〜前回のあらすじ〜
シュペーア総統「あの未確認飛行物体が真っ先にソ連に降下した!異星人だったら地球の超大国三つを無視するわけないから、明らかにあれはソ連所属の新兵器だ!」
ヴェルナー・フォン・ブラウン「(絶句)」
〜一方ドイツ以外の勢力〜
アメリカ「東京とかウィーンの上空にあるやつは離れていくわソ連領に降りて行くわで…なんだったんだろアレ…」
日本「ひとまず観測を続けて、敵意がなければ受け入れよう(技術をソビエトに独占されたらまずいしな)」
ジオン艦隊「どうなってんだ…ナチスドイツやソビエトから連絡は届くし地球は未発展だし…もうやだ一旦帰って報告しよう」
何も知らない地球連邦軍本部「ジャブローや議会と連絡が取れん…とりあえず地球各地に連邦軍部隊を派遣して再度通信網を確立しよう…」
〜前回のあらすじ終わり〜
今回は地球連邦とTNOのアメリカ合衆国が中心の話となっています。
前回同様少々短め(10000字いくかどうか程度)ですが、よろしければ高評価・お気に入り登録等よろしくお願いします。
コロニー衝突42時間後 宇宙 場所不明
セイバーフィッシュを改造したカモノハシ型偵察機。
その任務はミノフスキー粒子散布下の戦場を見渡す目と言うとても重要なものであったが…。
「駄目だな…完全に迷っちまった。」
リュウ・ホセイ軍曹とメガネ伍長の乗るこの機体はその役目を果たせず、自分の位置すら把握出来ない状態にあった。
「レーダーにも何も反応ありません。どうしましょう、軍曹?」
「んなもん俺に聞かれたってよぉ…」
リュウは数秒黙り込んだ後、再び話し始めた。
「兎も角、何とかして戻らねえといかんだろ。」
「何か頼りになりそうなものはありますかね…?」
「…」
2人は辺りを見回したが、そうなるようなものは何も無かった。
どうしようも無くなり、上官の愚痴を語り始めた。
「そもそも、ルナツーとかの艦隊も地球側と連絡が取れねぇんだろ?」
「明らかに地球の方が異変が起きてるはずなのに、なんで宇宙にこだわるんでしょうね?」
「あのお偉方は俺達のことはトカゲの尻尾としかおもってないんだろ?」
「本当に…」
その時、レーダーに反応がでた。
「やっと戻って来れましたか…」
「今の会話、聞かれてねぇよな…?」
だがその瞬間、リュウはある異変を感じ取った。
「ん?なんかおかしくねぇか?」
「なんというか…艦の形が変な気がします…」
リュウは目を凝らして見た。すると、その艦が緑色の塗装をしていることに気づいた。
「おい!これジオンの艦隊じゃねえか!!」
「自分達、敵のど真ん中に」
メガネが話し終える前に、赤く眩しい光が2人を照らした。
「連中の一つ目…!」
「ま、眩しい…」
直後に、オープン回線から通信が飛んできた。
『諸君らは連邦の偵察機か?』
リュウは、そのザクが他とは違うことに気づいた。
「白い…一つ目…?」
『こちらは、ジオン公国宇宙攻撃軍所属、シン・マツナガ大尉だ。事情はどうあれ、単機で敵地に踏み入った以上は大人しく鹵獲させてもらう。』
こうして、迷子になっていたこの二人のパイロットはジオンの捕虜となった。
この二人を捕まえた艦隊の司令官たるダニガンは、彼らへの尋問の末、連邦と地球が連絡が取れていないことを知り、ますます混乱することになる…
同時間帯 アメリカ合衆国 アリゾナ州 キットピーク国立天文台
「流石に見てて飽きないのかね、リチャード君」
所長のニコラス・U・メイオールは、もう丸2日望遠鏡と睨み合いを続けるリチャード・F・グリーンに呆れ気味に声をかけた。
「当然ですよ所長!こんな機会は二度とありませんから!」
興奮ぎみに言葉を返しつつも、その目は少しも望遠鏡から目を逸らさず、空に浮かぶ箱舟達を見続けていた。
ちょうどこの時間帯はL3、つまりインディゴ船団が見える位置にいる。
彼の手元のスケッチブックにはインディゴ船団の青く細長い形が特徴的な箱舟が描かれていた。
彼以外の観測者(正規の研究員も含めて)はみなその周りで眠り転けている。
現役の研究者が人員補充のためにはるばるカリフォルニアからやって来たばかりの学生に根比べで負けているのは、滑稽にさえ思えた。
もしかするとインディアナやオタワ、果てはゲルマニアや東京の天文台も同じ有様なのだろうか。
「館長、あれは全て、間違いなく軍艦ですよ!」
リチャードが突拍子も無いことを言い出したが、箱舟について何も、少なくとも彼よりも白痴な自分には反論の余地もなく、「と言うと?」と返すのがやっとであった。
「どの方向から見ても正面に向けての大砲が確認できます。重力による上下の無い宇宙空間だからこそ…」
言葉が止まった。ようやく疲れを感じたのだろうか?
