ヒシミラクルはわからない   作:じゅぺっと

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学校で大事件!?消えたスクール水着(前編)

 

 

「……次はプール授業だったわね」

「はい! トレセンでは冬でも屋内プールで気持ちよく泳げていいですよね!!」

 

 アドマイヤベガとナリタトップロードはそれぞれスクール水着を持って更衣室へと歩いていた。

 プール授業は、所謂トレーニングのための安全な泳ぎ方だったりを学ぶものであり、外クラスとも合同で行われる。

 

「ない! 私のスクール水着がない!」

「あれ、今の声……ミラ子ちゃん?」

 

 その時、ヒシミラクルの声が教室の中から聞こえた。ナリタトップロードが中に入ると、ヒシミラクルがぺたぺたと自分のスクール水着入れを触っている。

 

「……どうしたの、騒いでいたようだけど」

「それが……移動教室から帰ってきたらスクール水着がなくなってて!」

「ええっ!? ミラ子ちゃんも次プール授業ですよね、大変じゃないですか」

 

 教室にいるのは、ヒシミラクルとその友人が一人だけ。どうやら他のクラスメイトは既に更衣室に向かったらしい。

 プールに行きたくないと駄々をこねるヒシミラクルをクラスメイトが説得し、渋々行く決意をしたところでスクール水着がなくなっていることに気がついたそうだが。

 

「……一つ確認していいかしら、ミラクルさん」

「なに、アヤベちゃん」

「スクール水着は……本当になくなったの?」

「ど、どういう意味かな?」

「あなたのプール嫌いはトップロードさんから聞いているわ。……わざと無くしたフリをして、サボろうとしているとか」

「えっ、い、いやいやまさかそんな……っ! トップロードちゃん、そんな目で見ないで……!」

 

 硬直するヒシミラクル。トップロードの目つきが、少しずつ険しくなる。

 しかしその時教室の掃除道具入れからバンッ!と音を立てて一人のウマ娘が飛び出した。

 

「はーっはっはっは! それにはこのボク、テイエムオペラオーが答えよう! これはトップロードさんのインスピレーションが働いた印さ! この特徴から彼女は『トップロードさん目つき怖ッ!!』と言われている! その鋭い目から逃れられる犯人は一人もいないのさ! さあ始まるよ、トップロードさんの名推理がっーーーー!!」

 

 余りに堂々とした口上にその場の全員があっけに取られた。しかし全員が見知った顔だったのですぐいつもの調子に戻る。

 

「オ、オペラオーちゃん! 人の目に変なナレーションつけないでください!!」

「いや、そもそもなんでいるのよ……クラス違うでしょ、あなた……」

「えっと、オペラオーちゃんはなんでまたここに……」

「ふふ……それは勿論ここが新しい舞台になる予感がしたから、と答えさせてもらおう!! それより、今はミラクルさんのスクール水着の行方が最優先じゃないかな」

「それもそうね……もし盗まれていたとしたら事だわ」

 

 オペラオーから目を背けるようにアドマイヤベガがヒシミラクルの空になったスクール水着入れを見る。間違いなく中身は入っていない。

 

「話を戻すけど、本当に中身は入っていたの? 入れ忘れの可能性は?」

「それはないよ、だってプール授業のときはトレーナーさんが直接水着を渡してくれるし……しかも友達の見てる前で」

 

 ヒシミラクルの友人も頷く。プール授業のある日はトレーナーがサボらせないように道具の用意は自ら万全にするそうだ。

 

「トレーナーとはいえ、年上の異性に水着を管理されるのはどうなの……?」

「いやその……わざと持ってくるの忘れたりしたのがバレて……待って! トップロードちゃん怖い目で見ないで! 確かに前科はあるけど……」

「ともあれ、朝には間違いなく水着はあり、ミラクルさんたちが一時間目の移動教室を終えて戻ってきたタイミングでなくなったわけだね。さながら『宝を探す男』が持ち去ったかのようだ!」

 

 つまり1時間ほどこの教室には誰もいなかった。なのでスクール水着を持ち去ることは不可能ではない。ただし、授業を受けて友達と戻ってきたヒシミラクルは別だ。スクール水着を何処かに隠すタイミングがない。

 

「……でも本当に盗まれたのなら問題だわ。先生にも連絡しないと」

「そうですね、他の子にも被害が出ないとも限りませんし……」

「え……いや、そんな大事にしなくても、いいんじゃないかな。スクール水着は、最悪見つからなかったら買えばいいし」

「……そうもいかないわよ。だってスクール水着はトレーニング道具だもの。個人のものを無断で持ち去されたりしたら……学園全体の問題になる。トレーニングの意図的な妨害行為だもの」

 

 トレセンウマ娘、アスリートにとってのトレーニングの価値は重い。トレーニング道具も無論重要なものであり、それを故意に奪う行為には厳罰が課されることもある。

 

「そうですよね、私達にとってトレーニングは欠かせないもの……それを妨害する人がいたとしたら、許せません! やっぱり、先生に連絡を━━」

「待った!!」

 

 ナリタトップロードが教室を出て先生を呼ぼうとしたとき。教室の外でタニノギムレットが立ち、その動きを制した。

 

「待て、しかして希望せよ……そして、俺を呼んだな、共犯者よ!!」

「呼んでないわ、それに今は遊んでる場合じゃ……」

「そう、だが宣教師を呼ぶべきでもない……何故ならば! このワタシの目には既にハッキリと!! この事件の犯人がわかっている……さあ、宣言しよう! ━━犯人は、この中にいる!!」

 

 タニノギムレットは、この場にいるヒシミラクル、その友人、アドマイヤベガ、ナリタトップロード、テイエムオペラオーの5人の中に犯人が堂々と。推理小説の名探偵のように。

 




次の話に続きます。
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