お兄ちゃんは付いてる娘!?〜双子の妹に魔法少女を押し付けられた〜 作:哀上
『ヴィランという存在』⑦
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「いや、そうは言ってねぇさ。ただ……」
「え?」
ただ?
なんか不穏な空気がヴィランから漂う。
僕なんかやらかした?
とりあえず、マスコットの死体は価値としては十分っぽい。
そこは良かった。
これでなんの価値もないただの死体とかだったらねぇ。
失礼もいいところだ。
手土産だって言ってゴミ押し付けてくるとか。
しかも、死体って生ゴミだし。
マスコットを裏切ったこと、それ自体を手土産みたいなものって言い回しも……
敵対してると言ってもヴィランは組織だって無さそうだし。
相手の都合を考えない身勝手さ、逆に手ぶらより神経を逆撫でするまである。
手土産は良かったんだ。
手土産は。
でも、何かが気にさわったらしい。
はて?
「交渉材料を呑気に俺の前にぶら下げて……、今すぐ力ずくで奪いとってやってもいいんだぞ?」
あ、なるほど。
そう言うことか。
「……こんな目立つ場所で僕とやる気かい?」
「俺に勝てると?」
「絶対に勝てないとは言いたく無いけど、勝てると断言するほど僕は自信過剰ではないかな。そもそも勝つ必要なんて無いしね」
「ほう、勝つ必要が無いと来たか」
そう勝つ必要なんてどこにもない。
真面目に戦う必要すらない。
このフィールドは僕にとっての不都合も多いが、それは同時にヴィランにとっての不都合でもある。
「横で寝てるポンコツとは違って、少なくとも僕はこう一瞬でやられるつもりはない」
「だろうな。だが、それだけだ。有利なのは……」
「あなたがここで暴れた事自体は周りの街の魔法少女にももう伝わっているし、今は様子見をしてるだけ。きっかけがあればいつ動いてもおかしくはない」
「なるほど、それはそうだ」
「そんな中、派手に暴れて……。あなたなら複数の魔法少女に囲まれても逃げられはするだろうけど、僕を相手してる余裕はなくなる。違う?」
「確かに道理だ。なら、まぁ……」
僕はそうやって適当な理屈を並べ立てた。
穴だらけだ。
とてもこの策を実行しようとは思えない。
まず、周りの魔法少女が動き始めるまで耐えられる可能性が低い。
と言うか、周りの魔法少女はどっちかといえば動かない可能性の方が高い。
下作もいいとこだ。
でも、これでいいのだ。
そもそも、このヴィランに僕と戦う気なんかさらさら無いのだ。
部屋の前のやり取りの続き。
だから方法なんてどうでもいい。
その証拠に何もない。
ただの言葉だけの脅し。
殺気も、凄みも。
一度合格を出してみたものの、僕が考えなしに見えたらかそう言ってみただけ。
そんな所だと思う。
あと、横で倒れてる先輩のせいだ。
それに、魔法少女が来て困るのはどっちかといえば僕だし。
死体を持ってきてる時点で向こうも分かってる。
だからこの理論ははなっから完全に破綻してるのだ。
でも、こう言ったことが大事なんだ。
共通認識。
どっちが上か認識してるか。
それが必要だ。
僕がこれを対抗策として出した時点で、無茶を言う気はありませんよって言ってるようなものだ。
そもそもそんなことする必要もないしな。
マスコットと敵対してるなら、僕が聞きたいことはヴィランにとってそこま重要ではない可能性が高いし。
「コレにその程度の価値しかないっていうなら、それまでだけどね。でも、僕の見立てだとこのマスコット結構レアなんじゃない?」
「だな。お前がどうやって仕留めたのか、俺としてはとても興味がある」
「企業秘密ってやつ? ただ、あなたがそういうって事はヴィランへの防御に対して魔法少女への防御は結構甘いみたいだね」
「食えねぇ奴だ」
魔法への防御は完璧なのだろう。
僕の投擲で死んだ以上、その分物理的な装甲を削ってる可能性が高い。
そんなところか?
だから、魔法少女に拳銃やらを使わせないのか?
ヴィランは単純に自前の能力の方が強力だし、後はそれにプライドも持っているのだろう。
なら、余計なものに頼らない理由にもなるか。
拳銃じゃ仕留め切れないだろうが、エネルギーがデカくなればそうもいってられないしな。
ヴィランに兵器があまり通用しないのを見ると、これはよほど特殊な作りをしているらしい。
この生き物……、対ヴィラン対魔法少女に随分と重きを置いているが、どんな進化をしたらこうなるのやら。
「で、どう? 魔法少女のこと、ヴィランのこと、そしてマスコットのこと、僕に教えてくれる気になった?」
「……好きに聞いてくれ、知ってる限り話してやる」
「へぇ、これまたあっさり」
「ま、どうしても隠したいってほどでもないしな」
「と言うと?」
「必死に隠蔽してるのはそこのマスコットどもの方。俺らヴィランも積極的に広めこそしないが、秘匿するまでの必要性は感じてない」
やっぱり、ね。
ヴィランに会いに来たのは正解だったって事だ。
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