【未完】機動戦士ガンダム:新秩序の終焉   作:うねる蛇

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〜前回の話のまとめ〜

リュウ・ホセイ「やっべえ、ミノフスキー粒子のせいでジオンの艦隊のど真ん中にでてきちまった」
シン・マツナガ「なんか迷ってた連邦軍の戦闘機捕まえたわ」
ダニガン「地球と宇宙の連邦軍の間で連絡が取れていない…?妙だな…」

アメリカの天文台「ファッ!?なんか青色の宇宙船団から落ちてきた!?」
連邦軍降下部隊「ファッ!?なんでこんな自然回復してるんだ!?」

アメリカの州兵「なんか人間だし地球連邦とか名乗ってるぞこいつら…どういうことなの…?」
連邦軍降下部隊「西暦1974年だと!?まさか地球は過去に戻ったとでもいうのか!?」

レビル「マジかよ、こうなったらこの過去のアメリカに連絡とって支援要請するで」

カークパトリック大統領「すみません、うちの世界ナチスがww2勝ってるんで多分世界が違います、過去じゃないです」
レビル「!?やっべ、ミュンヘンにも降下部隊送っちゃったんだが」
CIA長官「ナチスと連邦軍がミュンヘンで衝突しています!」
大統領・レビル「「!?!?!?!?!?」」

〜前回の話のまとめ終わり〜

今回の話はドイツ軍と地球連邦軍の衝突、そしてそれに対するTNO地球各国の反応がメインの話となっています。


第4話 狂気的な出会い

コロニー衝突約50時間後 地球軌道上 地球連邦宇宙軍所属 ヨーロッパ方面艦隊隊旗艦 ブリッジ

 

地球連邦宇宙軍に所属し、第三地球降下部隊の指揮官を務めるバスク・オム大佐が出撃しようとしていた。

 

「……閣下、それでは私はこれで」

「ああ、頼むぞ、大佐」

「はっ!」

 

敬礼をして地球に降下していくバスクと彼直属の第三地球降下部隊を見送ると、ヨーロッパ方面艦隊司令ジョン・コーウェン中将はため息をつく。

 

「ふぅ……。忙しかった……」

 

コーウェンはここ数日の出来事を思い出す。

地球連邦政府に宣戦布告をした『ジオン公国』。そしてそのジオン公国が行ったコロニー落とし作戦。

それは、地球からのあらゆる情報が絶たれるという結果をもたらした。

しかし、この動きに対して連邦軍も黙ってはいなかった。

部隊の集結を待たずして地球へ連絡部隊を派遣したのだ。

だが、ジオン軍は連邦軍の動きを察知してすぐに体制を整えた。

これにより、ジオンが新たな動きを見せる前に地球への連絡を確立するためにバスクの部隊による地球降下が実行された。

 

「どうやら私の出番はもう無さそうだな」

 

コーウェンはそう言ってコーヒーを口にする。

彼はバスクの部隊を地球へ降下させたことで安心した様子を見せていた。

否、自分や自分の部下達を安心させたがっていた。

先ほど全軍にゴップ大将を通じてレビル中将からもたらされた情報によれば、地球は西暦時代、具体的には1974年のものに戻ってしまったという。

無論その頃の地球に地球連邦などあるはずもなく、将兵たちの中でもサイド1・2・4出身の者たちに続いて地球出身者、いわゆるアースノイド達すらも帰る場所を失ってしまった。

しかし、そんな時だからこそコーウェンは狼狽しなかった、否、狼狽してはいけなかった。

今ここで仮にも宇宙軍の少将たる自分が狼狽しては、それを見た部下達の士気は急降下一直線だろう。

ジオンとの戦争の只中のこの時期に、それだけは防がなければならなかった。

 

幸いなことに、バスク達の部隊が降下する場所はミュンヘン、1974年当時は西ドイツの領域内だった場所だ。

ジオンの艦隊が近くにいたとの情報がある以上、ジオン兵の尖兵が先に地球に降下していた際に備えてある程度の武装は持たせたのは確かである。

しかし相手の西ドイツが連邦同様の自由民主主義国家である以上、初接触はスムーズに進み、バスク達は丁重にもてなされるだろう、そう考えていた。

 

