【未完】機動戦士ガンダム:新秩序の終焉   作:うねる蛇

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〜前回のあらすじ〜

コーウェン「よし、とりあえずヨーロッパの西ドイツに連絡部隊を派遣したぞ…」
TNOナチスドイツ軍「うわっ本当にソビエトが降りてきたぞ!殺せ!」
バスク「攻撃を受けてます!助けてください!」
コーウェン「ファッ!?」

バスク「(友軍の部隊の遺体を見て)もう我慢の限界だ、撃てーっ!」
ナチスドイツ軍「ファッ!?こいつら意外に強いぞ!?」
ナチスドイツエース航空隊「任せろ!オラッ!死ね!」
バスクら降下部隊「ウワーッ!?(壊滅)」

レーマー「事後報告に参りました」
シュペーア「(報告を見て)なんでこいつらこんなに多人種なんだ?」
レーマー「国際旅団再設立の可能性があるそうです(勘違い)」
シュペーア「ファッ!?やっぱソビエト危険だわ」
フランス大統領ビシュロンヌ「俺もその降りてきた連中見ていい?」
シュペーア「あっええで」

イタリア首脳陣「なんで宇宙艦隊は介入しなかったんだ…?」

イギリス「異星人こわ…とりあえずミュンヘンからジーメンス社の人たちを招待しとくか…」

〜前回のあらすじ終わり〜

今回は大日本帝国とジオンが中心の話となっています。
もし楽しんでいただけたならぜひ高評価および感想お願いします!


第5話 会議の時間

コロニー衝突57時間後 大日本帝国 帝都東京 霞ヶ関

 

日本政府はミュンヘンへの飛行物体の降下を受けて、緊急対策本部を設置した。

その緊急対策本部の会議室には、政権の閣僚たちや急ぎ召集された各学会の専門家をはじめとした、錚々たる顔ぶれが揃っていた。

最後に遅れて到着した福田赳夫首相が着席すると、すぐに会議が始まる。

 

「現在、ドイツ政府がミュンヘンを封鎖し、侵入者を許さない姿勢を取っています」

「それはつまり……?」

 

開始早々飛び出た福田首相の発言に、閣僚の一人が思わず聞く。

 

「おそらくですが、件の飛行物体を有する勢力とドイツは敵対した可能性が高い。現にドイツ軍がミュンヘンに向けて急行していたとの情報もあります。日本もドイツとともに飛行物体に抵抗するべきでしょう」

「しかし、それでは……」

 

と陸軍大臣が反論しかけるが、福田首相が説明を続ける。

 

「日本は同盟国の要請がないかぎり、敵対行動は始めない。また、外国から退避してくる日本人を受け入れる用意があるという声明を発表する」

「なるほど」

 

説明を聞いて陸軍大臣も納得する。

 

「安全のためにも、ドイツで何が起こったのか調査する必要があります。それにドイツにはシュペーア総統とのデタント時に得た財閥の資産もある。そういったことを鑑みれば、我々はドイツを保護する必要があります」

 

と福田首相は説明する。

 

「わかりました。早速準備します」

 

と外務大臣が言い、席を立ち会議室を出ていった。

 

「私は共栄圏各国の緊急召集に出向いてきます」

「了解です」

 

そう言って福田が去ったあとも会議は続き、日本はドイツに特使を派遣することが決まった。

 

ミュンヘンでの出来事により、ドイツ全土が混乱に陥っていた。日本政府にとっても、この長年続いた冷戦の岐路が訪れていた。

 


 

コロニー衝突58時間後 ⼤⽇本帝国 東京 某ビル会議室

 

⽇本を中心とするアジア諸国は大東亜会議を開き、未確認⾶⾏物体に対しての⽅針を決めようとしていた。

大東亜会議は、⽇本、満州、中国、インドネシアなどをはじめとする同盟「共栄圏」の加盟国の代表者が集まって開かれる国際会議である。

この会議では、各国から代表を選出し、意⾒交換や条約の制定などが⾏われてきた。

共栄圏の加盟国は、政治・経済・⽂化など多様な分野で密接な関係を保っている。

これにより、様々な問題や課題を共栄圏の枠組みの中で解決することで、この同盟は安定した発展を遂げることができた。

⽇本を中⼼とした共栄圏はそうして発展してきたのである。

しかし、今回は毛色が違った。

『未確認⾶⾏物体』の出現によって世界が混乱し、今回の⼤東亜会議が急遽開かれることとなったのだ。

 

「……それでは、これより⼤東亜会議を開催します」

 

⽇本代表を兼任する大日本帝国⾸相、福田赳夫は開会を宣⾔した。

 

「まず、最初に議題として取り上げたいことがあります。『未確認⾶⾏物体』の件について、 です」

 

その発言に会議室がざわつく。

「未確認⾶⾏物体」の存在は、既に世界中が知るところとなっており、その出現が共栄圏にもたらす影響も計り知れない。

そのことに対する各国の意⾒交換や利害調整などが、今回福田が共栄圏会議を開いた⽬的であった。

 

「『未確認⾶⾏物体』については、わが大日本帝国も⾮常に憂慮しております。あの『未確認⾶⾏物体』は人類全体の脅威となりうる存在であり、早急に対策を取る必要があります」

 

他の出席者から同意の声が上がる。

共栄圏において、⽇本の影響⼒は非常に⼤きい。

まずは⽇本から動くべきだと福⽥は考え、こう宣言した。

 

「『未確認飛行物体』は、我々の安全保障にとって重⼤な危機をもたらすものであると考えています。共栄圏の安全を保障するため、どんな⼿段を⽤いてでも対処しなくてはなりません」

 

会議の出席者は無⾔で頷く。

 

「そこで、提案したいことがあります。共栄圏加盟国の協働によって、『未確認飛行物体』との平和的な接触を⾏うことです。」

 

