お兄ちゃんは付いてる娘!?〜双子の妹に魔法少女を押し付けられた〜 作:哀上
『隣町』①
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先輩を引き連れ、隣町へ向かう。
日はさらに落ち、まばらな街頭ではおそらく視界もまともに確保出来ないだろうというレベルで道が暗闇に包まれていた。
まぁ、魔法少女に変身したままならそこまで問題にはならないが、普通なら懐中電灯必須だな。
そうでなくとも、変身を解除する気はない。
これからヴィランに会いに行くと言うのもあるし、マスコットを殺した以上その情報が伝わればいつ狙われてもおかしく無いのだ。
それに、今は従っているとはいえ一度敵対した相手の前で変身を解き無防備を晒す気にはなれない。
……このポンコツ先輩は早々に変身を解いたみたいだが。
どうせ勝てないからという割り切りなのか、戦闘が終わったからという理由で特に考えなく解いたのか。
僕は後者だと思う。
まぁ、どちらにしても今のところ抵抗する気が無いであろうと見て取れる事自体は僕にとって良いことではある。
夜風に吹かれ、戦闘の熱も冷めてきた。
汗が冷たく感じる。
運動という意味では大して動かなかったので汗をかくほどでは無かったが、変身前の先輩のレーザーは本当に命の危機だったから冷や汗をそれなりにかかされた。
こう一旦冷静になって考えてみれば、あのマスコットが特別に悪事を働いただけでマスコット全体がそうとは限らないという可能性もあるんだよな。
もちろん真っ白なんて事は無いだろうし、信用できないことに変わりはないんだけど。
今までの僕はちょっと盲目的過ぎたのかもしれない、情報なんていくらでも操作されるものだと知識では知っていても意識はしていなかった。
どちらにしても、一度ヴィランと話し合ってみたいとは思う。
そもそもヴィランとはなんなのか、魔法少女とはなんなのか、マスコットとはなんなのか……
その辺り、僕は無知が過ぎる。
突然現れ、超常の力で暴れ回り社会を破壊したヴィラン。
それに対抗するように現れた、同じく超常の力を使う魔法少女とマスコット。
まるで、勧善懲悪の物語のようだ。
手持ちのスマホで軽く調べてみれば、違和感を持っている人はそれなりにいたようだ。
それを僕が今まで知らなかったのは、普段目に入るようなテレビやらサイトのトップなどメジャーで扱われることが無かったからなのだろう。
マスコットの善悪は一旦置いておくとして、メディアはネットメディアに至るまでどっぷりって感じだな。
魔法少女とマスコット、そこが大きな影響力を持っているのは全くもっておかしな話では無い。
そもそも誰にでも想像の付く話だ。
僕もそうだろうと思っていたし、そこに気掛かりなことも無かった。
ただ、それが正義の味方では無いと考えると……
ただの少女をここまでの兵器に変えてしまえる力、その武力を背景にした政治やマスコミへの影響力。
とても恐ろしく思えた。
「あの、何か考え事ですか?」
「いや、なんでもない」
ネットだけじゃなくリアルの人間の意見を聞きたくはあるが、このポンコツ先輩に聞いても仕方ない。
僕も今まで大した疑問も抱かなかった脳内お花畑だが、この娘はそれ以上だ。
マスコットや魔法少女の裏を知っておいて、素直に辞められると思っていたぐらいだし。
僕にすげなく断られたせいか、非常に居心地悪そうにしている。
まぁ、気まずいだろうな。
殺そうとした相手だし、さっき殺されかけた相手だし。
会話でもして誤魔化したかったのだろう。
嫌な思い出でもあるのか。
キョロ充、いやキョロ充にすら失敗したのかな。
電話が鳴った。
僕のではなく、先輩のスマホである。
それを確認して、顔色を変えた。
何だろ?
死んだはずのマスコットからとか?
まぁ、無いと思うけど。
……
あぁ、嫌だ。
あり得ないと言い切れない辺りが本当に嫌だ。
「あの……、本当に今から隣町行くんですか?」
「なんだ、何か文句でもあるのか?」
「いや、文句っていうか……。もう夜遅いですし、一度帰ってからとか」
「無しだ」
「う、うち、そろそろ門限が」
親かよ。
余計な想像しちゃったじゃん。
紛らわしい事するな。
とは言ってもだ。
もうマスコット側にバレている可能性自体はあるのだ。
気を抜く訳にもいかない。
それにしても、門限って……
「どうでもいいだろ、そんなもの」
「でも、お母さんが」
「殺人未遂をしておいて、親に怒られるのは怖いのか」
「あ、いや。そういう訳じゃ……」
「随分とご機嫌な先輩だな」
先輩はそのまま無言になった。
随分とぶっ飛んだ奴だ。
やはり、善悪の基準が曖昧なのだろう。
一応決まりを破るのに抵抗はあるようだが。
校則違反を咎めるために違法行為を犯すような、そんな危うさを感じる。
まぁ、マスコットとの約束信じて殺人に手を出した人間だしな。
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