お兄ちゃんは付いてる娘!?〜双子の妹に魔法少女を押し付けられた〜   作:哀上

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『ヴィランという存在』⑨

『ヴィランという存在』⑨

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「なんて側迷惑な……」

 

 話を聞いた僕の感想としては、これに限る。

 先進国が植民地にやっていたのと同じこと、その対象が宇宙人と地球にスケールアップされただけではあるのだが。

 人間の歴史を考えると、このまま植民地状態じゃあまり良い未来は見えそうにない。

 

 それにしても、宇宙人といっても人間と似たような思考回路してるんだな。

 資源で揉めるとか……

 似なくて良いところばかり似通っていて、知的生命体はどこも一緒か。

 

 流石にDNAまで似通ってるって事はないだろうけど。

 魔法なんて超常の力があるぐらいだし。

 いや、魔法少女も魔法は使えるけど、それはあくまで後付けで奴らは天然っぽいし。

 

 収斂進化ってやつ?

 カマキリと水カマキリ、それらは全く違う生き物でありながら似た様な姿形をしている。

 知能がある程度以上あると、人型が便利なのだろうか?

 

 ともかく、このままじゃ良い未来が見えないってなら、どうにか切り開かなきゃならないわけで。

 いや、元々話を聞いただけで好転するなんて思ってもいなかったけど。

 ただ、現状に対して僕だけでできることって言うのが想像以上に少なそうだ。

 

 弱者が強者の争いに巻き込まれたなら、どちらかの強者に付かなければ未来はない。

 チトーの様なチート主人公なら話は別だけど。

 僕にそれは不可能だし、そんな綱渡りはやりたいとも思わない。

 

 今、人間ってだけでマスコット側についてる状態だ。

 地球が支配下に置かれ、資源を搾り取られている。

 そこに未来がないと思うのであれば、その敵対勢力側に付くしかないか。

 

 勢力的にはどう考えてもマスコット側が優勢。

 とはいえそれは地球の中での話。

 魔法少女なんて現地民を利用した兵隊を使ってる以上、異星人の中ではどれだけ勢力が強力でも圧倒的なんてことはあり得ない。

 

 このヴィラン、僕が今まで見てきた中ではかなりの強者だ。

 僕が自分でやるよりはマシ。

 想像より話も通じる相手だし……

 

 うん、悪くはないかな。

 

「これで満足か?」

 

「随分と知見が広がったよ。今の話で僕の常識の殆どを覆された」

 

「そうか」

 

 常識は偏見のコレクションでしかないなんて言葉もあるが、僕のコレクションは粉々に破壊された。

 そもそも、異星人の存在すら信じていなかったところにこれだし。

 途中、ヴィランの話が自分の理解の範疇を超えすぎていて完全に宇宙猫と化していた。

 

 ただ、そのまま真実を知れて良かったと行けないのが現実。

 

「で、僕としてはその先の話をしたいんだけど……」

 

「先?」

 

「分かるでしょ? このままだと人間がどうなるかぐらい」

 

「……」

 

 ヴィランが僕の言葉に黙り込み、視線が中を彷徨う。

 

 後ろめたいのか?

 今更?

 これまで、何人も殺してきたんだろ?

 

 さっきだって……

 

 いや、ただ敵を殺すのと会話した後相手を人間と理解した上でってのは話も変わるか。

 僕が異星人を人間っぽいと思ったってことは、ヴィランも僕に対して同じような感情を抱いたのかも知れない。

 兵士が捕虜に同情してどうたらなんて話、いくらでもあるしな。

 

 ……ますます、都合がいい。

 

「足りない?」

 

「正直に言えば、な」

 

「そっか……。そう、だよね」

 

「だが、ここで断ってマスコットの死体サンプルを手に入れる機会を不意にするのもどうかと……」

 

「随分率直な言い方するんだね」

 

「お前相手ならそうした方がいいかと思って」

 

「そう? まぁ、このまま交渉するのはフェアじゃなかったね」

 

 マスコットを机の上に乗せる。

 

 食べ物も置いてあるのに、衛生的にどうかと思うが。

 まぁ、死体片手に食べてたので今更だ。

 

「渡していいのか?」

 

「もちろん、初めからそういう約束だったしね」

 

 話を聞かせてもらうって、そういう取り決めだった。

 十分話してもらったし。

 これ以上、マスコットをぶら下げて相手から引き出そうとするのは下作だろ。

 

 僕としては、このヴィランとはある程度長い付き合いにしたい。

 信頼される必要はないが、信用は大事だ。

 

「改めて聞く、どれぐらい足りない?」

 

 ヴィランの目をまっすぐ見つめる。

 

 目が泳ぎ、

 視線が下がり、

 少し悩み、

 

 躊躇いがちに口を開く。

 

「……そこの女、それで勘弁してやっても」

 

「よし、成立だね!」

 

 僕は戸惑うヴィランの手を取り、大袈裟に振ってやる。

 

 自分で言い出しておいて、了承されて戸惑うなよ。

 まぁ、断る建前みたいなもんだったのかもしれんのけど。

 僕にとって都合のいいものを選んでくれた。

 

 それに、このヴィラン案外押しに弱いらしい。

 

「おい、仲間じゃなかったのか?」

 

「写真見せたでしょ、コレ」

 

「あ、あぁ」

 

「これが手土産だって」

 

 スマホを取り出し、写真を表示させる。

 初めにヴィランに見せた写真だ。

 笑顔の魔法少女とマスコットの死体のツーショット。

 

「初めっからそのつもりかよ」

 

「まぁね」

 

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『ヴィランという存在』ー完ー




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