「リチャード君、そろそろ君も休みなさい。君がそうやって箱舟を見つめ始めたのは、もう一昨日のことだぞ。」
返事がない。その表情が引き攣り始めた。
「リチャード君、何が見えたんだ?」
「あ…れは……」
すぐさまニコラスはリチャードを椅子からどかし望遠鏡を覗いた。
宇宙から何か、青色の何かが。
このアリゾナに。
まさか、あれは着陸艇か?
だとすれば、どこから落ちたかは明白だ。
「国立光学天文台に連絡しましょう!」
「それじゃだめだ!一研究機関に解決出来る問題じゃない!」
「全員起きろ!奴らが地球に降りてきたぞ!!」
二人はすぐさまその場にいる全員を叩き起した。
「まずは州知事に連絡する!事態を説明して知事に大統領へ連絡させるんだ!君達もあらゆる連絡先に電話をしてくれ!」
ニコラスは寝起きの職員達を捲し立てるように指示を出した。
「今からですか…?」
「今以外にないだろう!!」
「もしもし、国立光学天文台ですか!?」
こうしてる間にもリチャードはもう電話をかけ始めていた。
ここにいる大半がまだ眠気が残っている。
それでもどうにかして、その寝ぼけた頭でこの危機を大統領に伝えなければならないだろう。
同時間帯 アメリカ合衆国 アリゾナ州上空
「一体何が…どうなってやがる…!」
大気圏突入の轟音が鳴り止み、身体が重力に慣れ動けるようになった直後、窓の外を見たフェデリコ・ツァリアーノ中佐の目に映ったのはバイソンや鷲、あと何かそれっぽい角の生えた動物達が点在する大自然だった。
「この辺りは環境破壊のせいでもう木1本生えてない砂漠だったはずですよ…!」
すぐ横から、同じように驚きを隠せないボロゴノフが言葉を捻り出した。
「第一、ここは本当に地球なんですか!?」
「落ち着け、それを確かめるために降りてるんだろうが!」
すぐこれだ、俺が言えた話じゃないがこいつには冷静さが足りてねぇ。
「あれ、もう着いたんですか?」
後ろからペンターが声をかけた。こっちは呑気すぎる。一体何考えてるんだか。
フェデリコはペンターを無視して、地図を見て何やら調べたりしていたミッチェルに声をかけた。
「周辺の地理はどうなってる?」
「気候も風景もだいぶ変わってしまっていますが、地形自体はデータとほぼ同じのようです。それと…」
「それと?」
「南の方角、我々のデータにないレーダーサイトがあります」
「レーダーサイトだと?」
ミッチェルは黙って頷いた。
レーダーサイトは基本軍の重要施設だ。
確かにそこに行けば何かわかるかもしれない。
だが今すべきは…
数秒の沈黙。
今後の方針を立てるには十分な時間だ。
そしてこの場を預かる指揮官として指示を出し始めた。
「とりあえず降下後は俺とペンターでスチュアート達の小隊と合流するぞ、あいつらの降下予定地点はすぐ近くのはずだ。」
「ボロゴノフ、お前は宇宙側に連絡を入れておけ。ミッチェル、他にも何かあるかもしれん。レーダーでの索敵を怠るなよ」
「「「了解!」」」
コロニー衝突43時間後 アメリカ合衆国 アリゾナ州
アリゾナ州の住民に、テレビ・ラジオの放送を通じて「未確認飛行物体がアリゾナに着陸する」というニュースが届いてから一時間ほどが経過した。
今現在ここアリゾナ州では、臨時招集された州兵や緊急出動した空軍が共同で未確認飛行物体の捜索を行なっていた。
州兵は陸から、空軍は空から捜索し、見つけ次第全員がそこに急行するという即興の作戦であった。
やがて、ある空軍機のパイロットが奇妙なものを発見したとの情報が全部隊に伝えられた。
全州兵部隊がその場所に行くと、思わず州兵はこう叫んだ。
「何だあれ?」
それは大型の飛行機のような形で、青色だった。
そしてそれは砂漠の上に静止していた。
「何か出てきたぞ!」
今度は違う州兵の声が上がった。
それは異星人のように見えた。
だが、それが自分達の思っていたような異星人ではないことは、すぐに分かった。
なぜなら、それは、人類と同じ形をしていたからだ。
さらにそれらが自らのヘルメットを外すと、州兵たちは皆息を呑んだ。
ヘルメットを外して現れた顔は、まさに人間であった。
異星人ではなく、人間だった!