だが、彼のそういった思いとは裏腹に、平穏無事に物事は進まなかった。

彼がコーヒーを飲み終わった頃に、緊急無線の通知音がブリッジに響いた。

 

『こちら、第三地球降下部隊隊長のバスク・オム!ヨーロッパ方面艦隊、至急応答求む!』

「どうした大佐?現地の西ドイツ人達との接触に成功したのか?」

『それどころではありません、我々は今現地の軍に襲われております!』

「なんだと!?」

 

コーウェンはその凶報に思わず席から立ち上がる。

そのやりとりを聞いていた他のブリッジ要員も騒然としている。

 

「一体どうしてそんなことに?」

『わかりません…我々の降下カプセル4機のうち、着地した瞬間に1つが銃弾とミサイルの雨を喰らい、乗員諸共木っ端微塵に吹き飛びました』

 

無線機からはバスクの声にまじって、時折連続した発砲音や爆音が聞こえてくる。

バスクらの部隊の窮状は、十分に伝わってきていた。

 

「わかった。君はそのまま怪我人を連れて撤退してくれ。あとはこちらで何とかする」

『了解しました』

 

バスクとの連絡を終えたコーウェンはすぐに統合参謀本部にドイツでの戦闘を報告した。

 

「まさか現地の人間に攻撃を受けるとは……」

 

報告を受けた統合参謀本部議長であるゴップ大将の顔色は優れない。

時代が違うとはいえ同じ自由民主主義を掲げているはずの西ドイツ軍から一方的に攻撃を受けたのだ、無理もない。

 

「はい。我々も予想外でした」

 

そう答えるコーウェンは、宇宙世紀から時代が文字通り変わっていくのを感じていた。

 

全軍にレビル中将の艦隊より『この世界は我々の知る物と異なる歴史を歩んでいる』との事実が伝わったのは、そのたった数分後であった。

レビル自身がアメリカ合衆国の首脳陣から聞いたとされるその歴史の概略を受け、ティアンム中将率いるアジア方面艦隊による東京降下は事前に中止されたのだった……。

 


 

同時間帯 大ゲルマン帝国 ミュンヘン市街地

 

「クソッ、一体何がどうなっていると言うのだ…!」

 

地球連邦宇宙軍所属、バスク・オム大佐は思わず悪態をついた。

自分たちが降下した瞬間、すでに自分たちの降下した広場は現地の西ドイツ軍と思しき軍事勢力によって包囲されており、4つあった降下カプセルのうち一つは着地した瞬間に敵のミサイル攻撃で爆散した。

予想だにしなかった事態に混乱する部下たちをまとめあげ、他の三つのカプセルや、本来ジオン軍がすでに上陸していて交戦状態になった時のために持ってきていた61式戦車2台を遮蔽物として利用し、彼らは辛うじて壊滅を免れていた。

 

「大佐…我々は一体どうすれば…!」

 

バスクと共に戦車の影に身を隠していた、ある年少の男性隊員がバスクに訊く。

友好的だと思っていた者たちに攻撃され、部隊員のほとんどはどうしたらいいかわからなくなってしまっていた。

バスクは周りを見渡した。

彼らはすでに遮蔽物や61式の内部に身を隠すまでに、少なくない犠牲者を出してしまっており、一様に困惑・絶望を隠しきれない表情のまま屍を晒していた。

なんと言ってもバスクの側からまだ1発も攻撃していないにも関わらず、現地の軍の攻撃はまだまだ止む様子を見せていなかった。

むしろ声の数からして、包囲網の人員の数は増加しているようでさえあった。

 

自分たちは何もしていないにも関わらず、問答無用で攻撃を受けている。

それも、同じ地球生まれのはずの者達に。

その無念の中、自分の傘下にいた将兵たちは死んでいった。

そのことを理解した時、バスクの中の決定的な何かが切れた。

 

「…応戦するぞ」

「え?」

 

バスクは項垂れていた頭をあげた。

その顔は、怒りに満ちていた。

 

「生き残った全ての隊員に告ぐ、現地軍に対しての発砲を許可する!全ての責任は私が取る、持てる全てを持って戦え!」

「し、しかし…」

「しかしも何もない!訳も分からず問答無用で殺され、今お前たちの目の前に屍を晒している同胞の敵を取るのだ!」

 

