天に落ちる   作:kaname24

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滅茶苦茶やる気が出ない。けど書きたい場面が遠すぎる…


第九話 第三章九節「彼岸ノ地にて」

「過ぎ去りた龍の大戦は多くの眷属と龍が眠りに着くことで、終結した」

 

「だけれども、その大戦が残した傷跡は多かったのです。龍たちが作り上げようとした箱庭は、もはや修復不可能な致命傷を受け、彼らの領土も主が眠りついたのと同じく滅んでしまったんだ」

 

「神様たちがむかしに築き上げた神域って、どんな物があったの?」

「さぁな?俺は神話に生きた存在では無い。だが前に見た本によると、龍が持つ摂理の断片を使って、眷属と共に作り上げた領域らしいぞ?」

 

龍とは、遥か昔にこの世界を闊歩していた神様だ。今は過去に起きた龍たちの大戦によって、大半の龍が冥府へと堕ち、残りの龍は深い眠りへと就いている。

そして、今を生きる人たちはかの龍たちが残した遺産と祝福を使ってここまで発展して来た。大半の技術は龍が残していった物が基盤となって成立しているし、大国の都市で生活基盤となっているアレも、レイングラ―ドに居る龍の遺物の一つらしい。

 

「回生教会の知識であれば、私がお教えしましょう」

「え、ハボネは神様が作り上げた神域について知ってるの?」

「えぇ、神が作り上げた神域は現在も現存している場所があるのです。例えば有名な所で言うと、迷宮や回廊といった所でしょう。それにレイングラ―ドの地下にある都も神域と言えるかもしれません」

「確かに納得だ。年に一度、迷宮内や回廊の全ての構造が変わって、しかも尽きること無い財宝と魔物に満ちている。そんな事を出来るのは龍ぐらいだろうからな」

「ねぇ、リオネルお兄さん。迷宮や回廊とかが神域って事なら、この街のしたにあるチェレーロも、神様が作った神域じゃないの?」

 

本を読み聞かせていた子供たちの内の一人、リーシャがふと思い浮かんだ疑問を俺に聞いてくる。確かにチェレーロは広大で、巨大な力が働いている空間だ。そう言えばそうかもしれないな。

 

「あーそれは何というか…ハボネさん、それについて知っているか?」

「あぁ...チェレーロは神域だと、確実に言える場では無いのです」

 

年老いた修道者は言う。背筋が曲がって声はか細いというのに、それはハッキリと否定する言葉の様に聞こえた。

 

「第一に、神域の定義は何だと思いますか?それはですね…その領域を仕切る主が神であるのかどうかです。そしてチェレーロは人が果てを観る事が出来ておらず、何が存在して居るかを知らない。神域というのも今を生きている人が定義するもの、故に人が観測出来ていない場に神域だと存在付ける事も出来ない」

「まぁ何です。子供達には少々難しい話しになってしまいますが。簡単に言えば、チェレーロは神域だと言える程の理由が持たないのです」

「へーそうなんだ。つまりチェレーロは神域じゃないんだね。」

 

子供達は不思議そうな表情を浮かべて、絵本や絵でしか見たことの無いチェレーロを思い浮かべる様な素振りを見せると、納得がついたのか、物語の続きを急かすように俺の腕を掴んだ。

 

「分かっているさ、急かすなよ」

「そうしないと、おじさんは早く続きを語ってくれないでしょ?」

「いつもリオネルお兄さんは、止まったりすると長い休憩に入っちゃうから」

「はぁ…物語の語り部をやるのも相当疲れるんだぞ?続きを綴ろうか」

 

子供達の相手をしながら本を読み聞かせてあげるのは相当疲れる。

ヘビン記は昔の神話を綴ったどっかの教本で、中身は全てビッシリと詰め込まれた文字で構成されている。

 

それを長ったらしい描写や子供には難しい言葉を省いて子供達に分かりやすい様に噛み砕き、単調にならない様に悠長に話すのは少々頭を使うから面倒だ。

さて、休憩も終わった事だ。また話を綴ろう。

 

