三国志外伝『死神と呼ばれることになる名も無き一般兵のお話』   作:車馬超

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『江東の虎、江夏に散るっ!!』

「がおぉぉぉ~~とらさんだぞぉおおお~~おっかないぞぉぉ~~」

「そ、その声はわが友……いやよく生きて帰ってこれたな?」

「がぉぉぉぉ~~こーとーのとらさんはつよいぞぉ~~こわいぞぉおお~~がぉぉおお~~がおぉぉぉぉ~~~~」

「こ、壊れてる……し、しっかりしろおいっ!!」

 

 なんか身体が揺さぶられている気がするけどよくわからない。

 目の前にいる人も物凄く見覚えがある気がするけど、やっぱりよくわからない。

 

(あたまいたいなぁ……あのいちげき、すごくいたかったもんなぁ……あ、冷たくて気持ちいい……はっ!?)

 

 頭のちょっと瘤になっている部分に冷たく湿った布を掛けられた感触でようやく意識がはっきりする。

 全く見覚えのないどこか浮世離れした庵に敷かれた布団に横になっているらしい。

そしてすぐそばには心配そうにこちらを見つめている友人の姿があった。

 

「お、おお……親友、また助けてくれたのかぁ……」

「あっ!? し、正気に戻ったんだなっ!! ああ、よかった~~っ!! いや本当にあの本で医術を覚えておいてよかったよっ!! どこか痛いところはないかっ!?」

「あ、頭がまだちょっと……それと身体のあちこちも……文台様と一緒に思いっきり落石を食らったからなぁ……ぐすん」

「落石かぁ……俺が聞いたのは流れ矢でって話だったが……いやでも本当によく無事にここまでこれたなお前……」

「うぅん、俺もよく覚えてないけど逃げなれてる身体が勝手に動いたというか……ちなみにどうでもいいけど流れ矢を受けたところを落石に襲われた感じだからどっちも間違ってないぞ……あれは絶望したなぁ……」

 

 思い出しても悔しい限りだ。

 すぐ見える距離にいたというのに助けられなかったのだから。

 

(前評判通り今まで仕えてきた君主様の中で一番素敵だったのになぁ……果敢で勇猛で指揮官なのに城攻めで誰よりも前線に出て……まあそのせいで死んじゃったんだけどさぁ……はぁ……)

 

 戦闘自体は優勢だったというのに、その途中で総大将がやられて現場は混乱の極みになり逆転負けしてしまった。

 まあ俺は途中で頭を打ったせいか当時のことも含めてはっきり思い出せないのだが、命辛々逃げ惑っていた記憶だけはある。

 

「うぅ……結局孫軍はどうなったんだろう?」

「俺の知る限りだと一応息子の伯符様を始めとした主力武将達は無事だったみたいだぞ……だけど次の後継者となるその伯符様が若すぎるから流石にそのまま勢力を維持できるはずもなく、名家である袁家の公路様の軍勢に保護という名目で吸収された感じだなぁ……」

「そ、そうなのかぁ……じ、じゃあ俺は伯符様の下へ向かった方がいいのかなぁ?」

「うぅん……伯符様もかなり見所のあるお方だったからきっといつかはお家再興すると思うが今の時点では袁家に養われている身だろうし、お前どころか義兄弟の周郎様すら共に行動できてないみたいだからなぁ……お前が行っても邪魔にしかならないんじゃないかな?」

「あぅぅぅ……そ、そんなぁぁぁ……」

 

 どうやらまたしても俺の成り上り計画は一からやり直しのようだ。

 もうこうなると次はどうしていいのかもわからなくて、俺はまたしても泣きたくなってしまう。

 

「まあそんなに落ち込むなって、死なずに済んだんだからさ……少なくとも俺はお前が無事に戻ってきてくれただけでも嬉しいよ……」

「し、親友ぅぅぅ……ぐす……そ、そういってくれるのはお前だけだよぉぉ……」

「はは、お前は俺以外友達いないからなぁ……だけど本当よく落石を頭に食らって生きて戻ってこれたなぁ……」

「えっ? い、いや落石は身体に当たっただけなんだが……」

「はっ? でもお前頭にあんな大きなたんこぶが……じゃああれは何だったんだ?」

 

 友人は俺が頭を打った原因を勘違いしていたようだ。

 

「あのなぁ……文台様ですら命を落とすほどの落石が頭に当たったら俺が、というより人間が耐えられるわけないだろ……あれは何というか道中であった子にその……」

「あぁん? どういうことだよ……ちゃんと説明しろ……」

「うぅ……じ、実は逃げてる最中に路銀が尽きかけて……そしたら旅の武芸者っぽい奴が自分を倒せる男がいたらどうのこうのって言ってたから駄目元で挑んでみたら頭に強烈な一撃を食らって……」