そう言ってバスクは立ち上がり、自分の抱えていた自動小銃を敵に向けて連射し始めた。

それにつられて他の隊員達も携行していた自動小銃や拳銃、ビーム兵器やロケットランチャーで応戦し始め、彼らの遮蔽として機能していた61式戦車も砲塔を敵に向けて回し始めた。

 

これが後の歴史で『ミュンヘン事件』と呼ばれる、地球連邦と地球上の国家の、史上初の軍事衝突事件の始まりだった……。

 


 

コロニー衝突約51時間後 大ゲルマン帝国 ミュンヘン郊外

 

この街では、街に降下してきた()()()()()()()()()と街を防衛しようとする国防軍の戦闘が起こっていた。

しかし、国防軍は敵部隊の攻撃に対して有効な反撃ができずにいた。

最初こそこちら側への損害を出すことなく着陸したばかりの敵部隊に有効な打撃を与えられていたが、相手側が攻勢に出ると戦局は一転、国防軍は劣勢となった。

敵部隊の装備するビーム兵器やミサイルは国防軍に対して有効であるが、国防軍の兵器は彼らに対して十分な威力を発揮することができなかった。

彼らの戦車の装甲はとても強靭らしく、国防軍の持っている歩兵携行式の対戦車ロケットを何発当ててもびくともしていなかった。

さらに言えば件の戦車は砲塔に二つの砲門を有しており、それを交互に短期間で発射することで国防軍部隊に多大な損害を与えていた。

また、自国内での戦闘ということもあって、市街戦に慣れたドイツ軍であっても攻撃に躊躇している。

そのため、戦況は膠着状態に陥っていた。

 

「レーマー閣下!このままでは、我が部隊はあのボリシェヴィキども相手に全滅します!」

 

ミュンヘンの郊外から直接指揮を取る国防軍トップのオットー・エルンスト・レーマーに対し、彼の参謀が悲痛な声を上げる。

まさか本土を直接攻撃してくるとは予想もできていなかった。

そのため、ドイツ軍は主に東方生存圏の方に回され、本土の守りは手薄になっていたのだ。

しかし、それを知った上でもなお、レーマーは狼狽えていなかった。

 

「落ち着け!まだ我々には切り札がある」

「切り札ですか?それは一体?」

「お前も知っているだろう?あの化け物だ」

 

レーマーの言う『化け物』とは、ルフトヴァッフェのエース部隊、Brown中隊のことである。

彼らは、他の追随を許さないほどの撃墜記録を持っている部隊である。

その精鋭部隊が今、最前線のソ連所属らしき部隊の陣地に攻撃を仕掛けているのだ。

 

「確かに中隊の存在は大きいですが……」

 

Brown中隊の活躍によって空軍を引き連れていない敵部隊は後退し、現在は市街地中心部にまで押し戻されていた。

彼らの活躍によって侵攻は完全に阻止されていると言ってもいいだろう。

しかし、この状態では、いずれ敵部隊の攻撃が再開されて、ドイツ軍は再び追い込まれることになるだろう。

そう思った参謀であったが、レーマーから意外な言葉が返ってきた。

 

「いいか?我々陸軍も敵の攻撃を防いだ後、反撃に転じるのだ。その時こそ、愚かにもこの大ゲルマン帝国の土を踏んだボリシェヴィキどもの尖兵を壊滅させる時だ」

 

レーマーは不敵に笑い、それを頼もしく感じた参謀も頷いた。

国防軍の反撃は間近に迫っていた。

 


 

同時間帯 大ゲルマン帝国 ミュンヘン市街地上空

 

ミュンヘンの都市内及び郊外の地上では大ゲルマン帝国軍と降下した地球連邦軍が戦闘を継続しており、奇襲効果と物量で圧倒している大ゲルマン帝国軍は技術で圧倒的優勢である筈の地球連邦軍を苦戦に追い込んでいた。

そもそも論で、「技術で圧倒的に優勢である相手にどうして苦戦しているのか?」と疑問に思う後世の人間も少なくはないが、どうか考えてみて欲しい。

仮に技術水準で圧倒していたとしても、現在の帝国陸軍一個大隊が1940年代の米軍の陸上戦力に包囲され、さらに航空優勢まで奪われている状況で優位に戦えることができるであろうか?