会議の出席者の間にどよめきが沸き起こる。

 

「……我が国としても、出来る限りの努⼒をしてみよう。ただ、『未確認飛行物体』が友好的な存在かどうか分からない。対話が決裂した場合に備えて、戦闘要員を準備しておくべきだ」

そのどよめきが過ぎた頃に、満州帝国の代表者たる溥傑皇帝はそう発⾔した。

満州はその建国当時から日本と深い繋がりがあり、共栄圏の中でも「中核加盟国」という権威ある地位を持っている。

今は亡き満州の初代皇帝:溥儀の弟である彼からその発言が出るや否や、

 

「溥傑皇帝の⾔う通りだ!」

『未確認⾶⾏物体』と接触する際には、我が国の軍隊を派遣しよう!」

 

と中国の代表者達は声⾼に主張した。

満州と中国は共栄圏内部でもライバルのような関係の国家であり、満州の発⾔に続いて中国が発⾔したのはそのためだ。

 

「ここは我々に任せてください。我が軍の精鋭部隊を派遣いたします」

 

インドネシア代表のスカルノ⼤統領は⼒強く⾔った。

 

(各国が問題に積極的なのは良いのだが、どのように意⾒をまとめるか……)

 

福⽥は考える。

⼤東亜会議での日本の影響力を考えれば、福⽥が出した案が通る可能性が⾼いだろう。

問題はその案の内容だ。

 

「『未確認⾶⾏物体』との接触を⾏うには、外交使節団を編成して向かわせる必要があります。その際の護衛は我が国の軍隊が担当しましょう」

 

少し考えをまとめるのに時間を使ってから、福⽥が発⾔する。

 

「お待ちください!我が軍が責任を持って対処いたします」

 

溥傑皇帝は強く反発した 。

 

「お気持ちはよく分かります。しかし、万⼀のことがあってはいけません。どうかご了承いただきたいのです」

「……分かりました。しかし、我が国の軍を派遣することは譲れない」

 

溥傑皇帝の⾔葉に福田はうなずき、「ありがとうございます」と⾔った。

そして、「それでは、護衛部隊については我が⽅で手配させて頂くことに致しましょう」と続けた。

すぐに各国の代表たちが異議を唱えた。それでは接触時の主導権を日本に独占される可能性がある、と危惧したためだ。しかし、福⽥⾸相は⾸を横に振りながらこう答えた。

 

「いえ、我が国だけで接触を⾏う訳ではありません。各国からそれぞれ軍を派遣してもらうことになります」

 

この提案に各国の反応は⼤きく分かれた。まず賛成したのは、国⼒も世界への影響⼒も低い中⼩国たちだった。

 

(我が国の⼒を見せるチャンスだ!)

(これは良い機会だ。ここで影響⼒を少しでも⾼めるぞ!)

 

と考えた彼らの代表たちは、意気揚々と⾃国の軍を送り出すことを約束した。その⼀⽅で反対を表明したのは中国をはじめとした共栄圏の⼤国たちであった。彼らにとっては⽇本の影響⼒が⾼くなりすぎるリスクが⼤きすぎたのだろう。

彼らは⽇本に⼝々に反対したが、これに対し福⽥は次のように反論した。

 

「相⼿は我々を攻撃してくるかもしれません。そうなった場合、貴国の軍だけで役に⽴ちますか?」

「……それは……」

⼤国の代表者たちも、その正論に対しては何も⾔い返せなかった。

反対を抑えきった福⽥は次の議題に移り、⼤東亜会議は順調に進んでいった。

 


 

同時刻ㅤ帝都東京某所 上総邸

 

「…で、『まだ若い、いずれ分かる』だなんて言ってさ!」

「そっか、あの賀屋さんがな…」

 

武家屋敷にも似た造りの上総邸。畳敷きの居間で真は、天文台での出来事を仲のいい上官である上総広蕪大尉に報告、と言うより自慢していた。

 

「おやっさんなら、どういう意味か分かるんじゃないかって思ってさ。」

「おやっさんじゃねぇ。俺まだ24だぞ?」

 

上総は呆れ顔で返した。

 

「じゃあ、現役将校としてはどう思う?」

「まあ、そうだな…」上総は顎をなでた。考え込んだ時の合図だ。

「お前が一端でも軍人になる、部下を持って戦場に出る、そうなっちまう程までにあいつらと仲良くするには時間が要る。」

「そんなに?」

「ああ。そん時にはもう、きっと賀屋さん自身は…」

「バウ!!バウバウ!!」

「ガルルルル!!ガルルルル!!」

 

その時、外で茉優と遊んでいた上総の飼い犬2匹が突然吠え始めた。

 

「ん?どうした、羅豪ラゴウ麦雨バクウ?」

 

庭に向かって上総がそう叫び終わる前に、茉優が縁側から上がってきて障子を開けた。

 

「お兄ちゃん、鷹野さん達来てるよ!」

「琉那と芽依が?」

「あの姉妹が?」

 

直後、2人の叫び声が聞こえてきた。

 

「うわっ、ちょっと、噛み付かないでよ!」

「茉優〜!この子達何とかして〜!」

 

その後、姉妹は畳が敷かれた居間に通された。

 

「いやぁ、家に行っても誰もいなかったので…」

「とうとう、うちにまで来ちまったか…」

 

上総は内心で呆れた。この姉妹のことは真から聞いてる。なんでも、生粋の軍事マニアで、銃火器や情報戦に関しては普通の士官より上らしい。その分、遠慮ってもんが全く無いんだとか。どことなく真にも似てやがる。

 

(なぁ真、この姉妹、ここにいて大丈夫なのか?)

