三国志外伝『死神と呼ばれることになる名も無き一般兵のお話』   作:車馬超

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『裏切りの呂布っ!?』

「いらっしゃいいらっしゃぁいいっ!! 安いよ安いよぉおおっ!!」

「……何してんだお前?」

「はっ!? し、親友っ!? な、何でお前がこんなところにっ!?!?」

「いや、ちょっとした依頼でな……有名な大地主の道楽息子が自宅の物を持ち出してるかもしれないから確認し来てくれと……それよりお前は何してんだ?」

 

 深夜の城外で開かれる非合法の市場に参加していた俺を友人が呆れたような目で見つめてくる。

 

「あ、あはは……いや完全に路銀が尽きまして……はは、お恥ずかしい……」

「……別にこんな時代だし、今更お前が何をしてても何とも思わないが……ちなみに聞くが董軍には結局所属したのか?」

「うん……そしたらいつものごとく……はぁ、なんでこうなっちゃうのかなぁ?」

 

 思わずため息をつくが、既に董軍が崩壊したという情報を知っていたらしい友人はやっぱりと言わんばかりに頷くばかりだった。

 

「ここまでくるとお前の運の悪さ、というか間の悪さに同情するよ……ちなみに一応、何がどうなってたのか聞いてもいいか?」

「あぁ……別に面白い話でもないけどなぁ……まあ最初から話すと長安に入って顔見知りだった董軍の奴に話を通したら以外にもすんなり仕事を貰えて門番やってたんだよ」

「へぇ……足手まといは要らないって置いて行かれたのによく受け入れられたもんだなぁ?」

「その頃の董卓様は、天下一の武勇を誇る呂布様と天下一の美貌を持つ貂蝉様を手中に収めた帝以上の天下人って噂されてて上機嫌だったからだろうなぁ……」

 

 実際に眼前で拝むことができた呂布将軍の恐ろしいまでの強さと、貂蝉様の目が離せないほどの美貌を思い出す。

 どちらも本当に凄まじかった……だからこそあんなことになってしまったともいえるのだが。

 

「はは、そういえば呂布将軍はその貂蝉とかいう女と密通した上での痴情の縺れで董卓を裏切って殺害したんだってな……でもその後って確か呂布将軍が王允とかいう奴と長安を一瞬牛耳ったけど、その直後に戻ってきた董軍の残党に追い払われたって聞くが……お前はいつ追い出されたんだ?」

「……俺は董軍の門番してたって言っただろ? 宮廷に入ろうとする不審者や裏切者を見切って追い払うのが仕事だ……そして呂布将軍が董卓を裏切るまさにその日は俺の勤務日だったんだ……」

「はぁっ!? お、お前それで呂布将軍を通したのかよっ!?」

「し、仕方ねぇだろぉっ!! あんなの逆らえねぇってっ!! 筋肉ヤバいんだぞっ!! 目が血走ってんだぞっ!? 感極まってて『ギッギッギっ』て叫ぶばかりで人の言葉通じないんだぜっ!! 止めたら俺が殺されてるわっ!!」

 

 尤もこいつには言わないが、呂布将軍が連れていた貂蝉様の流し目に見惚れて武器を下ろしてしまっていたのも原因の一つだったりする。

 まあ仮に武器を構えていたとしても、あの嵐のような暴力装置を前に何をできたとも思えないが。

 

「うぅん、それはまあ確かに恐ろしいが……それで任務を放棄したことをきっかけに長安を飛び出したのか?」

「い、いやそれが何というか……呂布将軍を素通りさせたことで俺も一味だと思われたみたいで……その上で前々から仲良くなっていた王允殿に人材が少ないからって無理やり呂布派に引きずり込まれて……」

「ちょっと待て……王允殿って例の貂蝉って人の養父で呂布と共謀してたっていう文官の奴だよな? あんな知力畑の政治家とどうやって仲良くなったんだよ?」

 

 友人の質問に少しばかり気まずくなり顔を背ける。

 しかしいつまでも無言で見つめてくるので仕方なく口を開いた。

 