さらに場所が都市部であるという点においても連邦軍に不利に傾いている。

一般的に市街戦はビル・自動車などの障害物が非常に多く、どれほどの長距離の射程と索敵能力を備えた兵器であったとしても性能は著しく制限されてしまう。

よって多くの戦場の指揮官は市街戦を何としても避けようとする傾向にあるが、地球連邦軍の場合はまだ『恒星間局地的時空遡行現象』が発生していることを理解していなかったため、(万が一戦闘になったとしても)友軍の支援を受けられるものと判断して都市に降下してしまったのである。

…そしてさらに悪い事に、彼らに厄災ともいえる強力な航空機部隊が迫りつつあったのである…。

 

Brown1『こちらBrown中隊、間もなく作戦空域に入る。マルチロックミサイルの発射用意を。この戦闘にケリをつける。

 

そして、空が暗黒に染まるのではないかと思われるほどの数を誇る航空部隊の中心にいる、機体を褐色のパレード迷彩に染めている航空隊の隊長と思しき機体が、配下の機に無線で指示をした。

 

Brown9『それにしても相手はあのボリシェビキだって話じゃないか、隊長?どうする?

Brown1『…相手が何であれ、爆弾で吹き飛ばせば一緒だ。交戦せよ。

 

そして、褐色の猟犬たちは野に放たれた。

 

戦闘描写に入る前に、Brown中隊について説明しておく。

彼らはドイツ軍のエース部隊で構成されたエリート戦闘集団であり、彼の有名なエーリヒ・ハルトマンやルーデルと言った名パイロットから直々に指導を受けたとすら言われているほどである。

そして、彼らはその腕をミュンヘンに展開している地球連邦軍にいかんなく発揮していくのだった。

 

Brown13『それにしても、あの敵軍が使ってる戦車、本当にソ連軍の物?あんなの見たことないけど…

Brown4『そんなの一々気にしちゃダメだよ、13。今は目の前の任務だけを考えないと。

 

Brown中隊の内、二人がそのように短い会話を行う。だがその間にも彼女達は連邦軍の後方拠点を破壊しつつあった。

 

『ミサイルが直撃しました!向こうの部隊と繋がりません!』

『ヨーロッパ方面艦隊はなにやってんだか!このままじゃ蒸し焼きにされちまうぞ!』

 

連邦軍の兵士たちが悲鳴を上げる中、他の隊員も敵機のいない空を縦横無尽に飛び回り、戦場で暴れまわっていた。が…

 

Brown21『何だあの戦車!?何発も浴びせてるのに何で動けているんだ?

 

やはり地球連邦の兵器は未来技術でこの時代ではありえない防御性能を誇っており、エースであっても撃破は難しいようだ。

 

Brown9『はいよ、新人はちょっとどいてな!

 

だが、それを見かねた別の隊員の機体が急降下し、連邦軍戦車に獲物の喉笛に飛び掛かる狼の如く狙いを定める。飛行機雲は鋭く空を切り裂き、墓標の様に刻まれる。

 

『おい、狙われてるぞ!叩き落せ!』

『ダメです!旋回が間に合いません!』

 

連邦の戦車がもたもたしている間に、Brown9は機関砲を発射。吸い寄せられるように一か所だけを狙い機銃弾を命中させる。

並みの機銃の攻撃ならば耐えることも可能であったが、ただ一点のみに集中した攻撃を防ぐことは出来ず、やがては装甲を貫き貫通した。

更に運の悪い事にその気銃弾が弾薬庫に跳弾し、戦車は大爆発を起こした。

 

Brown21『す、凄い…

Brown9『ま、ウチの部隊に入れるぐらいだから慣れればあんたもできるようになるさね。それまで新人は、先輩の仕事を見て覚えるように。

Brown21『は、はい!

Brown4『…あれ私も出来ないんだけどな…

Brown5『何?それは本当か。ならこの戦闘が終わったら、貴様を鍛えなおしてやらないとな。

 

どうやら他の者達も地上戦力を粗方片付けてきたらしい。他の航空隊とも共同で作戦を進めていたとはいえ、恐るべきペースだった。

だが、戦場とはいつも油断したものに死を与える。ここでも例外ではなかった。

 

Brown1『警告!地上からのロックオンだ!狙われているぞ!