「宇宙人じゃないのか……?」
州兵の一人が呟いた。
だが、これはまだ混乱の序章に過ぎなかった。
「何者なんだ?」
「宇宙人なのか? それとも地球人か?」
州兵部隊の兵員は、遠くからその人間達と奇妙な物体を半円のように取り囲みながら、口々に疑問を口にする。
「おい、あれは何をしているんだ?」
部隊の誰かがそう叫んだ。
確かに、降りてきた人物は、奇妙な行動を取っていた。
敬礼のような姿勢を取ったのだ。
そして、その人物はそのままの姿勢を保ちながら歩き出した。
「何をするつもりだ?」
次の瞬間、信じられないことが起こった。
歩いてきた人物が急にアメリカの伝統的なジェスチャーで部隊に近づいてくるように指示したのだ。
部隊は慌てて駆け寄った。
すると人物は部隊に向かってまたもや敬礼をしたのである。
そして彼は話しだした。
「地球連邦宇宙軍から派遣された、セモベンテ隊第二小隊長のスチュワートであります!この度、地球上の残存部隊と連絡するため、また情報共有のために派遣されました!」
「地球連邦だって!?」
米軍州兵隊員たちは予想だにしなかった単語に、思わず驚きの声を上げた。
このことは後々、この世界において、地球連邦とアメリカ合衆国のファーストコンタクトが幕を開けた瞬間として語り継がれることとなる。
同時間帯 アメリカ合衆国 アリゾナ州 セモベンテ隊第二小隊 着陸地点
スチュワートは重要な任務の重要な瞬間を迎えていた。
地球連邦軍の残存兵力と接触する任務のために降下したアリゾナで、現地の兵士と接触したのである。
スチュワートはアリゾナの兵に現状の説明を始めた。
「ジオンの奴らはコロニーを地球に落下させる作戦を実行し、統合参謀本部は防戦のために地球の残存兵力を回収すると決定しました。私はその任務を受けて降下してきたのです」
「…………」
兵は黙って聞いていたが、納得しているのかしていないのかわからない。
だが、スチュワートは続けるしかない。
「あなた方の所属部隊を教えて下さい。」
「……我々はアリゾナ州兵だ。」
兵はぶっきらぼうな口調で言う。
兵の言葉を聞いた途端、スチュワートの顔色が変わった。
「州兵だと!?」
このアリゾナを含む北アメリカは地球連邦最大の拠点の一つである。
そしてその軍は連邦軍の中でも高い実力を持っている。
その北アメリカで正規軍が現れず、州兵が来たということは……。
「アメリカは敵国の手に落ちたのですか?」
「いや、まだだ。」
兵の答えを聞いてスチュワートは安堵のため息をつく。
どうやら最悪の事態は免れたらしい。
だが、スチュワートの次の質問への答えは奇妙なものだった。
「北米大陸には連邦の正規戦力が残っているのですね?ならあなた達は何者なのですか?」
「我々はアメリカ合衆国の州兵だ。」
「合衆国!?」
それはあるはずのない国の名称だった。
アメリカとはかつて北アメリカ大陸に存在した国家の名称である。
地球連邦が支配するアリゾナに、なぜそのような名称の国が存在するのか。
しかも目の前にいる兵がその国の兵だというのだ。
「どういうことですか!ここはアリゾナのはずでしょう!」
「アメリカ合衆国は存在するんだ。それが事実だ。」
そう言うと兵はスチュワートから目をそらす。
スチュワートは混乱した。
合衆国という存在は歴史の教科書にしか存在しないはずだ。
それが今ここに存在すると言い張る兵士。
一体何を言っているのか。
だが、同時に彼は理解してしまった。
おそらく自分は、想像していた以上に重要な瞬間に居合わせているのだということを。
そしてスチュワートがどうしたものかと頭を抱えていると、ふと聞き覚えのある音がした。
彼が後ろを振り返ると、見覚えのある顔を乗せたバイクが、遠くから砂埃をあげてこっちに向かってきていた。
「誰だ!?」
「待ってください、あれはうちの隊長です!」
