レイカズ/カズレイ作品 短編集   作:みょん!

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宇沢レイサのとある一日

「ふぁ、……あ…………」

 目が覚めて、大きく伸びをする。寝る前には首元にまで掛かっていた毛布は、なぜか足元に追いやられていて、ほんの少し涼しい感じがした。起きる度にちょっと寒いなぁ……と思ったりするのだけれど、なんとかしたいと思いつつ十年くらい経っている今も、結局解決策は見つけられていない。――まぁ、私の寝相が悪いってだけの話なんですが!

 窓を開けて、外の空気を取り入れて、スマホからいつもの音楽を鳴らす。ラジオ体操を終えたときには、眠気はすっかり無くなっていた。体調、問題なし。

 自警団は体が資本。おかずを作って、ご飯をしっかりと食べる。体がやっと起きた気がした。

 それからは身支度の時間。洗面所に行って、鏡を見る。顔色、問題なし。頭、爆発。――どうして。

 寝る前、しっかりと髪を乾かしてるのに……。いっそ杏山カズサみたいに短くした方がいいんじゃ――だとか思ったりもするんだけど、その度に、杏山カズサに言われた、『宇沢は髪の毛綺麗なんだから』って言葉でその考えは即無かったことになる。髪の毛を褒められたことなんて今までなかったし、それを大好きな人に言われたってのが、なおさら嬉しい。

 何もない休みの日はこのままでもいいかなって思うんだけど、今日は普通に平日で、学校がある日で――そして朝から杏山カズサに会う日だから、髪の毛を整えないという選択肢は、私には存在しない。

 杏山カズサにお勧めしてもらった櫛(くし)で髪の毛を梳いていく。引っかかることはないのだけれど、髪の量が量なだけに、時間はかかる。すごくかかる。

 髪の毛を整える前にご飯を食べておいてよかったと思う。そうじゃなきゃ、髪の毛を整える時間も無くな――。

 時計を見る。七時四十分。杏山カズサとの待ち合わせ時間は――七時五十分。

「――――ぴゃっ!?」

 え、どうして? そんなに時間は使ってないはずなのに――!? って思ったけど大体髪を整えるときに色々考えたせいだと思うっていうか原因を考える暇は無くてひとまずとっとと髪を整えて急いで杏山カズサとの待ち合わせ場所に行かなきゃ――!

 ドアを開けて、鍵を閉めて、ダッシュ開始。まずい、まずいですよ私!

 全力ダッシュで向かう。角を曲がる。

 ぎゃーーーー!? 杏山カズサがもう待ち合わせ場所にいる!!!

 加速度を高める。交差点は一つだけ、そこだけ注意すれば後は全力ダッシュで大丈夫! 杏山カズサが、何やら声をかけてくれているのは分かるけれど、それでも私は全力ダッシュ! 

「――――お、おま、た、…………せ…………」

 『お待たせしました!』と声を出したはずが、全然声にならなかった。杏山カズサのため息交じりの声に何とか答えようとしても、息が切れまくってるせいで、全然言葉にならなかった。

「はいはい。まずゆっくり深呼吸して」

 杏山カズサの優しい声とともに、頭に杏山カズサの手の感覚。私の頭を撫でてくれてるのが気持ちがいいなって思う。息が切れてて、ありがとうも何も言えない私に、杏山カズサは。

「ばーか」

 と、優しい声が頭の上から聞こえるのを、ただ聞いているだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 はぁ、はぁ、……ふぅ。大きく深呼吸。心臓はずっと高鳴っているものの、呼吸自体は少しずつ落ち着いてきた。その代わり、額から、頭から、汗が出てくる。鞄からタオルを出して拭く。やっと、杏山カズサに顔を見せられる気がした。

「お待たせしましたっ! 大丈夫です!」

 顔を上げると、杏山カズサがやれやれとでも言いたげな、でもどこか嬉しそうな顔をしていた。

「おはよ、宇沢」

「おはよう、ございます、杏山カズサ」

 朝の挨拶は、待ち合わせ場所で行われるのが、最近の私たちだった。

「ほら、行くよ。時間はあるけど、ギリギリじゃまずいでしょ」

 杏山カズサは私に向けて手を向ける。先を歩き出すだけじゃなくて、手を向ける、それは、つまりは。

「はい!」

 その手を握り返すと、杏山カズサの頼もしい手が、私の手を引く。そして私たちは、二人で並んで歩き出した。

 