 

Brown1からの警告が入るや否や地上から対空機関銃の閃光とは違った、一条の光が現れた。

それはぐんぐん高度を上げていき、Brown各機にあっという間に近づいてくる。言うまでもなくそれは誘導弾、対空ミサイルである。

 

Brown9『まずい、全機回避!

 

Brown9を始め、Brownの中のベテランパイロットたちはすぐさま各々の方向に急旋回し誘導を回避した。だが、新人はそうもいかなかった。

 

Brown21『か、回避って…どうすれば

 

それ以上の言葉を発することは出来なかった。時間にして一瞬にも満たない判断のずれだったが、それが命取りとなった。Brown21の機体にミサイルが命中した。

 

Brown9『しまった!おい、21!クライン!返事をしろ!

 

だが彼女の声も虚しく、彼の搭乗していた機体はフラフラと力なく失速し、ミュンヘンの町に墜落した。墜落地点では目視で分かるほどの爆発も確認できる。

 

Brown9『クライン…畜生!

 

Brown9は力無く呪詛を唱えるが、彼は帰ってこない。全ては敵の誘導兵器の能力を見誤った彼女の、そして中隊のメンバー全員の責任だった。

 

Brown5『敵の誘導兵器の性能は予想以上だな…21の機体もかなりの速度で飛んでいたというのに…

Brown7『今は泣き言をいう時間やない…21の弔い合戦や。

 

Brown7の言葉に中隊全員が同意する。崇拝する祖国を破壊し、そして仲間の命を奪った彼らに報いを受けさせなくては。

 

Brown1『再度、攻撃開始。彼の無念を晴らせ。

 

隊長のBrown1の号令と共に、敵を駆逐する為に空の猛者たちは地上の敵に襲い掛かった。

 


 

コロニー衝突約54時間後 大ゲルマン帝国 帝都ゲルマニア 総統官邸総統執務室

 

「総統閣下、レーマーです。ミュンヘンでの戦闘報告書を届けにまいりました」

「レーマーか。よし、入れ」

 

国防軍最高司令部総長にして、ミュンヘン現地で直接ドイツ軍の指揮をとっていた男:エルンスト・レーマー。

彼はノックした後執務室に入ると、思わず一瞬怯んでしまった。

彼が見たのは、書類が床に散らばり、いつもシュペーアの背後の額縁に飾ってあるヒトラーの肖像画すら半分壁から採れかけている、まるで室内で狂人が暴れたかの如き酷い様子だった。

そんな執務室の中央で息切れしながらシュペーアが立っていた。

 

「そんな顔をしてどうした、レーマー。かつてシェルナーの軍国派にいたお前らしくもない」

「い、いえ…その、この部屋は」

「ああ、ミュンヘンの件で少々取り乱してしまってな。まあ、あとで秘書たちに元通りにさせる」

 

あっさりと執務室の惨状を自分のせいだと認めたシュペーアに、レーマーは唖然とした。

同時に、レーマーはあることを思い出した。

総統官邸内部の噂で、『奴隷反乱の時のシュペーア総統は、ストレスのあまり気狂いのようになっていた』というものがあったことを。

それまで眉唾物の噂だと思っていたが、どうやらこの様子を見るにそれは本当のことだったのだろう、そうレーマーは脳内で結論づける。

 

「まあそんなことはどうでもいい。報告書を」

「はっ、了解いたしました。」

 

気を取り直したレーマーはシュペーアに、報告書を渡す。

シュペーアは席に着くと、報告書を一読し始める。

 

「ふむ、Brown中隊を筆頭とした航空隊の活躍によりボリシェヴィキの部隊は壊滅、捕虜にできた敵兵はたったの10名か…」

「申し訳ございません、奴らの多くは既に息絶えていたため、これ以上の人数を生け取りにできませんでした…」

「そうか…まあいい。()()は徹底的にやれと、あとでゲーレンに伝えておけ」

 

シュペーアはページをめくり、捕虜一人一人の特徴をカラー写真付きで分析した資料を読むうちに、あることに気づく。

 

「やけに様々な人種がいるな…ボリシェヴィキの奴らのことだから劣等人種のスラブ人ばかりだと思っていたが、黄色人種やアフリカ人までいるじゃないか、これはどういうことだ?」

「それについては、外務大臣殿がある仮説を提唱していました」

「ムスグヌクがそんなことを?一体どういうことだ?」

 

