赤の短剣使い   作:鉄分不足

3 / 3
赤の短剣使い3

 話は悠ことシュウが黒猫団の宿舎を出た後まで戻る。

「あー、悠くん行っちゃいました。すごくいいのに」

「まーだ、引っ張りますかそのネタ」

 残念そうにするシリカにリズがツッコミを入れると、ケイタが姿を見せる。

「や、皆さんお揃いで」

 穏やかに手を上げて輪の中に入る。

「あれ?シュウの姿が見当たらないけど?」

「悠くんは、ちょっと野暮用でこんな姿になってます」

 いつのまに写真を撮ったのか、ケイタに写真をすいっと差し出す。

「ごふっ」

 思わず噴出すケイタ。

「これが、シュウ!?いや、なんでこんな姿に?」

「さすがのケイタもふいたか……」

 などとぼやくキリト。

「実は―――」

 シリカが、かくかくしかじかと説明をすると。

「なるほど。それであんな格好を……なんて、哀れな」

「そんな!? 似合ってるじゃないですか」

 声を上げるシリカ。それにケイタは、たははと苦笑いをして答える。

「矜持の問題、だね」

「それでだ、ケイタの意見も欲しい。こちらはこちらで、対策をしておこうと思ってね」

「そうだね、キリト」

 そう答えて、ケイタは首を捻る。

「僕の意見を言わせて貰うならシュウだけじゃ、情報不足じゃないかな?」

「それは合わせて、アルゴにも依頼を立てようと思っていたんだ」

「彼女は、少し有名過ぎないかい?」

 確かにという表情を浮かべるキリトに更に言う。

「上層部は勿論、下層のほうにまで鼠のアルゴの名前は行き届いている」

「変に嗅ぎ回ったら何かを探られていると警戒されるわけか……」

 うーん。と考え出す二人。

「調査の件はシュウで精一杯……振り出しかー」

 キリトは組んだ手に頭を乗せると足を伸ばしソファに背を預ける。

 するとガチャリと戸が開く音が聞こえる。

 マイホームの戸を開けれるのは、家のキーを持っている者のみ。

 誰が来たのかと、ここに居る全員が揃って扉に首を向けると―――

「やぁ、キリ坊。シーちゃんにアーちゃん、サーちゃんもこんばんわダ」

「噂をすれば、ですね。こんばんわ、アルゴさん」

 シリカの挨拶を最初にアスナ、サチ、キリトの順で挨拶を交わす。

「おや?もしかしてご依頼かナ?」 

 こんな会話が女子のグループで行われている所に人知れずソファーに座っているケイタ

は、涙を流す。

「僕は、眼中にすらないんだね……」

 キリトは肩に手を乗せて慰める。

「お前は泣いていい」

「にゃはは。相変わらず面白い連中だナ。そういえばユウが居ないネ」

 キョロキョロと見回すアルゴにシリカは答えを出す。

「悠くんは今35層でお遣い中なんです」

「ふむふむ、つまりは、35層の情報が欲しいト?」

 本来必要の無い層に出向く理由を合理的に考えるとそこにたどり着くのだろう。

「正解です、アルゴさん。でも、35層の情報なんてあるわけがないですよね?」

「甘いヨ、シーちゃん。鼠のアルゴの名にかかれば知らない情報なんて無いヨ」

 頬に人差し指をつけて首を上に向ける。

「35層で、イエローギルドのターゲットになったギルドが居るとかかナ」

 多少はアタリ付けられると予想していたとしても、あまりにもどんぴしゃの受け答えに

サチが唖然しながら言う。

「アルゴさんって本当になんでも知ってるよね」

「それが商売だからネ」

 ニャハハと笑うアルゴ。ここまで来ると期待も必然と高まるのもまた自然と言える。

「もしかして、イエローギルドの目星も?」

 キリトがそう訊くのも頷けるだろう。

「10000コル」

「まじか!?」

 あまりにも自然に答えるものだからキリトは、右手を縦に振る。

 そして交渉持ち込むと、アルゴはそれを拒否する。

「ゴメン。そこまではオイラも知らないヨ。実を言えば今日仕入れたばかりの情報なんだ

。でも、ここで引き下がったら情報屋の名が泣くナ。オイラの名にかけて、35層の情報

を仕入れるヨ」

「でも、35層に行ったら」

「イエローに見つかる可能性がある、ダナ。なにも、お目当ての層に行かなくても情報は

手に入るヨ。ようは、やりようだナ」 

「やりようか……」  

「それじゃ、オイラは行くヨ。またね、皆」

 嵐のように現れ、そして去っていくアルゴを見送ると、キリトがうなり始め、アスナが

声をかける。

「どうしたの? キリトくん」

「あー、自分で考えておいて、こういうのもなんだけど、やっぱりこの案は廃案しようか

なと」

「やれる事があるならやっておいた方がいいと思うよ」

 ケイタの言葉で更にうーん。と更に考え込むが、話す事を決めたようだ。

「それじゃアスナ、サチ、シリカ、ちょっと耳を貸してもらえるか?」

 ごにょごにょと会話をし始める3人。

 女の子組みがニヤリとするのを見て、リズは悟った。これは小一時間程前の、シュウの

姿だと……

「あっ、私ね、この後オーダーメイド武器の生成があるんだった」

 シュタっと手を上げ身を翻す。

 これすらも何処か似ている。

「それじゃね。あははははー」

 ドアに手をかけようとしたところで、手を捉まれる。

「な、何かなー?」

「怖いのは、最初だけだよ、リズ」 

 グギギギと音がしそうなほど、不自然に首をアスナにを向ける。

「そのネタはさっきしたし、流石にもう鮮度がないんじゃないかな?アスナ」

「そんな事ないですよ、リズさん。今日あがったばかりのネタじゃないですか」

 とシリカ。そして、取り出すは一つの瓶。

「ちょ、ちょっと!?そのピンクの着色料何につかうのよ?」