「……お前さぁ……自分が弱いの忘れてどうすんだよぉ……『彼を知り己を知れば百戦殆うからず』って有名な孫子にも……いやでもその末裔を自負する文台様も敗れたことだし、お前に言うのは酷だな……」

 

 久しぶりに友人が呆れたような目で俺を見てくる。

 

「はぁぁ……それなりに戦場というか修羅場を潜り抜けてきたから少しは強くなったと思ったんだけどなぁ……しかもさぁ、はっきり覚えてないんだけどその子実は男装してるだけの女だったらしいんだよねぇ……これだから最近の軟弱な男共はって言われちゃったんだよぉ……」

「あぁ……今は大乱世時代だからなぁ……俺みたいに護身の意味を兼ねて男の振りして生きてく女は少なくないだろうし、そうやって男社会で生きてれば嫌でも腕は磨かれるからなぁ……だけど頭の傷的にも本当に強い奴だったみたいだし、その点はご愁傷様だな」

「お前の言う通りだよぉ、まさかあんなに腕の立つ女性が……ん?」

 

 愚痴る俺の話をいつものように相槌を打ちながら聞いてくれる友人だったが、その相槌の中に物凄い爆弾発言があった気がする。

 しかし下手に突っ込んだりしたら俺たちの関係が変わってしまいそうな気もしたので、こいつとだけは疎遠になりたくない俺は何も聞かないことにした。

 

「でもまあ何度も言うけどこうして生きて戻ってこれたんだから十分だろ……それよりお前次はどうするんだよ? また農民に戻って俺の土地でも耕して暮らすか?」

「うぐぐ……さ、流石にもう時勢がどうとか以前に勢力図がどうなってるかもわからないしそうした方が……ってお前自分の土地持ってんのかっ!?」

「ああ、易者として懇意に付き合ってる有力者とか病院に来た患者の中に混ざってた大商人とかが色々寄進してくれてな……その中に私塾もしてるって聞いた人達が自分の土地を使ってくれって分けてくれたのが何か所か……でも流石に一人では全部活用しきれないからお前が手を貸してくれたら色々と助かるんだが……」

「お、お前……ちゃっかりと成功を収めやがってぇぇ……羨ましいぞこの野郎ぉ……」

 

 いつの間にか同じ農民だったはずの友人とずいぶん格差がついてしまったようだ。

 俺だって結構頑張っているはずなのだが、この差は何なのだろうか?

 

「成功って言ってもこの乱世じゃちょっとした切欠で全部無に帰す程度のもんでしかないぞ……大体、これ全部お前が渡してくれたあの本のお陰みたいなもんだし……」

「ふぅん、よくわからんけど……俺も少しは勉強した方がいいのかなぁ?」

「ああ、それはその通りだと思うぞ……なんだかんだ言って学問は力になるからな……そういう意味でも俺のところに残って私塾で勉強したほうがいいって……タダで色々教えてやるし、それに今は水鏡先生のところから遊びに来た将来有望な子もいるから彼らの話を聞いてるだけでも賢くなれると思うぞ?」

 

 実際に成功している友人がここまで言うのだから、きっとそれが正しいのだろう。

 何より身体はもとより心の方も疲れがたまってきているし、少し休憩の意味も兼ねてここに留まった方がよさそうだ。

 

「……わかったよ、じゃあ悪いけど少しだけお世話になろうかな?」

「はは、少しといわずいつまで居てくれてもいいんだけどな……じゃあ早速私塾にいる人達にお前を紹介しないとな……ほら一緒に行こうぜ」

 

 優しく言ってくれる友人に従うようにして、俺はその後ろを追いかけていくのだった。

 

(本当に良い奴だなぁ……このままお言葉に甘えてここで平凡に暮らしていくのも悪くないかもしれないなぁ……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「初めまして、先生からお噂はかねがね聞いております……孔明と申します」

「どうも……仲達と申します」

 

(ふふふ、なんだまだ十歳になるかもわからない子供ばかりじゃないか……よしよし、これなら人生経験豊富なお兄さんとしての面目が潰される心配はなさそうだなっ!!)

 

 

 

 

 

 

度重なる不運に心身ともに疲れ切った主人公。

友人の私塾にてつかの間の休息に浸る彼の心は癒されるのか?

次回『舌弁大会っ!? 子どもなんかにゃ負けられないぜっ!!』お楽しみに。




主人公ステータス

統率:20(+5)=25
武力:32(+5)=37
知力:6(-3)=3
内政;8(+0)=8
外交:5(+0)=5
魅力:8(-1)=7
特技:歩兵/騎兵/酒豪/拷問/挑発/治安/訓練/遁走/+水軍

友人ステータス

統率:40(+5)=45
武力:30(+0)=30
知力:60(+3)[+10]=73
内政:45(+5)=50
外交:40(+5)=45
魅力:65(+5)=70
特技:耕作/商才/虚報/偵察/天文/歩兵/[医術&妖術]/舌弁/人望/名士
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