ヒシミラクルはわからない   作:じゅぺっと

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とりあえずキタちゃんで

 担当ウマ娘であるヒシミラクルのいる教室に行くと、ヒシミラクルはファインモーションとエアシャカールと話をしているようだった。

 

「3日後の模擬レースに出走するのはオレ達以外4人。脚質は逃げ、先行、差し、追い込みが一人ずつで間違いねェ」

「どの方も最近本格化を迎えてどんどん強くなってるよね、私達も先輩とはいえ気が抜けないし……どんなトレーニングをしておこうかな♪」

 

 学園内で行われる模擬レース、ヒシミラクルは出走する予定がある。既にトゥインクル・シリーズでそれぞれ結果を出している三人とはいえ、油断するつもりはないのだろう。いい心がけだとトレーナーとして感心する。

 

 そして、ヒシミラクルはどんな作戦とトレーニングで後輩を迎え撃つつもりなのか耳を傾けてみると……

 

「とりあえずキタちゃんとスピードトレーニングで!!」

「ちょっと待て!」

「うえっ、トレーナーさん!?いつからそこに!?」

 

思わず飛び出してツッコミを入れてしまった。口に手を当てて驚くファインモーションに、軽く舌打ちするエアシャカール。

 

「そんなとりあえずキタちゃんて……後輩をビール感覚で呼びつけるのはどうなんだヒシミラクル! もうトゥインクルシリーズ何年目!」

「トトト、トレーナーさん……信じてくれないんですか?じ、G1三勝を成し遂げた、この私の直感を!!」

「その泳いだ目で信じられるか! 今日はプールトレーニングの予定だっただろう!」

「ああっ缶缶を持ち出さないで〜鬼! 悪魔! 英語の先生!」

「だいたいミラクル、この前の模擬レースでもスパートかけ忘れて最下位で帰ってきただろう!」

「それは言わないお約束ですよ!?」

「してないぞそんな約束。そうだ、二人はどんなトレーニングがいいと思う?」

 

ラチが明かないのでその会話を上品に微笑んで見つめるファインモーションと心底煩そうにしているエアシャカールに助言を求めてみた。

 

「知らねーよタイヤでも轢いとけ」

「トレーニング後はラーメンだね♪」

「さっきまでの真面目な雰囲気どこいっちゃったの……?」

 

どうやらヒシミラクルと自分の会話がすっかり緊張感を奪ってしまったらしい。

 

「だって……よくわかんないんです。逃げ、先行、差し、追い込みが一人ずつってどうすればいいんですか。それ考えるのトレーナーさんの役目でしょ」

「それはまあ、そうなんだが……それにしても後輩任せはどうなんだ?」

「キタちゃんなんかいろんな子と友情トレーニングしてるし、お助け大将名乗るだけあって私でも気後れしないといいますか」

 

 確かに彼女が入学してからというのも色んなところではりきっていこー!! の声は聞こえてくる。

 

「つゥか、それなら誰か適当なやつとトレーニングすりゃいいだろ。このトレセンなら併走相手探してるやつもいればトレーニングのアイデア探し中のトレーナーくらいいくらでも見つかるだろォが」

 

 心底面倒くさそうなエアシャカールが肩を竦めて言う。

 

「さすがシャカールちゃん、天才! ふっふっふ、今に見ててくださいトレーナーさん、プールトレーニングなんかよりもっと楽……もとい効率的なトレーニングを考えてもらいますから!!」

 

 ヒシミラクルは子どものように走って教室を出ていってしまった。しかしトレーナーとしてこのまま帰るわけにもいかない。どんなトレーニングをするのかは見届ける必要がある。

 

 

 

 そして五分も立たないうちに、ヒシミラクルは戻ってきた。なんだか眩しくてよく見えない人を引き連れて。

 

「タキオンちゃんのトレーナーさんをお連れしました!」

「人選!!」

「とりあえずこの薬を飲んでくれ。そうすれば最高のトレーニングを約束しよう」

「わあ、今日の薬はまた一段とケミカルだね♪ 私も飲んで良いのかしら?」

「国際問題になるからヤめとけ」 

 

 タキオンのトレーナーには速やかにお引き取りいただいたが、話は振り出しに戻ってしまう。すると、威風堂々たる振る舞いで一人のウマ娘が教室に入ってきた。

 

「何ならトレーニング内容で困っていると聞こえたのだが……禍福糾纆、私から一つトレーニングを提案しても良いだろうか」

「ル、ルドルフ会長さん!?」

 

 言わずと知れた三冠ウマ娘にしてG1七勝の生徒会長、シンボリルドルフ。これは確かに期待できるかもしれない!

 

「あ、でもできるだけ簡単なトレーニングだと嬉しいな……厳しいやつ自信なくて~なんて言ってみたり……」

「ヒシミラクルお前ー!」

「そうか……ならばここは一つ……玉座だな! テイオーとツヨシに伝えてこよう、少し待っていてくれ」

 

 トウカイテイオー、ツルマルツヨシ、そしてシンボリルドルフ同伴でのトレーニング。どんなものか想像もつかないが、ヒシミラクルはこちらを見てニヤニヤしていた。

 

「ふっふっふ。聞きましたかトレーナーさん、玉座ですよ玉座。そんなものに普通な私が座れるなんて思ってもみませんでした」

「いや、トレーニングだからな?」

「でもすごいね、玉座なんて私でもお父様にお願いしないと座れないよ?」

「オメーのはガチ玉座じゃねーか。流石になにかの比喩だろ比喩」

「見ててくださいトレーナーさん! 会長さんとのトレーニングで更に進化する私の姿を!!」

 

 ウキウキ顔でトレーニング場に向かうヒシミラクルだったが……そこで待っていたのは

 

『トウカイテイオーとツルマルツヨシの間に挟まれながらひたすら並走を続ける』

 

 という過酷極まるトレーニングだった。シンボリルドルフにお願いした手前やっぱりやめますとは流石のヒシミラクルも言えなかったのだろう。

 

 

「もう玉座なんてこりごりですよ〜! やっぱりトレーナーさんとのトレーニングが一番です!!」

 

 

 そうしてヒシミラクルは、しばらく素直にプールトレーニングに励むようになったのだった。




楽しかったので続けてみました。また書くかもしれないです。
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