ワイルドハント芸術学院にマツモトという生徒はいない(いないとは言っていない) 作:フガイナイ
オデュッセイア学区の潮の香り吹く公園。
平日、早朝でも人で賑わっていた。
ペットの散歩をする獣人、たわいもない雑談をするロボット、ラジオ体操をする子どもたちetc……
この透き通るような空の下、学園都市キヴォトスではありふれた日常の光景だ。
そこに空に響くようなポーと重い音が響く。
この自治区を治めるオデュッセイア海洋高等学校、
ここからオデュッセイアの学生達も新たな一日を精一杯過ごすのだ。
彼女ら海洋学生たちはあの朝焼けに照らされキラキラ光る海、そこに浮かぶ船の上。
この美しき海をこの先の光景にも繋いでいくため日々、学友たちと学び切磋琢磨している。
オデュッセイアが学区の住民たちからも慕われ、地元に根ざしていることはオデュッセイアの汽笛がなっても嫌は顔一つしない公園の人々を見ていてもわかることだろう。
そんなよくある日常の中、公園のすみに生えた芝にブルーシートが敷かれていた。
そこには画材道具が無造作に転がっていて、羊の角を生やした女の子が薄汚れたキャンパスに筆を走らせていた。
描いてはにらめっこ、描いてはにらめっこと手をしきりに動かし、白い画用紙に色が塗り加えられている。
そして時折、腕を止め、ジッと見つめては、気に入るとニッと笑い、その絵を通行人に見えるように道に向けて立てかけていた。
それに対して、道行く人?はたまにチラッと女の子を見る者がいる程度で、その理由もオデュッセイアの学生がなぜこんなところにという疑問からが大半であった。
女の子が描いた絵に関心を寄せる者はほとんどいなかった。
肝心の描かれた絵というのも、傍目から見ればよくてこどもの落書き、一般的にみれば絵の具の汚れという画材道具のムダ遣いとしかいえないようなものだったため、あまり周りの興味を引く物でもなかったようだ。
しかしキャンパスに筆を走らせている間、女の子の表情はとても楽しそうで朝焼けの海のようにキラキラしていた。
彼女は日が暮れるまで絵を描くことに没頭していた。
汗は頬を伝い流れ落ち、ぽとりと画用紙のシミになった。
彼女はただ、自らの描いた絵に向き合って欲しかったのだ。
子どもの落書きではなく、ましてや画用紙に付いた汚れなんかじゃない。
その絵に対する、観た人だけの解釈を。
彼女のそんな思いとは裏腹に通行人は目もくれず、すぎさっていく……
彼女の帰った後には、道に向かって立て掛けられたたくさんの絵と一人のカイザー平社員が夜の潮風を浴びていた。
ヴァルろ!開けキューレ組織犯罪対策局だ!