「何だって!?」
「宇宙から落ちてきた物体は一つだけではなかったのか!?」
やってくるバイクに警戒して銃を向けようとする州兵たちを、必死に止めるスチュワート。
そうして騒いでいるうちにバイクが彼らの目の前で止まり、乗っていた二人…フェデリコ少佐とペンターが降りる。
「た、隊長!」
「どうしたスチュワート、そこにいるのは地上軍の奴らか?」
「そ、それが彼ら、自分たちのことを”アメリカ合衆国の州兵だ”って言い張ってるんです!」
「何ィ!?」
「へえー、そうなんですか…って、え!?」
スチュワートからの報告に驚くペンターとフェデリコ。
「ま、待て、ひょっとしてここはまだアメリカなのか?」
ペンターやスチュワート、そして他の第二小隊の隊員より先に冷静になったフェデリコの問いに、呆然としていたアリゾナ州兵達は我に帰って頷いて返す。
「いや、質問が悪かった。…今は西暦何年だ?」
「…今は1974年だ」
『!?』
州兵のうち一人の答えに、そこにいたフェデリコ以外のセモベンテ隊のメンバーが驚愕する。
「た、隊長、これってもしかして…」
「ああ…詳しいことは分からんが、地球は、西暦時代に戻っちまったかもしれん」
コロニー衝突45時間後 地球近郊宙域 地球連邦所属レビル艦隊 マゼラン級宇宙戦艦『アナンケ』 将校用会議室
地球連邦軍レビル艦隊の旗艦アナンケで、艦隊を任されるレビル中将は地球へと向かっていたセモベンテ隊からの報告を読んでいた。
「ほう……政府は壊滅したか」
報告によれば、連邦政府の拠点は全て確認できなかったとあった。
その情報にレビルは狼狽えるどころか、むしろ満足する。
地球圏の平和を守るという大義名分を掲げながら、それを実行できない腐敗した
次にレビルはセモベンテ隊との通信回線を開いた。
通信を阻害するミノフスキー粒子も、地球にまでは撒かれていない。
「報告は読んだ。それで? 例の情報については?」
「はい、レビル閣下。地球が地球世紀のものに置き換わっているというのは本当です」
「そうか……」
地球が姿を変えていることは、レビルもすでに把握していた。
しかし、その情報を簡単に信じることはできない。なにしろ内容が内容だ。
「どうやら我々は夢を見ているわけではなさそうだな」
レビルのつぶやきにセモベンテ隊の隊員たちがざわめく。
「地球がこんな姿になっているなど……」
「これが現実だとしたら恐ろしいことです」
「だが、それならこの世界は何なんでしょう? 我々がいるここはどこなのでしょう?」
混乱する彼らに対し、レビルは告げる。
「今はとにかく目の前の任務に集中するのだ。いいな!」
「はっ!」
通信を切った後、レビルは艦に備え付けられている地球儀を見て、そして思う。
何のために自分はここにいるのか。
自分の存在理由とは一体何か。
答えはすぐに見つかった。
「私はただ命令に従うのみだ……。それが軍人として当然のことなのだから」
レビルは自分に言い聞かせるように言った。
彼の心の中にはある思いがあった。
それは地球圏の平和を脅かすものを許さないということだった。
「そのためならば、どんな手段でも…そうか、地球に接触すれば」
レビルは一人つぶやく。そして、部下たちに指示を出す。
「地球への降下準備を整える! 地球にチャンスを見つけ出すのだ!ゴップにも伝えておけ!」
「了解しました、閣下」
部下たちは一斉に敬礼すると、それぞれの作業に取り掛かった。
コロニー衝突約50時間後 アメリカ合衆国 ワシントンD.C. ホワイトハウス正面広場
合衆国の政治の中枢:ホワイトハウス。
この地には今日、前代未聞の警戒体制が敷かれていた。
その柵の周りで軍人たちやシークレットサービスの人員が取材陣や民間人を追払い警戒体制を敷く中、ホワイトハウスの正面玄関に立っている者たちがいた。