 歩き出して、ほんの数分。「ん」と隣から声がしたかと思うと、杏山カズサが手を離して、私の後ろの方に回る。何やら、髪の毛に触れられる感触があった。

「宇沢さ、今日、髪整えてきたんだよね?」

 後ろから、そんな質問の声が聞こえてきた。

「え、ええ。いつも通りではありますけど……」

「まぁ、分かってると思うけど。結構大変になってるからさ、髪」

「……へ?」

 杏山カズサがスマホをインカメラにして、私に見せてくれる。私の整えたはずの髪の毛が、風圧であっという間に終わっていた。

「げ」

 杏山カズサが、隣で「やれやれ、まったく」と呟くのが聞こえた気がした。

「ということで、宇沢。宇沢はそのまま歩いてて。いい? 後ろ向かないでよ」

「……え、と。どう、いう…………?」

「私が歩きながら整えてあげるから。ほら、下向かないで前向いて」

 『前向いて』は落ち込みそうになってる私にじゃなくて、物理的に顔をまっすぐ向けってことなのは、分かってる。でも、それでも。杏山カズサに、元気づけられたような気がした。

「ありがとう、ございます。杏山カズサ」

「いいって。宇沢の髪の毛触るの、嫌じゃないしさ」

 ――え、まって、いまのは、どういう。

 思わず後ろを向いた瞬間、杏山カズサのデコピンが飛んで来た。痛かった。

 強制的に前を向かされて、微かに頭が後ろに引っ張られるような感覚がある。杏山カズサが、櫛か何かで私の髪を整えてくれているということが、感覚で分かった。

「ヘアゴム、取ってもいい?」

「…………はい」

 少しして、少しだけあった右側の頭の圧迫感がなくなる。そして頭のてっぺんから先の方まで、櫛が通り抜けていくのが分かった。それが何回か続いたかと思うと、今度は左側。杏山カズサの櫛は、一度も私の頭に刺さることはなく、髪の毛を整え続ける。

「――――」

 これが緊張しないでいられようか。いや、無理だと思う。

 遅れた理由が髪を整えるものだったのに、結局杏山カズサに髪を整えてもらってるという状況。これはまさしく、本末転倒というものなのだと思う。

 だったら、朝に髪を整えないで待ち合わせ場所に行って、杏山カズサに整えてもらった方がいいのでは――という悪魔の方の私が囁いてきて、一瞬で顔が熱くなった。

 ――今でさえこの状況に一杯一杯なのにそんなこと言えるわけないしお願いなんてできるわけないじゃないですか!!!

 思わず首をぶんぶんと振りそうになって、後ろに杏山カズサがいることにギリギリで思い立って止める。

「――――――」

 杏山カズサに下を向くなと言われてるから、下を向くわけにはいかないのだけれど。それはそれとして、さっきから心臓の音がうるさくて仕方がない。顔が一度熱くなったら全然冷めてくれない。

 ――宇沢の髪の毛、綺麗だな……。

 だなんて杏山カズサの声が聞こえた気がして、一気に心臓が爆発しそうになる。心臓の動きが杏山カズサの方にも響いてそうなくらい、私の中で高鳴りまくってるのが分かる。あと、すっごく、暑い。顔が赤いのが杏山カズサからバレませんようにと、願うしかなかった。

 しばらく歩いていると、ほんの少し、心臓の音も暑さも鎮(しず)まりつつあったのだけれど、その一方で、トリニティの制服を着た生徒がちらほら見えるようになる。学校に向かう道沿いなのだから、それは当然なのだけれど――それはそれとして、杏山カズサに髪の毛を整えられながら歩くのは、恥ずかしいというか恐れ多いというかこそばゆいというかなんというか――――。

「はい、おしまい」

 また顔が熱くなってきそうだ、と思った瞬間、杏山カズサの声と共に、背中をぽん、と叩かれる。背中がびくっとなったのは、もう仕方ない。

 杏山カズサが見せてくれたインカメラにしたスマホには、私が毎朝見るくらい、しっかりと整えられた髪の毛があった。ツインテールも完璧なら、ヘアゴムの位置も完璧。何も見なくても私の髪型を完全再現してくれた杏山カズサは、私の髪型もちゃんと見てくれてるんだなって、そう考えた瞬間、顔が爆発しそうになって考えるのをやめた。

「杏山カズサ。ありがとう、ございます」

「どういたしまして。さ、行こ」

 また杏山カズサと並んで歩く。待ち合わせ場所からの数分と同じ状況のはずなのに、なんか、……なんだか、嬉しいような、恥ずかしいような。やけに、また心臓がドキドキする。

 校門まですぐのはずの距離は、やけに長く感じて――やがてトリニティ総合学園の、大きなゲートが見えた。その左右には風紀委員の生徒がいて、変な服装や髪型をしている生徒がいないか取り締まっていた。

