トロいわ、悟くん。 作:狐大総統
なんか、当初の予定と違う方向に行ってるんですよね。
まあ、もしかしたらそのうち変えるかもです。
誤字報告ありがとうございました!
感想も励みになります!
さて、今回は夏油のヒモ適性についての話です。
彼に適性はあるんでしょうか?
どうぞ!
side直哉
「うっ、眩しいな」
「おっ、コイツ起きたぜ直哉。」
女王様が投げた木の棒を取ってこいごっこをして時間を潰していると、甚爾くんから声をかけられた。
「ようやっとお目覚めか。気分はどうや傑くん」
「最悪の気分だよ」
「反転術式のコツは掴めたのか?」
「いえ、それがあと一歩なのは理解しているんです。ただ、その一歩を踏み越えるのに時間がかかってしまっています」
心底悔しそうな顔をしながら傑くんは言った。
「まあ、こればかりはきっかけを掴むしかないやろな。今回は危険な領域まで入ったから女王様に反転術式で治してもろうたけど、正直なところ次で掴んでほしいものや」
俺が反転術式を扱う感覚、ちゃんと届いたやろ?と続ける。
「ああ。無我夢中で詳細については考えられなかったが、アレはどうやったんだい?新しい拡張術式なのか?」
傑くんの言葉に、なんて返したもんか悩む。
正直、傑くんにならアレのことを言ってもええかなと思いはしとるんやけど、あんま奥の手の一つを知ってる人を増やしたないってのが本音や。
「んー、拡張術式ゆうよりは呪具を使ったものやね。これ以上はナイショや」
「おや、それは残念だ。」
「それより、傑くんに聞きたいことあんねん」
「なんだい?」
「呪霊がクソまずいってホンマ?甚爾くん曰く、吐瀉物を拭いた雑巾みたいな感じがするらしいんやけど」
俺の言葉に驚いたのか目を見開く傑くん。
「なんで甚爾さんは知って…。」
「俺は腹の中に呪霊をしまっているからな。味自体は出し入れするときに知ったんだよ。」
これ以上知りたければ金を払えという甚爾くん。
「なるほど……。はぁ、甚爾さんの言う通りだ。呪霊はとんでもなくまずい。正に甚爾さんの言うような味がするよ」
観念したように傑くんは告白した。
まるで、なんかの罪でもバレてしもうたみたいな態度や。
「呪霊操術って便利なイメージだったけど、やっぱそれなりにデメリットはあるんだね」
女王様の言う通り、強い術式には相応のデメリットが大抵あるもんや。
悟くんの無下限呪術も六眼が無ければ使いもんにならんし、俺の投射呪法もコマ打ちのセンスが無かったら使いもんにならん。あの十種影法術も魔虎羅っちゅう歴代の誰も調伏できとらんデメリットがある。
「なんで言わんかったん?」
「聞かれなかったからね」
瞬間直哉の脳内に流れ出した存在しない記憶
場面はどこかの建物の屋上。今より髪が伸びて少し歳をとった傑くんの側に2人の女子高生がおった。
そこでは、金髪の子が傑くんの髪の手入れをして、黒髪ショートの子が傑くんの口に食べ物を入れとった。
当の傑くんは俺になにか相談事をしているようやったけど、全く俺の耳に入ってこん。
「夏油様ぁ。綺麗に髪はすけたから、次はカットするね」
「あぁ、ありがとう。」
「夏油様、これ上手く作れたから食べて欲しい」
「うん、頂くね」
そう言って、傑くんの口に食べ物を入れる黒髪ショートの子。
「とても美味しいよ。ありがとう」
3人が微笑んでいる中、表情筋が死んでる俺…
ハッ、やばいやばい変な記憶が流れ込んできよった。
理由はハッキリしとる。
傑くんの言葉に衝撃を受けたせいや。
な、なんてことや…
傑くんも甚爾くんと同じことゆうとる。
今の記憶は傑くんの将来の可能性か?
たしかに俺のイメージやと、傑くんは人を惹きつけるって感じはあったわ。
けど!流石にあないな風に女子高生に自分の身のお世話をさせるようなイメージは無かったわ!!
まあ、さすがに女子高生のヒモになってへんだけマシか…?
