転生した世界が打ち『斬』り漫画だった   作:空使い

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※タイトル変えました。()はそのうち外します。

いつも誤字報告助かっています。
感想や評価も感謝しています。
読んで下さる皆さんのお陰で、頑張れています。




十六太刀

 

 

 

討条と言うキャラクターは、漫画『斬』のラスボスとして描かれたキャラクターだ。

 

最高学年、用心棒、長身、銀髪、眼帯、顎髭、長ランに鞘無しの居合刀と、強キャラの要素をこれでもかと詰め込まれたこの男は、原作者が考える、見ただけで相当の手練れと分かるとっておきのボスキャラなのだ。

小物にしか見えない金持ち坊っちゃんの用心棒として一巻ラスト辺りに登場し、その後出て来た新しい組織、生徒会執行部とかいうヤツらの一人をあろうことかたった一太刀で撃退。

たった二冊しか無い原作の二巻を丸々使って、仲間みんなの力を集結してようやく倒す事に成功する様な、紛うこと無き強敵なのだ。

 

……そしてコイツもまた居合使い。

しかも、俺より長い白鞘持ちだ。

 

はっきり言おう。

ここが『斬』の世界と分かったその瞬間。

俺は脳裏によぎったこの男を、俺とモロにキャラ被りしているこの男を!

必ず倒すべき敵と定めていたのだ……!

 

討条が、ギャンっと蹴り足も鋭く踏み込んで来る。

一人目の狙いは斬だ。

油断無く俺の方を意識しながらも、迷い無く抜き放った白刃を斬に叩きつけようとする。

 

ガァンっ! と、快音が響く。

 

「!」

「うわっ!?」

 

慌てて研無刀を抜こうとしていた斬と、斬りつけた刀を弾かれた討条が、揃って目を見開いた。

 

「名乗りも上げずに斬り掛かって来るとは……ちと不躾じゃあ無いかい?」

 

討条の抜き打ちを片手で払った錫杖もそのままに、精々不敵に見える様に討条へ笑い掛ける。

 

武士(おとこ)だろう?」

 

「…………」

 

かち上げられた刀を確かめる様に二度振り、構え直しながら俺を睨む討条。

俺への警戒度を一段引き上げた討条にシメシメと思いながら、ゆっくりと錫杖で床を突く。

 

討条の後ろで悠然と構えていた喫煙ピアスと大男が、先程までとは打って変わって緊張を孕んだ目付きで得物の持ち手に手を伸ばしている。

 

「オイっ、討条っ!! 何チンタラやってるんだ! 手加減なんかしてないでさっさと斬り殺せっ!!」

 

潮目が俄に変わった事に全く気付いていないのだろう。

焦れた傘頭が地団駄を踏みながら討条を怒鳴り付ける。

 

「……壊原。刺々森」

 

討条に静かな声で呼び掛けられた二人の親衛隊が、ピクリと肩を揺らす。

 

「手を出すな。……少し本気を出す」

 

そう言って、()の様に冷徹に凪いでいた気配を、僅かに剣呑さを纏ったそれに変えた。

音も無く叩きつけられる殺気が、廊下の中心で陽炎の様に揺らいでいる様にすら感じられる。

中々盛り上げてくれるじゃないか。

 

……それだけにちょっと残念だ。

 

「……少々油断が過ぎるよ?」

 

俺がそう言った瞬間だった。

目を見開いてバッと振り返った討条が、連続で素早く腕を振るう。

 

ガガガガガガッとけたたましい音が鳴り響き、廊下の床や壁に何本もの手裏剣が突き刺さった。

時間切れだ。

 

「オイオイ、俺抜きで面白そーなコトやってんじゃねーよ」

 

声のした方に目を向ければ、不意をついて背後を取ったのだろう、傘頭の襟首を引っ掴んで持ち上げた貫木が、腰に手を当てた姿で愉快そうに笑っていた。

 

「邪魔したか、斬、空也?」

 

「えっ、えっ?」

 

「いや、丁度往生していた所だよ」

 

「嘘つけクソ坊主」

 

そんな軽口を叩きながら、ジリと間合を詰めようとする討条を牽制する様に傘頭の首を締め上げる貫木。

 