(いいや。多分、宇宙船目当てだと思う。)

(やっぱりか…)

(じゃなきゃ、ここまで来ないもん…)

(お前、こいつらに余計な事言ってないよな?)

(まさか!そもそも言えるようなことなんて)

「聞こえてますよ。」琉那が二人に声をかけた。

「「なっ!!」」

「何を話してたんですか?もしかしてとっても大事な話?」

 

咄嗟に取り繕うように上総は「ま、まあ来ちまったもんは仕方ねぇ。何か茶菓子は…」そう言って台所へ入っていった。丁度大皿も空になっていた。

真もハッとして一緒に出ていこうと思ったが、すでに上総が出ていった廊下側を琉那に、茉優と犬が遊んでいる縁側を芽依に遮られていた後だった。

 

「逃げられないわよ、真?」

「ちょっとだけ、話をしよ?」

 

姉妹は机の両側から獲物を追い詰めるように真に迫ってきた。

 

観念したように真は「で、何しに来たんだよ?」と問いかけた。

「何って、あんたなら知ってるでしょ?」

「はぁ?いったい何の…」真は誤魔化そうとしたが、琉那には通じなかった。

「宇宙船のことよ!」琉那は一気に真に詰め寄った。

「う、宇宙船?」真は驚いて後退りした。

「学校で皆言ってたわよ。陸海軍は独自の研究をしてて、宇宙船の正体を掴んでるって。」

 

そう言いながらも、琉那は獲物を壁に追いやった。

 

「いやだとしても、士官学生にそんなこと教えて貰えるわけないだろ。」真は琉那を押し退けつつ、少し俯いて答えた。

「ふーん?」琉那はその獲物の顔を覗き込んだ。

「本当だよ!」真はその顔も押し退けて言い放った。

「ま、嘘ではなさそうね。」琉那は残念そうな顔で引き下がった。

「お父さんやお母さんは?」今度は芽依が聞き始めた。

「賀屋(元)総理が来てる天文台の室長なら、宇宙船の観察だってしてるんでしょ?」

「してるよ。でも、そのせいで何日も帰って来ないんだ。」

「え、そうなの…?」

「ああ。たまに電話はしてくれるけど、いつも元気なさそうだし…」真は再び俯いた。

「大変そう…」芽依も流石に黙り込んだ。

「ともかく、俺は何も知らないからな。」真はそう言って畳に仰向けに寝転んだ。

「ざーんねん。銅偶のことも聞けると思ったのに…」琉那も目を閉じて寝転んだ。

「お、お姉ちゃん…?」芽依が琉那に声を掛けた。

「ん〜?」目を開けると、頭の上に上総が立っていた。台所から戻ってきたようだ。

「わっ」琉那は咄嗟に起き上がった。

「やっぱ、そういう魂胆だったか。」上総の手には、お茶の入ったピッチャーと指を入れるスナック菓子の袋が握られていた。

「おかえり、おやっさん。」 そう言って真も起き上がった。

「おやっさんじゃねぇ。だが…」

 


 

同時刻 ジオン公国軍 技術本部

 

『もし、このメッセージをご覧に、もしくはお聞きになられましたら何卒ご返事を頂けたら幸いです』

「…」

「…」

『…皆様のお返事を、心よりお待ちしております』

 

映像が途切れた。だがこの部屋にいる2人はどちらも自分から話しだそうとはしなかった。

1人は技術本部長のアルベルト・シャハト少将で、もう1人は彼の直属の部下であるオリヴァー・マイ中尉だ。

シャハトはマイに『見せたいものがある、我が軍の艦隊が地球から受信したものだ』と言って執務室に招きこの映像を見せた。

この映像はダニガン閣下の艦隊から、公国の各所に緊急送信された報告書に添付されていた映像の一つであり、今回のコロニー落としの少し後で受信されたという。

普段のマイ中尉なら自分から積極的に感想を話すはずだが、予想外にもマイは言葉を失っていた。

無理もない、と思いながら彼に言葉を掛けた。

 

「君はこれをどう見る?」

 

マイは数秒考え込んだ後、その質問に答えた。

 

「にわかには信じられませんが…我々の知っている歴史とは大きく違います」

「同感だ。人類が宇宙に進出したこの時代、高校生の教科書に載る偉人である以上、ニコライ・カルダシェフの名は多くの者が知っている」

「ですがそれはソビエトの指導者として、ではありません!」

「うむ。本来なら彼は地球世紀史では無く、宇宙科学の教科書に載るはずの人物だ。しかし現に、彼は生きて滅亡した筈のソビエトの指導者を名乗っている」

「しかし、ソビエトの指導者の中にカルダシェフの名前はなかったはずです!」

「それに加え、彼の存命中の経歴も既に洗い出したが、一度も指導者という立場には近づいてはいなかった。単に彼の言い間違えという線もあろうが、それにしてはあまりにも不自然だ。或いは、これがただのタイムスリップでは無いと示唆しているとも思える」

「…で、では、コロニー落としは一体どのように地球に作用したのでしょうか?」

 

その質問に、シャハトは頭を抱えながら続けた。

 

「…その作用が『平行世界への転移』にも働いたとも考えられる」

「平行世界…!?」

 

マイは言葉を詰まらせた。

数秒の沈黙。

次に口を開いたのはマイだった。

 

「ですが、そんなことが…!」

「無くはない。現に今起こっているのだから。だが、この現象は明らかに技術的特異点を超えている。解明する頃にはもう私達は生きてはいないだろう。」

「では、私達は一体どうすれば…」

「…とりあえず、上層部向けに正規の報告書を大至急作成する。君にも手伝ってもらいたい」

「りょ…了解しました…」

 

その言葉を皮切りに、二人は報告書作成を開始した。

 


 

同時刻 布哇フィリピン沖200㎞

 