その先頭に立つ壮年女性、『ジーン・カークパトリック』──このホワイトハウスの現在の主にして、合衆国初の女性大統領──は、『インディゴ船団』からの使者を待っていた。
アリゾナに上陸した『異星人』の先遣隊を通じての連絡で、彼らのリーダー格の人物がホワイトハウスに付近に降下し、そこで全ての事情を説明するとの連絡があったのがつい数時間前。
それを聞いたカークパトリックは、自身の閣僚陣の中でも特に重要な人物を緊急招集し、この異星人との会談に挑もうとしていた。
「…こんなことを言ってはなんですが、異星人にこんなすぐ会談を許可して本当に大丈夫なんでしょうか?」
集った閣僚陣の中でそう口にしたのは、民主党出身の財務長官のダニエル・モイニハン。
ひどく率直な物言いをすることで有名である彼は、そのこともあって新聞やテレビニュースでよく話題にされることも多い。
そして当の彼は、異星人が本当に予定通り来るのか疑問視しているようであった。
「どういうことかしら?」
「そのままの意味ですよ。彼らがどんな目的でこの地球に来ているのかもわからないのに、こんなにすぐ大統領が直々に会いに行くなんて、危険だと思いませんか?」
そのモイニハンに対し、カークパトリックは険しい顔を向ける。
鉄の女と表現されるに相応しい大統領の鷹の如き視線を浴びても、モイニハンは動じなかった。
「…確かにその可能性は否定できません、しかし、かと言って彼らの申し出を無視することもまた我々の選択肢にはありません」
モイニハンにそう答えたのは、共和党出身の国防長官のロバート・マクナマラだった。
「各地の天文台からの報告によれば、彼らが乗って来たインディゴ船団のほとんどは砲門のようなものが載せられた、宇宙軍艦とでも呼ぶべき代物で構成されています。そのようなものに宇宙から攻撃されれば、如何にこの惑星で超大国である我々であろうとなす術もありません」
短命に終わったニクソン・ケネディ・マコーマックの3政権で財務長官を、2期に渡ったジョンソン政権とカークパトリック現政権で国防長官を務めた彼は、恐ろしいと同僚から評されるほどの冷徹なタカ派ではあるが、その彼も異星人相手には武力攻撃は論外だと確信しているようだ。
「まあ、そこまで悪いことにはならないと思いますよ」
他の首脳陣がマクナマラの発言を受けてネガティブな想像をする中、民主党出身の国務長官:ズビグネフ・ブレジンスキーがそれを否定する。
「相手の代表格の方がこちらにわざわざやってきて、彼らのことについて説明してくれるというのです、ハナから交渉を受け付けず全面戦争というわけでもないでしょう。それに……」
「それに?」
「……件の未確認情報群が正しければ、彼らは異星人ではなく、未来人だということになります。そうであるなら、同じ人間同士、相手との対談は我々の当初の想定よりスムーズにいくでしょうな」
「……」
ブレジンスキーの発言に、カークパトリックや他の閣僚陣が押し黙る。
『彼らは異星人ではなく、未来人である』。
これはアリゾナに落ちてきた『異星人』から現地の州兵が聞いた話だとされているが、あまりの内容にここワシントンでも半信半疑のものが多く、未だ確認は取れていない。
気になる未確認情報はそれだけではない。
──日本の首脳部は、今自分達が西暦2150年ほどの宇宙にいると確信している──
──ソ連やアリゾナ州に着陸した異星人は、共通して自らの所属を『地球連邦』と称している──
これら二つの情報も、また首を傾げざるを得ないような代物だが、ブレジンスキーはこれらの情報のうち、少なくとも幾らかが事実である場合の外交的接触のシナリオを脳内で構築しているようであった。
そうして彼らが待っていること数分。
最初にそれに気がついたのは、ふと上を見上げたマクナマラであった。
「……!!皆さん、あれを!」
