ヒシミラクルはわからない   作:じゅぺっと

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同期と王様ゲームと夏合宿の思い出

「同朋よ、火を囲め! 王様ゲームの始まりだ!!」

「「「「「いえーーーー━い!!」」」」」

 

 夏合宿のとある夜。ヒシミラクルとその同世代であるウマ娘が一部屋に集合し、王様ゲームをすることになった。

 

「ミラクル! 盟約《ルール》の説明を頼む」

「任せてギムレットちゃん! まずここに、1〜5番の書かれた紙と王と書かれたくじがあります。みんなでくじを引いて、王を引いた人は番号を指定して命令ができます」

「面白そう! 誰でも王様になれる遊びなんだね♪」

「very simple……理解、した」

 

 非常に簡潔かつ有名なゲームだが、外国から来たファインモーションやシンボリクリスエスのために大事な説明だ。

 

「例えば、1番が王様の肩を揉むとかじゃのう」

「4番が5番の1日臣下として仕える……など常識の範囲なら持続する命令もありですね」

「そうそうそんな感じ! ノーリーズンちゃん、デュラちゃん、補足ありがとう!」

「そして最も重要なファクター……王様の命令は絶対だ! 王となる覚悟は済んだか? 王の拝命に殉ずる用意はいいか? 夏の夜の宴の始まりだ!」

 

 かくしてギムレット、ミラクル、ファイン、クリスエス、ノーリーズン、デュランダルの6人による王を決める遊びが始まった。

 

「「「「「「王様だーれだ!!」」」」」」

 

 最初のくじを引き、一斉に開封する。

 

「ふっ……どうやら今日の勝利の女神は俺の伴侶になったようだぞ」

 

 ギムレットが王と書かれたくじを見せつける。

 ゲームの発案者であるギムレットがどんな命令をするのか、そわそわして待つ5人。

 

「では命令《オーダー》だ。そうだな……4番と5番が、それぞれのトレーナーに対して『好きです、付き合ってください』と投げキッスしながら告ってこい」

「乙女になんてことを!? そんなことしたら完全に冗談だと誤解されちゃうじゃん!」

「そうじゃぞギムレット! 不名誉な!」

 

 4番のミラクルと5番のノーリーズンが抗議をするが、ギムレットは澄まし顔だ。

 

「罰ゲームです、という体でなら言えるだろう? ククッ……将来お前たちが式を挙げるときはこのワタシが神父となってやってもいい!それに……」

 

 ギムレットがクリスエスとデュランダルを横目で見る。2人は王に仕える仕事人と騎士のような厳粛さで言った。

 

「王の、命令は━━」

「絶対ですよ、2人とも」

「しまった! こやつらが王の命令とあらば多少のことで怯むはずがない……謀りおったな、ギムレットォ!」

「ファ、ファインちゃん、助けてー!」

「罰ゲームで告白……ふふっ、自由に恋愛ができる民ならではの遊びだね! 今度SP隊長に許可をもらってやってみようかしら♪」

「乗り気だこのお姫様!」

 

 なんやかんやトレーナーに告白するしかなくなったミラクルとノーリーズンは『私はトレーナーさん

をからかったことを反省しています』という札を首から下げて戻って来る羽目になったのだった。2人とも顔が真っ赤になっている。

 

「うう……2回戦、いくよー!!」

「「「「「「王様だーれだ!!」」」」」」

 

 2回目をくじを引く。さっきまで顔まで真っ赤になっていたノーリーズンがニヤニヤと悪い顔をし始めた。

 

「ワシが王じゃ! 命令は……2番が、4番の体に接吻をせい!」

「まぁ! 私に口づけをしてくださるのは誰かしら♪」

 

 ファインが4番のくじを見せる。しかしそうなると2番はファインにキスをしなければならない。体に、と言っているので投げキッスで誤魔化すことも出来ないわけだ。

 

「ノーリーズンちゃんこれ大丈夫? 国際問題にならない?」

「そうなったらワシは相馬まで逃げるとするかのぅ」

「心配には及びません、ミラクルさん。このデュランダル……騎士として完璧な口づけをご覧に入れましょう」

 

 デュランダルが2番のくじを見せ、ファインに歩みより、跪く。察したファインは王女殿下の表情になって手の甲を差し出した。

 

「例えレースで相まみえれば敵となる運命だとしても……こうして共にある限り、殿下に忠誠を誓います」

「ありがとう存じます。貴女の働きに期待していますよ、デュランダル」

 

 まるで合宿所の空き部屋が王宮になったかのように、パジャマ姿の2人が姫と騎士の正装を身に包んでいるかのような錯覚すら起こして、手の甲への口づけが完了した。

 

