お兄ちゃんは付いてる娘!?〜双子の妹に魔法少女を押し付けられた〜 作:哀上
『先輩、生贄になる』④
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隣の部屋、か。
僕本当に隣で一晩過ごすのか……、いや他に選択肢もないし仕方ないんだけどね。
ただ、絶対先輩とヴィランの声聞こえてくるよなぁって。
本当なら帰ってしまいたい所だが、マスコットどもに情報が割れてる可能性がある以上家に近づく選択肢はまずない。
先輩に話したことは建前でもなんでもないのだ。
僕にはあまり長い時間は残されていない、と思う。
僕自体魔法少女になったばかりだし、まだ情報を共有されてないかもしれない。
だが、殺しという明確な行動を起こしてしまった以上、いずれにしろバレることだ。
そもそも、僕の情報がいってなくても妹は前から魔法少女だったのだ。
担当は同じマスコット。
ただ普通に行動を追われるだけで順当に家に辿り着き、そこに妹とは別の魔法少女がいたら状況証拠だけでボンッとされかねない。
と言うか、別にホテルとかでも安心は出来ないしな。
1人でいること、それ自体がリスクなのだ。
魔法少女なんて何処にでも居る。
そこと明確に敵対してしまった以上、自分を殺そうとして来た先輩と多少は話が通じそうってだけのヴィランがいるこのマンションに居る今が一番マシって言う……
ずっと起きておくわけにもいかない。
疲労は溜まっている。
ひと眠りして今後に備えて疲れは取っておきたいんだけどな。
……信用、か。
そもそも、僕がヴィランのことも先輩のことも信用しきれていないのがな。
大して重要でもないのに、その情報すらなかなか話す気になれない。
主にマスコットのせいである。
魔法少女への純粋な想い共々、僕の常識は木っ端微塵にされてしまったのだから。
昨日までの僕と価値基準が反転したまである。
信用出来ないと上手く行くものも行かなくなる。
分かってはいるのだが。
そして、これは完全に僕個人の問題。
さて、どうしたものか……
「あ、そうだ。言い忘れてた事があった」
「なんだ?」
「この娘一応貸すだけだから、壊さないでよね」
「そんなことしないわ!」
「どうだかね」
先輩弱っちいけど、魔法少女ってだけで戦力だ。
1人よりは2人の方が抑止力もあるだろうし。
壊されてしまうととっても困るし、先の話をするのにもやりにくくなる。
と言うか、だ。
こんな言葉が出てくる時点で。信用出来てないんだよなぁ。
はぁ。
「俺にどんなイメージ持ってやがる!」
「あなたにって言うか……。ほら、男は野獣って言うし? 話を聞くに、ヴィランも人間も欲の部分はあまり変わらなそうだから」
「野獣ね。俺が理性なき獣だって言うんなら、お前ごとまとめて犯してやってもいいんだぞ?」
「きゃー、怖い」
「ちっ」
悪い人ではない。
いや、ヴィラン相手に悪い人では無いって言い方は適切では無いか。
そもそも、このヴィランだって殺人はしてるし、街の惨状もこいつのせいではある。
ただ、僕にとって都合がいい相手であるのは確か。
都合のいい人。
つまり、良い人である。
本当は信用できる相手なんだ。
そして、信用しないといけない相手でもある。
「弱っちいけど、魔法少女ってだけで結構便利なんだから」
「仲間じゃないなんて言っておいて、結局は大切ってわけだ」
「ま、否定はしない」
それは先輩の方もそうだ。
僕を殺そうとした相手、しかしそれはもう過去の話でもある。
便利に使うためには信用しないといけない。
常に目を離せない道具とか、使い勝手が悪すぎる。
裏切る気配なんてないのだ。
と言うか、僕と同じで先輩も崖っぷち裏切ったところで行く場所なんてない。
男が簡単に見つかったのも先輩の能力だ。
戦闘力の割に能力が便利。
便利な能力だから育たなかったのか、便利だからこの戦闘力で生き残れてきたのか。
それを単独で運用する必要がある。
……
うーむ、如何ともし難いな。
どうせ眠れないし、今日はゆっくり考えるとするか。
「じゃ、頼んだよ」
「へ?」
隣の部屋に引っ込む前に、先輩の肩を叩き挨拶だけしていこうと思ったら反応が返ってきた。
マジか。
どうやら、ようやく再起動したらしい。
辺りを見回し頭にハテナを浮かべている。
ヴィランの拳、本人的には命の危機だったんだろうがそれにしたってよくこんなに長時間気絶していられたものだ。
これだから、ポンコツ先輩はポンコツなのだ。
どうせなら全部終わるまで再起動しないほうが幸せだった気がするが……
ま、頑張って。
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