「多く龍が眠りに着いてしまったこの世界には一つ大きな問題がありました。龍が眠りについたということは、その魂を葬儀で以って冥府へ送り、輪廻の輪を回さなければなりません。誰だってゾンビになってしまった龍を止めるは酷く労力を消費してしまう事なのだから」

「そしてその葬儀を行っていた龍『シノーソグリス』己の無力に嘆いていた」

 

『我らが同胞を見送るには時間と力が足りぬ。彼らは今も死した肉体の中で悶え苦しみの中にいるというのに、救済の鎌を振り下ろす事が出来ぬのは何と苦痛な事か』

 

「かの葬儀の龍たる『シノーソグリス』であっても、限界がある物だ。龍の葬儀には入念な準備と厳格たる仕来りが有り、何よりもその葬儀には眷属である執行者達では無く、葬儀の龍自身が行わければ行けなかったのだから」

 

「そんな龍は、この世界の何処かに、己と対を為す輪廻の龍『サンサーラ』と共に、力で満たした領域ーー彼岸ノ地を作り出し、色々な制約を無視することでその問題を解決する事のにしたのです。そう彼岸ノ地は言わば儀式の過程をすっ飛ばして、魂を直接冥府へと叩き落とす門だ」

 

「二柱の龍がそんな異次元な力を行使する事で、何とか大半の龍を輪廻へ送る事が出来たが、その無茶の代償は凄まじい。故に全ての眠りについた龍に葬儀を施す前に、かの龍は力尽きて、最早まともに葬儀を遂行させるための力を無くなり、かの龍も聖域にて眠りにつくことになってしまった」

 

ゆっくりと読み聞かせてあげれば、横で俺に寄りかかっている子供たちが先の展開を知っているというのに驚きの表情を浮かべてくれたり、俺の言葉で場面を想像してワクワクしている様な姿を見せる。

まぁこの話自体が数か月前に聞かせてあげて以来、読んでいないという事もあるんだろうけどな。

 

「ねぇ、それってとても大変な事じゃないの?葬儀がまともに出来なくなったという事は、死者を弔う事が出来なくて、アンデットが世界に溢れちゃうって言う事だよね」

「ああそれはな。眠りについた葬儀の龍の代わりに、葬儀の眷属達やそれに付き従っていた俺達人間が協力し合って、どうにかしていたんだ」

「その時に付き従っていた人達が、今も有名な「葬列者」の源流なんだそうだ」

「葬列者って、葬式の時にいつも居る全身真っ黒のお兄さんお姉さんの事?」

「あの人たちは噂で、チェレーロで戦っているグライダーに引けを取らない程強いと、聞いたことがあるけどホントなの?」

「そうだ。あの黒で全身を染めて、顔まで隠しているお兄さんお姉さんの事だ。あの人達は対アンデッドのスペシャリストだからな。彼女らの聖地である彼岸ノ地にまで足を運び、龍の残滓をその身に封じる事で、かの龍の力の一端を振るうことが出来るんだ」

 

そう、人が龍の残滓を用いて振るう力は、一般的に残火と言われている。

 

残火は魔術とはまた違った力で、残火には魔術とは違い、長ったらしくて意味も解らない言語を用いた詠唱を唱える必要は無い。だが残火は魔術とは違って万能では無いし、その力は身体に宿る物の為か、消耗が大きい。

 

彼らが残した大きな篝火の一部を搔き集め、残火として人はその力を振るっている。

何故なら、龍が持つ火は宿した人を焼き尽くす烈火なのだから。だから人は主である龍の力を灰に為るまで力を薄めてから宿している。

 

「彼らの術は本当に凄いぞ。そう言えば三人は葬礼祭の追悼式を見たことは無かったのか?いや、アレは日が跨ぐ時刻に行われるからな。もしかするとハボネが許してくれなかったか?」