太平洋。その名は彼と彼自身が世界一周という偉業を成し遂げたポルトガルの冒険家、マゼランが大西洋と比較してあまりにも波が穏やかだったことからつけられた。

だが、その太平の海に幾つもの波を立てる巨船の軍団が存在していた。

数は8、その中でも一際巨大なそれが二つ存在しており、その姿は多くの者に畏敬と恐怖と、そして見るものによっては島が動いているように見えている事だろう。

その正体は戦艦大和と空母赤城。

そして彼女たちを取り巻く駆逐艦・巡洋艦・補給艦によって構成されている、大日本帝国海軍の打撃群であった。

彼女達は十数キロという距離を取りながらも互いにデータリンクで接続されており、贔屓目を排除しても世界最高峰の防空網が完成している。

 

「対空警戒を厳となせ!」

「とーりかーじ!12度!」

 

そして彼女達を動かしている船員たちは忙しなく動き回り、艦隊を機械的かつ効果的に機能させている。

そんな中で、彼ら水兵や将校達はこのような会話を繰り広げていた。

 

「聞いたか?例の宇宙人、大ゲルマン帝国に降下したそうだぞ。」

「聞きました…向こうは何も言っていないそうですけれども。上官殿は何か聞かれたりは?」

「いや、私もそれ以上は聞いていない。ゲルマン帝国が必死で隠蔽しているらしいからな。それに…」

 

と言いながら水兵の方を見ると、

 

「貴様の様な一兵卒に教えるわけがなかろう。」

「それもそうですね。では、勤務に戻ります。」

 

そう言って水兵は足早に将校の下を去っていった。

 

「…本当にどうなっているのやら。」

 

将校も心の中に疑問符を残しながらも艦隊勤務に戻っていく。

 

「戦力差も不明、損害も不明、相手の能力も降下目的も不明。こんな状態で言えることなどある筈も無かろう…」

 

実際彼の言う通りであった。大ゲルマン帝国と宇宙人―大日本帝国政府内では「外星人」という呼称の議論もされている―が交戦したという事実は確認されているが、それ以外は何も言えないのが実情であった。

特務機関が全力で調査に当たっているが詳細は大ゲルマン帝国に隠蔽されているのと、確認作業にてんてこ舞いである為に全く詳細が分かっていない。

おまけに漏れ聞こえてくる情報も荒唐無稽な物ばかりなのも混乱に拍車をかけていた。

 

「一万六千発の機関砲を浴びせても、宇宙人の戦車に傷一つつかなかった。」とか、

「誘導弾の精度はこちらとは比較にならず、文字通りの百発百中だった。」とか…

 

もしこれらが事実ならば彼我の戦力差は比べ物にならない。

こちらが敵にようやくパンチを入れるころには、我々は完全にサンドバックにされてノックアウトされることになってしまうであろう。

無論、地上だけでなく航空・海上戦力もそれ相応に強力であることを考えれば…帝国海軍が総力を挙げて挑んだとて勝利できるかどうか分からない。

否、敗北する可能性が非常に高いだろう。

だが今の我々に出来る事はあまりにも少ない。

こうして空を見上げ、何か起こらないことを見守り続ける。

それが今の彼女達、そして彼らに出来る事であった。

 

「全くこれらからどうなってしまうんだ、この世界は…」

 

一人の海軍将校のボヤキは、太平の海に飲まれて消えていった。

 


 

コロニー衝突60時間後 ジオン公国 ズムシティ某所

 

ドズル・ザビはダニガン艦隊からの奇妙な報告の数々に頭を悩ませていた。”アルベルト・シュペーア”のドイツ政権の演説、”ソビエト社会主義共和国連邦”からの通信、ありえない状況が地球で起こっている事に対しての対応についてだ。

 

「……やはりこれは他の将軍や兄貴達に指示を仰ぐべきか。」

 

ドズルは一介の将軍として混乱した政治情勢に対しては、指導部であるザビ家を招集し対応するべきと判断を下した。

その判断の決め手となったのは、技術本部からの報告書であった。

 

『コロニー落としの結果、地球になんらかの大規模な時空間的作用が働き、地球が平行世界の旧世紀のものと入れ替わったと見られる』

 

その報告書はそう締めくくられていた。

歴史に疎いドズルは当初単なるタイムスリップだと思っていたが、平行世界ともなれば話は別である。

自分らの歴史知識が通用しない可能性を考えると、一度他のザビ家の面々に話を通し、全員でどう対処すべきかの指針を決定すべきとドズルは考えたのだ。

ドズルは早速部下たちに指示して、ザビ家の召集を始めた。

 


 

総帥府の会議場にデギン公王も含めた全員が招集され、ドズル・ザビは咳払いをすると報告を始めた。

 

「今回ザビ家をいきなり全員招集したのは地球の情勢について判明した事を報告する為だ。」

「兄貴達にはこれを見て欲しい。」

 

ドズルはザビ家の全員の前で機器を再生しデータの再生を始めた。その内容は現代に存在しないはずのソビエト連邦の”カルダシェフ”を名乗る男からの通信と”アルベルト・シュペーア”率いる”ナチス”の演説の映像データだった。

アルベルト・シュぺーアの演説の再生途中にデギン・ザビは杖を落として酷く動揺していた。

 

「…いったい何の冗談だ?ドズル。ナチスとソヴィエトロシアからの通信だと?」

「兄貴、これは現実だ。実際に部下がこのデータを受信しているんだ。」

 

ザビ家の面々は不可思議で混迷した状況に困惑を隠せずにいた。

 

「情報が錯綜している中で連邦軍が我々に本当の情報を悟らせない為にプロパガンダを流している……という事なのでしょうか?」

 

と、珍しく困惑しているキシリア。

 