シュペーアは首をかしげる。

現外務大臣の彼が、そんなことをやるのがあまり想像できなかったからだ。

かつてシュペーア政権の閣僚だった『四人組』の中で、ユダヤ人の父親を持ち、明らかに民主主義に毒されており、奴隷反乱の時に無断で奴隷たちと交渉しに行った前外務大臣『ヘルムート・シュミット』。

彼の粛清後に、シュぺーアはシュミットのかつての副官達の中で、シュぺーアの『ナチズムを近代化させ、持続させる』という理想に忠実だった男を外務大臣に任命した。

その男こそがムスグヌクだった。

シュペーア自身はこの男に対して独自の意見など全く期待していなかったため、その行動が珍しく思えたのだ。

 

「外務大臣殿曰く、ボリシェヴィキどもがこの前再設立したコミンテルンを通じて、密かに国際旅団を再設立し、その一部を今回の攻撃に利用した可能性があると」

「国際旅団だと!?」

 

シュペーアは愕然とした。

『国際旅団』。

それはブハーリン時代のソ連が、かつて30年以上前に起きたスペイン内戦において、共産党を含む政府側を支援するためにコミンテルンを通じて送り込んだ、世界各国の共産主義者を集めて結成された義勇軍部隊だった。

結果的に彼らの奮戦虚しく政府側は敗れ去り、フランコ将軍の率いる反乱軍の勝利でその内戦が終わって以降、その名は長年に渡って忘れ去られていたのだ。

つい、この時まで。

 

「まさかその名前を再び聞くことになるとはな……」

「同感です。どうしますか?」

「三時間後までに閣僚を全員集めておけ、今回の件に対する緊急対策会議を開くぞ」

「了解です」

 


 

コロニー衝突約55時間後 フランス国 パリ 8区 エリゼ宮殿

 

「奴らはビーム兵器も使っていたのか?」

『ああ。既に残骸から解析を進めている。』

「シュペーア、その解析に我々も参加しても良いかな?」

『まあ、いいだろう。君の頼みとあらば断る訳にもいくまい、ビシュロンヌ。』

 

電話口のシュペーア総統と対等な立場で話しているのは、彼の個人的な友人でもあり、フランス国の現職の大統領でもあるジャン・ビシュロンヌ。

彼はブルグント騎士団国による侵攻後の政治的混乱の中で勢力を握り、それ以降自身を含めた技術官僚達による独裁を敷くことによってフランスの経済を復興させ、欧州産業の中核の一つにまでのし上がらせた人物だ。

 

『ところで、今まで何処に行っていた?』

「19区のラザール原子力発電所だ。もうすぐ稼働するから、視察にな。」

『19区か。確かあそこはヒムラー共の残骸が残ってたのではないのか?』

「そんなものは全て平らげて建設したよ。解析した所で見合う数字は得られん。」

『相変わらず、容赦ないな。』

 

電話口でシュペーアは友を嘲笑した。

が、ビシュロンヌはそれを機にする様子もなく、淡々と話を進めた。

 

「黒作戦で知った筈だ。ブルグントの技術などたかが知れてる。奴らのような非効率性は政府から徹底的に排除すべきだ。」

『4年前の新憲法のように、か?』

「そうだ。それ以前の憲法で生きる非効率な連中より、今回の宇宙人共を生け捕りにして解析した方が余程見合う数字が得られるだろうに。」

『ボリシェヴィキ共を?』

「ビーム兵器の身体への影響、宇宙空間から急速に降下した際の重力負荷、他にも色々調べられるぞ。」

『確かにな。』

「第一、私に言わせれば、本当にアカ共なのかも疑わしい。」

 

シュペーアは不満げに『違うとでも?』と言い放った。

が、「違う。」と、ビシュロンヌは一切物怖じせずにシュペーアの考えを切り捨てた。

 

「もしかすれば外宇宙から来た生命体かもしれん。まあそうだとすれば、生身では地球の気圧に耐えられんかもしれないがな。」

『面白い冗談だ。』

「冗談と言う言葉は間違いでは無い。これは冗談と同等に数字の出しづらい話だ。実物が無い以上は…」

『なら、試してみるか?』

「ほう?」

 

それまで淡々と話していたビシュロンヌは、それを聞いて目を見開いた。

 

「数は?」

『10体だ。どれも人間同様の背格好をしている。』

「興味深い。直ぐに解析すべきだ。」

『ボリシェヴィキどもの情報を聞き出すのが先だ。』

「なら、その間にそっちに行く。私も解析に参加しよう。」

『頼もしい限りだ、友よ』

 

ガチャン!