 もちろん私たちは難なく通過。そして教室棟へと向かおうとして――。

「あ、カズサちゃん! レイサちゃん! おはよ!」

 明るい声がして、振り返る。ミント色の鞄を持って、アイリちゃんが私たちに向けて手を振っていた。

「はいっ! アイリちゃん、おはようございますっ!」

 よく見ると、アイリちゃんだけじゃなくて、ナツちゃんもヨシミちゃんもいる。放課後スイーツ部全員が朝から揃うと、なんだか嬉しくなる。

 小走りに走ってきたアイリちゃんと手を合わせて挨拶をして、それからアイリちゃんは、何かに気づいたように私の方を覗き込んできた。

「レイサちゃん、今日も髪がふわふわしてておいしそうだね。朝、時間かかるんじゃない?」

 じぃっと見られると、恥ずかしいやら、嬉しいやら、複雑な気持ちになる。いつも整えているのは確かなのだけれど、――今日は、特別だから。

「はいっ! 朝整えてます。……あと、今日は登校中に杏山カズサが整えてくれまして……」

「そっか。レイサちゃんの髪の毛、綺麗だもんね」

 アイリちゃんにも褒められて、そして髪の毛に触れられて、やっぱり嬉しいなって思う。思わず手が頬に伸びる。すごく口元が緩んでるのが分かる。

 嬉しい、でも、どこか、恥ずかしい。

 まっすぐに見てくるアイリちゃんの視線が、なんだかドキドキして、思わず視線を逸らすと、ヨシミちゃんが何やら考え込むような仕草をして、杏山カズサの方をにやにやと見ているのが見えた。

「ふーん」

 鼻を鳴らしたような声がして。

「朝一緒に歩きながらレイサの髪を、ねぇ。なるほどねぇー?」

「なによ」

 ヨシミちゃんの肘が、杏山カズサの脇腹に当たる。そして杏山カズサの頬を、逆の手でつついて、言う。

「いやぁ、朝から二人していちゃつ――――っ!?」

 杏山カズサの肘が、ノータイムでヨシミちゃんの鳩尾(みぞおち)に入るのを見た。ものすごい速さだった。

「――――ッ! カズサ! あんた何すんのよ!」

 脇を押さえて、蹲ってぷるぷるしていたかと思うと、ヨシミちゃんは急に顔を上げて、杏山カズサに向けて吠えた。

「あんたが先に肘入れたんでしょ! あとまたしょうもないこと言って!」

「カズサみたいな勢いでやってないじゃん! なんで全力で入れてくんのよこのバカ!!!」

「バカはあんたでしょ!」

「なんですってー!?」

 私とアイリちゃんから少しだけ離れた場所で、ぎゃーぎゃーと言い合いが始まった。ヨシミちゃんが杏山カズサの頬を引っ張り、杏山カズサがヨシミちゃんの腕を締め上げる。

 騒がしく、賑やかで、ほほえましい、いつもの放課後スイーツ部の光景だなぁと思う。

「あ、あははは……。カズサちゃん、ヨシミちゃん」

 アイリちゃんが苦笑いを浮かべるところまでが、ワンセット。いつもの皆さんの空気が朝から見られて、今日はいい日だな、だなんて、そんなことを思った。

 

 アイリちゃんの鶴の一声で杏山カズサとヨシミちゃんのじゃれあいは終わり、放課後スイーツ部の全員で教室棟へ向かう。

 表門から教室棟まで行くのに、歩いて十分はかかる。トリニティ(うち)は、なんというか無駄に広い。皆で賑やかに話しながら教室棟までたどり着いて、玄関を潜って、下駄箱で履き替える。

 内履きに履き替えたとき、ふと思い出すことがあった。――あれ、確か、今日って。

「杏山カズサ、今日って水曜日ですよね」

「うん。水曜。…………あ」

 杏山カズサの顔が、一気にまずい、と言いたげな顔になった。そう、今日水曜日は、朝に英単語のテストがある日。十問中四問を下回ったら――つまり赤点を取ったら、もれなく追試コースの、それ。

 話をするうちに、杏山カズサの顔が青ざめて、より深刻になっていくのが分かった。

「――――、ちょっと先教室行く。それじゃ、またあとで!」

 杏山カズサはそう言うなり、ものすごい速さで廊下を走り出した。廊下には人が何人も見えたのに、猫みたいに左右に動いては人を回避して、速度を落とすことなく走り抜けていった。

「お待た――あれ、カズサは?」

「先に行くって言って、ものすごい速さで教室に向かっていきました」

「あ、あははは……」

「はーん?」

 アイリちゃんが苦笑いして、ヨシミちゃんは何やら得心したような顔で頷く。

「カズサ、さては、小テスト忘れてたな?」

「ヨシミちゃんは大丈夫?」

「まぁね。焦って教室で単語帳開くカズサよりは平気、かな」

「昨日は、『明日出席番号の日だから予習範囲教えてー』って電話で言われましたけど、小テストのことは話になってなかったですね……」

「…………電話。ふむ」

 ナツちゃんが思案顔で頷くのが見えた。……あれ、私、変なこと言いました?

