三国志外伝『死神と呼ばれることになる名も無き一般兵のお話』   作:車馬超

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『真っ平』

「へぇ……こんなところがあったなんてなぁ……」

 

 自然に囲まれた森の中をかき分けるように進み、ようやく噂の湖を見つける。

 

(この依頼を見る限り、この湖には女神様が宿っていて呼び出すさえできればご褒美を授かるとか何とか……胡散臭ぇなぁ……)

 

 全く信じてはいないのだが、友人への恩返しのためにもしっかり調査しなければならない。

 そう思ってとりあえず女神を呼び出す方法を考えてみるが、特に何も思い浮かばない。

 

(何をどうしたもんか……とりあえず何か供物でもささげた方が……うぉっ!?)

 

 黄巾党にいた頃を思い出し、それっぽい祭壇を作って貢物でも……などと考えながら湖の淵を歩いていたところ何かに足を取られて盛大に転んでしまう。

 

(な、なんだ今のっ!? 別に足を引っかける様な所はないし、何より思いっきり見えない何かに足を掴まれたみたいな……ぽちゃん?)

 

 身体を熾したところで湖に波紋が広がっていることに気が付き、そこへ視線を向けてみれば見覚えのあるボロボロの剣が沈んでいくのが分かった。

 

「あれは……あぁっ!? お、俺の剣がぁああっ!? な、何でっ!? 鞘に入れておいたのにあんなに飛ぶはずが……っ!?」

 

 訳の分からない出来事の連発に混乱しかける俺の前で、不意に妙な霧が立ち込め始めたかと思うと湖の上に人影が浮かび上がってくる。

 

「えっ!? えぇっ!?」

『……あなたですか、この湖に落とし物をしたお方は?』

 

 果たして不思議と頭に響く声を発するその女性と思わしき格好をしている人影は現実に存在しているとは思えない雰囲気を醸し出していた。

 

(も、もしかしてこの方が女神様? に、しては何というか質素な格好というか……それに髪も長くて美しいことは美しいけど、女性的な魅力でいえば貂蝉様には劣る様な……いやそもそも女性、なのか?)

 

 服装や髪型こそ女性そのものだし、確かに美しくもあるのだけれど……全くと言っていいほど膨らんでいない胸部のせいでいまいち女神と断言する自信が湧いてこない。

 何せ下手したら胸筋を鍛えている俺の方が膨らんでいそうだし、お陰でむしろ神秘的ではあるが中性的な印象の方が遥かに強い。

 

「え、えっと……その……め、女神様ですか?」

『そのように呼ぶお方もおられます……それよりもあなたが落としたのはどれでしょうか?』

 

 だから思わず訪ねてしまったが、彼女は軽く頷くと次いで何かを取り出して見せた。

 それは金色をした真四角の判子と丸い円を描く玉壁であった。

 

「……どっちも違います、俺が落としたのはもっとボロボロの普通の剣です」

『正直なお方ですね、『玉璽』や『和氏の璧』を前にしても動じることのない精神はお見事です』

「あぁ……そっちの丸いのはともかく四角い方は見覚えがあるかと思ったら文台様に献上したあれかぁ……そういえばそんな風な名前で呼ばれてたっけなぁ?」

『えっ!? も、持ってたのかおま……も、持っていらしたのですかこれの実物をっ!?』

 

 思わずつぶやいた俺の言葉に何やら女神様は困惑した様子を見せる。

 その一瞬見せた態度にどこか見覚えがある気がしたが、こんな美しい女性と縁があれば思い出せないはずがないしきっと気のせいだろう。

 

「ええ、前に焼野原になった洛陽をさ迷ってた時に井戸の底から拾いまして……そのまま文台様の部下になった際に欲しがってたから差し上げたんですが、あれ結局どうなったんだろうなぁ?」

『は、ははは……所持したものが天下を取ると言われる玉璽を……無知とは恐ろし……い、いえその欲のない清廉潔白とした精神に感動いたしましたのでご褒美を差し上げましょう』

「えっ!? 本当にご褒美くれるのっ!?」

 

