トロいわ、悟くん。 作:狐大総統
No side
直哉の言うお婆ちゃんが天元様だという発言に3人は驚愕していた。
「天元様〜!?なんで天元様がお前のお婆ちゃんになってんだよ!禪院家との血の繋がりがあるわけじゃねーだろ!」
「というか、天元様って女の人だったんだ」
「私も初めて知ったよ。直哉、なぜ天元様とそのような関係にあるんだい?」
「あ、なんか勘違いしとるっぽいけど、あくまでお婆ちゃんは隣近所のお婆ちゃんみたいな意味やで。血縁関係ってわけやないよ」
直哉の言葉になるほどとなる3人。
「それにしたってだろ。なんで天元様に教えてもらってんだよ」
「天元様といえば、結界術においてかなりの重要人物だ。そのような方に教えていただいてるなんて、何があったんだい?」
御三家の当主の息子だとしても、そう簡単に会える人物ではない。特級だとしてもだ。
「うーん、どう話したもんやろか。」
◇◇◇
side 直哉
回想
「いけそうやな」
「本当に大丈夫なのかよ」
「大丈夫やないやろうけど、天元様に会って聞かなあかんことがあんねん」
「何をだよ?」
「結界術によって性別を変えられるんかをや…!」
俺は気づいてしまったんや。真のドMならば体験しておかねばならんことを。それすなわち子供を産む。これ以上に誰かのための痛みとなることの代表的なもんはない。
世のお母さんらは凄いわ。スイカが鼻から飛び出るような痛みをしてまで子供を産んどるんやから。これほど誇りに思えることはない。可能であれば、リスペクトの意味も込めて月経も追加しときたいなぁ。
これまでは少年ジャンプの主人公が真のドMやと思っとったけど、子供を産んだことの無い俺がそもそも何が真のドMかなんて言える立場やなかったんや。
けど、世の女性はみんな誰かの女王様であってドMやない。せやから、この矛盾に悩んだわ。悩んで悩んで悩み切った結果、俺は悟ったんや。
せや、この世界が間違うとるんや。女性だけが子どもを産むんが間違うとる。男も子どもを産めるようにしたらええ!けど、そんな術式は聞いたことない。どないしたらええんや。せや!結界術ならなんかあるんちゃうか!?
結界術といえば誰やろ?御三家でとんでもない結界術を使える人間なんて聞いたことないしなぁ…。悟くん達は強いけど、結界術の超スペシャリストっちゅうわけやないやろうし。
…あ!天元様や!!あの人、色んな結界に携わっとるエキスパートやったはずや!天元様ならなにかしら方法を知っとるんちゃうか!?仮に結界術で性別を変える方法は知らんくても、長生きしとる天元様なら他の方法を知っとるかもしれへん!亀の甲より年の功とは良く言ったもんやで!
てか、今さら気づいたんやけど、かの呪いの王『両面宿儺』って、俺はてっきりSMプレイのどちらも可能な両面って意味やと思ってたんやけど、もしかしてちゃうんやないか…?
禪院家に残っとった記録やと、両面宿儺は見た目も強さも本物の両面宿儺のようやから付いた異名ってことらしい。せやけど、俺は常々それは違うんやないかって思っとった。
そんで俺の中に出た結論はSMプレイのどちらも可能な両面って意味やったんちゃうかってことや。…せやけど、それすら違ったかもしれん…!
ホンマは男として生まれたのに子供を産むこともできるっちゅうとんでもないドMやったから両面って名前が付いたんやないか…!?きっとそうや!!俺はなんてことに気づいてしもうたんや!!
…ちゅうことは呪いの王と俺は同じステージに立っとるってことやないか!?これは凄いことやで!このまま成長すれば、もしかしたら呪いの王と同程度の強さを手に入れることができるかもしれん!宿儺もドMやったからそない強かったに違いあらへん!!それにしても、俺と同じドMやったとは、宿儺とは親友やったようやな…!
〈存在しない記憶〉
「おい、宿儺!これ見てみろや!今週の週間超ドM雑誌や!!なんと、今日はあのえげつないプレイが紹介されとるで!」
「フッ、くだらんな」
「なんやと?せっかく同士のお前のために見せてやろうと思ったっちゅうのに」
「俺はそのステージは既に終えている。つい最近はドMにとっての頂点『性癖展開』を習得したぞ」
「な、なんやと?あんなんできるやつおるんか!?」
そう俺が言うと、宿儺は口元を少し歪ませて俺から数メートル離れた。
「見せてやろう。本物のドMというものを
性癖展開 『ふくまみづし』
」
掌印を組んだ宿儺がそう唱えた瞬間、いつのまにかウニ頭の男と白い巨人が宿儺の隣へと立っとった。コレが宿儺のあらゆる性癖の厨房か…!