 疑問に思っていると、ナツちゃんに肩を叩かれた。そして親指を立てられた。どういうことだろう?

 そして私たちは歩いて教室へ。私たちはみんなそれぞれ別のクラス。別々の教室に入るときは、ちょっとだけ寂しいな、と思う。けど――。

「それじゃみんな、部活でね!」

 とアイリちゃんが笑顔で言うのを見て、私も釣られて笑顔になるのが分かっちゃう。

「はいっ!」

 教室に入るときは隣に誰もいないから、登校中の賑やかな感じから少し静かになって、ちょっとだけ寂しい気持ちになる。けれど、その後の部活があるって分かるから、決して、寂しくない。ドアを開ける。息を吸う――――。

「みなさん、おはよう、ございますっ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 トリニティ総合学園の授業は、一コマ一時間。私は予習はしっかりやってるし、いつ当てられても大丈夫。――そういえば、昨日の電話で、杏山カズサが『当てられそうだから!』って予習範囲のことを聞いていたっけ。杏山カズサが当たりませんように。もしくは当たっても無事乗り切れますように――。そんなことを思いながら、私は教師の人の話をしっかりと聞くことにした。

「――――この問題は、先ほどの公式をそのまま当てはめることができます。つまり――」

「――――、」

 三コマ目が終わる少し前から、私の心臓はドキドキと高鳴っていた。

 これはきっと、これから行われる戦いに向けての武者震いだとかそういうものなんだと思う。

 何度体験しても慣れることがないその戦場の名は、購買。教師の人が、授業の終わりを宣言する。

 起立、礼、ダッシュ。

 廊下に出た瞬間にチャイムが鳴る。走って通り過ぎる教室の中から、ガタガタと椅子が動く音がする。つまり私が少しだけ先手を取って有利だということ。けれど油断なんてしたら、すぐにアドバンテージも埋まっちゃうから、そのまま走り抜ける。

 ――あ、そういえば杏山カズサに購買に行くって話してませんでしたね……。

 教室に向かう途中で言おうと思ってたら、急に教室までダッシュしてったから結局言わずじまいだった。ひとまずスマホを取り出して、走りながら打つ。送信完了とほぼ同時に購買(せんじょう)へとたどり着く。これまでの、杏山カズサ(キャスパリーグ)を追っていた日々のおかげで、脚力はちょっとだけ自信がある。人はほとんどいない。これはもしかしたら新作のトリニティチーズ蒸しケーキも買えちゃうのでは――と期待して見ると、あった!

 残り五個あったけど、買い占めはよろしくないから、私の分だけ手に取る。杏山カズサには私の分を分けよう。それ以外にご飯として食べるビッグメロンパン、コロッケパン、チョコベタ、そしてスイーツのミルクプリンと牛乳のパックを手に取って、購買のレジへ。

 レジに並んだ瞬間、購買の入り口に人がなだれ込むのが見えた。ふぅ、と息を吐く。今回は運良くスムーズに買えたけど、いつもこうとは限らない。明日は我が身、と思いながら購入を終え、戦場と化している購買を後にする。そして向かうは、杏山カズサとの待ち合わせ場所。

 欲しかったパンも、ご飯として食べるパンも、スイーツも無事買うことができて、ハッピーな気持ちで歩く私は、きっとスキップしたような足取りになっているんだろうと思った。

 

「あ! 杏山カズサー!」

 裏庭のいつもの場所に行くと、杏山カズサが木陰に腰を下ろしていた。呼びかけると、杏山カズサの耳がぴくっと反応して、私の方を向く。そしてちょいちょいと私に手招きをする。

「購買行ったにしては早かったじゃん」

「へへへ……」

 杏山カズサを待たせなくて、本当によかったと思う。一緒にご飯を食べる時間も、一緒にいられる時間も減っちゃうから、戦場(こうばい)はできるだけ早く済ませたい。その上で、食べたい物が買えれば、より嬉しい。

 なら、今日はといえば。

「見てくださいよ杏山カズサ! 今日は完全勝利です! 食べたいパンも、食べたいスイーツも、全部買えましたっ!」

 杏山カズサを真似て、袋の上に戦利品を並べていく。「今日も結構買ったね」と感嘆なのか呆(あき)れなのか、どちらとも言えない声が聞こえた。前者ということにしよう。うん。