「じ、実はその……董軍と王允殿を始めとした帝側の文官は仲が悪くてさ……その上で王允殿は気骨の人だったから、何度か街中で言い合いになることがあって……」

「……いやいや、それだとむしろお前嫌われる側だろうが……何でそれで接点ができるんだよ?」

「…………これは内緒だぞ? 特にお前のところにいた奴らには絶対に言うなよ?」

「はぁっ? なんでうちの私塾の奴らに……いやまあ別にいいけど……」

 

 友人の言質を取ったことを確認した俺は、今度こそ覚悟して全てを白状することにした。

 

「……ある時の言い合いでさ、向こうに『お前らが人の皮をかぶった獣でないのなら詩の一つでも読み上げて見ろ』って煽られてさ……そ、それで董軍の下っ端の中でもお前のところで勉強したおかげ……い、いやしたせいで多少読み書きできるようになってた俺にお鉢が回ってきて……」

「それで巧みな詩を詠んで感心されたってことか? いやでも、まだ簡単な読み書きできる程度のお前にそんな高度で美しい詩を、しかも即興で作れるとは思えないんだが……?」

「もちろんできるわけないだろっ!? だけどやらないわけにもいかなくて……し、仕方なく俺はお前の塾にいたときに聞いた詩をそのまま拝借したんだ……」

 

 それを聞いてようやく納得したとばかりに頷いた友人は、再び呆れたような目で俺を見つめてきた。

 

「はぁぁ……お前さぁ、うちの塾生の詩を盗作したのかよぉ……それで気に入られたってわけか……そりゃあ内緒にしたがるよなぁ……?」

「うぅぅ……だ、だって何も思い浮かばなくて……」

「やれやれ……ちなみに誰の詩を詠んだんだ?」

「…………仲達君の……そしたら一瞬固まった後で、なんかツボに入ったみたいで滅茶苦茶気に入られた」

「ふぅん、あの子のがねぇ……超現実主義者的な性格なのに詩みたいな情緒的な才能もあるとは……やっぱり孔明君と二人そろって傑出してるなぁ……」

 

 うんうんと何やら感心したように呟く友人に、俺は同意するように頷いて見せた。

 

(本当にめちゃくちゃわかりやすい詩で俺でも覚えてられるぐらいだったもんなぁ……王允殿も『一周回って面白い』とか『これを詩といえる情緒は唯一無二だ』とか言ってくれて……まあ何でか彼の同僚の蔡邕殿にはめちゃくちゃ呆れられてしまったけれど……)

 

 ただ不思議だったのは誰も俺が盗作した可能性に気づかなかったことだ。

 尤も件の蔡邕殿にはきっとバレていたこそあんな目で見られてしまったのだろう。

 

(でも厳しくも優しい人だったな蔡邕殿は……政治についても教えてくれたし、娘さんも貂蝉殿とは違って可愛い系の魅力がある上に休憩中はお茶を入れながらこんな学のない俺なんかの話を楽しそうに聞いてくれて……まあ呂布殿が反乱した後の混乱で疎遠になっちゃったけど、二人とも無事でいてくれたらいいなぁ……)

 

「……とにかくそんな感じで呂布将軍と王允殿が牛耳る長安に残ることが許されたんだけど……呂布将軍は貂蝉様といちゃつくばかりだし王允殿は現実に即さない苛烈な政策ばっかりするし、そこに戻ってきた董軍の残党が襲い掛かってきて……もう散々だったよ」

「ははは、それは酷いなぁ……けど天下一強いって言われている呂布将軍がいたのに何とかならなかったのか?」

「ちょうどその時、貂蝉殿と二人して全裸に近い恰好だったんだよ……それでも素手で行く手を遮る奴を蹴散らして自慢の愛馬で逃走しきったのは流石といえば流石だったよ……俺ら全員置いて行かれたけどなっ!!」

「そ、それは流石にご愁傷様というかなんというか……んで今度こそお前は例の逃げ足の速さを生かして長安を後にしたと?」

「まあそんなとこだ……正確には王允殿と帝様が残るっていうから一応残った同僚と共に抵抗はしてみたんだが、指揮してたカクとかいう奴に一方的に掻き回された挙句に気が付いたらチリジリにされた上で城外に追い出されてたんだよ」

 