「うん、別に遅くまで遅くまで起きても、あたしは別に問題ないんじゃないかって思ってるけど、ハボネが…「生活の基盤を一度崩せば、早々に戻るものではありません。そう、貴方達がもっと大きなったら、一緒に行きましょう」って」

「もうハボネも、いい年だと思うのに、まぁーだ許してくれない!また来年も葬礼祭をやるのかも分からないし、その前にハボネくたばってしまうのかと言うのに…」

「ねぇおじさんもまた今度、私達と一緒にハボネを説得するのを手伝ってよ!葬礼祭の追悼式一緒に見ようって」

 

キュベリアにレゼル、リーシャが一生のお願いだと言わんばかりに俺をせがんで来ている。

まぁ気持ちは分からなくは無い。彼は確か今年で50は超えていたか…もういつ倒れてもおかしくない年齢だ。

 

「分かった。葬礼祭が近くなった頃に説得に協力してやるよ。さて、話も飛んでしまいましたが、そろそろ幕引きの時間だ」

 

話の脱線も合って、ここまで紡ぐのに大分時間が経ってしまった。腰の懐中時計は前見た時から一時間半ぐらいは経っている。段々と話す声が少し掠れてしまって居るが、子供たちが早く続きをと、求めているのだから。俺はこれから始まる締めくくりに、声をさっきよりも張り上げて、物語を語る。

 

「かの二柱の龍は戦火によって堕ちて行った龍たちと同じ道を行った訳だが…それでもかのモノ達の行為は無駄では無かった。あの彼岸ノ地には冥府へと直接繋がる道が出来た事で、かの龍でなくとも龍の葬儀を滞りなく行う事が出来るようになったんだ」

 

「そこからはもう、彼らの時代だ!神話の大戦の後始末、物悲しく寂れた場所で残されたアンデットになり果てた者たちと、それを払い、魂を冥府へと送り届けようとした残された眷属達とそれに付き添った人間たちの追悼。かの地に積み上げられた遺体は山の如き高さを持っていたらしい」

 

「まぁその他にも、『根を閉ざす者たち』によって築き上げた迷宮の話や、それに挑んでいった迷宮初期の話もあるが…それはまた今度という奴だ。これにて「彼岸ノ地」の話は終わりだ。大分省略した所や自己解釈が大量に入った語り部に為ってしまったが。どうだったか?」

「いつも通りの面白さだったよ?」

「オリオネルさんは同じ物語でも展開や結末が違うから、いつ聞いても楽しいんだ」

「まぁでも、今回はまぁまぁね。最後は飛ばし過ぎて、ダメダメだったわ」

「ああ済まないな。ちょっと今回は長ったらしく語っちまったから、喉がそろそろ限界でな。少し水を飲んでくる。水飲み場はあっちにあるよな?」

「ええ、住居の方にありますよ。何度も行ったはずですから、私の案内も必要ないと思いますが、私が案内しましょうか?」

「大丈夫だ。俺一人で行けるさ」

 

俺は長椅子に座ってウトウトしている修道者と、質素な服を来た子供たちを前に教会奥にある孤児院の方へ歩みを進めていく。

昔と違って、今は教会の方に居る孤児の数は少ない。昔は何十人も居たというのに、今はキュベリア、レゼル、リーシャと三人しか居ない。孤児の数が減った事は良いことだ

誰も居ない孤児院で水分補給を済ませた俺は、話をしている彼らに挨拶を済ませた後、孤児院を出て今日の待ち合わせ場所へ向かうのだった。

 

 

―――――――――

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「行ってしまいましたね。ふぁわぁ……」

「私はもうあの人の御伽噺で眠くなってしまって、少し昼寝の時間には早いかもしれませんが…子供たち。すまないですが、少しあちらで少々昼寝をしてきますね」

「無理しないで、最近また調子が悪くなっているでしょう?」

「ハボネ…ゆっくり寝てください。家事とか来客の相手なら私達で出来る限りの事はしますから」

「ありがとう。優しい私の愛すべき子供たち」

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