 女神様の存在自体信じていなかったのだが、まさかご褒美までも頂けるとは思えなかった。

 特に何をしたつもりもないのに悪い気もするが、貰えるものは貰っておきたいところだ。

 

『では貴方が落とした剣よりも立派な武器を差し上げましょう』

「おぉーっ!!」

 

 そう言って女神様がどこからか取り出した剣を恭しく両手で受け取る俺。

 そして実際に見聞してみれば、確かに中々の名刀であることがわかった。

 

(う、うん……確かに名刀なんだけど……並ぶ物のない極上品、というほどではないのは何というか……い、いや俺が使ってたのに比べれば十分すぎるんだけどさ……)

 

 てっきり女神様と呼ばれるだけにもっと凄まじい存在を想像していたが、どうやらそこまで圧倒的な力を持つわけではないらしい。

 尤もタダでもらえているのだから十分すぎるし、特に文句を言うこともなく頭を下げる俺。

 

「ありがとうございますっ!! これは大事に……というよりも物凄く使わせていただきますっ!!」

『ええ、ですが無理をしないように……これからもその素直な心を失わずに頑張ってこの乱世を生き抜いてくださいませ』

「あ……」

 

 にこやかに微笑んだ女神様の顔に俺は一瞬見惚れてしまう。

 しかし次の瞬間、目を開けていられないほどの強風が吹いたかと思うと次に目を開いたときにはもうその姿は見えなくなっていた。

 

(もう行っちゃったのか……でも最後の顔、何だかドキッとしたけどそれ以上に安心感を覚えたような……やっぱり前にどこかで見たような気がしなくもないんだがなぁ……?)

 

 しきりに首をひねるが、結局俺は何もわからないまま友人の元へ戻って報告することにするのだった。

 

 

 

「ふぅぅ……何とかバレずに済んだみたいだな……しかしあのバカ、幾ら幻術使ってるからって服装と髪型変えただけでこうも気づかないとは……やれやれ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま戻ったぞ親友っ!! ヤバいぞ、あの湖本当に女神様が出たんだぞっ!!」

「おうおう、そうかそうか……んでどんな感じだった?」

「いやなんというか色々凄かったぞっ!! まあ胸が真っ平だからあれで女神を名乗るのはどうかと思ったけ……い、痛ぇっ!? な、何で殴るんだよぉっ!!」

「う、うっせぇ馬鹿っ!! ち、小さくて何が悪……じ、じゃなくてどこ見てんだお前はっ!? そういうの女神様に失礼だと思わねぇのかこのクソガキぃっ!!」

「が、ガキっていうなぁああっ!! 俺だって今年で二十二歳にな……い、痛い痛い痛いっ!! わ、わかった俺が悪かったからぁっ!! ぼ、暴力はんたぁああいっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

親友に追い出されるように私塾を後にした主人公。

行き先も思い至らない彼は当てもなくさまよった果てにどこへたどり着くのか?

次回『逃げた帝を追えっ!! 李傕・郭汜の大暴走っ!!』お楽しみに。




主人公ステータス

統率:35(+0)=35
武力:70(+0)[+10]=80
知力:33(+0)[+20]=53
内政;43(+0)[+20]=63
外交:35(+0)=35
魅力:2(+0)=2
特技:歩兵/騎兵/酒豪/拷問/挑発/治安/訓練/遁走/水軍/舌弁/混乱/虚報/眼力/不屈/商才/[軍師]/[仁政]

女神?ステータス

統率:50(+0)=50
武力:30(+0)=30
知力:72(+0)[+10]=82
内政:61(+0)=61
外交:60(+0)=60
魅力:80(+0)[+10]=90
特技:耕作/商才/虚報/偵察/天文/歩兵/[医術&妖術]/舌弁/人望/名士/鍛冶/+[愛嬌]

友人ステータス

統率:50(+0)=50
武力:30(+0)=30
知力:72(+0)[+10]=82
内政:61(+0)=61
外交:60(+0)=60
魅力:80(+0)=80
特技:耕作/商才/虚報/偵察/天文/歩兵/[医術&妖術]/舌弁/人望/名士/鍛冶
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