ヒシミラクルはわからない   作:じゅぺっと

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晴れパVS雨パ

トレセン近くの山々は、ウマ娘達にとって格好のロードワークスポットだ。特に予定を合わせなくてもウマ娘同士がばったり出会うことも何ら珍しくない。

 

「はーっはっはっは! お弁当にお好み焼きというのも案外悪くないものだね、アヤベさんのサンドウィッチに勝るとも劣らないじゃないか!」

「ありがと〜お夕飯の残りをタネにしてササッと作れるから簡単でいいんだよね」

 

 そういうわけで、偶然出会ったヒシミラクルとテイエムオペラオーは一緒にお昼ご飯を食べていた。二人で芝生に座りながらお弁当を交換し合う光景はピクニックの様相を呈している。

 

「そういえば、オペラオーちゃんはドトウちゃんとトレーニングしてたんだよね? ドトウちゃん大丈夫?」

「なぁに、ドトウだからね! 一度ボクが引き離そうともすぐに追いかけてくるさ!!」

「おお〜流石、信頼してるんだね」

「オ、オペラオーさ〜ん!! お待たせしましたぁ~~~!!」

 

 噂をすればなんとやら、オペラオーに多大なる敬意と絶対の信頼を寄せるウマ娘、メイショウドトウが追いついてきた。 

 ヒシミラクルは自分の用意していたお茶のコップをドトウに渡す。

 

「あっ、ありがとうございますミラクルさん……んくっ、んくっ……ぷはぁ。救いのお茶です〜」

「うむ、よくぞ追いついたドトウ! さあ、ここらで君も昼食を取り給え!」

「私達も食べ始めたばっかりだし、3人でお昼にしよっか」

 

 そうしてドトウも加えたピクニックが始まる……と思われたが。

 ぽつ、ぽつと。丁度雲行きが怪しく雨が振り始めた。

 

「わわっ、せっかくのお弁当が濡れちゃいます〜。どうしましょう、引き返しますか……?」

 

 おろおろと空とオペラオーを交互に見るドトウ。ヒシミラクルも引き返すべきか考えたがあることを思いついた。

 

「オペラオーちゃん、アレもってるよね? お願いします!」

「ほう、アレか……いいだろう! 空よ、雲よ、全能の神よ! 我が業を見よ! そして平伏せよ!」

 

 オペラオーは立ち上がり、仰々しい台詞を朗々と歌い始める。そして懐からあるものを取り出した。

 

「ボクの無限の光輝、太陽はここに降臨せり!! 

 

いでよっ! てるてる坊主っーーー!!」

「やった、日差しだ! さすがオペラオーちゃん!」

「ええええええっ〜〜〜!?」

 

 オペラオーの使ったてるてる坊主はただの気休めではなく、晴れの日◎や良バ場の鬼といったバ場で効果を発揮するスキルを確実に発動させるための物だ。

 とはいえ、大事なレースで使う貴重品。本来トレーナーのための物であってウマ娘側が気軽に使うものではないが。トレーナーの私物でもサラッと使えるのは流石オペラオーといったところだろう。

 

「いいい、いいんですかオペラオーさん。大事なモノなんじゃ……」

「なぁに、ミラクルさんにはこの前アヤベさんとの模擬レースをセッティングしてくれた恩もあるからね! 王たるもの、それなりの返礼をしなくてはと考えていたところさ!」

「あれ、そうだったんだ……ともあれ、これでピクニックが再開できる……ね……?」

 

 ゴゴゴ……という快晴には相応しくない音が空から聞こえる。なんとオペラオーが晴らしたばかりの天気が不自然な暗雲によってどんどん曇りはじめた。

 

「おい、ポニー共……暑苦しいんだよ」

 

 少し遠くから、こちらに歩いてくるウマ娘の名はシリウスシンボリ。彼女は逆さてるてる坊主を手に見せつけるように突き出した。

 勿論これも気休めではなく、曇りの日◎や道悪といったスキルのための貴重なトレーナー道具でありウマ娘が持つものではない。尤も自分のトレーナーすら子犬扱いするシリウスシンボリにとっては関係のない話だ。

 

「ギャーギャー騒いだ挙句、砂漠みたいなカンカン照りにしやがって……貴重なグランピングオフが台無しだ」

「シ、シリウスさん……グランピングとかするんですね」

「……はあ。とっとと良い子にして私の視界から消えろ、今ならそれで許してやる」

 

 トレセン生徒会長、シンボリルドルフとも並ぶほどの古株である彼女には流石のマイペースなヒシミラクルでも畏まってしまう。

 しかも遠くに見えるクランピングセットの前では自由すぎる三冠バ、ミスターシービーが我関せずとのんびりマシュマロを焼いていた。

 

「そうですね、おジャマしてごめんなさい。帰ろっか、オペラオーちゃん、ドトウちゃん……」 

 

 知らなかったとはいえ無理やり天気を変えてしまったのはヒシミラクルの方だ。揉め事を好まない性分もあって、素直に引き下がる。

 

「オ、オペラオーさんの作ったお天気を邪魔しないでください〜〜〜!!」

「覇王の威光を思い知りたまえっーーー!! 追撃のてるてる坊主で日輪は更に加速した!!」

「2人ともっー!?」

 

 立ち込めた暗雲が無理やり晴らされていく。オペラオーはともかく、ドトウまで引き下がらないとは全く予想外だった。せっかくオペラオーが晴らしたのを無碍にされたのがイヤだったのだろうが最上級生に一歩も引かないほどの執念は凄まじい。

 

「ちっ、聞き分けのないポニー共が……まあ良い。その度胸に免じてこれ以上騒がなきゃ特別に許……なに?」

 

 下級生相手にことを荒立てたくないのか、シリウスシンボリは引下がってくれそうだったが……なんとここでまた不自然に暗雲、いや完全な雨雲が立ち込め始めたではないか。ハッとして振り返るシリウスシンボリ。

 

「うーん……ごめんね、お天気の話を聞いてたらさ。なんだか降らせたくなっちゃった。雨」

 

 ザーザー振りの雨に打たれながら、楽しそうにミスターシービーが近づいてくる。シリウスシンボリはやれやれと首を振った。

 

「ほう……シリウスシンボリさんにミスターシービーさんまで相手とは面白い! 覇王の敵として不足なし!!」

「……ハッ、こうなったらこっちも引けねぇぞ。久しぶりに骨のあるやつだ、かかってきな!!」

「あ、雨になったらそっちだって濡れちゃいますよぉ……!」

「いいじゃない、雨の中でのピクニックも。君たちには申し訳ないけど……この気持ち、雨に打たれないと収まりそうもないかな」

 

 晴れ、曇り、晴れ、雨。尋常ではない空模様。一人逃げ出すことも出来ないヒシミラクルはテンションと気温の変化について行けずフラフラとその場に倒れ込んだ。

 

(何だっけこの気持ち……そうだ、なんか……ととのってきた……)

 

 屋外なのにサウナに入ったような心地になり、騒動が収まるまでそのまま流れに身を任せるヒシミラクルだった。

 

 

 

 




筆者がウマ娘テイエムオペラオーに対して最初に思ったのが『美少女のオジマンディアス』でした。ウマ娘に触れ始めた頃の懐かしい思い出。
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