「じゃ、食べよっか」

「はいっ! いただきますっ!」

 杏山カズサと一緒に手を合わせて、ご飯を食べ始める。授業に加えて購買でカロリーを使ったせいか、手に持っていたはずのメロンパンは、いつの間にかなくなっていた。

 隣を見ると、ちょうど杏山カズサが食べている焼きそばパンが半分くらいになっていた。私の顔を見て、そして私の手元を見て、苦笑い。

「喉に詰まらせたりしないでよ……?」

「だーいじょうぶです! 分かってますって!」

 そして二つ目に、本日のメイン、トリニティチーズ蒸しケーキ――パンなのに名前はケーキという、紛らわしいそれ――に手を付ける。トリニティの形が表面に描かれたそれは、ふわっとした食感とバターの風味が格別だと、発売初日からものすごい争奪戦が繰り広げられたものだった。それが今、私の手の中にある。ごくり、と唾が鳴るのが分かった。

 袋を開ける。もうその時点で、バターの香りがふわりと漂ってきた。見た目はしっとりとしていてスフレに近いような感覚。一口食べる。歯を立てるまでもなく、唇だけでチーズ蒸しケーキが切れた。口の中に入った瞬間、優しい甘みを感じると共に、バターの香りがより強く香ってくる。食感はしっとりとしていて、柔らかい。

「……はぁ…………」

 おいしい……。思わず、ため息が出ちゃうおいしさだった。これが購買で売ってるのは、色々とおかしいと思う。これはトリニティ通りで売っててもなんらおかしくなくて、なんならこれで杏山カズサにスイーツ勝負を挑みたいくらいで――。

 牛乳で口をすっきりとさせて、もう一口。はぁ、おいしい……。口元が緩むのが分かる。流石は、購買の新作……。幸せ…………。

 ふと、視線を感じて、隣を見る。杏山カズサが口元に手を当てて、くすくすと笑みを浮かべていた。

 猫みたいに目を細めて笑う杏山カズサの顔が可愛らしくて、ちょっと、顔が熱くなってくるような気がした。

「はへはふ?」

 照れ隠しに私ができることは、このトリニティチーズ蒸しケーキを杏山カズサにも食べてもらうことで。パンを杏山カズサに向けると、パンと私との間でその視線が行ったり来たりした。

「……いや、相変わらずおいしそうに食べるなって思って見てただけ。私は大丈夫」

 そう言って、手を左右に振る。それでも私の顔の熱さは収まるわけがない。だから私は、もう一押し。

「これ購買の新発売なんですよ! 杏山カズサにも食べてもらいたいなって思ったので!」

 杏山カズサにも食べてもらいたいって思ったのは、間違いのない事実。おいしいは共有したらもっとおいしい。そして私がおいしいと思った物は、きっと杏山カズサもおいしいって思ってくれるはず!

 そんな確信の元に、杏山カズサへとパンを近づける。ほんの少し仰け反った杏山カズサは、はぁ、と息を付いて。それから、「あ」と口を開けた。

 杏山カズサがやったのは、口を開けただけ。そこから、顔を、動かそうとはしなくて。

 ――それはつまり…………。ええ、と…………。

 数秒、待ってみる。杏山カズサが自分からパンにかじりつこうとは、しない。

「…………」

 目を瞑ったまま口を開ける杏山カズサを見ていて、口元に、勝手に笑みが浮かぶ。

 なんだか、可愛いな、と思えてしまう。ずっと見ていたいな、と思えてしまう。

 でもそろそろ、杏山カズサが目を開けて睨んできそうだから――私は手に持ったパンを、ほんの少し、前へと動かす。

 杏山カズサの口が閉じて、パンが囓りとられる。口の中が動くのが見えて、それからほんの数秒後。

「…………あ」

 杏山カズサが目を開けるのと、口元に手を当てるのと、そして頭の耳がぴくぴくっと動いたのは、ほとんど同時だった。

 その反応を見て、私の口元が勝手に広がるのが自分でも分かった。

 杏山カズサが、おいしいって思ってくれてるのが、言葉以上に、いろんな所から感じ取れたから。

「ねっ! とってもとっても、おいしいんですよ!」

「うん。……おいしいね、これ」

 反応だけでも十分に分かってた。それを言葉でも言ってもらえて、すっごく、嬉しいなって思う。

 私がおいしいって思った物を、杏山カズサもおいしいって言ってくれる。それが私にとって、すごくすごく、嬉しいことだから。

「はいっ! 杏山カズサも絶対、好きだなって思ったんです!」

 そう言う私の顔は、きっと杏山カズサが浮かべてる嬉しそうな顔と、似たようなものになってるんだろうなと、そんなことを思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 午後の授業は、杏山カズサとおいしい物を食べたという満足感でずっと頭がほわほわとしていた。問題を当てられなくて本当によかったって思うし、午後の授業の分はどこかで復習しないと、と思った。

 そしてあっという間に放課後の時間。水曜日、つまりパトロールの当番が当たっていない日。そして放課後スイーツ部の部活動がある日。そしてそして、今日のスイーツ当番はこの私!

