お兄ちゃんは付いてる娘!?〜双子の妹に魔法少女を押し付けられた〜   作:哀上

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『ヴィランという存在』⑤

『ヴィランという存在』⑤

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 何が、手が滑っただ。

 抜け抜けと良くそんな言葉を吐けたものだ。

 

 どう考えてもそんなレベルじゃ無かった。

 あの拳には明確な殺意が有った。

 僕の意識を釘付けにし、撤退という選択肢を消させる程度には強力な物がこもっていた。

 

 だが、まぁいいや。

 仮に、そこを問い詰めてヴィランに何か認めさせたとしてだ。

 それが何になるんだって話だし。

 

 とりあえず、僕と戦う気は無いと見ていいのかな?

 

「……手を滑らせて拳が飛んでくるなんて、随分と手癖の悪い奴だな」

 

「何たってヴィランだからな」

 

 そう言われると、な。

 確かに、ヴィランなんてこんなもんかって気もする。

 むしろイメージ通りだ。

 

 魔法少女とマスコットがイメージとかけ離れていたせいで余計にそう思う。

 

「大体、お前もそれぐらい理解してここに来てんだろ? なぁ、魔法少女」

 

 ニヤリと笑みを浮かべるヴィラン。

 

 痛い所突かれたな。

 ヴィランの言葉、全くもってその通りだと今さっき痛感した所だ。

 僕の考えが甘かっただけ。

 

 手土産を持って来たからといって、それでハイオッケーとはならないって訳だ。

 拳一発で済んでラッキーだった。

 今こうやって会話できてること、それ自体が幸運だと理解するべきだ。

 

 ま、結局戦闘にならなかった以上、僕の思考がそれほど的外れだったわけでは無いと主張したいが。

 それで行動の甘さに繋がってたら訳ないわな。

 結果は比較的望み通りのものを手に入れたが過程をミスったと、そんなとこだな。

 

 魔法少女になって強力な力を手に入れた全能感故かな?

 本来僕はこんなキャラじゃ無かったんだが……

 慎重派で線の細い人間、こうやって自分の思考そのままに行動してやらかすのは決まって妹だった。

 

 ……隣にポンコツ先輩がいるせいもあるのかもな。

 妹の横に僕がいたように。

 自分が誰かより優れてると確信すると、人間積極的に行動するようになるものらしい。

 

 魔法少女になった時変化を望んだものだが、どうやらその望み通りちょっとずつ変わり始めてるらしい。

 注意しないとな。

 僕は、変化した自分にまだ慣れていない。

 

「俺と、話をしに来たんだろ? こんなちょっとした事で怪我してる様じゃ、お話し中にポックリいっちまうかもしれないからな」

 

「……弱い相手とは話す気にすらなれないと」

 

「そうはいってねぇさ。ただ、会話ってのは対等な相手とするもんだからな」

 

 このヴィラン、結局は何を言いたい?

 

「それは、同じ事じゃないのか?」

 

「違うね。この星の人間だって家畜の命を奪うのに交渉なんてしないだろ? 収穫される農作物に拒否権なんてないだろ? そう言う事さ」

 

「お前らヴィランにとって人間はそんな物だと?」

 

「生憎、俺はまだ判断しかねていてね。お前はどう思う?」

 

「……」

 

「どうした、急に怖くなったか? 尻尾巻いて逃げ出すかい?」

 

 それがヴィランって存在の思考回路なのかは不明だ。

 だが、こいつを納得させるには必要って事だ。

 

 さっきの攻撃、魔力の前兆である空間の歪みを感じなかった。

 ガチというわけでもなさそうなのにあの火力。

 直接見てその覇気をより強く感じる、僕が昼倒したヴィランより余程格上な存在だ。

 

 敵としては勘弁願いたい相手だが、情報源としては大当たりな相手だ。

 ここで逃げ出すのはないな。

 というか、逃げる様なタイプ嫌いだろ。

 

 どんな能力持ってるかも不明だが、背中見せた瞬間ズドンだ。

 そんな予感がする。

 

「……言ったろ、話をしに来たと」

 

「ほぉ、逃げる気はないと」

 

「当然だ。それで、今からさっきの続きでも始めようってのか?」

 

「随分と肝の据わったお嬢さんだ」

 

「ありがとう。……それで?」

 

「興味もない相手に、俺がこんな長々と話すわけないだろ?」

 

「へぇ、案外あっさり合格出るんだね」

 

「俺の拳を止めた時点でそのつもりだったさ。そうでも無ければ、あのまま……な?」

 

 理性的とはとても言えないが、話をしてくれるつもりはあるようだ。

 戦闘にならなくて良かった。

 どう考えても勝ち目の薄い戦いだ。

 

 ヴィランに促され部屋に足を踏み入れる。

 

 先輩はさっきの不意打ちが効いたのか、心ここにあらずと言った状態だ。

 仕方ない。

 腕を引っ張り引きずって行く。

 

 外見通り豪華な内装だ。

 趣味がいいと言うべきなのか、悪いと言うべきなのか。

 血の匂いがするし、コイツの持ち物ってわけではなさそうだけど。

 

 家畜、か……

 人間とヴィランの力の差はそれ以上、全くの無抵抗と言っても差し支えないレベルだろうな。

 肉食を忌避する人にすら食料として喰われる植物、そんな所か。

 

 魔法少女の正道から外れた僕に出来る事は無い。

 さっきの話を聞いたせいか、人間に対する仲間意識すら何処か曖昧だ。

 魔法少女という力は家畜以下の存在を人に押し上げる。

 

 今更、ヴィランが人間を1人殺したからと言ってだ。

 僕がどうこうしようなんて気は起きない。

 まぁ、ここの住人はあの世で運が悪かったと嘆く事だな。

 

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