けど、おかしい。なんでや?なんで、女王様がおらんのや?
「宿儺、お前の女王様はどうしたんや!?」
俺がそう聞くと、宿儺は答えた。
「女からは躾を喰らい飽きてなぁ。今はもっぱら男とケモノだ」
そう言って、うに頭の男と目と鼻のない白い巨人を見る。
男とケモノ?そんなんアリなんか?
そんな俺の考えを見透かしたかのごとく、宿儺は俺へと声をかけた。
「女王様は人の女のみと決まっておるわけではあるまい?」
「さ、さすがや…!」
たしかに、女王様いうんは概念や。色んな女王様がおって当然のことや。そんなことに気づけんかったとは、恥や…!
俺が猛省をしていると、目の前では宿儺へと躾が行われようとしていた。
…いやいや、待てや!
そんな馬鹿なことありえるんか!?閉じない性癖(公開SM)やと…!?
俺は驚きを隠せんかった。
本来、性癖っちゅうんは隠すものや。俺かて全てを皆の前でさらけ出しとるわけやない。
それやのに、宿儺は性癖を閉じんかった。
なんて神業や…!常識では測ることができん!!
そんな驚く俺を置いて、躾は始まっていく。
宿儺には、腕が四本、目も四つ、口は二つある。
腕と口が常人の倍以上あることは、ドMにとってこれ以上ない優位性となり、加えて宿儺はこれだけの異形を持ちながら一切の身体機能を損なっとらん。
ウニ頭の男が宿儺の爪の間へと針を幾つも刺していった。
それは、腕が人の倍ある宿儺だからこそできる『200%のプレイ。』
断続的に続く痛みは宿儺を満足させとった。
宿儺はウニ頭を見て、『そうだそれで良い』とニヤつく。
俺は満足しとる宿儺を見て、この程度かと余裕を感じとった。
正直、これ以上は無いってほどの性癖に加え、宿儺の稀有な特徴を活かすことができとる点は素直に凄いと思うし、認めざるをえん。
けど、これ以上が無いってことやったら、俺の最高速度(ド変態の成長速度)ですぐ追いつけるわ。
俺がそないなことを考えとると、宿儺はまたも俺に声をかけた。
「直哉、お前はこの程度かと思っているのではないか?」
宿儺はニィッと笑って『俺の二つの口があいているだろう』と続けた。
「ま、まさか」
俺はとんでもないことに気づいてしもうた。
気づいたときには、すでにウニ頭によって準備が整っていた。
ウニ頭が持っとるのはセンブリ茶とブート・ジョロキアやった。
語源が千回振り出しても苦いことを由来とするセンブリ茶と唐辛子の千倍辛いとされるブート・ジョロキア。
一方には苦み、一方には辛さの二種の刃(味覚)が同時に襲うっちゅうんは、俺を持ってしても体験したことのないことや…!
宿儺の両方の口が金属製の金具で強制的に開かれ、注がれた。
『 ダメ押しだ ◾️ 開 』と宿儺がそう言うと、鼻までもが金属製の金具で強制的に開かれ、カラシとワサビを突っ込まれた後にとんでもない匂いを放つシュールストレミングを鼻の近くに置かれた。
よく口に刺激がある状態で言えるもんや。最終的には口に猿轡までされとる。…神懸かっとる。美しいとさえ言えるわ。これが両面宿儺か…!
