三国志外伝『死神と呼ばれることになる名も無き一般兵のお話』   作:車馬超

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『舌弁大会っ!? 子どもなんかにゃ負けられないぜっ!!』

「おいっ! だから待てってっ!!」

「うるさいうるさぁあああいっ!! どうせ俺は馬鹿だよっ!! 最初から勉強なんか向いてなかったんだよぉおおおっ!!」

 

 呼び止めようとする友人を振り払うように私塾を飛び出す俺。

 

「し、仕方ないってっ!! お前はまだ学び始めたばかりだし、あの子たちは下手したら俺よりずっと賢……」

「うるさいうるさいうるさぁあああいっ!! お前にわかるかっ!? あんな子供達に完膚なきまでに言い負かされた……いやそれ以前に何を言っているのかすら半分も理解できず軽蔑を通り越して哀れみの目で見られた俺の気持ちがっ!?」

「い、いやむしろあの子たちの言葉を半分以上理解できる奴の方が珍しいってっ!! いいから戻れよっ!! 行くとこなんかないだろお前っ!?」

「あるもんっ!! 行けるところあるもぉおおおおんっ!!」

 

 半ば意地になって叫ぶ俺。

 実際には特に行き先が思いついているわけではないが、あの場所に戻るよりは野宿の方がずっとマシだ。

 

「だ、だから落ち着けってばっ!! 悪かったよちょうど時期だったとはいえ全員参加の舌弁大会を開いたのはっ!! けどお前来た当初に比べたらマジで頭よくなってたし、少しでもそれを実感してほしくて……」

「はんっ!! 頭なんかよくなっても何の意味もなかったよっ!! むしろ暴力全開だった董卓軍にいたときの方がずっと楽だったねっ!!」

「ほ、本気で言ってんのかお前っ!?」

「だって董卓軍ならあんな小難しい理屈並べる奴いたら拳骨で黙らせて勝ちぃって言えるんだぞっ!! 実際に何回あの子供たちをぶん殴りたい衝動を抑えたことかっ!! そんな俺にはそうさ、董卓軍こそ似合ってたんだよっ!!」

 

 思い返してみればあそこにいたときが一番充実していた、とまではいわないが成長を実感できた気がする。

 殆ど勢いでの発言だったが、俺の中で本当に董卓軍に戻るのがいいのではと思えてくる。

 

「お、お前……あんな乱暴な輩と一緒にいたいとかどうかしてるぞ……そもそも、お前軟弱物は要らないって置いて行かれたんじゃ……?」

「でも多分顔見知りの人はいるし、何ならどいつもこいつも賄賂受け取り放題の袖の下天国だぞっ!? 入り込むだけなら苦労しねぇよっ!!」

「だからそんな不正全開のところ行ってどう出世する気なんだよっ!? お前みたいな世渡り下手がやっていけるわけないだろうがっ!?」

「そ、そんなことわかってらぁああいっ!! だけど他にどうしろってんだよっ!! このままあの塾にいたら俺のせいでお前の名声まで下がっちまうだろうがっ!!」

 

 俺の脳裏に友人の専用部屋で必死に読み書きを習っていた際に外を通る奴らがしていたひそひそ話が蘇る。

 

『あれが先生の言っていた自慢の友人……見る目ないんだな』

『読み書きもできない人間を特別に構うなんて……この塾のレベルはたかが知れてるな』

『知ってるか? あいつなんでも前に黄巾の乱に参加してたとか……犯罪者じゃねぇか?』

『俺も聞いたぞ、あいつなんでも前に護衛してた人間を守れず見殺した上に罰を受けず脱獄したとか……犯罪者じゃねぇか?』

『お、俺は風の噂に暴虐非道な董軍に所属して皇子と皇后様の暗殺を見て見ぬふりしたって……犯罪者じゃねぇか?』

『そういえばあいつ、孫軍にも所属して江夏攻めしてたとか……むしろ疫病神じゃね?』

『『『『……ここで一緒にいたら俺達もヤバいっ!?』』』』

 

 たった一人の友人であり大恩人であるこいつの成功を俺のせいで駄目にしたくはなかった。

 

(幾ら俺が馬鹿だからって、これ以上こいつに迷惑かけれねぇよ……)

 

「はっ!? お、お前そんなこと気にしてたのか……? てっきり舌弁大会で孔明と仲達の二人とあんまりにも差がありすぎて、最終的に気を使った向こうが赤ちゃん言葉で接してきてなお言い負かされたのが原因かと思ってたけど……」

「それもあるのぉっ!! めちゃくちゃプライド傷ついたのぉっ!! 人生の先輩としてのメンツ丸つぶれなのぉっ!!」

 

 尤もあの二人は決して俺を恐れたりしなかったし馬鹿にだってしなかった。

 だから殴って黙らせたいとは百回ぐらい思ったけれど、不思議と恨む気持ちは全く……いや殆ど……多分ない。

 

「そ、そうなのか? でもあの二人、お前の遍歴しったらめちゃくちゃ話聞きたがってたし未だに生き残ってるの凄いって褒めてたぞ?」

「えっ!? それ本当かっ!?」

「ああ、あの程度の能力……ごほんごほん、お前の身のこなしならここまで生き残ってきたのも説得力あるっていってたぜ?」

「……う、うわぁあああんっ!! ぜ、絶対嘘だぁああああっ!!」

 

 友人の無駄に良い笑顔と言い直した言葉から本当のところを察した俺は、今度こそ全速力で董軍への合流を目指すのだった。

 

「し、しまったついうっかり……てか前のあいつだったらごまかせてたんだけどなぁ……やっぱり賢くなってるのに勿体ない……」

「…………そして戻ってこないな、てっきり董卓軍がどこにいるのか聞きに来ると思ったんだが……いや今のあいつなら何とか長安の場所ぐらい見つけ出せるな…………立派になりやがって……ちょっと寂し…………って言ってる傍からどうした?」

「……あ、あのさ……そのちょっとでいいから路銀をその……だ、駄目なら道中の食料か水だけでも……」

「……ぷっははっ!! やっぱりお前は困ったやつだなぁ……貸してやるから後で利子つけて……絶対に返しに来るんだぞ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

半ばヤケクソで董軍に舞い戻った主人公。

それでも呂布将軍の強さを知り、これなら裏切者でも出ない限り盤石だと思い知った彼は何を見るのか?

次回『裏切りの呂布っ!?』お楽しみに。




主人公ステータス

統率:25(+2)=27
武力:37(+2)=39
知力:3(+25)=28
内政;8(+15)=23
外交:5(+10)=15
魅力:8(-5)=2
特技:歩兵/騎兵/酒豪/拷問/挑発/治安/訓練/遁走/水軍/+舌弁/+混乱/+虚報

友人ステータス

統率:45(+2)=47
武力:30(+0)=30
知力:63(+3)[+10]=76
内政:50(+5)=55
外交:45(+5)=50
魅力:70(+2)=72
特技:耕作/商才/虚報/偵察/天文/歩兵/[医術&妖術]/舌弁/人望/名士
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