「そこの眼帯に刀を収めさせろチビ。遊んでやりてーのは山々なんだが、俺達メシがまだなんだよ」

 

「ギギギギ……手を放せ虫ケラぁ…………!!」

 

足をバタバタさせながら抵抗する傘頭を面倒臭そうに眺め、貫木がドスの効いた声で重ねる。

 

「首の骨へし折ってやってもいいんだぞあ、コラァ゙?」

 

「ぎゃあああああああああっ!!? とと討条っ! かっ、かかか刀を収めろっ!!」

 

一瞬で縮み上がった傘頭が、目の端に涙を滲ませながら焦ったように討条に命令した。

暫し険しい表情で貫木を睨んでいた討条が、素直に納刀すると、隣の斬があからさまにホッとしているのが分かる。

こう毎日毎日理不尽な斬り合いに巻き込まれて、心休まる暇のない斬の気持ちも分かるには分かるが、すっかりヤル気になっていた俺からすれば、ここで討条に()()()()をお見舞い出来なかったのは少々悔しい。

 

傘頭を放り投げてこっちに歩いて来る貫木を迎えながら、こっそり心の中で溜め息を吐く。

その首、暫く預けとくからな討条……!

 

「よお、待たせたな。さっさと屋上行こうぜ、腹減り過ぎて死にそうだ」

 

「う、うん!」

 

貫木に付いて、傘頭の方には一瞥もくれてやらずに討条達とすれ違う。

討条だけでなく、壊原、刺々森と呼ばれた二人もジッと俺を睨んでいるのを感じるが、意識して無視する。

謎の強キャラ坊主ムーブが気分良い。

 

ついでに、階段の陰に隠れてずっと様子を見ていた二人組にも、さり気なく流し目を送っておく。

誰かが居るのには気が付いていたが、そう言えばアイツ等、ここで登場してたんだったかと思い返しつつ、筋肉痛の斬を急かして階段を登る。

 

いよいよ原作はクライマックスだ。

……まだ数日しか経っていないが、ラスボスをこの目に捉えた今、俺はまだ見ぬ新展開に胸を膨らませながら、どうやって討条を倒そうか、頭の中でシミュレーションを繰り返すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゲホッ、ゲホッ……クソッ……!! あの虫ケラ共ぉ……! 僕ちんをコケにしやがってぇ!!」

 

激しく咳き込みながら悪態をつく(あるじ)の背中を撫でさすりながら、先程私の居合を弾き返した坊主姿の生徒を思い返す。

 

身長は私と同程度、恐らく185前後。

制服の上から羽織った袈裟で分かり辛かったが、かなり鍛え抜かれた身体付きだった。

片手で持っていた大錫杖は、一見して七尺はある様に見えた。

打ち合ってみた感覚も併せて考えれば、その重量は20kgを超えている。

 

それをああも軽々と、手加減をしていたとはいえ、この私の居合に合わせて来た。

 

明らかに只者では無い。

恐らく何らかの実践的な流派を高いレベルで修めた一角(ひとかど)の手練れだ。

 

しかもその腰には刀まで差していた。

私と同じ白鞘の、浅い先反りの打刀。

十中八九、奴は居合使いだ。

それもかなり高段の、研ぎ澄まされた使い手……私に比肩しうる腕前の剣客だ。

 

「……討条さん。先程の生徒は、一体何者ですか。見覚えの無い姿でしたが……」

 

壊原が、大きな身体を丸めて立膝をつき、耳元で囁く。

 

「……私も知らん。あの風体だ、一つ下にあの様な男がいて、丸一年気付かないという事はあるまい」

 

「と言うと、噂の転校生でしょうか」

 

「確か二年には、最近入って来たという転校生と編入生が一人ずつ居る筈だな……奴はその何れかだ」

 

「オイッ!! 討条! 何をコソコソ喋っているっ!! 元はと言えば、お前が油断したから僕ちんがこんな目に合うんだっ!! 高い金を払って雇ってやってんだから、給料分位ちゃんと働けよウスノロっ!!!」

 

「ハッ……申し開きも御座いません、坊っちゃん」

 