いや、待つんや禪院直哉。あの女子高生達も成長すればお金を稼ぐようになる。そうなったら、更に未来では傑くんがあの2人のヒモになっとる可能性もあるんやないか…?
アカン!!この男、天性の特級のヒモになる才能をガッツリ秘めとるやないか!
特級詐欺師以外にも特級の能力を獲得できるなんて、規格外にもほどがあるやろ!!
……術式が呪霊操術やからか??人をたらしこむ能力もいくらでも取り込めるゆうことか?
……夏油傑。逆にキミは何を持ちえないんや!!
ふぅ、少し落ち着くんや俺。
傑くんの才能は危険な才能や。
ただ、今なら潰せる。
そんなら、今のうちにこの才能は潰しとくべきやろな。
これには意味があんねん。意義もやな。
大義ですらあるわ。
問題はどないな風に潰すかや。
…一度傑くんの脳みそ取り出して、頭ん中空っぽにすればええんやろか?
あとで、入れ直すときはフランケンシュタインみたいに頭を縫っとけば、とりあえず塞がるやろうし。
よし!そうしよ!!
それが1番ええわ!
そうすれば、傑くんによる被害者もいなくなるやろうしええやろ!!
〜この間、0.01秒〜
side夏油
「聞かれんかったからって、自分の中に溜めとったら後で爆発するやろ。少しは周りに言った方がええと思うで」
「なんでもかんでも言えば良いというわけでもないだろう」
いつもよりも真面目な顔をする直哉に、私は顔を背けながら返事をした。
「子供じゃないんだ。誰でも彼でも理解して欲しいとは思わないさ」
私がそう続けると、直哉はショックを受けたようだった。
なんなら、私に殴りかかるのではないかという雰囲気を持っている。
視線は私の顔…いや、頭部か?を凝視しており、髪でも掴もうとしているのだろうか。
そんなことを考え、私達の間に少しの緊張感が走る。
「…俺は耐えることっちゅうのには、美学が必要やと思っとる。傑くんのはただしんどいだけや。快楽もなんもないやんけ」
「はぁ、美学には快楽必要無いだろう。それに、直哉が言ってる美学というのはドMのことだろう?そんなおかしなものは美学にはならないよ」
「ざっけんなや!!ドMこそ至高やろうが!!ドブカスがぁ!!」
今までに見たことが無いほどキレる直哉。
いや、そこはそんなキレるところじゃないだろう。
「それに私にも美学ならあるさ。弱者を守るために耐えることほどの美学はないだろう?」
「はっ、ちゃんちゃらおかしいわ。呪術師はヒーローと勘違いしとるんちゃうか?」
直哉は鼻で笑うと続けて発言した。
「それに、甚爾くんどころか俺にも勝てんような弱者がよう言うわ。」
「試してみるかい…?」
私の言葉に直哉も戦闘準備に入る。
一触即発な空気の中、突然硝子から声をかけられる。
「えーっとさ。夏油の話を聞いてる感じ、私には夏油が禪院クラスのドMに聞こえるんだけど、実際のとこどうなの?」
硝子のとんでもない発言に、戦闘準備に入っていた私達の気が抜ける。
「…硝子、そんなわけがないだろう。だいたい、何故そう思ったんだい?」
硝子の言い分を聞くため、質問する。
「いやさ、前に禪院が言ってた真のドMとは何かってやつあったじゃん?夏油のやってることって同じなんじゃないの?」
ああ、あのわけのわからないやつか。
「いや、違うだろう。直哉の場合は1人の女王様のためであって、私の場合はより多くの人達のためだ。志の大きさが違うよ。」
「へぇ、つまりお前は浮気性ってことね」
いや、一夫多妻性か?と言いながら甚爾さんはニヤつき、硝子はなるほどと言いながら納得している。
「いやいや、待ってください!どうしてそうなるんですか!それに私が守ろうとしているのは女性のみではないですよ!」
「なんだ、お前バイだったのか。そりゃあ、悪かったな」
そう言いながら、甚爾さんは本当に申し訳なさそうにしている。
あ〜、どうしてそうなるんだ!
ていうか、なんなんだ!この話すほどドツボにハマっていく感じは!
…経験値か?甚爾さんの大人としての経験値と硝子の女性ならではの経験値がとんでもない化学反応を起こしているのか?
たしかに2人はダウナーな感じというか、アングラな雰囲気というか似通っているところがある。
そんな2人に組まれると、こんなにもやりにくいのか…!