 手玉に取られるというのはああいうことを言うのだろう。

 流石にこうなるとどうしようもなく、俺はそのまま長安を離れるしかなかったのだ。

 

「なるほどな、それで私財もろくに持ち出せなかったお前は生きていくために、ここで商売をしてお金を稼ごうとしてるってわけか?」

「あ、ああ……まず武具を売って資金を作って、その金で新しいものを買っては売ることを繰り返して少しずつ……最初こそ大損することも多かったけど、今は人の呼び込み方や売り込み方もわかってきてそれなりに売れてるんだぜ?」

「……まあ非合法の市場とはいえ、ここで培ったその商才は外の世界でも生かせそうだな……というか今どれだけ貯まってるかは知らんが、それを元手に真っ当な商売でも始めたらどうだ?」

「い、いやそれも考えたんだがこの大乱世だとお金だけじゃ身を守れない……やっぱり自力で出世して地位を身につけないと……だからこそ俺は路銀を稼ぎ終えたら青洲に向かうつもりなんだっ!! そこで昔の仲間達がたくさん集まって頑張ってるっていうから俺も参加して……」

「青洲……ひょっとして青洲黄巾党のことか? それならもう孟徳様が鎮圧した上で自軍に吸収して終わったぞ?」

「えぇえええええっ!!?」

 

 せっかく次の活躍の場として見越していた戦場が既に終わっていた事実に愕然とする俺。

 

(な、なんだよそれぇえええっ!! い、一体いつの間に……しかも何か穏健な終わり方してるしっ!! なんで俺が参加してないときに限ってそうなんだよぉおおっ!!?)

 

 せめて片側が全滅していればまたそちら側につかなくてよかったと嘯くぐらいはできたのだが、何とも世知辛いものだ。

 

「情報が遅い……といいたいが、自力でそういう世情を知れるようになったのは良い傾向だな……やっぱりうちの塾で勉強してよかっただろ?」

「うぅ……そ、それは否定しないけどぉ……で、でもやっぱりお前の塾に戻るのは嫌ぁ……」

 

 俺の言葉を聞いて友人はもう一度呆れたように俺を見つめたかと思うと、どこか安堵したように息を吐くのだった。

 

「やれやれ……でもまあ心も体も元気でよかったよ……また前みたいに壊れてたらどうしようかと思ったからな」

「あ、あれは頭を打ったからだし……そ、それよりお前人探ししてるんだろっ!? これでも夜市の常連だし結構顔が利くから協力するよっ!!」

「おお、ついに俺の手助けを言い出すまでになったか……成長を感じるなぁ……よし、じゃあお言葉に甘えるとしますかね」

 

 たまには恩返しの一つでもしようと、俺は早速夜市の人達から情報を集めて友人の捜していた人物を探し出そうとするのだった。

 

「なあ、ちょっと聞きたいことがあるんだが……」

「あ、あの話だろっ!? 陶謙様のところが大々的に兵を求めてるって話っ!! しかも滅茶苦茶好待遇だとかっ!! お、お前も参加するのかっ!?」

「はぁっ!? な、なんだそれっ!? 詳しく聞かせろよっ!!」

「おーい、親友ぅ~? 俺の人探しの件は……って聞いてないなこれ……たく、やっぱりまだまだお子様だよお前は……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

陶謙様の募集に参加した主人公。

そこに居た忘れもしない髭の持ち主とその義兄弟に彼は何を語りかけるのか?

次回『邂逅、玄徳様とゆかいな仲間達……誰だ疫病神対決って言った奴はっ!?』




主人公ステータス

統率:27(+10)=37
武力:39(+20)=59
知力:28(+5)=33
内政;23(+20)=43
外交:15(+20)=35
魅力:2(+5)=7
特技:歩兵/騎兵/酒豪/拷問/挑発/治安/訓練/遁走/水軍/舌弁/混乱/虚報/+眼力/+不屈/+商才

友人ステータス

統率:47(+3)=50
武力:30(+0)=30
知力:66(+3)[+10]=79
内政:55(+3)=58
外交:50(+5)=55
魅力:72(+3)=75
特技:耕作/商才/虚報/偵察/天文/歩兵/[医術&妖術]/舌弁/人望/名士
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