なんか妹の距離が近い気がする。   作:シマイノ=ユリスキー

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54. キレた姉

〜姉視点〜

 

 私は今、キレていた。

 

「お前ら、私の可愛い妹に向かって何してるんだ?」

 

 三人のゴミどもと、私の大切な存在が一斉にこちらを見る。私はゆっくりと距離を詰めていく。

 

「なぁ、何してるんだよ。私に教えてくれよ。」

 

 美優は両手を強く握りしめ、涙がこぼれ落ちる一歩手前だった。私は美優の様子を目に収めると、更に怒りの感情が湧き出てきた。

 

「…っ!べ、別にお前には関係ないでしょ!」

 

「そ、そーよ!そもそも誰よあんた!」

 

「私はその子のお姉ちゃんだよ。なぁ、ゴミども。よくも私の大切な存在をコケにしてくれたな。」

 

 私はお前らを絶対に許さない。

 

「美優、こっちおいで。そっちにいると、そいつらからゴミの臭いが移っちゃうよ。」

 

「…はいっ。」

 

「あっ、ちょ。」

 

 美優がたじろいでいるゴミどもの間をすり抜け、こちらに来ようとする。それを止めようとしたのか、女がとっさに手を伸ばす。…だが。

 

「おい何触ろうとしてるんだ。その薄汚い手で触ろうとするんじゃねぇよ。汚れが移るだろうが。」

 

「いたっ!は、離しなさいよ!」

 

 私はその腕を強く掴み、美優に触れないようにする。かなり力を入れたためか、相手は痛がってる。痕が残るかもしれないし、後で何か請求されるかもしれない。まぁ美優の為だし別に構わないか。

 

 無事に美優がこちらに来ることができた。

 

「ああ、手が汚れた。後で洗わなきゃ。…さて、ごめんね美優、お姉ちゃん遅くなっちゃった。」

 

「いいえ、お姉さま大丈夫です。グスッ…来てくださって、本当にありがとうございます。」

 

 こちらに来た美優は気が緩んだのか、ポロポロと涙をこぼし始めた。

 

「あ~あ~、泣いちゃって。せっかく綺麗にメイクしてたのに。」

 

 私はハンカチを取り出し、美優の目元に当てる。

 

「痛いじゃない!!許さないわ!!ケーサツに訴えてやる!!それにお前、さっきから人のことをゴミ呼ばわりして何なの!?人のことをよくそんな風に言えるわね!!下品だわ!!」

 

 美優にハンカチを持たせ、うるさいゴミに体を向ける。

 

「はぁ…、さっきまで美優にあんなひどい事言ってたのに、よくそんなことが言えるな。そもそも大衆の面前であんなこと口走るなんて恥を知れよ。あっ、あれか。頭が悪すぎてそれすら分からないのか。それは悪かった。」

 

「んなっ!?」

 

「ちょ、ちょっと何その言いぐさは!?」

 

「事実を言っただけなのにキーキーうるせぇな。まるで猿山にいるみたいだ。あ~いや、これだと猿に失礼か。」

 

 二人の女はたったこれだけで顔を赤くして怒っているようだった。器ちっさ。

 

「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくれキミ。元はと言えば、その女が俺をたぶらかそうとしたのが悪いんだ。だろ?二人とも。」

 

「そ、そうよ!私のゆう君に色目使ったそいつが悪いのよ!!」

 

「そう!だから私達は悪くない!!悪いのはその女!!」

 

 増長しだしたゴミどもにさらに腹が立つ。人の神経を逆撫でするのがほんと上手いなこいつら。

 

「は?何言ってんのお前ら?美優がお前に色目を使う??カッコよくもないのに??ありえねぇだろ。ねぇ美優、このゴミに色目使ったことある?」

 

「…いえ、そもそも告白を断るまでこの人を知りませんでした。」

 

「だってさ。自分に都合のいい事いってるんじゃねぇよ。てかやば。告白断られたのに自分をたぶらかそうとしたとか言ってるの?うわ~、引くわ~。恥ずかし。絶対未練タラタラじゃん。さすがに面の皮が厚くない?私だったらそんなこと言って外出られないよ。恥ずかしいもん。」

 

「ぐっ…。だが―――」

 

 男が話し出そうとしたのを遮る。

 