「…傑くん、そうやったんか。ごめんな、変な勘違いしてしもうて。俺、てっきり傑くんがあかん方(特級詐欺師に加えてヒモの能力まで手に入れる)に行ってしまうんか思うて、ついムキになってしもうたわ。」
直哉は直哉で、謝ると同時に私を同志(真のドM)だと勘違いしているからか、目をキラキラさせている。
ああ、これはもうダメだな。
私の負けだ、降参しよう。
「…分かった。今後はしんどいことがあったら、この中の3人には相談することにするよ。なんなら、縛っても良い。だから、ドMと勘違いするのだけはやめてくれ」
私の言葉に、直哉達が了承すると縛りを行った。
「まあ、なんだ。お前の弱者生存が呪術師のあるべき姿っていうのは今のうちに無くしておいた方ってのはたしかだぞ」
縛りを終えたあとに甚爾さんが話しだした。
「お前は知らないだろうが、呪術師ってのは非術師から迫害を受けてるやつもいる。とんでもない田舎なんかだと特にな。子供なんかは虐待とか受けてるんじゃねーか?」
なんでもないように甚爾さんは言う。
私は甚爾さんの話にかなりの衝撃を受けていた。
「ついでに言うと、その非術師から呪力が流れ出した結果呪霊が生み出されてるワケだが、術師からは生まれないらしいぜ。勿論、術師が死後呪いに転ずるのを除いてだが」
まあ、ここまで聞くと非術師最悪ってなるだろ?と甚爾さんは続ける。
「…ええ、まぁ、そう、ですね」
困惑し始めて途切れ途切れとなったしまっている私が返事していると、直哉が発言した。
「かといって、術師こそ最高!!ってワケでもないんやで?禪院家なんかその見本市みたいなモンやな。男尊女卑は当たり前。『禪院家にあらんずんば術師にあらず。術師にあらずんば人にあらず』って言葉もある。実力主義やから、弱いやつは惨めなもんや。かといって、ほんに実力主義っちゅうわけやないしな」
…ああ、前に言ってた呪力の無い甚爾さんを馬鹿にしてるってやつか。たしかに、あれほどの動きができる人が弱いワケが無い。
むしろ、甚爾さんの底知れなさは私では勝てるかも分からない。
「ていうか、さっきから思ってたんですけど、甚爾さんって呪力無いなら呪霊も生まないんじゃないですか?」
甚爾さんの話で、疑問に思った内容について硝子が甚爾さんに聞く。
「ああ、そうだろうな。実際、特級術師の九十九ってやつが、そのことで俺にコンタクト取ってきたときがあってな。さっきの呪霊が生まれる生まれない云々はソイツから聞いた情報だ」
「へー、マジで特別な身体してるんですね。今度解剖させてくださいよ」
ニヒルに笑いながらとんでもない要求をする硝子に、甚爾さんはお断りだと言いながら上手く躱していた。
「まあ、そんなわけや傑くん。弱者生存だとか術師は非術師のためにあるだとか、そんなんは一度置いといて自分の好き嫌いで判断してみるのもアリやと思うで?」
ドMやと思われたないんやったらなと笑いながら続ける直哉に私は思わず聞いた。
「…直哉は、どうして硝子を自分の女王様に選んだんだい?それには直哉の好き嫌いが関わっているんだろう?」
参考にさせて欲しくて、つい聞いてみたくなった。
「んー、そやなぁ。教えたるけどみんなには内緒やで?」
そう言って、硝子には聞こえないように小声で話し始める直哉。
「術師っちゅうんは、基本的に何かを傷つけることばっかやろ?呪霊や呪詛師、場合によっては術師や非術師も傷つけることがある。そんななかで、女王様みたいに人を治せる力を持って、実際に治そうとする優しさ、意志を持つことができる強い人はそうおらへん」
せやから、硝子様に俺の女王様になってもろうたんやと直哉は言った。
これを聞いて、私は自分の価値観が変化したように感じた。
まだ、この変化が私をどう変えるのかは分からないが、悪いものでは無いはずだ。
これを大事にして、いつか私も胸を張って自分の価値観を直哉に伝えられるよう努力することを決めた。
甚爾と家入の組み合わせって、敵にまわすと超厄介だと思うんですよね。