「ヒシミラクル! 此度の俺にあるのは渇望の果ての孤独な理想郷のみなれば……願え願え! 欲せ! 足掻く姿こそ私たちには相応しい! 共に征くぞ、天上の彼方へ!エルブレズの頂きへ!!」
トレセン学園の食堂で、ヒシミラクルが食後にポチポチスマホを弄っていると何やら非常にテンションの高いタニノギムレットが話しかけてきた。
「えっと……待って。ちょっとごめんね」
ヒシミラクルがスマホを置いて、困ったように手を合わせた。
「その、何度も言って本当に申し訳ないんだけれど……もう少しわかりやすくお願いしますというか……」
「……フッ」
タニノギムレットのやる気が下がった。ヒシミラクルにもそれはなんとなく伝わってしまったのでなおのこと平謝りする。
「ごめん、えっとなんかご機嫌なのはわかるんだよ!? でも普通な私には難しくて!」
テンションの上がりきったタニノギムレットの言葉は普通の学生が咄嗟に理解できる範疇を超えている。なのでヒシミラクルが悪いわけではない。
「ギムレット…今のエゴシネーションはディスアグリー、だよ…」
「あ、ユニヴァースちゃん! わかってくれる…?」
ギムレットが少ししゅんとしたので困っていると、たまたま通りがかったネオユニヴァースが会話に入ってきた。
「ネオユニヴァースもコミュニケーションにビッグイッシュ…弊害、抱えてるから。今のギムレットが伝わらなくて残念な気持ち、UDST、だよ…」
「そっち側の共感だった!? ユニヴァースちゃんらしいけど!」
ともあれ、ネオユニヴァースはタニノギムレットにどうすれば伝わるか一緒に考えたいらしい。
「ネオユニヴァースのトレーナーは、結論を最初に提示することで相手のイントラスト…関心の持続可能時間を向上させられると言っていたよ」
「おお流石トレーナーさんビジネスパーソンらしい…」
「だから…ギムレットも、何が一番言いたいことなのかを意思表示…するといい気がするよ」
「ほう…なるほどな」
そこでタニノギムレットは改めてヒシミラクルに向き直り、堂々たる姿で宣言した。
「待て! しかして希望せよ!!」
「何を!? というか一番言いたいのそれなんだ!?」
全くわからなかった。再び目を伏せるギムレット。
「ギムレットには不向きなメソッドだったみたい……それならセカンドオピニオン……代案を、提示するよ」
「セカンドオピニオンってそういうのだっけ」
「スライド……より言いたい言葉を視覚的に分かりやすくするPOPOの用意しよう……」
「日常会話で?」
ネオユニヴァースは自分のスマホをギムレットに見せつつ、なにか文字を打ち始めた。
「SMARにプライオリティでナレッジをシェア……テンプレートをアップデートしてレミネート……」
(ユニヴァースちゃんも何言ってるのか全然わかんないな……)
ヒシミラクルの感想をよそにスライド作成はあっという間に終わったらしい。
「どうかな……ADVS、できそう?」
「クハハッ! 破壊神にして勝利の美酒たるこの俺は、あらゆる全てを魂に刻み続ける…では今一度いくぞヒシミラクル」
「あっ、はい!! いつでもどうぞ!!」
二人で作ったらしいスライドには『〜互いのトレーナー不在の間併走のご提案〜』と書かれていた。
「俺が最初に言ったのは此度の俺にあるのは渇望の果ての孤独な理想郷のみ……つまりワタシの求める速さと強さだ。しかし孤独な理想郷ということは、ワタシのトレーナーの不在を示している。お前もそうだろうヒシミラクル」
「確かに……大きなトレーナーの研修会みたいなのやってるんでしたっけ。私のトレーナーさんも今日は帰ってこないからお昼食べてダラダラしてたんだけど……」
「そう、つまり俺が言わんとしたことは……」
スライドが切り替わり、新たな文字が表示される。そこに書いてあることをタニノギムレットは朗々と読み上げた。
「今宵、俺もお前も暇だろう。一緒に走らないか?ということだ!!ハッーハッハッハァ!!」
「ながーい!!」