「てかお前らふざけるのも大概にしろよ、なぁ。私の大切な妹を傷つけておいて、よくもそんないけしゃあしゃあとふざけたことを抜かせたもんだな。」

 

 怒りで手が震える。

 

「まじでふざけるなよ!!私の可愛い妹を悲しませるんじゃねぇよ!!私がどれだけ大切に思ってるのか、お前らには分からないだろうけどな!!私は美優を世界で一番愛しているんだよ!!そんな美優に向かってなんてことしてくれたんだお前らは!!!!」

 

 怒りがあふれだした私は思わず手が出そうになってしまう。

 

「お姉さま…。」

 

 そんな私を止めるように、涙目の美優が私の浴衣の袖を引っ張った。

 

「…あっ、ごめん美優。つい感情が高ぶっちゃった。怖かったよね、お姉ちゃんがこんなんでごめんね。」

 

「いえ、むしろ…。」

 

 美優が何か言いかけたが気づかず、視線を再度ゴミどもに向ける。

 

「ふぅ…てかあれ?お前の彼氏なの、この男?」

 

 ひるんでいた女がハッとし、若干震えた声で答える。

 

「そ、そうよ!!だから私はその女が―――」

 

「ぷっ、あっはっはっはっは!!!まじ???こんなことある???あっはっは!!」

 

 面白い事実に気づいてしまい、つい笑ってしまう。

 

「な、なによ急に笑いだして!気持ち悪いわね!!」

 

「ひ~、おもしろ!いや~、ごめんごめん急に笑いだして。あまりにも面白くてさ。いや~、こんなことあるんだなぁって。……ふぅ。お前、浮気されてるよ。」

 

「…え?」

 

 話していた方の女がポカンとする。残りの二人の血の気が引いていくのが分かる。

 

「だから浮気。さっき私お手洗い行ったんだけどさ、行く途中、建物の陰で二人がいちゃついてたのを見たんだよね。恥ずかしくてどんなことしていたのかは私の口から言えないけど。いや~、でもまさか外であんなことするとはなぁ。」

 

 ちゅっちゅしていたなんて恥ずかしくて口に出せないな。まぁ相手がどう受け取るかは分からないが。

 

「…は?嘘…。ち、違うよね?ゆう君。ねぇ…。」

 

「も、もちろん違―――」

 

「あっ、写真も撮ったんだよね。いや~、外であんなことしちゃうなんてねぇ。二人ともすごいな。」

 

 まぁ嘘だが。流石にそんな余裕はなかった。けど今の感じなら、この女は写真を見ようともしないだろう。

 

「ねぇ…二人ともどういうこと…?説明してよ!!!」

 

「ち、違っ―――」

 

「違わないでしょ!!写真も撮られてるじゃない!!!!私達親友だったんじゃないの!!!!ねぇ!!!!」

 

「い、一回落ち着いて!話し合お!ね!」

 

「うるさいうるさいうるさい!!!!私を騙してたくせに!!!!お前なんか友達じゃない!!!!」

 

「っ!!じゃあ私も言わせてもらうけど!!あなただって―――」

 

 そのままゴミどもは言い争いを始めた。これが友情崩壊の瞬間か…儚いな…。まぁそもそも人の彼氏を奪おうとは思わないのが普通だが。

 

 まだまだ私の怒りは収まらないが、美優の視界にこいつらを入れないようにするのが優先だ。

 

「美優、今のうちに行っちゃお。」

 

「は、はい!」

 

 美優の手を引き、お祭り会場を駆ける。ある程度走ると、周りに人がいない場所についた。

 

「…ふぅ、ここまでくればあいつらも追ってこないでしょ。って、やば!!もう花火始まっちゃうじゃん!!わわわ、どうしよどうしよ!」

 

「お姉さま。」

 

 後ろにいる美優に呼びかけられ、体を引かれる。

 

「あっ美優、もう花火の時間に…んむっ!」

 

 振り向くと美優の綺麗な顔が目の前にあり、唇にやわらかい感触が当たった。驚きと混乱で硬直してしまう。

 

 数秒か数分か、どのくらいそうしていたのかは分からないが、美優が離れていく。

 

「お姉さま、私はあなたが好きです。家族としてだけでなく、恋愛対象として好きなんです。私はあなたに恋をしてしまいました。」

 

 

 

 美優がツーっと涙をこぼし、微笑みながらそう言ってきた。

 

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