シュペーアの言葉を聞き終わる前に、ビシュロンヌは受話器を置いた。

彼はすぐさま秘書を呼び出し、こう命令した。

 

「直ぐにミュンヘンへ向かう。ルネ・フォンク空港まで車を出せ!」

 


 

同時間帯 イタリア帝国 ローマ クイリナーレ宮殿

 

「ミュンヘンでの戦いは、ドイツの勝利で終わったそうです」

「ドイツが勝つとは。意外だな」

 

執務室にいるイタリア王ウンベルト二世は、アルミランテ首相の報告を聞いて驚いた。

彼ら二人をはじめとしたイタリアの首脳陣の大半は、宇宙船団が地球外のものだと信じて疑わなかった—言い換えれば、ソビエトの新兵器だというドイツの主張などハナから信じていなかった—が故に、そのような技術的優位を保持する相手に対してドイツが勝利するとは思っていなかったのだ。

彼らはドイツが先に降下部隊に向けて撃ったこと、およびアメリカの方は彼らと平和的接触ができていることを諜報網を通じて掴んでおり、降下部隊をソ連軍のものと勘違いしたドイツ軍が戦闘を仕掛けたのだと結論づけていた。

事実それは間違っていなかったのを後に二人は知ることになるのだが、今はまだその時ではなかった。

 

「おかしなものです。あの”宇宙艦隊”が介入しなかったのが勝因であるのに間違いはないでしょうが…」

「問題はそれがなぜか、と言うことだな」

 

二人は頭を悩ます。

ドイツの勝因は間違いなく、地上部隊のみを相手にしたことであった。

問題はなぜはるか上空にいた宇宙艦隊が地上に降りた同胞を支援しなかったのかであった。

 

「まあ、このことは相手の事情がわからない限りは結論は出ないだろうな…彼らの正体は掴めているのか?」

「残念ながら、彼らの正体は未だわからずじまいです。アメリカ大使館からも何の情報も届いていませんし…」

「そうか…何かしら彼らと独自にコンタクトを取る手段もないのか?」

「我々は現在そのような手段を有しておりません…我々の宇宙機関など、日本やドイツ、アメリカなどに比べれば微々たるものでしかありませんし…」

 

二人はその後しばし言葉を交わした後、それぞれの仕事に戻っていく。

 


 

その数時間後、アルミランテはローマ外縁のある家を訪れていた。扉をノックして、二人の護衛と共にその家の中に入る。

家の中ではある老けた男が窓際に座ってコーヒーを飲んでいた。

 

「どうも、元気にしていましたか?”サルヴァトーレ”さん」

 

その言葉に老けた男は振り返る。

 

「…ああ、あなたでしたか、アルミランテさん。おかげさまでこうして元気に過ごせていますよ」

「そうでしたか。…ここの風景を見ていたのですか?」

「まあ、ここが綺麗なところなのはその通りです。しかし…」

 

”サルヴァトーレ”と呼ばれたその男は再度窓の外を見やる。

彼の視線の向くその方角には、彼の本当の故郷たるドイツがある。

 

「私はかつてあの時、ヒトラーの番犬たる親衛隊に、志を同じくする者たちを皆殺しにされたのです。私だけが生き残りました。しかし、私はまだ帰還を諦めてはいません」

 

イタリアに亡命し、三十年以上が経った”サルヴァトーレ”。

彼の本名は故郷ドイツではほぼ忘れ去られている。

しかしその眼に宿る決意の炎は、まだ消えてはいなかった。

 


 

同時間帯 イギリス ロンドン ダウニング街10番地

 

「そうか、ミュンヘンに降りたか。」

「はい。被害は甚大とのことです。」

 

ライヒから海を隔てたイングランド。その首相レジナルド・モードリングの気は晴れなかった。

 

「あそこにはジーメンスの本社がある。そこに被害が行けば我が国の電子産業も停滞してしまう!」

「現に被害が出ております。これは放置できぬ事態ですな。」

 