 クラスから解放されるや否や、ダッシュで学校を抜けてトリニティ通りへ。パティシエールリュウイチの店に飛び込んで、予約していたフルーツタルトを受け取り、今度は学校に向けて控えめにダッシュ。前みたいに放課後スイーツ部の部室に行って、箱を開けたら中に入っていたケーキが大変なことになっていた――なんて二の轍は踏まない。

 ――とはいっても、部室棟の中に入ってしまえばやっぱり走っちゃうんだけど。杏山カズサに早く会いたいのだから仕方ない。うん。

 杏山カズサや放課後スイーツ部の皆さんを一秒でもお待たせしないようにとダッシュして、放課後スイーツ部の部室のドアを開ける。

「こんにちはぁ!!!」

 部室の中を見回す。……あれ、杏山カズサがいつもの場所に、いない?

 四角いローテーブルに座ってるのは、アイリちゃん、ヨシミちゃん、ナツちゃん、以上。……あれ? 杏山カズサは?

「レイサちゃん、冷蔵庫冷蔵庫」

 固まってる私に、アイリちゃんが私の手元を指差してくれる。あ、危ない危ない。冷蔵庫の中にフルーツタルトを入れて、再び部室の中を見回す。やっぱり、いない。

「カズサ、まだ来てないんだけど、レイサは何か知ってる?」

「えーっと、特に用事があるっては聞いて……」

 ふと、朝のことが頭に浮かんだ。英語の小テストと聞いて、ほんのちょっと青ざめた後に全力ダッシュしていった姿。

 ……あれはもしかしなくても、勉強してなかったのでは、と思ってしまう。

「…………えぇと、たぶん……――――っ!」

 いや、これは言わないでおこう。杏山カズサの名誉のためにも!

「な、何かの予定があるんだと思いますっ! 何かあれば放課後スイーツ部のグループチャットに来るはずなのでっ!」

 そう、慌てて軌道修正したつもりなのだけれど。ナツちゃんは何かを見通したかのように私の方を見て「ふぅん」と鼻を鳴らすだけだった。

 杏山カズサが部室にやってきたのは、それから大体十分後。

「あっ、杏山カズサ、お疲れさまです!」

 近くまで行って顔を見ると、やっぱりげしょっとなっていた。追試の後は大体こうなるってのは、何回か見ているから分かる。この様子だと、たぶん、二回分……かな。

 頭が疲れてるときには糖分補給が一番。なにせこれから待ち構えているのは、糖分の暴力なのだから。だけど、おいしい物を食べるときは、少しは回復しててほしい。

「はいっ!」

 いつも鞄に忍ばせているマカロンをひとつ、杏山カズサに渡す。特に疑う様子もなく、食べてくれた。げんなりしていた顔が、ちょっと戻った気がする。よし。

「さぁさぁ、スイーツ食べますよ! 杏山カズサが来るまで待ってたんですから!」

 そして杏山カズサの手を引っ張り、いつもの席へ。

 杏山カズサがいつもの席について、放課後スイーツ部の部活動が始まる。

 今日の主役――もといスイーツ当番は私だから、杏山カズサの隣(いつものばしょ)に座らずに、そのまま冷蔵庫の方へ。取り出した箱をテーブルの中央に載せて、宣言。

「今日のスイーツ当番は、トリニティのスイーツ学専攻の私、宇沢レイサ、です!」

「よっ! 唯一のスイーツ学単位取得者!」

 ヨシミちゃんが合いの手を入れてくれる。ちょっと楽しい。

「本日の私が持ってきたスイーツは、こちら! 『パティシエールリュウイチ』のフルーツタルト、です!!!」

 箱を開けると、予約の時に受け取ったときとまったく同じ形のフルーツタルトが現れた。

 真ん中部分に、半円のキウイが輪を描くように敷き詰められていて、キウイの周りを囲うように、モモとオレンジとパイナップルが交互に輪を描くように敷き詰められている。そしてその所々に、ブルーベリーがちょこんと載っている。

 円形(ホール)の形をしたフルーツタルトは、フルーツがバラバラに載っているのが一般的。けれど、この『五種類のフルーツとリコッタチーズクリームのタルト』は、フルーツが丁寧に円周状に配置されている。更にはフルーツ同士が重なっていて、立体的に、かつ豪華に見えるのもすごいところ。見た目の綺麗さとおいしさが合わさった、私が一目惚れしたフルーツタルトだ。

「…………わぁ……」

 誰の声か分からないけど、歓声が上がる。

 私はもう、それだけで嬉しいし、予約したこれをダッシュで取りに行った甲斐があったなって思える。

 お店のショーケースの中でもキラキラとして見えたこれは、放課後スイーツ部のテーブルの上に載せられると、より輝いて見えた。

 杏山カズサがスマホを持って写真を撮ると、皆さんも撮り出す。撮影タイムは、放課後スイーツ部のいつもの光景。――私もこれをホールで買うのは初めてだから、しっかりと撮っておいた。