その声に釣られて皆が空を見上げると、青色の何かがこちらに落ちてくる最中であった。
警備の任についていたシークレットサービスや軍人たちもそれに気付いたようであり、何人かは同僚に連絡しながら配置につき始めていた。
だんだん轟音と共に近づいてくるそれは、航空機のような形をしていた──翼らしき部分の形状的には、ドイツの最新鋭の戦略爆撃機であるHo229に酷似している──ように、彼らには見えた。
やがてそれは空中で失速し始め、最後にはゆっくりとした動作で地上に降り立った。
その中から出てきた者の姿を見て、カークパトリックたちは目を見開いた。
その姿は紛れもなく、軍服を着た人間の老年男性であった。
老年男性の姿をしたその男はカークパトリックの前まで歩いてくる。
「本日はお忙しい中、時間を割いていただき感謝いたします、地球連邦宇宙軍所属のレビル中将です」
「…いえ、こちらこそわざわざご足労ありがとうございます、アメリカ合衆国大統領のジーン・カークパトリックです」
その言葉をかけられ、珍しく呆然としていたカークパトリックは我に帰る。
レビルの側も敬礼し、二人はお互いに握手を交わす。
「それで、あなた方は何者なのでしょうか?」とカークパトリックが聞く。
彼ら『異星人』には謎が多くあり、今回の会談は彼らが真実を明かすことも目的としていた。
「はい。実は……」
コロニー衝突約51時間後 アメリカ合衆国 ワシントンD.C. ホワイトハウス内部会議室
「……なんてこと……」
ジーン・カークパトリックは今しがたレビル中将から説明されたことに対し、そう呟くしかなかった。
無理もなかった。
それまで未来人がタイムスリップしてきたのかと思っていたのが、目の前のレビルが語った地球連邦側の話が正しければ、彼ら地球連邦の側ではなく、自分たちの今いる地球そのものがタイムスリップした側だったからだ。
確かにそうであれば、納得がいくことも多いのは事実だ。
日本にいる工作員の『西暦2150年辺り』の情報も、地球連邦という所属の話も納得がいく。
しかし、彼女らの今まで信じ込んでいた世界観と表現されるべきものが、ガラガラと崩れ落ちてしまったことに違いはなかった。
「残念ですが、今私の話したことは全て事実です、奴らの行ったコロニー落としも、地球全土が怪光に包まれたことも全て」
レビルは改めてそう宣言した後、こう述べた。
「ジオン公国は我々地球連邦にとって不倶戴天の敵です。そもそも連邦の一体性に反抗する分離主義勢力として生まれたのもそうですが、そのイデオロギーもまた我々の掲げる絶対民主制とは相入れない!」
「奴らのイデオロギー、『ジオニズム』。それは宇宙生まれの人間たちの自治独立を謳いながら、内面はザビ家の奴らによる絶対君主制の下での専制体制であります!」
「さらに専制を敷くだけでは飽き足らず、連中は同じスペースノイドの中でも彼らに従わなかったものを粛清し、その亡骸を抱えたコロニーを地球に落として今の状況を作り出した!」
「…これは我々地球連邦にとって、あなた方合衆国が第二次世界大戦で相手取り殲滅したナチスや、今の時代冷戦で向き合っているであろうソビエトと同様の仇敵であること、どうかご理解いただきたい!そして奴らとの戦いにおいて我々に協力してもらいたいのです!」
レビルはこう言い、深々と頭を下げた。
しかし、それまで呆然としていた首脳陣の中で、ブレジンスキーだけがある違和感に気づいた。
「……?ちょっと待ってください。レビル中将、今なんと言いましたか?」
「ぜひこのジオンとの戦いにおいて我々に協力してもらいたいと…」
「いえ、その前の、ナチスについての発言です。」
「
そこまでレビルが言うと、ブレジンスキーは違和感の正体に気がついた。
他の閣僚陣もその矛盾に気がついたらしく、ハッとした顔をしていた。
