お兄ちゃんは付いてる娘!?〜双子の妹に魔法少女を押し付けられた〜   作:哀上

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『魔法少女の初仕事』⑫

『魔法少女の初仕事』⑫

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「ん? 君、どうしたの?」

 

 裾をちょんちょんと引っ張られた。

 視線を落とすと、男の子が。

 この子、さっきヴィランから助けた子だ。

 

 いつの間にか近くに来ていたらしい。

 

 ……

 

 慌てて服を正す。

 別にスカートが捲れていたりはしなかった。

 一安心だ。

 

 パンツ丸出しで男の子相手に決め台詞とか。

 完全に黒歴史だ。

 もう二度とあんな恥ずかしいことしたく無い。

 

 じっと上目遣いで見つめられる。

 なんか、ちょっと照れくさいな。

 

「お、お姉ちゃん、ありがとう」

 

 わざわざ、改めてお礼を言いに来てくれたのか。

 まだちっちゃいのに、本当にお利口さんな子だ。

 

「気にしないで。この街を守るのが僕の使命だから」(なでなで)

 

「……かっこいい」

 

「え、そう? 僕、かっこいいかな」

 

「うん! お姉ちゃん、かっこよかった!!」

 

「ふふん」

 

 かっこいい、かっこいいか。

 お世辞抜きでそんなこと言って貰えたのっていつ以来だろ。

 ちょっと記憶に無い。

 

 僕は、どちらかといえば誰かと比較されては負ける側。

 かっこいいとか凄いって言われるのは相手で、かっこ悪くて不出来なのが僕だった。

 特に妹がいたから、生まれてからずっとどこに行ってもそうだった。

 

 男の子からの純粋な尊敬の視線。

 人々からの称賛。

 自分こそが街を守ったんだという自負。

 

 うん。

 やっぱ、良いかも知れない。

 

 魔法少女最高!!

 

「お主、また年端も行かない少年をかどわかして……」

 

 男の子に別れを告げご機嫌な僕に、マスコットの奴が水を差して来た。

 

「マスコットさん、言いがかりはやめて貰おう。ただ普通に話てただけだよ」

 

「少年の初恋を奪っておいてその言いぐさ、随分な悪女じゃな」

 

「え?」

 

「さっきの子、多分お主に惚れてたのじゃ」

 

 惚れてる?

 あの子が僕に?

 まさか。

 

 あの子は男の子で僕もおと……

 

 あれ?

 今の僕って魔法少女じゃん。

 なら、

 

 いや、いやいや。

 かっこいいって言ってくれたし。

 憧れてるだけだって。

 

 そう、だよね?

 

「かっこよくてエッチなお姉さんに助けられちゃったんじゃ、耐性の無い少年がコロッと惚れてしまっても仕方ないのじゃ」

 

「いや、エッチって……。ただかっこよかったから憧れてるだよ、多分」

 

「あれ見てもそう言えるのじゃ?」

 

 遠ざかりながらも、チラチラと僕の方を振り返る少年。

 その頬は真っ赤に染まっていて、

 

「い、命の危機だったし、心拍数が上がって頬が染まることもあるでしょ。それにエッチだなんて言い掛かり、僕はそんな変態じゃない」

 

「お主がそう思うのなら別にそれでいいのじゃけど」(少年を前にして思い出したかのように服を整えておったが、戦闘中はパンツ丸見えだったの気づいてなのんじゃろうな)

 

「……」

 

 べ、別に。

 

 よくよく考えてみれば、仮に男の子が僕に惚れていたとしてもなんら問題無い。

 僕は側からみれば完全に女性、しかも魔法少女だ。

 アイドルに淡い恋心抱くみたいなもの、全然健全だしそれに僕が答える必要もない。

 

 男の子の性癖を捻じ曲げた訳でも無ければ、イケナイ事をした訳でもない。

 問題があるとすれば、僕が女装して男の子の頭なでなでしたことぐらい。

 

 ……

 

 そ、それも僕が女装してたってバレなきゃ大丈夫だし。

 うん、大丈夫。

 何にも問題ない。

 

 僕は決してエッチなお姉さんでも変態でも無いのだ。

 

 ひとけのない場所で変身を解く。

 ただでさえ、魔法少女の正体が身バレするのはよろしくない。

 そして、それ以上に僕は男が変身しているとバレたくない。

 

 しかも、今さっきバレたちゃダメな理由が一個増えたし。

 せっかくこれから自分を変えようって言うのに、女装してる変態扱いで噂にでもなったら最悪である。

 変身の解除は極秘ミッションさながら、かなり神経を使う作業だった。

 

 魔法少女の姿のまま家に帰るという選択肢もなしだ。

 あの時は緊急だったからそのまま来たけど、知り合いに女装姿を見られる可能性は出来るだけ低くしたい。

 魔法少女として活動していく以上不可能だとわかってはいるけど、せめてもの抵抗である。

 

 変身を解くと、どっと疲れが来た。

 魔法少女に変身してる時はあまり感じなかったけど、やっぱり相当な負担がかかってたらしい。

 妹はこれを何年間もずっと続けてたんだもんな。

 

 まだまだ、かなわないなぁ……

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

『魔法少女の初仕事』ー完ー




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