「しかし……ブリティッシュ作戦と言うのはあれだけの攻撃ですから、もしかすると……地球連邦が崩壊したのでは?」

「ガルマ、口を慎め。まだ全てを決めつけられないだろう。」

 

ギレンは強い圧力をかけ、ガルマは萎縮し座ったままそこで俯いた。

 

「……もしこれが本当だと仮にそうしておくが、ソヴィエト・ロシアはともかく”ヒトラーのナチス国家”が”シュペイア”という男の元で残っているのはおかしいだろう。」

「タイム・リープ現象とタイム・パラドックス現象が地球で発生していると?」

「だから会議を開いた。仮にこれで地球の崩壊状態ならば一気にバラバラな地球国家群を制圧するべきではないか?」

「ドズル兄さんは混迷を極めているであろう地球に戦力を投入すると?.......しかしそれが事実ならば攻め込むならば好機でしょうな」

「……シュペーア。アルベルト・シュペーアか。」

 

デギンはこの会議中で初めて口を開き言葉を零した。

 

「シュペーアという男は、ナチス高官の中で建築家としてベルリンを”ゲルマニア”という街に作り替えるために大臣になり国家の改造を目論んだ男だ。タイム・パラドックス……つまり時間が巻き戻った上でもう1つの世界……大戦後にナチスの秩序が生まれた世界線ならば、ヒトラーの後釜を巡る争いで台頭していてもおかしくは無い。」

「……しかし公王、ナチスやソヴィエトというのは旧世紀の時代の遺物。そんな物は脅威にはなり得ませんな。」

「……ギレン、ナチスは大地の飢えに殺され、ヒトラーは身内に殺されたのだ。この意味が……」

「公王は弱気でいらっしゃるな。」

「兄貴、会議の本題は地球が仮に”別の世界線の旧世紀”ならば、それを制圧し宇宙の連邦にトドメを刺すかどうかだ。」

「……まあ、人口を失った旧世紀の地球の統治ならば、スペースノイド思想の受容にも役に立つか……」

 

ギレンは小声でそう呟いた。

 

「更なる地球のデータ収集に務め、地球の戦力を確認した後に一挙に制圧を目指す。これで良いな?」

「分かった。調査を進めさせる。」

「……勝手に決めおって。」

「公王には”改めて”作戦の実行許可を作戦概要を含め説明いたします。」

 

不満を口にするデギンに、ギレンが淡々と答える。

 

(この家族は、いつから温かみがなくなっていったんだ…)

 

その到底家族とは思えぬ光景にドズルはつい、そう考えてしまったが、それを口には出さなかった。

 


 

同時刻 埼玉県 堂平観測所

 

「民放絵草の蔵道くらみちです。」

「同じく、三輪です。」

 

翼賛会議員の海部俊樹は頭を悩ませた、面倒な所でブン屋に捕まっちまった、と。

民放絵草。

日本放送協会に対抗する為に地方民放によって結成された番組供給ネットワークだ。

欧米からは確か…JNNとか呼ばれてたっけな。

いやそんなことはどうでもいい。

賀屋さん福田さんからはこいつらとヤの字には関わるなって釘を刺されてるんだ。

早い所振り切らないといけねぇ。

 

「悪いな、急いでるもんで」

「この後はご予定ございませんよね?」

 

三輪が言葉を遮った。

 

「海部議員のご予定はこちらも確認済みです。次のご予定は今夜の海軍時代のご同僚とのご会食の筈でしたよね?」

 

三輪は出口に回り込みつつ、海部に詰め寄るように聞いてきた。

 

「なんで俺の予定を知ってやがる?」

「あなたの不用心さも、毎日の記録を欠かさない几帳面さも、海軍時代の同僚様方から有名でしたから。」

 

そういえば入る前、一度予定表を開いた。

まさか、その時に盗み見やがったのか?

 

「予定表を盗み見るとは、関心しないな。」

「盗み見る?そのような事は一言も申してませんが?」

 

三輪は青いキャスケット帽の下で密かに笑みを浮かべつつも、その深紅の瞳で海部を常に睨み続けていた。

不気味だ、と海部は思った。

このまま逃げても付け回されるだけか。

 

「で、何の用だ?」海部は観念したように言い放った。

すると、今度は蔵道が話し始めた。

 

「率直に聞きます。海部議員、観測所の方々と何を話されたんですか?」

「当然、宇宙の事さ。」

「何か、新しい情報が掴めましたか?」

「そうだな…」

 

海部は言葉を詰まらせた。賀屋さんからこの件に関して余計な事は話すなって言われてんのになぁ。

 

「着陸船がアメリカに落ちてきたことぐらいかな…」

「それはもう知ってます。私たちが知りたいのは、天体望遠鏡から見た艦隊のことなんです。」

 

こっちの蔵道っていう女は真剣な表情だ。不気味さは無いが、面倒には変わりねぇ。

 

「そうだな…藍色の船団の周りにはジェット機が巡回してたな。」

「母艦も見えましたか?」と三輪。

「ああ。鰻筒みたいな形をしてたよ。」

「では、緑色の船団にも?」

「あ、ああ。」

 

そういった瞬間、三輪は蔵道に少しだけ目配せした。なんの真似だ?

