだし、今後の情勢次第では彼らがこの国を統べる地位についてもおかしくないし……それ自体は気に食わないけど、だからって時勢もわからないうちにそうなるかもしれない権力者に喧嘩打ってもしかたないだろ?」
「そ、それはそうだが……いや確かにというか皇子様が二人とも手中にあるってことは確実に今後の権力を握りそうな……っ!!」
そこでまたしても俺の頭に天啓が舞い降りる。
(こ、これって……上手くやれば俺も勝ち組の仲間入りできるんじゃないかっ!?)
本来は雲の上の存在で顔を見ることも難しいお方達とこうして顔を合わせられたのも何かの導きだろう。
この機会を生かせば、今度という今度こそ圧倒的な成り上りができるに違いない。
「お、おいお前その何か思いついたような顔……ま、まさかとは思うが……っ」
「……親友、お前の友情は忘れない……だからこそこれ以上俺みたいな犯罪者と一緒にいてお前にまで汚名をかぶせるわけにはいかないぜ」
「ちょ、ちょっと待ってってっ!! 幾ら何でもそれは無茶だろっ!?」
「大丈夫っ!! 秘密裏に逃げ出したせいかあっちもろくに人もいない様子だし、今のこの状況だと身の回りを守るための人手は欲しいはずだっ!! こんな絶好の機会逃すわけにはいかねぇっ!! じゃあな親友っ!! 俺が大手を振って外を歩けるぐらい出世したらまた会おうっ!!」
「お前そう言って何度ピンチになってきたよぉおおおっ!? いい加減学べってのぉおおっ!!」
そう言って引き留めようとする友人の手を払いのけ、俺はまっすぐ彼らの下へ向かっていくのだった。
「ご無事でしたか十常時様っ!! ここからは私がお守りいたしますっ!!」
「……お主は確か何進将軍の……ほほう、そうかそうかこの騒ぎに乗じて貴様も逃げ出したのか……ちょうどよい、同じく追われる者同士協力し合おうではないか?」
「ははぁっ!! ありがたき幸せぇええっ!!」
「ではついてまいれ、この先に呼び寄せておいた董将軍が来ておるはずだ……彼らと合流するまで我らを守りぬけば悪いようにはせん」
(ふ、ふははははっ!! 今度こそ上手くいきそうだぜぇええっ!! このまま十常時様に目を掛けれた状態で皇帝様の護衛兵にでもなれれば俺の出世は確実っ!! 見てるか親友っ!! 俺はやったぜぇええっ!!)
「悪党には悪党の裁きがある」
「えっ?」
「この張譲も老いておったか……」
「えっ!? えぇえええっ!!?」
成り上りを諦めきれない主人公。
董卓という圧倒的な存在を前に彼がとる行動とは?
次回『新たな上司は華雄様っ!! あんな髭には負けないぜっ!!』お楽しみに。
主人公ステータス
統率:3(+2)=5
武力:5(+2)=12
知力:6(+2)=8
内政;4(+2)=6
外交:1(+0)=1
魅力:2(+1)=3
特技:なし
友人ステータス
統率:30(+5)=35
武力:30(+0)=30
知力:45(+10)[+10]=65
内政:35(+5)=40
外交:30(+5)=35
魅力:55(+5)=60
特技:耕作/商才/虚報/偵察/天文/歩兵/[医術&妖術]/+舌弁