「フンっ! お前は給料二十パーセントカットだっ! 反省しろっ……お前等もだぞっ! 親衛隊なら誰が何人相手でも僕ちんを守れっ!!」

 

「……はい」

「…………」

 

「行くぞっ! 虫ケラ共め、覚えてろよぉ〜……!!」

 

そう言って、肩を怒らせて前を歩く坊っちゃんに付いて、周囲に目を光らせながら後ろを歩く。

 

「何者でしょうか」

 

さり気なく身体を寄せて来て、小声で囁く壊原に答える。

 

「……恐らくは相当腕の立つ武僧……あの一瞬だけでは流派は判然とせんな。六陰(りくいん)流か厳龍(ごんりょう)流か……何れにせよ、中々の手練れだ。奴は私が斬る」

 

「……なあ討条さん。アイツ、そんなにヤバいん……スか?」

 

私の言葉が聞こえたのだろう。

刺々森の方までが私に近寄って来て、こっそりと返事を窺っている。

鼻先に、煙草の不愉快な匂いがくゆる。

 

「坊っちゃんが奴に蹴りを入れようとした時。その後に転がされた時。そして、金髪の男が坊っちゃんを締め上げた時。俺が飛び出そうとする度に、奴が目線で制して来たのだ。動けば斬る、と……この私をして、迂闊に動く事を躊躇わせしめる、殺気の乗った鋭い目だった」

 

「まさか……」

 

「……マジかよ」

 

流石にそこまでとは思いもしなかったのであろう。

壊原と刺々森が揃って驚愕の表情で唾を呑み込んでいる。

 

「……お前等ではまず太刀打ち出来ん。故にこの討条が斬る」

 

そう言って、愛刀の鞘を握り締める。

 

「我が主が、奴を斬れと命じたのだ。然らば只斬ろう。それが私の武士道だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………バレてませんでしたか?」

 

「…………バレてたな」

 

震える指で眼鏡を直しながら、恐る恐るといった風に聞いてきた書記に、イライラを抑えながら言葉を返す。

 

理事長の命令で、構内の風紀を乱す金蔵(かねくら)とか言う問題児の一味を見に来て見れば、そこには一味と一緒にリストに乗っていた、二年の村山斬と辰爾空也が居るではないか。

 

なぜ転校して来たばかりの二人が粛清リストに乗っていたかは知らないが、両者がここで潰し合ってくれるのならば好都合だ。

戦力を偵察しつつ、あわよくば共倒れになってくれれば楽が出来ると見ていれば、ろくに斬り合う事もなく戦いが中断され、双方無傷でお開きになった上、辰爾という巫山戯た坊主姿の生徒に盗み見を看破されてしまった。

 

「……どうしましょうか、絶山(たちやま)先輩。情報、全然集まってませんし、盗み見もバレちゃいましたが……」

 

「テメェがちゃんと気配消してりゃバレてねーんだよマルコ」

 

「ちょ、っと、私のせいですか!? 大体気配ってなんですか、非科学的な! あとマルコでは無く丸鋼(まるこう)だって何回言えば――」

 

「っせーな殺すぞ」

 

「〜〜〜〜っ! ……兎に角この後どうするんですか? このままでは何も報告出来ませんよ」

 

ムッとした様な顔で一度眼鏡の位置を直した丸鋼が、小さく溜め息を吐きながらチクチクと小言を言ってくる。

これだから女と組むのは嫌なんだ、一々癇に障って仕方が無い。

 

「金蔵の方を追うぞ。あの様子なら今日中に何人か斬るハズだ。そこを押さえる……後、坊主の方の警戒度引き上げとけ。アイツ只者じゃねぇ」

 

顎に手を当てて少し考えた後にそう言うと、丸鋼は手元のバインダーを覗き込んで、リストの下の方に付け足すように手書きされていた『辰爾』という名前の所に、何事かを書き込む。

そうしながら、チラっとこちらを見上げて問い掛けて来る。

 

「…………只者じゃあ無いと言いますが、それは絶山さんと比べてどれ程の物ですか?」

 

試すようなその言葉に、ハッと笑いながら答える。

 

「俺の敵じゃねぇ。坊主も、討条もな」

 

 

あなたはジャンプ作品『斬』を……

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