「さて、それじゃあ、切りますね」

 切り分けるのも、スイーツ当番の仕事。放課後スイーツ部は私を入れると五人で、奇数。綺麗に切るにはコツがいるのだけれど、何度も切るようになった結果、全員がアプリなしで切ることができるようになった。――時々、ヨシミちゃんや杏山カズサのカットがブレて、誰がどのピースを食べるかの勝負が始まることもあるけれど、それも放課後スイーツ部の部活動の一つだし、楽しい。

 フルーツタルトが皆の元に渡って、アイリちゃんの「食べよっか」の声で、食べ始めて。

「………………」

 そして皆の声が、止まった。

 杏山カズサの耳が、ぴくぴくと動き続けるのを見て、机の下で拳を握る。

「え、すっごい、これ…………」

 杏山カズサがすぐ隣にいるから、その小さな呟きもしっかりと聞こえたし、その耳が動き続けてるのも見える。

 思わずにんまりとする私に、杏山カズサは。

「いいの選んだじゃん」

 だなんて、肘を入れてきて、最高に嬉しいことを言ってくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっへっへー」

 帰り道、今日も杏山カズサと一緒。

 思わずスキップしたくなる気持ちが止められなくて、結局やってしまってる。

「ほんと、幸せそうだね」

「えっへっへっへーーー」

 それはそうだ。だって、杏山カズサが、私が買ってきたスイーツをおいしいって、すごいって、言ってくれたんだから!!!

「ねぇねぇ杏山カズサ。今日のフルーツタルトどうでした? どうでした?」

「その質問三回目。……や、うん、おいしかったよ。すごく」

「えへへへへ」

 緩みきった顔は、きっと家に帰るまで治らないと思う。でもそれでいいと思う。スイーツは人を幸せにするものだからっ!

「次のスイーツ当番は、机で時計回りの順番なので、杏山カズサですよね」

「そ、私」

「もう、買うものは決まってたりしてるんですか?」

 気になったので、聞いてみる。決まっていればその人が準備したスイーツだし、決まっていなければ、その場で注文したり、皆でコンビニに行ったりする。

「うん、決めてるよ」

 はっきりと、杏山カズサは言う。

「宇沢を狙い撃ちできるやつをね。――楽しみにしててよ」

 なんて、挑戦的な笑みを私に向ける。カッコよくて魅力的な、杏山カズサの流し目。思わずドキリとする。

 しかも言われたのが、私を狙い撃ちだとか、どうとか。

 ――そんなの、楽しみでしかない。

「杏山カズサからの挑戦、楽しみにしてますねっ!」

 だから私は、それを挑戦と受け取って。杏山カズサへ指を向けて、啖呵を切る。

「ま、お楽しみってことで」

 肩越しに鞄を持った杏山カズサは、そう言って、にかっと笑って見せた。

 

 杏山カズサと歩く帰り道は、いつもあっという間。

 結構な距離を、結構な時間をかけて歩くはずなのに、体感として五分かそこらしかない。

 話したいことはまだまだたくさんあるのに、気がつけば分かれ道に着いてしまう。

「じゃ、今日はこの辺で、かな」

「そう、ですね」

 ここにくると、いつも寂しいなと、思ってしまう。楽しかった一日が終わってしまうんだな、と思ってしまう。

 でも。

「それじゃ、宇沢。また明日ね」

 ――また明日。

 別れ際、杏山カズサはいつもそう言ってくれる。明日も会おうねと言ってくれる。

 その一言が、私にとっては、すごくすごく、嬉しい。

「はいっ! 杏山カズサ、また明日っ!」

 手をぶんぶんと振ると、杏山カズサは控えめに手を振ってくれる。そういうことするタイプじゃないのに、私には、やってくれる。そう思うと――足取りも軽くなる気がする。

 今日の帰り道は、いつもより早く着けそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 家に帰ってからも、うきうきモードが止まらなかった。

 晩ご飯を作る時も鼻歌が止まらなかったし、お風呂に入っているときも勝手に出てきた。

 でも、出ちゃうのは仕方ないと思う。だって今日一日、とてもいい日だったのだから!