その一方でMI6の長官たるキム・フィルビーは悠然としていた。

 

「何を他人事に!」

「工場は我が国にもございます。寧ろこれは好機とも言えましょう。」

 

フィルビーは手に持っていた被害報告書を机に置き、壁の地図に目を向けた。

 

「本社をロンドンに誘致しろと言うのかね?」フィルビーにつられて、モードリングも地図の方に向き直った。

「ミュンヘンが壊滅した以上、ロンドン工場こそがジーメンスの最大の工場となるでしょうな。」

「だが、ジーメンスの人員を置けるだけの土地はもうロンドンには無いぞ。」

「ここがあるではありませんか?」フィルビーは、ロンドンの中心部にある建物を指差した。

「大蔵省をどかせと…」そこまで言ってモードリングは黙り込んだ。

 

フィルビーが示している場所がどこか気づいたのだ。

 

「大蔵省ではございません。その下です。」

 

キャビネットウォールームス。第二次世界大戦中のチャーチルの執務室だったが、英国が負けた今となってはただの廃墟でしかない。

 

「正気かね?あそこはもう爆破したのだぞ。本国からも、欠片も残すなと言われてたでは無いか!」

「あれは親衛隊が勝手にやっただけの事。大義名分を捏造したモンティナ少佐も、黒作戦で戦死したと聞きますが?」

「だがね…」

「それに、前触れもなく突如として宇宙人に襲われたのです。彼らが空の見える場所に居たがるでしょうか?」

「…まあ、それもそうだな。」

「手は回しておきます。どうか、ご検討を。」

 

そう言ってフィルビーは部屋を出ていった。

直後、モードリングは気配を感じた。

 

「君かね、ペトラ君?」

彼女は、1匹のネズミを咥えていた。

「流石だ、ネズミ捕獲長としての腕は衰えてはいないようだね?」

彼女は何も返さず、ただモードリングを睨みつけていた。

 

ナンバー10を後にしたフィルビーは、他の仕事をしていた部下と落ち合った。

 

「どうだった?」

「やっぱり動いてましたよ。恐らくはカナダの連中ですかね。」茶色いセミロングの男は、淡々と答えた。

「懲りない奴らだ。」フィルビーはため息をついた。

「ええ、全く。」

「仕留めたな?」

「そりゃ勿論。俺の腕を舐めてもらっちゃ困ります。」

「その力、我らの為すべきことのために振るえ、ニール・ディランディ。」

「…了解。」

 





〜今回の話のまとめ〜

コーウェン「よし、とりあえずヨーロッパの西ドイツに連絡部隊を派遣したぞ…」
ドイツ軍「うわっ本当にソビエトが降りてきたぞ!殺せ!」
バスク「攻撃を受けてます!助けてください!」
コーウェン「ファッ!?」

バスク「(友軍の部隊の遺体を見て)もう我慢の限界だ、撃てーっ!」
ナチスドイツ軍「ファッ!?こいつら意外に強いぞ!?」
ナチスドイツエース航空隊「任せろ!オラッ!死ね!」
バスクら降下部隊「ウワーッ!?(壊滅)」

レーマー「事後報告に参りました」
シュペーア「(報告を見て)なんでこいつらこんなに多人種なんだ?」
レーマー「国際旅団再設立の可能性があるそうです(勘違い)」
シュペーア「ファッ!?やっぱソビエト危険だわ」
フランス大統領ビシュロンヌ「俺もその降りてきた連中見ていいか?」
シュペーア「あっええで」

イタリア首脳陣「なんで宇宙艦隊は介入しなかったんだ…?」

イギリス「とりあえずミュンヘンからジーメンス社の人たちを招待しとくか…」

〜今回の話のまとめ終わり〜

・ニール・ディランディ:cv.三木眞一郎
英国諜報機関『MI6』の構成員。入れ替わり時点で22歳。茶色いセミロングの髪と、緑の目が特徴のアイリッシュ系の青年。どこか飄々としていて面倒見がよく、社交的で他者を大事にする性格。その一方で、諜報機関では随一の狙撃手として知られる実力者。テロリストに対しての敵愾心が非常に強く、時には手段を選ばなくなることがある。
無論元ネタはガンダムOOの同名人物。

日本とジオンが中心の第五話は、12/15(金)に投稿されます!
どうかお楽しみに!
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