 そして天井から、『尊すぎりゅーーー!!』という謎の声とともにカメラのシャッター音と鼻血の噴き出る音も聞こえた。

 

「ふふ……騎士道を志していてよかった……!」

「デュラちゃん頬の緩み方すごいよ?」

「すごく面白いね! 王様でも誰に命令が下ったかわからない……ドキドキするよ♪」

「ワシの想像とは違ったが、まぁ楽しかったなら是としよう! 3回戦じゃ!」

「「「「「「王様だ━れだ!」」」」」」

 

 みんなでくじを開く。しかし今度はなかなか王様の声が上がらなかった。

 

「……ギムレット」

 

 クリスエスが王のくじを開きながらじっとギムレットを見つめる。その気迫にギムレットはただごとではない冷たさを感じた。

 

「ほう……ワタシを狙うか? だが仕事人は王となったとき破壊の神に何を望む?」

「私の、機械人形服━━ゴシック・ロリータなるものを……一度、お前にも着て欲しい。1日」

「なっ!?」

 

 夏合宿で日中は皆スク水が基本の中、1人炎天下をゴスロリで過ごせ━━クリスエスはギムレットにそう要求した。

 

「なんという挑戦的、そして頽廃的!まさかこの俺をここまで戦慄させるとは流石だと言いたいが流石だ! だが……」

「ギムレットちゃん、王様の命令は絶対だよ〜?」

 

 珍しくたじろぐギムレットにミラクルはにやにやしながら詰め寄る。さっき恥ずかしいことをさせられた仕返しも兼ねて。

 

「しかし、王様ゲームでは番号で指定しなければならない! よってその命令《オーダー》は無効だ」

「では━━4番」

 

 番号を指定された瞬間、ギリシャ彫刻のようにギムレットが固まった。

 クリスエスがいそいそと用意していたゴスロリを持ってきて、ミラクルとノーリーズンがギムレットを取り押さえつつ着替えさせて10分後にはゴスロリ衣装のタニノギムレットが爆誕していた。

 

「普段の印象とは違うけどさすが細くて似合うね〜」

「スタイル自体はガーリーじゃからのうギムレット」

「着せて━━よかった。明日も━━よろしく」

「ふふっ……ハーハッハッハァ!! さぁ! 最終コーナーだ!」

 

 半ば自棄になったようなギムレットの叫びと共に最後の王様ゲームが始まる。

 

「「「「「「王様だーれだ!!」」」」」」

 

 最後のくじとあって一層緊張した面持ちで開ける面々。そして王となったのは……

 

「私だね♪ 何をお願いしようかしら!」

「ファインちゃんの命令かぁ〜一番すごいのがきそう」

「ある意味本物の王じゃからな。覚悟の準備をしておかねばの」

 

 ざわつく面々。ファインは勿体つけるように……あるいは全員が静かになるのを待ってから。王様の命令を口にした。

 

「決めたよ。1番から5番の全員は……王様に、今年の夏合宿中に撮った写真を全て共有すること!」

 

 少し意外で……さっきまでの命令に比べれば素朴な命令。しかしそれがファインにとってとても大事なことなのは同期の付き合いでわかっていた。

 

「私の思い出だけじゃなくて、レースの同期であるみんなの思い出も、大事にしたくて……王様の命令、聞いてくださる?」

 

 少し恥ずかしそうに尋ねる同期を見た全員の心は一つだった。

 

「……王様の命令は」

「「「「ぜったーーー━い!!」」」」

 

 こうして、ミラクルや同期達の撮った写真もファインのスマホに収められた。せっかくなのでここにいる全員に共有もした。

 

「まぁ、ギムレットの蹴った看板がゴルシさんに!」

「現れた巨大イカを斬ってイカ焼きにする私の勇姿……!まさに騎士だわ」

「ミラ子〜トレーナーの寝室に忍び込んでモーニングコールとは、おヌシも相当悪よのう!」

「まさかこの退廃的衣装を身にまとうワタシの姿が永劫に記録されようとは……これも因果!いや運命《フェイト》と呼ぶべきか!」

「ふふ……ありがとう、ギムレット♪ その衣装、とってもカワイイよ!」

 

その後は、写真についてのおしゃべりをしながら夜は更けていった。

 みんなの撮った写真が欲しい、とファインが零したのを聞いたギムレットが王様ゲームを発案したことを知るのはまた後の話。

 




ウマ娘2002世代のコメディらしさがどんどん増していく。バカとテストと召喚獣パロはまたやりたいですね。
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