なんか妹の距離が近い気がする。   作:シマイノ=ユリスキー

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31. 髪をとかしてもらう姉

~姉視点~

 

 六月も中盤に差し掛かり、雨の日が続いている。これだけ雨が降っていると、外に出る気力が湧かない。うねりにうねった髪を直すのも面倒くさい。今日は講義がないし、もうこのままでもいっか。外に出る予定もないし。見られるのも家族だけだしね。それにしても、あと一か月くらいで春学期も終わりかぁ。

 

 朝の支度を済ませ、リビングでぐだぐだする。平日にだらだらするの背徳感あってめっちゃすき。

 

「あらお姉さま、こちらにいらしたのですね。おはようございます。今日は早起きですね。」

 

 ソファに座ってテレビを見ていると美優が入ってきた。月初めの頃は美優が近づくだけで終始ドキドキしっぱなしだったが、最近は少しずつ落ち着いてきた。ふとした拍子にドキドキすることはあるけどね。

 

 ちなみに病院に行ったら至って健康だと言われた。動悸じゃなくて本当に良かった。診察の時、状況を説明してからお医者さんと看護師さんの目線が温かくなったのはなんでだろう…?

 

「おはよう。ってあれ?まじ?私今日早起きしちゃったの??」

 

 そういえば今日はまだ時計を目にしてなかった。珍しく早起きしちゃったのかな?

 

 時計を見る。11時半だった。

 

「いやもう11時半なんだが??めっちゃ遅いが???」

 

 期待して損した。全然遅起きじゃん。

 

「ふふっ、いつも休日はお昼すぎまで寝てるじゃないですか。それに比べたら全然早起きだと思いますよ?」

 

「いやまぁそうだけどさぁ…。なんだかなぁ…。」

 

 てか妹に11時半起きで早起きだと褒められる姉って情けなさすぎない??大丈夫?姉と妹の立場が逆になってない?外から見て、私がお姉ちゃんだって分かる???

 

「時にお姉さま、髪型が凄いことになっていますよ?まるでメデューサみたいです。」

 

「あ~…直すのがどうも面倒くさくてね。『全自動髪型ナオース』でもあれば良いのにね。美優えもん持ってない?」

 

 やばっ、変な無茶振りしちゃった。

 

「残念ながら未来デパートでは売り切れでした。その代わり、『妹が髪トカース』を買いました。こちらは妹がお風呂上がりにブラッシングをしてくれるそうですよ?」

 

「おお~、いいもん売ってたじゃん。じゃあそれでお願い。シャワー浴びてくるね。」

 

「ふふっ、分かりました。お待ちしております。」

 

「は~い、また後でね。」

 

 大分無茶振りしたのにまさかノってきてくれるとは。しかも、その流れで美優が髪をとかしてくれることになった。ラッキー。

 

 

 

 お風呂から上がり、髪を乾かした後に美優にブラッシングしてもらう。

 

「力加減はどうですか?」

 

 絶妙な力加減で髪をとかされる。人に髪をブラッシングしてもらうの初めてだけど、なんだかゾクゾクして気持ちいい。

 

「ん~、いい感じ~。あ~。」

 

「ふふっ、なんだかお年寄りみたいになってますよ。」

 

「なんだとぉ。私はまだぴちぴちだぞぉ。若いんだぞぉ。」

 

 私は花も恥じらう現役女子大生だ。まだ20歳いってないんだぞ。

 

「おっと、そうでしたね。ふふっ、ごめんなさい。」

 

「おこだぞ~。ぷんぷん。…はぁ、人にやってもらうのって楽だし気持ちいいね。毎日やってもらいたいくらい。」

 

 面倒くさがり屋な私は、髪をブラッシングするのでさえ面倒くさい。人に見られないってなったら絶対にやらないだろう。今日は見られてもやらない気でいたが…。

 

「それなら私が毎日やりましょうか?」

 

「…ん~、すっっっごく魅力的な提案だけど美優が大変だし、私が面倒くさがりってだけだから別にいいよ。美優が疲れちゃうでしょ?」

 

「お姉さまの髪をとかすくらい全然大変ではないですよ?それに、実は私がやりたいって気持ちが強いんです。それでもダメですか?」

 

「………え~じゃあいい?」

 

「もちろんです。日々の楽しみが一つ増えました。」

 

「わ~いありがと~。」

 

 まぁ美優がどうしてもって言うならやってもらうしかないじゃん?ほら、妹の言うことを聞くのがお姉ちゃんってもんじゃん?

 

 …えっ?私が面倒くさがってるだけって?うるさい。

 

「それにしても、お姉さまの髪は綺麗ですね。」

 

 美優が私の髪を手で掬う。

 

「そう?でも美優の方がサラサラじゃん。…ほら、指を通しても引っかからない。美優の方が綺麗な髪だと思うけどなぁ。」

 

 横に立つ美優の髪に指を通して見るが、全然引っかからない。凄いなこれ。

 

「ちなみにどんなケアしてるの?」

 

「そうですね、私は―――というようなケアをしていますね。」

 

「へ~、私とあんまり変わらないのに、こんなにサラサラしてるんだ。羨ましいねぇ。」

 

 これだけサラサラしていると、指を通しているだけで楽しくなる。本当に羨ましい。

 

「そのような髪質というのもあるかもしれません。でも私はお姉さまの髪の方が好きですよ?」

 

「ふ~ん、私は美優の髪の方が好きだけどなぁ。隣の芝生はなんとやらってやつかな。…まぁ美優が好きって言ってくれるなら別にいっか。」

 

 美優が好きって言ってくれるし、別にこの髪のままでいいや。髪質なんて変えようと思って変えられるものでもないしね。

 

「………私もお姉さまが好きだと言ってくれるこの髪のままで良いです。ふふっ。」

 

 美優は何故か心底嬉しそうに微笑んでいる。

 

 美優が髪をとかすのを再開した。なんだか楽しそうに櫛を通している。鼻歌まで聞こえてきた。これは無意識なんだろうか。

 

 

 

 そんな美優を鏡越しに見つめながら、私ものんびりとした時間を過ごした。

 

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