お兄ちゃんは付いてる娘!?〜双子の妹に魔法少女を押し付けられた〜 作:哀上
『魔法少女という存在』⑨
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「よし、行こっか」
「……え? 行くって、何処に行くんですか?」
「隣町に」
「隣町、ですか?」
「まぁ、いいから着いて来て」
「は、はぁ……」
奴隷一号ちゃんの頭にハテナが浮かぶ。
なんの説明もしてないし、当然だ。
ただ、疑問はあっても文句は無いのか素直に着いてくる。
言えないだけかも知れないけど。
マスコットを殺した時点でどのみち行くつもりではあったのだ。
どうせ行くのなら、この娘がいる今の方が都合がいい。
戦力という意味ではあまり頼りに出来ないが、それでも魔法少女が2人いるというだけで相手には十分圧がかかるはず。
それに、あっち方向の意味でも……
いざとなったら頑張ってもらおう。
奴隷らしく、ね。
性別の都合上、この娘には出来て僕には不可能なこともある。
僕はどっちみちこのまま家には帰れない。
マスコットどもが何処まで情報共有しているのかは知らないが、僕の担当のマスコットと連絡が取れなくなったとなればその家のチェックぐらいはするだろう。
そんな場所に帰りたくはない、帰れるわけがない。
もう不意打ちされるのは御免だ。
魔法少女と戦うのも嫌だ。
次も勝てるとは限らないのだから。
この娘の場合、能力はともかく本体が足を引っ張っていたので魔法少女に変身してからは結構余裕を持って戦えた。
だが、能力を使うのになれたベテランの相手とか考えたくもない。
遠距離タイプなら近づくことすらできずに、近距離タイプならただ圧倒されて、それで終わりだ。
それに、一対一なんて状況用意してもらえるはずない。
遠距離タイプと近距離タイプが1人ずつ。
経験豊富な魔法少女が居なくても、僕なんてそれで簡単に詰む。
だから……、
「数日前だっけか、ニュースになってたの知ってる?」
「ニュースですか?」
「隣町で魔法少女が凶悪なヴィランに敗北、そのまま取り逃したとかなんとか」
「えっ、危なくないですか?」
「だから行くんだよ」
「……?」
別にこれ自体は珍しくもなんとも無い、よくある話だ。
毎回毎回、魔法少女が勝てる訳じゃない。
今回、魔法少女は負けこそしたが命に別状はなかったらしいし全然マシな部類だ。
じゃあ、なんで珍しくもない魔法少女敗北のニュースを覚えてたのかと言えば、ただ単に隣町と比較的家から近くで起こった出来事だったからだ。
一目見て、妹のことが頭を過った。
次このヴィランが暴れたら妹も戦いに行くことになるんじゃないか、それこそ次はこの街で暴れて妹が対応する羽目になるんじゃないかって。
怪我を負ったという魔法少女に妹の姿が重なった。
心配になった。
まぁ、結局その前に魔法少女って役割を僕に押し付けて辞めちゃった訳だけど。
だから、記憶に残っていた。
「あっ、ヴィラン退治ですね! うち、頑張ります!!」
「アホか。なんでそんな馬鹿げたことするんだよ」
「え?」
今更、ヴィラン退治なんて……
マスコット殺した時点で僕もヴィランみたいなものだ。
魔法少女という存在から外れたのだ。
それに、
「マスコットが信用ならない奴だったんだ、ヴィランにも話を聞いてみたいと思わないか?」
「でも、ヴィランは話が通じないって……」
「そもそも、その話を信用出来るのか? どうせマスコットに聞いた話でしょ」
「た、確かに」
なんと言うか、この娘は単純というか。
これじゃ他人を騙して魔法少女を押し付けるなんざ無理だわな。
僕としてはありがたい限りだが。
ヴィランに話を聞く。
敵の敵は味方ってやつ?
情報は多い方がいい。
まぁ、実際はそこまで単純じゃない。
ヴィランが暴れてること自体は事実だ。
被害者だっていくらでもいる。
ただ、マスコットも信用ならない奴だったってだけ。
魔法少女もヴィランも味方じゃ無いのだ。
どちらも信用ならないならせめて両方から話を聞かないと、ね。
「手土産は、まぁこれでいいか」
「ひっ、それ……」
「先輩と僕の仇、そうでしょ?」
「ひゃい!」
なんでこんな気が弱いんだ。
だから利用されたんだろうけど。
そもそも、魔法少女になった時点でヴィランと戦うのは確定なのに。
なんで魔法少女になんかなったんだか。
大方、自分を変えたかったとかそんなところだろうけど。
落ちこぼれ。
もしくは、いじめられっ子。
まぁ、興味はないかな。
僕も人のこと言えた義理じゃないし。
理由としては似たようなもんだ。
劣等感から自分を変えようとして、結果お互いロクなことになってない。
隣町で暴れたヴィラン、ニュースを見た限りでは男らしい。
マスコットの死骸。
手土産がこれで足りなかったら……
その時は、この娘には奴隷らしく一肌脱いで貰う事になるかもしれないな。
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『魔法少女という存在』ー完ー
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