お兄ちゃんは付いてる娘!?〜双子の妹に魔法少女を押し付けられた〜 作:哀上
『ヴィランという存在』④
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力ずくでマスコットの死体を奪いに来たのか?
そんな物に興味はなく、ただ不意をつくためだけに会話に乗ったふりをしたのか?
……分からない。
が、それは最早どうでもいい。
そんなフェーズは遠に通り過ぎたのだ。
拳、それが答えだ。
しのごの言ってられる余裕はない。
先輩の犠牲はちょっと勿体無い気はするが、せめて最大限利用させてもらおう。
勿体無いからと損切りを躊躇えば僕ごと持っていかれる。
先輩を狙ったのは、僕より容易に殺せそうだと思ったからなのか、たまたまなのか……
どっちにしても、魔法少女を仕留めようって言うんだ。
いくらこのヴィランが強力とは言っても、その間は僕への攻撃は無いと見ていい。
と言うか、こっちに攻撃して来る分には対応できるし。
先輩を庇うのが無理なだけだ。
これが仲間とかいう関係性じゃなくて良かった。
でも、一緒に連れて来たのは正解だったな。
狙撃手として遠距離に置いてきていたら、気づかれた瞬間よーいどんのスピード勝負になって隙をつくどころでは無くなる。
先に先輩の元に辿り着かれたらその時点でアウト、タダで持っていかれる。
もちろん先輩が攻撃しなきゃほぼほぼ気づかれないだろうが、流石にこのヴィラン相手に一対一はやりたく無い。
弱い仲間は足手纏いだが、弱い奴隷は役に立つ。
たとえ一騎当千の力を持つ敵が相手だったとしても、数はやっぱり力なのだ。
さて、どう来る?
先輩はデコイだ。
釣られた瞬間、最大火力で吹き飛ばしてやる!
諸共、な。
先輩のことはまず間違いなく助けられないが、なに仇は取ってやるさ。
地獄で感謝しな。
……殺人未遂って地獄でいいんだよね?
これで無理だったら、何もかも全部諦めて逃げの一手か。
このヴィランのスピードはどんなもんなんだか。
流石に僕のブッパくらってノーダメって事はないだろうし、逃げるだけなら問題ないと信じたいが。
と言ってもタメは一瞬しか無理だろうし、先輩に放ったほどの威力は出ないだろうな……
そこが懸念点といえばそうだな。
メイスの機嫌を損ねないですみそうなのは利点だが。
今回の件、僕がちょっと甘かった。
この街を殺したと言う事実、それを軽視していた。
その結果がこれだ。
本来分かり合えない相手なんだ。
マスコットが味方じゃないと分かったからといって、別にヴィランの立ち位置が変わるわけじゃない。
高い勉強料払わされるハメになったな。
……
しかし、2撃目はなかった。
拳を突き出したままヴィランは動かない。
追撃してこない。
今なら先輩を連れて撤退できるが、……なぜ?
一瞬の思考の迷い、
空白、
戦闘中発生するはずのない完全な停止、
切り替わった魔法少女としての僕の五感があたりの情報を詳細に拾う。
周囲のサイレン、
先輩の心音、
衣服の擦れる音、
誰かの足音、
カサカサと何かが動く音、
そして……
咄嗟に距離を取る。
それとほぼ同時、もうその体を成していないドアが蹴破られた。
何のための間だ?
いや、それより!
失敗した。
先輩を回収し損なった。
余計な思考だった。
さっきの瞬間、動けていれば。
そうすれば。
……後悔しても今更、もう遅いな。
作戦に変更はなしだ。
ヴィランが先輩を仕留める、その一瞬を狙う。
だが、その一瞬は来ない。
ヴィランはドアを蹴破りこそしたが、それだけ。
それ以上は無かった。
僕らの前にヴィランが何をするでもなくただ姿を見せた。
出てきたのは大柄な男。
追撃を放って来るどころか、構えることもなく、何か能力を使うそぶりもない。
こいつが噂のヴィラン、魔法少女をこの街を殺した張本人……
「すまん、すまん。ちょっと手が滑った」
張り詰められた僕の意識。
それが拾ったのは、能力の予兆でもなく攻撃の起こりでもなく軽薄そうな声だった。
……え?
ヴィランは、軽い調子で僕らにそう話しかけてきた。
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