ある日、ヒシミラクルは同期のノーリーズンと食堂にお昼ご飯を食べに来た。
「最近はトレセンのお野菜がどんどん美味しくなっててご飯がますます楽しみになっちゃうよね〜」
「にゃっはっは! 腹が減っては戦もレースもできぬ、兵糧の味とは戦国の世から大切にされてきたものよ! 織田信長も、戦の前には米の湯漬けを食していたというしな!」
「お茶漬けか〜最近ピザとか食べすぎちゃったし、あっさり系もいいよね」
「相変わらずアスリートと思えぬ緩慢さよのう。そこがお主の愛いところじゃが……では午後からはレース授業もあることじゃし、ここは梅茶漬けでもいただくとするか!」
「さんせ〜トッピングはにんじんかにんにくか……迷っちゃう!」
今トレセンはまさに大農耕時代。極上の野菜がやよい理事長主導のもと大量生産されている。梅茶漬けに思い思いのトッピングを乗せ、2人は席についた。
「ほう梅干し茶漬けですか……大したものですね」
その時、一人のメガネを掛けた理知的な雰囲気のウマ娘が話しかけてきた。
「ミラ子よ、知り合いか?」
「あ、あなたは……ジャーニーさん!」
ドリームジャーニー。椅子に腰掛けた2人と目線がそこまで変わらないほどに小柄。しかしその相貌は幼さや頼りなさを一切感じさせない知性と底知れなさを宿している。そしてあの暴君ウマ娘、オルフェーヴルの姉でもある。
「ミラクルさんがオルと最近仲良くしてくださっていると聞いて、一度挨拶しておこうと思ったのですが……貴方がたもお好きですか? お茶漬け」
「えっと、これはノーリーズンちゃんの提案っていうか……」
「いやぁその通り!! ミラ子は湯漬けが大好きでのう!! 普段の食事は大雑把じゃが、走る前はこれで気合を入れているのじゃ!!」
(ちょっと!?)
突然ノーリーズンにあることないこと言われ、小声で抗議するミラクル。だがノーリーズンはドリジャを目線で示した。彼女は何やら大変満足そうに頷いている。
「お茶漬けは素晴らしい……特にレース前においては、米を汁につけたことで消化も良くなりエネルギーにしやすくなる。疲労回復に酸味の強い梅干しも添えてバランスも良い。レース前の食事として最適とも言えるでしょう」
何やら語り始めた。とはいえ、ノーリーズンのウソで機嫌を良くしたのは間違いなさそうだ。
(最初の言い方からして相手は相当の茶漬け好きよ、おそらくオルというのもな。であれば話を合わせておいて損はなかろう?)
(2人共、お茶漬け好きなんだ……なんというか意外かも)
てっきりフランス料理とかハイカラなものしか食べないとばかり思っていたミラクルだが、そこにまた別のウマ娘がやってくる。
「たしかにお茶漬けも悪くないが……レース前に最適とまでは言い難いな。最適なのはやはりバナナだろう。炭酸抜きコーラとも相性が良い」
「ハヤヒデちゃん!?」
「いいえ、わたあめよ。レース前こそふわふわの糖分を食べるべきだわ」
「アヤベちゃんまで!?」
「面白いことを仰いますね……」
何やら平和なお昼ご飯が危ういムードになってきた。難癖に近い突然の相手にドリジャが優しい笑顔で対応する。
「では午後からはレース授業もあるようですし、今お茶漬けを食べたミラクルさんとあなたがたで走って決めてみては?」
「えっ、私!? いや、私なんかじゃハヤヒデちゃんとアヤベちゃんに普通に歯が立たないっていうか、ノーリーズンちゃんのほうが適任……あれ?」
こつぜんと、ノーリーズンはいつの間にか姿を消していた。ミラクルがあたふたしていると、いつの間にかドリジャが話をまとめてしまっていた。
「ではミラクルさん、お茶漬け派としてよろしくお願いしますね。……私はともかく、オルの顔に泥を塗らない走りをお願いします」
「ヒエッ……!?」
一瞬恐ろしい素顔が垣間見え、死ぬ気で走るしかなくなったミラクルを。遠巻きにノーリーズンは観察していた。
「腹が減っては戦は出来ぬというが、飯がありすぎても余計な戦が起こってしまうとは皮肉なものよのう……にゃっはっは!」
ウマ娘ドリジャのキャラがとても良かったのでバナナ姉貴と絡ませようとしたらアヤベさんが乱入してきました。新時代の扉組とノーリーズンでも書きたいネタはまだあります。