なんか妹の距離が近い気がする。   作:シマイノ=ユリスキー

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30. 耳を甘噛みされる姉

~姉視点~

 

 今日の講義が終わり、帰宅した今は自室でくつろいでいる。

 

 最近、全然講義に集中できない。なんだかぼ~っとしてることが多い気がする。ちーちゃんや萌ちゃんにまで心配されちゃった。

 

 それもこれも、美優があんなこと言うからだ。

 

「次は口…。」

 

 そっと唇に指を当てる。心臓がドキドキして、なんだかむずむずする。

 

 その時、扉をノックする音が聞こえてきた。思わず飛び跳ねてしまう。

 

「お姉さま、今大丈夫ですか?」

 

「う、うん大丈夫。今いくね。」

 

 扉の前で深呼吸をする。大丈夫、私はお姉ちゃん。ただ妹が尋ねてきただけだ。何もおかしくはない。

 

「ふぅ…。どうしたの美優?」

 

 おそるおそる扉を開けると、片手に袋を持った美優が立っていた。

 

「お姉さま、この間買ったピアスのために、ピアスホールを開けませんか?」

 

「あ~、そうだね。うんいいよ、やろっか。」

 

 そのままリビングに向かおうとするが、美優に止められてしまう。

 

「リビングではなくて、お姉さまの部屋でも良いですか?」

 

「えっ?ん~、別にいいけど、面白いものなんてないよ?」

 

 人を招くのは問題ないが、特に何かあるわけでもない。強いて言えば、いくつかのぬいぐるみがあるだけだ。

 

 ……待って、大学生にもなってぬいぐるみって、もしかして恥ずかしい事だったりする?えっ、どうなんだ??

 

「大丈夫です。ピアスホールを開けるだけですし。」

 

「…まぁそれならいっか。じゃあ入って。」

 

 悩んだけど、美優だし別にいっか。人に言いふらすようなタイプでもないだろう。

 

「おじゃまします。」

 

 中に入った美優がぬいぐるみを気に留めた様子は特にない。よかった。普通のことだったのかもしれない。

 

「座るところは床かベッドになるんだけど、どっちがいい?」

 

「では、ベッドに座らせてもらいますね。お姉さまも床ではなく、お隣りへどうぞ。」

 

「あ~、じゃあ隣失礼するね。」

 

 私が少し離れて座ると、美優が距離を詰めてきた。肩がくっつく。良い匂いもする。もうお風呂入ったのかな?……じゃねーや。

 

 離れて座った意味無くない??どうして詰めてきちゃうの??

 

「…近くない?」

 

「そうですか?でもこの方がピアッサーの説明が見やすいですよ?」

 

「まぁ確かに。じゃあいっか。」

 

 ちょっと恥ずかしいのを我慢すればいいだけだ。

 

「…それで、どうすればいいの?」

 

「ふむ、どうやらこのピアッサーで穴を開けると同時に、ファーストピアスというのをつけるみたいです。そのため、好きなピアスがつけられるのは数週間後になるとのことです。」

 

「へぇ~、そうだったんだ。じゃあ、買ったピアスがつけられるのはまた今度かぁ。」

 

 穴を開けたらすぐに好きなピアスがつけられると思ってただけにびっくり。

 

「そうなりますね。残念ですが、仕方ないです。では、どちらから開けますか?」

 

「うっ…。特に深い理由はないんだけど、美優からでいいよ。ほら、私ってお姉ちゃんじゃん?だから、お姉ちゃんとして先にやってあげようかなって。」

 

 別に怖い訳じゃない。嘘じゃない。私正直者だもん。

 

「ふふっ、分かりました。では私から開けますね。まずペンで位置に印をつけて…、―――こうすると完成です。大丈夫ですか?」

 

「おっけ~、お姉ちゃんに任せて。」

 

 マーキングと消毒を済ませてからピアッサーを持ち、美優の耳に添える。

 

「じゃあやるよ。」

 

「お願いします。………んっ。」

 

 ピアッサーを離すと、しっかりとファーストピアスがついていた。

 

「ふぅ、ちゃんとついたよ。はい手鏡。痛くない?」

 

「ありがとうございます。ちょっと痛かったですが、全然大丈夫です。…次はお姉さまですね。」

 

「うっ…そうだよね。……ふぅ。うん、じゃあお願い。」

 

 美優にピアッサーを渡す。目をぎゅっとつむり、膝の上で両手を握る。唾を飲み込み、自分に暗示をかける。大丈夫だ。痛いのは一瞬だ。怖くない怖くない。

 

 耳に気配が近づいてくるのを感じる。

 

 

 

「………はむ。」

 

 耳に当たった生暖かい感触に思わず飛び上がる。

 

「ひゃぁ!!!!!!ちょっ!!なにするの!!!!」

 

 ほんとになにするの!!めっちゃびっくりしたじゃん!!!!

 

 涙目で美優に訴える。まさか耳を甘噛みされるなんて思ってもみなかった。

 

「ふふっ、すみません。そこに可愛らしいお耳があったものでつい。でも緊張はほぐれたんじゃないですか?」

 

「た、確かにそうだけども!!!ん~~~!!もう!!もう!!!次はちゃんとやってよ!!」

 

 今の私はおこだぞ!!ぷんぷん!!

 

「ふふっ、もちろんです。ほら、お隣に座ってください。」

 

「まったく…。…じゃあお願い。」

 

「はい。リラックスしてください。」

 

「ふぅ………んっ。」

 

 今度はちゃんとやってくれた。…思ったより痛くなかったな。

 

「しっかりつけられましたよ。大丈夫ですか?」

 

 手鏡をこちらに渡しながら心配そうな表情で聞いてくる。

 

「うん、大丈夫。思ったより痛くなかった。つけてくれてありがとね。」

 

 渡された手鏡で見てみると、耳にファーストピアスがついているのが分かった。

 

「お互いちゃんとつけられましたね。あとはつけっぱなしにするだけで大丈夫だと思います。………お姉さまの初めて、貰っちゃいましたね。」

 

「どうしてそんな言い方するの???」

 

 今朝のような蠱惑的な笑みを浮かべている美優。

 

 その言い方はなんというか…すごくえっちじゃん…。ダメでしょ。

 

「ふふっ、では自分の部屋に戻りますね。」

 

「う、うん、じゃあね。」

 

 部屋に戻る美優を見送る。

 

「…ふぅ。」

 

 まさか人生で耳を甘噛みされる日が来るなんて想像すらしてなかった。心臓がドキドキしてる。なんだか最近はずっとドキドキしてる気がする。

 

 

 

 …えっ、まさか動悸じゃないよね?私まだそんな年じゃないよね?大丈夫だよね???

 

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