 

「ではでは、緑色の船団もご覧になられたのですね?」

「ああ。」

「では、緑色の船団が銅で作られてるようには見えましたか?」

「まぁな。青銅の船団の中に一つだけ赤銅色のやつが混ざってたぜ。」

「人型も?」

「ああ。もしかしたら宇宙には…」

 

海部は咄嗟に口を噤んだ。が、既に遅かった。

すかさず三輪が詰め寄ってきた。

 

「おやおや?やはり人型があることはご存知でしたか?」

 

…嵌められた。人型の存在は公表されてないんだ。

 

「やはり、やはり銅偶は存在したんですか!?」

 

このままではまずい。これ以上余計な情報を吐かされる訳にはいかねえ。

 

「悪いが、どれもこれも未確定情報だ!確認をとる必要があるんでな!」

 

海部は2人を押しのけ、観測所を後にした。

 

「逃げられちゃいましたね、先輩。」

「あなたが過剰に詰め寄るからでしょ。」

 

観測所の横のベンチで、蔵道絹江と三輪たすくは集めた情報を整理していた。

 

「また憲兵隊辺りに目をつけられるわよ。」

「構いませんよ。逃げ回るのはもう慣れましたし、戴笠の事件以降、誰も憲兵隊なんて信用してませんよ。」

「あなたね…」丞の飄々とした態度に絹江は思わずため息をついた。

 

だが丞の言うことも確かだ。

六年前に起きた、憲兵隊が自らの権限強化のために、蒋介石の大陸政権の諜報機関のトップ「戴笠」の生存をでっち上げた事件以降、共栄圏の憲兵隊の威厳は地に堕ちていた。

 

「ところで、沙慈くん元気にしてますか?」

「え?まぁ、変わりないけど?」

「へぇ…」

「何?急にどうしたのよ…?」

「沙慈くん、お姉さんにこの子のこと話してないんですねぇ。」

 

丞は絹江に一枚の写真をちらつかせた。絹江の弟と、その片腕に抱きついている金髪の少女のツーショットだ。

 

「ちょっと!何この写真!」

 

絹江が咄嗟に写真を奪い取ると、丞はニヤつきながら言葉を返した。

 

「いやぁ、街中で見かけたもんでつい…」

 

絹江は頭を抱え、数秒黙り込んだ。

 

「大丈夫ですかー?絹江さーん?」

「帰るわよ」

「はい?」

「このことはちゃんと沙慈と話さないとね。」

 

何かさっきと声色が違う。

 

「行くわよ!」

「は、はい…」

 

変なことに火をつけちゃったな、と丞は内心で思った。

 


 

コロニー衝突62時間後 ジオン公国某所 ガルマの執務室

 

ジオン公国はザビ家という一つの家族の独裁体制で運営されている。

他国の干渉を一切受けない独立国家であり、同時にザビ家の人間以外が権力を持つためにはザビ家の人間に認められる必要がある国でもある。

ゆえにジオン公国軍の兵士達はその大半がザビ家のいずれかの人物に率いられ、その指揮官達の多くはザビ家の部下である。

 

…もっともそのザビ家にも幾つかの派閥が存在し、それぞれの派閥の長にはザビ家のそれぞれの人間がいる。

そしてこの派閥がジオン公国を指揮しているのだ。ジオン公国の人間は皆、ザビ家に従っていると言っていいだろう。

今のところは派閥に関係なく、ジオン公国の各組織が協力している。

だが、いつまでそれが続くか分からないし、派閥主義の弊害が明らかになる可能性は高い。

その時のためにも派閥を越えた結束が必要なのだ。

 

「……しかしなぁ」

 

ザビ家の末子ガルマ・ザビはジオン公国の首都ズムシティの自室で呟くように問いを投げ掛けた。

 

「ザビ家が一枚岩でない以上、ジオン公国軍内の団結は難しいんじゃないか?」

 

リモートで話す相手の男は、その問いに冗談めかしく返した。

 

「ガルマ、君はザビ家の中でも箱入りの末っ子だ。お家の事情など詳しくもあるまい。」

 

シャア・アズナブル。士官学校時代のバディであり、ガルマにとっては唯一に近い心を開ける相手だった。

「子供扱いはしないで欲しいな。兄さん達の仲が悪いことくらい、薄々感付いてはいるさ。」ガルマは真剣な表情でその冗談を一蹴した。

 

「もしそのまま、しかもそれぞれが独自で動いているような状態だったら、ジオン公国軍は一枚岩になりようがないんじゃないか?」

 

ガルマの言葉は公国の核心を突くものだった。

 

「考えすぎだな、ガルマ。」

「なに…」

 

それでもシャアは、親友をからかう態度を崩さなかった。

 

「そんなことは分かりきったことだな。」

「なら、尚更…」

「ザビ家の人間が必ずしも一枚岩ではないとしても、君たちザビ家の誰かが指揮をしてるなら、連邦に対して勝てないということはないだろう。」

 

シャアは淡々と、かつガルマを煽り立てるように語った。

 

「それこそ分かりきっている!」それを聞いて、ガルマも黙ってはいられなかった。

 

「僕自身、ザビ家の一人という立場なんだ。だからこそ僕にはわかる。ザビ家がお互いに反目し合っていることは間違いじゃ無い、むしろ好都合なんじゃないのか?」

「……ほう?」とだけ、シャアは答えた。

 

「公国軍が一枚岩になる必要はない。連邦に勝つために必要なことをすれば良いだけだろう?それならば派閥主義も悪くはないのかと僕は思うんだ。」

「……フフッ」ガルマの言葉に、シャアは嘲笑した。

 

「何がおかしい?」

「流石は総帥の弟だ。兄に似て、実に雄弁じゃないか。」

「まさか。僕は兄さんみたいにはなれない…」

 

ガルマはシャアの言葉を否定した。

しかし、そこに嫌悪感はなかった。

 

「ところで、ガルマ。一つ気になることがあるのだが」

「なんだ?シャア。」

「私も地球からの報告に耳を傾けたが、連邦軍が地球の軌道上に展開していなかったようだ。流石にブリティッシュ作戦で全滅するほど人手不足ではないだろうに。」

「……確かに思考が読めない事態だな。」

「それだけじゃないさ、ここ最近上層部が忙しそうにしているのも地球の状況に関してだろう?一兵卒でも察しているさ。主力はどこに行ったのか、妙に戦力が薄くなった艦隊はどこか、そして情報途絶下の地球、君は何か知っているんじゃないか?」