 お風呂から出て、朝の髪が爆発しないようにとしっかりと乾かして。そして今日の授業の復習と明日の予習をする。うきうき気分でやると勉強も捗るというもので――。いずれ課題で出るであろう問題集まで終わらせることができた。うきうきパワーすごい。

 時計を見る。午後十時のちょっと前。

 ――今日は、どう、かな。

 なんだか胸がドキドキとし始める。杏山カズサとモモトークの通話機能を使って電話するのは、大体夜の十時前後。だから、来るとすれば、そろそろ――。

 ポン、と音がする。モモトークが来たらしい。発信者は――【杏山カズサ】。

「――――っ!」

 スマホを開く。受話器を持った黒猫のスタンプが来ていて、即【OK!】のスタンプを返す。その数秒後、スマホが音を立てた。

『宇沢、今大丈夫?』

「はいっ!」

 もし大丈夫じゃなくても無理矢理大丈夫とする。杏山カズサとの電話は、それだけ大事なものだから。電話口の向こうで、くすりと杏山カズサが笑う音が聞こえた。

『ん。ねぇ宇沢、今日のスイーツさ、前宇沢と一緒に行ったとこだったじゃん。よく新作タルト買えたなぁって思ってさ。どこで新作の情報仕入れんの?』

 夜に電話するからと言って、特別理由があるわけじゃない。中身は、通学や、部活や、帰りで話すようなことの延長でしかない。

 どうでもいい話の、電話。でもそれが、私にとっては、最高に楽しい。

「えっへっへ。私にも企業秘密というものがありまして――」

『そっか。切ろ』

「わーーーーっ! 待ってください! 待ってください!!!」

『ふふ、ごめん、冗談』

 杏山カズサに、電話口でも振り回されてる気がする。でも、そんなどうでもいいやりとりが、楽しいなって思う。

 ふと、机の上にある鏡に目が行く。私の顔はといえば、それはもう、幸せそうな――杏山カズサに言わせれば、アホそうな――顔をしているのが見えた。

 

 行き帰りの時間があっという間ならば、電話の時間もあっという間というやつで――。

 時計がいつの間にか二十三時を過ぎていた。私が深夜のパトロールをやっていた頃は、まだまだこれから、という時間帯だけれど、健全な高校生はそろそろ寝る時間。

 電話口の杏山カズサからも、『ふぁ……』と欠伸のような声が聞こえた。

『――さて、そろそろ寝る時間だし、また明日にしよっか』

「そう、ですね。どこかで区切らないと、またずっとしゃべっちゃいそうですもんね」

『……そう、ね。なんか気づけばいっつもいい時間になってるね』

「へへ……私もです」

 同じ気持ちだ、と思えるのが嬉しい。

「それじゃあ、今日は寝ましょうか。明日もありますし」

『そーなんだよねぇ。まだ木金ってあるんだもんねぇ』

 杏山カズサの声が、ふにゃふにゃとしているのを感じる。きっと今、机かベッドにだらんとだらけてるんだろうなって思う。伸びる猫ちゃんが頭に思い浮かんだ。笑いそうになった。

「休みの日にスイーツを食べる! って思えば乗り切れますよ、きっと」

『そう、ね。じゃ、土日どっかに食べに行こ』

「――――はいっ!」

 当たり前のように、休みに一緒にスイーツを食べに行くことが決まる。

 嬉しくて、口元が緩むのが分かる。

『それじゃ、お休み、宇沢。また明日ね』

「はい。おやすみなさい、杏山カズサ。また明日」

 電話を切る。ふぅ、と息が出る。胸の中のドキドキは、もう少し続きそうだなって思う。

「…………ふぁ、あ」

 なんか、勝手に欠伸が出た。

 この時間は、一応起きていても平気ではあるけれど、しっかり寝ないと明日に響いちゃうから、寝ることにする。

 杏山カズサとだとか、先生とだとか――徹夜をしたことは何回かあったけれど、できること、と大丈夫なこと、はやっぱり別で。徹夜しちゃうと、翌日のパフォーマンスに影響しちゃうから。やっぱり人はしっかりと睡眠を取ることが一番なのだと思う。――私、まだ高校生ですけど。

 歯を磨いて、一杯の麦茶を飲んで、そしてベッドに入る。

 杏山カズサと共にゲームセンターで勝ち取ったウェーブキャットぬいぐるみが、私よりも先に布団に入っている。寝る時に何かを抱きしめて寝ると寝心地がいい、と聞いたことがあるけれど、それは本当だと思う。ウェーブキャットぬいぐるみは思った以上に弾力があって、抱き心地がよくて。黒猫の、憎めない顔をしたそれは、――本人は絶対に否定するだろうけれど――どこか、杏山カズサにも似ていて。

「…………ふふ」

 二回くらい、ウェーブキャットぬいぐるみの頭をぽんぽんと叩いて、電気を消す。

 腕の中にいるのはぬいぐるみ。一緒にいたいその人ではないけれど。

 明日、いつもの場所に行けば、また会えるから。

 明日を楽しみに、寝ることにする。

 

 

 

 ――杏山カズサ。また明日。




レイサとカズサは、おはようからおやすみまでいちゃいちゃしててほしい。

夏コミの新刊、『黒猫と一番星は甘い現実を共に』より一編を公開します。
冊子版にはカズサ側から見た物語も収録されてるので、まだお手にされてない方はぜひ。
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