お兄ちゃんは付いてる娘!?〜双子の妹に魔法少女を押し付けられた〜 作:哀上
『魔法少女の初仕事』⑤
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細かい作戦こそ立てずに飛び込んでしまったが、このヴィランについて遠くから観察していていくつか予想のついている部分はある。
まず、化け物じみた力を持っているということ。
そして、逆にそれ以外の特殊能力のようなものはほぼないだろうということ。
街はこの場所こそひどい有様だが、破壊の範囲はこの周囲に収まっており少なくとも気軽に使えるような遠距離攻撃はないはず。
近くで男の子が生き残っていたことからも範囲攻撃もない。
つまり、このヴィランは単純な近接タイプ。
……の、はずだ。
ならば気をつけるのは相手の身体の機微、筋肉の動きに集中していれば間違いない。
魔法とか、超能力とか、そういう曖昧なものは一旦放置だ。
そして先に殴りかかるのもよろしくない。
そういうタイプには見えないが、ここまでの思考で当たりをつけた部分が敵の意図して誘導された罠だった場合、相手は僕を先に動かせたいはず。
予想を外した上で罠になんてかかったら、目も当てられない。
破壊され尽くした景色の中心で無言で睨み合う2人。
相手も警戒しているのだろう。
ヴィランは僕を新人だと当たりをつけている様だが、だからこそどう戦うかもわからないって事かな。
素人は技術こそ拙いがセオリーが通用しない。
戦闘でのラッキーパンチはそのまま致命傷になる可能性すらある。
……
痺れを切らすかのようにヴィランが動いた。
ヴィランの体がぶれ、立っていた地面に凹みが出来る。
単純に全速力で接近しての攻撃。
小細工はないが、単純故に強力だ。
おそらく、細かいことを考えるのは辞めたってところか。
やはりそういうタイプか。
初めて戦うヴィランとしては有難いタイプだな。
ヴィランの動きは明らかに人間離れしたスピードで、普段の僕なら避けるどころか認識することすら困難だっただろう。
でも、今の僕は魔法少女だ。
そして、事前に行動に当たりをつけて警戒していた。
攻撃の軌道を余裕を持って視線に捉え、最小限の動きでかわす。
頭の数cm横を拳が通りすぎる。
すごい威圧感、空気を切り裂く音すら聞こえる。
今の僕だから見えてるだけで、やはりとんでもないスピードのようだ。
割れた地面に音速すら超えていそうな拳、魔法少女だからって何発も喰らってもいい攻撃だとは思えない。
だが、その分隙も大きい。
このヴィランは自らの拳に全体重を乗せるタイプらしい、攻撃後は体が流れて半身がガラ空きだし2撃目もすぐには繰り出せない。
大技でも持っていたらここでお見舞いしてやるのだが、この状況で無駄にリスクを負う必要はない。
そもそも僕にはそんな技なんて無いし。
体が流れている方向に蹴りをぶち込む、ただそれだけ。
面白いぐらい簡単に吹き飛び、ビルの壁に衝突し突き破った。
激しい破壊音が響き、辺りに土埃が舞う。
結構芯をとらえた手応えはある。
それなりのダメージにはなっているはずだ。
さて、
逃げられても面倒だが、やはりこちらから接近するのは躊躇われる。
僕の技術は相手以上に拙い、今回のをそっくりそのまま喰らいかねない。
とりあえず、拳を空振りし土埃を吹き飛ばす。
目は僕の方が良さそうだし。
アドバンテージを生かし切って、流れを相手に渡すことなく仕留め切りたい。
「新人かと思えば、なかなかやるじゃないか」
ヴィランがビルの中からゆっくりと姿を表す。
ダメージこそ与えられてるようだが、致命傷には届かないか。
化け物のような力に見合って、耐久力の方もかなりのものらしい。
「お前も考えなしに暴れてた割に、身体の方は随分と高性能なようだな」
「ちっ、疲れるからあんま使いたくなかったんだがな」
ヴィランがそう言うと、世界が歪んだ。
水面を通して川の中を見ているかのように、ほんの一瞬だけ。
そして、ヴィランの両手に黒い炎のようなものがまとわりつく。
ちょ!?
お前、そういうことも出来たのか……
「だから、最短でお前を殺す!!」
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