「レビル中将、我々の側からお伝えしたい、いやしなければならないことがあります」
「…どうしました?」
深呼吸をした後、ブレジンスキーはこう切り出した。
「この地球は、おそらくあなたの知る歴史を辿った地球ではありません」
「…それは一体、どういうことでしょうか」
レビルが怪訝な表情を浮かべる。
ブレジンスキーの後を継ぐ形でマクナマラが語り出す。
「あなたは今第二次世界大戦でナチスは殲滅されたと言いましたね?ですが、我々の知る第二次世界大戦は枢軸国の勝利に終わっております」
「なんですと!?」
「あなたの世界の歩んできた歴史がどのようなものかは存じあげませんが…今、この地球は我々合衆国の率いる自由国家機構、大日本帝国の率いる大東亜共栄圏、そしてナチスどもの率いる統一条約の間での冷戦が続いています」
「なんと…」
予想もしない事態に驚愕するレビル。
彼はそこであることを思い出した。
アメリカ合衆国の歴代大統領の中に、カークパトリックという名前はなかった。
その時点でレビルは何かがおかしいと気づくべきだったのだ。
そのことを悔やむとともに、レビルはもう一つ重大なことに気がついた。
「だとすれば、相当まずい」
「…どうしました?」
「我々地球連邦宇宙軍は、こことは別に調査部隊をドイツのミュンヘンにも送っているのです、もしそれが民主化後の西ドイツではなく、ナチスドイツなら…」
その時だった。
会議室の扉が勢いよく開けられ、突如としてCIAの長官を務めている男:E・ヘンリー・ノキが入室した。
「大統領閣下、大変です!宇宙船団からドイツ本土南部のミュンヘンへと謎の軍が降下!ドイツ軍との間で戦闘が勃発、すでに大規模な市街戦が行われているそうです!」
「なんですって!?」
「一歩遅かったか…!」
この瞬間、連邦・アメリカ・ドイツなど様々な勢力の重なり合った思惑によって事態は大きく動きつつあった。
時代が変わる瞬間は、刻々と近づいていた。
〜今回の話のまとめ〜
リュウ・ホセイ「やっべえ、ミノフスキー粒子のせいでジオンの艦隊のど真ん中にでてきちまった」
シン・マツナガ「なんか迷ってた連邦軍の戦闘機捕まえたわ」
ダニガン「地球と宇宙の連邦軍の間で連絡が取れていない…?妙だな…」
↓
アメリカの天文台「ファッ!?なんか青色の宇宙船団から落ちてきた!?」
連邦軍降下部隊「ファッ!?なんでこんな自然回復してるんだ!?」
↓
アメリカの州兵「なんか人間だし地球連邦とか名乗ってるぞこいつら…どういうことなの…?」
連邦軍降下部隊「西暦1974年だと!?まさか地球は過去に戻ったとでもいうのか!?」
↓
レビル「マジかよ、こうなったらこの過去のアメリカに連絡とって支援要請するで」
↓
カークパトリック大統領「すみません、うちの世界ナチスがww2勝ってるんで多分世界が違います、過去じゃないです」
レビル「!?やっべ、ミュンヘンにも降下部隊送っちゃったんだが」
CIA長官「ナチスと連邦軍がミュンヘンで衝突しています!」
大統領・レビル「「!?!?!?!?!?」」
〜今回の話のまとめ終わり〜
マイナー宇宙世紀キャラ解説:「セモベンテ隊」
フェデリコ・ツァリアーノ中佐が指揮する地球連邦軍の特殊部隊。フル3DCG作品の「IGLOO -1年戦争秘録- 」の第2話で北米大陸でジオン軍の試作兵器「ヒルドルブ」と戦ったが、今作では地球で何らかの異常が発生していると考えた連邦軍上層部によって北米大陸の調査に派遣された。
原作では連邦に鹵獲されたザクや連邦の主力戦車である61式を使用していたが、この回ではそこまで重装備ではなく大気圏突入用カプセルおよびそれに載せられた軍用バイクを使用している。
小規模な部隊だが能力は高く、北米大陸の調査という重要な任務に相応しい精鋭だ。
第4話はTNO地球各主要国がメインで12/8(金)に投稿予定です、どうかお楽しみに!