 

シャアの的確な指摘にガルマはとうとうお手上げになった。

 

「……君に完敗だよシャア、ただこれは機密事項だ、言いふらさないでくれよ?」

 

シャアは笑いながら答えた。

 

「あぁ、もちろんだともガルマ。」

「信じられないが、別の世界を辿った1900年代後半と我々の知る地球が入れ替わっている。公族会議ではこの見解になった。」

「…『第二次世界大戦の結果が違う世界線』なんだ。」

 

シャアは訝しんだ声を鳴らしながらもう一度席にもたれ掛かった。

 

「私も歴史は詳しくないが、第二次世界大戦の結果が違うというのは……あの『ナチス・ドイツ』が大戦を勝ち抜いたというのか?」

 

ガルマはやや不信なシャアとは裏腹に真剣に話していた。

 

「まだまだ調査が必要だがね、ギレン兄さんに対局を見るまで決定付けるなと叱られたばかりさ。」

 

シャアは笑い出した。

 

「はっはっはっ、確かに結論を急かすのも良くないだろう?」

 

ガルマはため息をついた。

 

「はぁ、君までそんなことを言うのか?勇気ある進言と言って欲しいね。」

「今はギレン総帥が今後のことを考えている所だ。」

 

シャアは既にギレンの考えることをそう聞く前に理解していた。

 

「もう予測はついているがね、世紀すら巻き戻った地球を見てどうするか……。」

 

ガルマは半笑いで答えた。

 

「ははっ、それ以上は勘弁してくれ、”赤い彗星”。」

 

シャアは会議中一番の笑い声を上げた。

 

「はっはっはっ!では、また指示があればお互いやれることをやろうじゃないか、我が友よ。」

 

ガルマは”赤い彗星の友”という認識に誇りを持ち、

 

「あぁ、またな。」

 

そのかけがえのない友に威厳ある敬礼を返した。

 


 

コロニー衝突65時間後 国立天文台 三鷹キャンパス 研究室長室

 

「米蘇両国に送った諜報機関から、あの藍色の船団の情報を得た。」

 

この天文台に再び賀屋が訪れていた。

 

「彼らは英語を喋り、我々よりも遥かに高度な文明と技術を持っているらしい。」

 

一呼吸置いて、言葉が出せないほどに驚く室長夫妻を無視して賀屋は話しを続けた。

 

「だが彼らはまだ、地球人同様、負の連鎖からは脱却できてはいないらしい。何故地球圏でなのかは兎も角、藍色の船団と銅の船団は戦争をしている。」

「つまり、銅の船団に接触するんですか?」

「然り。我々にはもはや一刻の猶予も無い。そのためにも」

 

その時、賀屋は今の声が室長夫妻のものでは無いことに気づいた。

明らかに若い声。声の方向を向くと、見知った顔の少年が座っていた。

 

「また君か。いつからそこに居たんだね、真君?」

「最初からいましたけど?」

「いるなら挨拶くらいすることだ。」

「えぇ…」

「真!」ハッとしたように母が真を怒鳴りつけた。

「はい…」

 

明らかにやる気のない返事。だが構ってもいられないだろう。

 

「そのためにも、銅側だけにメッセージを送りたい。何か、良い方法はないか?」

「そ、それでしたら…」室長は逃げるように奥の資料室へ入っていった。

「それより、何でまだ部屋にいるの!」

「出るタイミングなんてなかったじゃん。あの人、入ってくるなり話し始めるんだもん。」

 

真と母の会話を聞き流しながら、賀屋は考え込んだ。

軍人か。陸海軍が独自で情報を得ているかもしれないな。そういえば”カラス”が探りを入れていたはずだ。次に会った時に聞いてみよう。

すると直ぐに、室長が部屋に戻ってきた。

 

「ようやく見つかった。こちらです。」

机に置かれた資料には、『月面に向けたトンツー信号』と書かれていた。

「手崎将軍の立案で実施された通信実験で、電探から送信されたメッセージを月面に反射させて、地球に帰還する迄の時間の計測を是とするものでした。」

資料を見ながら、賀屋は「なるほど、応用すれば文字を送れるわけだな。」と呟いた。

「仰る通りです。これで超長距離に短時間でメッセージを送れるはずです。」

賀屋は顔を上げた。

「可能なのか?」

「はい。野辺山の電子天文台なら可能です。」

「では、直ぐに準備に取り掛かれ!メッセージは英語で…」1呼吸置いて、「『Friendship友好』だ!」

「かしこまりました!」言い終わるより先に、室長は野辺山に電話を掛け始めた。

「なんだこれ…?」ちなみに資料が複雑過ぎて、真は内容を全く理解出来なかった。

 


 

コロニー衝突69時間後 サイド1跡地 キシリア機関臨時ベース

 

ジオン軍によって用意された地球からの通信を受け取るための拠点の一つ、破壊されたコロニーの廃墟の一角にある一際巨大な建物。

巨大なドーム状の建物で、天井には青空を模した映像が投影されている。

そこには大きなスクリーンが設置されていて、そこに送信される映像を見られるようになっている。

また、通信内容を記録するレコーダーも置かれている。

現在、この建物では地球上からの通信を受信する試みが行われており、室内で複数のモニターが青白い光を放っている。

部屋の中には数人の男女がおり、彼らが見つめるモニターには様々な光景が映し出されていた。

巨大なコンピューターが幾つも設置されていて、それぞれの画面には膨大な量のデータが表示されていた。

それらは地球からハックしたもので、その中には機密文書も含まれていた。

それらは暗号化されていたものの解読に成功したので、あとはそれを解析して上層部に報告するだけだ。

この建物に配置されたオペレーターたちは情報収集と地球からのメッセージの受信という2つの役目を持っていたが、情報収集が早くに終わっていたため余裕を持って作業をし………悪く言えばだらけていた。