「何って、ね?」

「あたしが聞いてるんだってばー!」

「リズさんが、客足に困ってるって聞いたときからアスナさんとサチさんで考えていた物

があるんです」

 アイテムストレージからオブジェクト化した服を広げる。

「じゃーん。どうですか、この服。可愛いですよね」

「完成してたんだね」

「完成してたんだね。じゃなぁーい!なに、そのひらひらした服は!」

 シリカが広げて見せているのはエプロンとメイド服を足して割ったような赤い色の服。

 正式な色の名前はワインレッドと言うらしい。

「お膳立ては十分だね、リズ」

 アスナはにっこりと微笑むと、じゃ、着ちゃおっか?と一言。

 腕を捉まれている状態でリズは逃げれるわけもなく――

「いやーぁぁあぁぁ」

 叫ぶしかなかったようだ。

「け、穢された……」

「いくら、二番煎じだからって同じじゃつまらないよ?」

 とサチ。

「こちとら面白くてこんな格好しとるんじゃないわい!キシャー」

 手をわきわきさせて、サチを襲いかける。

「や、やめ……」

 このアインクラッドはシステムによって痛みを感じないように出来てる。では、感覚が

無いのかと言われるとそうではない。痛み以外の五感はしっかりと存在する。

 だから、くすぐればもちろん……

「ほ、ほんとに、やめ、腰は、よわ……」

 羞恥心で変なテンションになりつつあるリズをシリカが宥めに入る。

「まぁまぁ、ほら、キリトさん。出番ですよ」

 本当に、そんな事言えば機嫌が直るのか? と、半信半疑のキリトだがとりあえず言葉

にする。

「前のもよかったけど、今のリズも可愛いよ」

「ば、ばかぁ」

 頬を紅く染めながらぽかぽかと叩く姿を見ればだもが思っただろう。

 ほめられて、まんざらでもないんだろうと。

 叩く事、約10回ほどで我に返ったのか。おほん、と咳払いをして、本人の中では無か

った事にしたかったのか、取り繕って姿勢を正す。

「と、とりあえず、35層には行ってあげる。でも、危ない事はなしよ?」

「分かってる。35層で商売をしながら少し情報を集めて欲しいんだ」

 突然シリカがびくりとする。

「うわぁ。びっくりしました」

 シリカにメールの届く音が響く。この通知音は本人にしか聞こえない。ゆったりしてい

る時などにこうして通知音がなると驚く事がままある。

「こんな時間に誰から?」

 横で驚くシリカにアスナが訊く。

「悠くんからみたいです」

 皆にも見えるようにメールを可視化して内容を広げる。

「えーっと。凄い事になってますね」

 35層にある宿で部屋を取り一休みをしている。

 思ったよりも、女のフリをするのも疲れる……主に視線。

「うん、こんな感じかな。メールはこれでよし」

 メールを送ったと同時に、コンコンと扉を叩く音が聞こえる。これに返事をすると本来

聞こえない部屋の声が聞こえるようになるシステムになっている。

「はい」

「ユウさん、少しお話いいですか?」

「分かりました。今、あけますね」

 どうぞと招き入れ、扉を閉める。

「どうしたんですか?こんな時間に」

「シンさん達の事迷惑じゃなかったかなって」

 なるほど、大分勢いに任せてた部分もあるし、女の子って所も考慮されたんだろう。

 微妙に複雑な気分ではあるけれど、正体がばれていないって事で良しとしよう。

「いえいえ、善意でしてくれた事に対して迷惑だなんて思ってませんよ」

 俺の言葉を聴いて安心した表情を見せてくる。

「良かった。ユウさん、なんでも笑顔で返してくるんで押し付けてないかなって心配だっ

たんですよ」

「そうですか?」

「そうです。とと、これも用事の一つなんですけど、明日はもうちょっと層を上げてみま

せんか? シンさん達にはまだ話してないんですけど」

「確かに彼らがいたら私達は暇かもしれないですよね。何層をメインにしてる人達なんで

すか?」

 装備の感じからして、恐らくは40層~43層って所だろう。

 あえて訊いたのは勿論、そんなにレベルが高くないよ、とアピールするためでもある。

「確か、41層だって数日前に言ってました」

「おぉ、私が居た層より更に三層も上ですね」

「こんな機会滅多にないですからね、思う存分すねをかじろうかと」

 ユミさんはいたずらをするような顔になり、クスリと笑う。 

「いい作戦ですけど、ここより3層も上にあがるんですから、応相談ですね。スリルがあ

るだけならいいですけど、それ以上の事があっても対処に困りますし」  

「はーい。先生」

 と、生徒よろしく手を上げて返事をするユミさんに――

「よろしい」

 なんて、言葉を返す。すると、ユミさが思い出したように声を上げる。

「おっと、いけない。長居しすぎましたね」  

「時間もそろそろで10時回る時間です」

「そんなに!?」

「明日は7時集合なんで、しっかり起きてくださいね」

「私、早起きは実は苦手で……」

 てへりと舌を出すユミさん。

「6時には起こしてあげます」

「ありがとぉー、ユウさん」

「それじゃ、おやすみさい」

「おやみなさい、ユウさん」

 ユミさんを見送ると俺はベットに身を預ける。あれこれと考える暇なく、すぐに眠気に

襲われ、思考するのをやめた。

 

  To Be Continued

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(必須:50文字~500文字)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。