「分かったわ、もうええよ」
「なんだ、ドMの性癖を燃やすのはここからだというのに辞めるのか?」
ああ、充分分かっとるわ。
さっきまでは完璧やと思っとったけど、宿儺は完全体になっとらんことに気付いた。
そう、まだ宿儺は特級玩具『電気ショック』を使っとらん。宿儺のお気に入りの玩具は二つある。そのうちの一つも使っとらんってことはまだまだ余裕があるわけや。ほんま恐ろしい漢やで。
それにしても、勿体ないことしたわ。
ここまでの神業を見れるなら今週の週間超ドM雑誌、いらんかったかもしれんなぁ。
「…せっかく、堕天って人の記事やったのに」
俺がぼそっと呟くと、とんでもない言葉が宿儺の口から告げられた。
「堕天は俺だ」
俺は一瞬呼吸が止まった。
「なんやと!?千年後も史上最凶のドMの王と呼ばれるだろうとされている堕天やと?」
「ああ、所詮は各世代のドMといえど、俺のいない時代に生まれた凡夫(M)に過ぎん」
俺の問いについて、宿儺は傲岸不遜にそう答えた
とんでもないやつやな。けど、ある意味納得やわ。宿儺が堕天やっちゅうんなら、コイツ以外におらんって確信を持てる。他に誰かが堕天やって言っても俺は信じへん自信がある。
「…いつか、必ずお前に追いついたるで。俺の最高速度で必ず追いついたる!!」
「フッ、魅せてみろ。禪院直哉」
【それから二年後】
俺は性癖展開に続き、俺だけのドギツイ性癖を開花させた。
「良い。魅せてくれたな、禪院直哉。」
「ここまでの性癖を見せても、宿儺の心を揺らすことはできんか」
「何を言っている。天晴だったぞ、俺は生涯貴様を忘れん」
そして、宿儺は言葉を続けた。後で気付いたんやけど、あれは俺にとって1番欲しかった言葉なのかもしれん。
それは、、、
「誇れ、お前はキモい」
「なんや、これは」
俺の頬には、一筋の水が目からツーッと流れていた。
「さぁな。俺はそれを知らん。」
『それより、良いものを魅せてくれた礼だ。なにか褒美をやろう。何が良い』と続ける宿儺。
「…そんなら一つ欲しい褒美があるわ」
「なんだ、言ってみろ」
「
俺と一緒にドM1グランプリに出てくれや!
両ちゃん!
」
「こ◯亀か?」
その後、俺らはドM系コンビとして漫才師デビューした。
「なんだ?緊張しているのか?」
震えているぞと続ける宿儺
「ちゃうわ、これは武者震いや」
俺はそう答えたけど、ほんとは嘘や。緊張して震えてまう。もし、俺の性癖がウケんかったらどないしよ。そないなことばかり考えてまう。
そんな俺を見て、宿儺は俺に声をかけた。
「おい、行くぞ直哉。…いや、直ちゃん」
「…!おう、今行くわ!両ちゃん!!」
宿儺が俺のことを直ちゃんと呼ぶなんて…!これまでに無かったことや!俺は初めてこの世に生まれ堕ちた気さえするわ!おかげで、緊張なんて無くなってしもうた。雲一つない!Thank you so much 両ちゃん!!
そして、グランプリの司会者から入場する前の紹介が入った。
「さあ、お次はこの2人!今特にアツい!
話題の新人コンビ!
『Cook Speed』!
」
キャアアァ!!
入場すると、俺らの顔が好みな層が黄色い歓声をあげている。俺らは芸人やから笑い声が欲しいねん。俺と同じ気持ちやったのであろう両ちゃんがお客さんらに声をかけた。
「なんだ魚のくせに喧しいな。いいだろう。まずはその鱗から剥いでやる。」「最高速度でな!!」
さあ!さっさと笑い声に変えたるわ!!
その後、俺達はドM1グランプリ優勝を果たす。
さらに、伝説のコンビ『祓ったれ本舗』やC1ファイナリストである『ピンチャン』との共演などもあった。俺らにとって最高に楽しい時間やったわ。
せやけど、別れっちゅうんは来るもんや
「…ほんまにそれでええんか?」
「ああ。俺は周囲を害してしまうくらいならば、ドMとしての誇りにかけて、そのようなことにならない選択肢を選ぶ」
「だからって、わざわざそないなことせんくても…」
「いいか、直ちゃん。必ず俺の復活は阻止しろ。そのときの俺は既に今の俺ではなく最低最悪のドSとなっているだろう。阻止できなかったとしてもドSの俺の息の根は止めるのだ。お前の相方、そしてベストフレンドとしての頼みだ」
そんな言い方ズルいわ。拒否できんやん…グスッ
「分かったわ!必ず達成したる!約束や!」
そして、両ちゃんは長い眠りに着いた。
〈存在しない記憶終了〉
No side
「…ちゃんと俺は約束を果たすで、両ちゃん」
そう言った直哉の顔は少し憂いを帯びていた。
感想欄で原作みたいに直哉ともコンビを組ませて欲しいとの声があったので、組ませてみました!ただ、メロンパンでもなく高羽でもなく宿にゃんです。
ていうか、ほぼ存在しない記憶で終わっちゃいました。やっぱり、ドMドブカスの大切な記憶ですしね…
ちなみに作者はこち亀のことあんまり知らないです。読んだことないので。