 

「連邦は我々より先に地球降下を実行しました」とオペレーターの一人が言った。

「地球に向けて連邦軍が降下したことは確実です。ジオン軍はこれに続いたほうがいいのでは?」

「いや、これでいい」と別のオペレーターが言った。

「今はそれどころじゃないんだ。連邦との戦いでは地球の情報を得るための競争が進行している。我々はより多くの情報を得る必要があるんだ」  

 

だらけていたと言っても重要な役目を与えられた者たちなだけはあり、オペレーターたちの雑談の話題はジオンの今後についてになった。

しかし、その声の大きさで気づかれたのかもしれない。

 

「その件は後でゆっくり話そう」オペレーター達の上官である年配の男が現れ、そう言った。

睨まれながら「今は目の前の仕事に集中してくれ」と言われれば、従うしかない。

「はい……」とオペレーター達が返事をした。

 

彼らは自分の担当する通信機器に視線を落とし、組織・個人を問わず地球から宇宙に向けて送られてくる通信を受信するのだった。

数時間後、モニターの一つに『極東地域からメッセージを受信しました』という表示が出た。それと同時にオペレーターたちは興奮と期待の表情を浮かべる。

しかし、そのすぐ後にモニターに『エラー:分析に失敗しました』という表示が出たため、すぐにオペレーターたちは落胆した。

 

「何故だ?」年配の男が言う。

「もう一度試してみろ」

 

再度メッセージの分析が試みられるが、結果は同じだった。

 

「地球からのメッセージを、コンピュータが解読するのに失敗したのでしょう」とオペレーターの一人が言う。

「何が起きている?」と年配の男が言った。

その口調に動揺が含まれていたことは本人でも気付いていなかった。

「メッセージが暗号化されているのではないでしょうか?」別のオペレーターが言う。

「あるいは、コンピュータが対応していない方式かもしれない」

 

それで他の人員は納得し、ジオン本国には、『メッセージを受信した』という報告が、メッセージそのもののデータと共に送られた。

オペレーターたちは知らないことだが、これは共栄圏からジオンに向けて送られた信号であった。

このメッセージをジオン本国の上層部が受け取ったことにより、また歴史の歯車は動き出すのであった…。

 





〜今回の話のまとめ〜

福田首相「うーん、とりあえずドイツと提携して邦人保護を実行しつつ、大東亜会議では友好的接触を試みるって言っておくか」
共栄圏各国「俺たちも万が一のために軍を派遣しますぜ」

鷹野姉妹「あの未確認飛行物体について何か知ってるでしょ」
飛鳥真「いや何も…親も帰ってこないし…」

ジオン技術本部「さてはこれ並行世界の地球と入れ替わってるな!?やべえよやべえよ、報告書大至急書かなきゃ…」

日本艦隊「一体何が起こってるんだ…」

ドズル「並行世界とか聞いてねえよ…一旦兄貴達に相談しよう」
キシリア「(困惑)」
ギレン「並行世界の弱体な地球なら統治の役に立ちそうだな」
デギン「…」

絹江「議員に粘着してスクープゲット!あれ、何この写真?なんで私の弟がこんな娘と一緒に!?」

ガルマ「うちの国分裂しすぎやろ」
シャア「まあ大丈夫じゃね」
シャア「そういややけに敵兵力が少ないけどどうなってんだよ」
ガルマ「並行世界の地球になってしまってる可能性があるんよ」
シャア「えぇ…()」

賀屋前首相「青色船団(連邦)とアメリカが接触したから、そいつらと戦争中らしいもう片方の船団と接触するで」
キシリア傘下の諜報機関「ナニコレ…とりあえず上司に送っておこう」

〜今回の話のまとめ終わり〜

あとがきキャラ紹介

・上総 広蕪(かずさ ひろしげ):cv.中井和哉
大日本帝国の陸軍大尉、入れ替わり時点で24歳。オリキャラ。
気さくな熱血漢で、兄貴分的な性格。
犬を2匹飼っており、よく両親が仕事でいない飛鳥兄妹の遊び相手にもなっていた。
父も陸軍士官でインドネシア内戦でヘリコプター部隊として戦果を挙げており、その父に憧れて軍人になる(芋づる式に真も軍人になる)。


・鷹野琉那:cv.坂本真綾
・鷹野芽依:cv.折笠富美子
大日本帝国の民間人姉妹で、TNO世界におけるガンダムSEED DESTINYのルナマリア・ホークとメイリン・ホーク。
地球の入れ替わり時点で15歳と14歳。
赤い髪で、姉の琉那はショート、妹の芽依はロングのツインテールにしている。
幼年期から飛鳥兄妹とも交流があり、真と共に西南の反乱について調べたことがきっかけで軍事オタクとなった。
共栄圏の公開されてる兵器については知り尽くしており、宇宙からやってくる未知の兵器に強い興味を抱いている。
芽依は陸軍女子通信隊への入隊を望んでいるが、琉那は真達と共に前線で戦うことを望んでいる。

・蔵道絹江:cv.遠藤綾
大日本帝国の民間報道機関『民放絵草』の操觚記者で、TNO世界におけるガンダム00の絹江・クロスロード。
地球の入れ替わり時点で21歳、ショートボブカットの髪型の女性。
生真面目で正義感が強く、洞察力に優れている。
5つ下の弟がいるが、家を空けることが多いためあまり会うことは無い。
時には形振り構わない手段を選ぶ傾向にあり、あまりに危険と判断した上から後輩の教育を押し付けられたが、なぜか傾向は悪化している。

次回(第六話)はソビエト連邦の各派閥中心のお話で、12/22(金)投稿予定です。
どうかお楽しみに!
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